災害図上訓練とは?企業の防災力を確実に高める方法
2018.10.18
いつ・どんな状況で起こるかわからないのが災害の恐ろしいところ。万が一の事態にもしっかり対応できるように、企業や組織においても防災力を高めておくことが非常に重要となります。
しかしながら、通常の避難訓練などはマンネリ化してしまっていることも多く、訓練のプログラムをこなすだけになってしまっている場合もしばしば。そこでご紹介するのが、参加者全員が自ら考えながら災害発生時の対応を検討していく「災害図上訓練」です。
災害図上訓練では手軽に実践的な訓練ができ、想定外の対応力を鍛えることができます。企業の防災力向上のために、災害図上訓練を取り入れてみてはいかがでしょうか。
「災害図上訓練」とは?
災害図上訓練は、別名「DIG(ディグ)※」とも呼ばれ、参加者が自ら災害時に想定される危険等を地図上に書き込んでいく訓練のことです。
経験したことのない大災害をイメージしながら、住まいや周辺地域に潜むリスクを可視化し、避難経路や避難場所などの確認、災害対応や事前対策の検討を行います。
頭の中で行う防災訓練であり、参加者のレベルに応じて問題の検討から実際の防災訓練まで幅広く応用することが可能。ワークショップ形式で手軽に実施でき、最近では自治体などの訓練でも広く利用されています。
※DIG・・・Disaster Imagination Game=災害想像ゲーム
防災力向上に役立つ!災害図上訓練のメリットとは
災害図上訓練は、従来の避難訓練とどのような違いがあるのでしょうか。ここで災害図上訓練を行う意義や利点について確認しておきましょう。
災害図上訓練の目的は、身の回りで起こりうる危険を見える化し、それに対する対応や対策を考えること。最終的には、訓練で生まれたアイデアなどを防災力向上に役立てていかなければなりません。
従来の避難訓練では、火災・ケガ人発生などの事態はシナリオ通りに進行する場合がほとんど。基本的な避難行動や、自衛消防隊などの担当の役割を確認できる一方、マンネリ化して緊張感がなくなってしまったり、想定外の事態への対応力が向上しにくかったりするという課題も残ります。
それに対して災害図上訓練は、与えられた災害の想定について参加者全員が自ら考え、発言・記入を行なっていきます。
災害時に何をすべきか自ら想像力を働かせなければならないため、自分事化しやすく、従来の避難訓練よりも当事者意識や連帯感を持たせることができるでしょう。グループで作業を行うことで、思わぬ発見が生まれる場合もあります。
さらに、身の回りの地図を使って訓練を行うため、発生する災害をイメージしやすいというのも利点のひとつです。作成した地図はそのままハザードマップとなり、それを用いて災害時の対応・対策を検討するので、自然と情報の共有を行うことができます。
地図上で訓練行うため、低コストであることも嬉しいポイント。従来の防災訓練ほど大掛かりなものにならず、手軽にゲーム感覚でしっかりとした訓練を実施することが可能です。
災害図上訓練の準備
効果的な訓練をするためには、備品や会場、テーマ設定など、しっかりとした準備が不可欠。ここでは、災害図上訓練を実施するために用意すべきものや、テーマの考え方について説明していきます。
用意するもの
周辺の地図
地図の大きさは畳2枚程度が目安。テーマに応じて地図の種類や縮尺を選びましょう。
透明シート
地図上に敷き、油性ペンなどで書き込みをするために使用します。
油性ペン
地図上に敷いた透明シートに書き込みをするために使用します。書き込み内容によって使い分けられるよう、太字・細字両用の8〜12色のセットなどが便利です。
ベンジン・ティッシュペーパー
油性ペンの書き込みを修正する際に使用します。
テープ類
地図・透明シートを固定するために使用します。
付箋
地図上に何かを表示したり、意見を書き出したりするためなどに使用します。数種類のサイズ・色を準備しておくと便利です。
カラーシール(ドット)
防災拠点など、地図上のさまざまな情報を表示するために使用します。こちらも数種類のサイズ・色を準備しておくと便利です。
これらが基本的に必要なもの。付箋やシールなどを効果的に使用すると見やすい地図を作成できますので、適宜取り入れるとよいでしょう。
テーマの設定
災害図上訓練の準備で最も重要となるのがテーマの設定です。地震・風水害などの対象とする災害や対象とする地域、どこまでの対応を検討するかなどを決定します。
また、実際の災害をイメージできるように、災害発生時の状況やそれにともなう被害の想定をしておくことも重要です。災害が発生した季節や時間、建築物被害、火災、道路や鉄道の状況、電気・水道・電話などのライフラインの状況など、細かい点まで設定しておくとよいでしょう。
災害図上訓練を実施する際の手順
しっかりと準備をしたら、いよいよ訓練の実施。災害図上訓練を行う場合の基本的な手順を確認していきましょう。
1. オリエンテーション
当日は、まずオリエンテーションから開始。初めてでもしっかり参加できるように災害図上訓練とはどのようなものなのかを簡単に説明し、目的や進行のルールを確認します。
グループで地図を囲んでディスカッションすることになるので、訓練を始める前に自己紹介やアイスブレイクを行うとよいでしょう。気軽に名前を呼びあって意見交換ができるように、名札を準備しておくのもおすすめです。
説明や雰囲気づくりが済んだら、実際の訓練に入る前に過去の災害のVTRや写真を見ながら、具体的な災害のイメージを共有しましょう。
2. 訓練の実施
災害図上訓練は、大まかに3つのステップで構成されます。目的や参加者に応じて訓練を実施していきましょう。
ステップ1:基本地図の作成(初級編)
災害図上訓練は、防災の視点から周辺地域の状況や災害に対する強み・弱点などを把握することから始まります。積極的に意見を出し合い、どのような環境で生活しているのかを確認しましょう。
まずは、周辺の自然条件や都市構造、防災資源などを地図に書き込んでいきます。市街地や海岸線・河川などを地図上にわかりやすく表示し、周辺がどのような環境なのかを把握してください。
その際、可能なら昔の地図などを利用して、昔の自然条件なども記載するようにします。これによって、昔の地形や地盤の良し悪しなどを把握することができるのです。
自然条件に続いて、鉄道や主要道路、広場・公園、水路などを書き込み、周辺地域の構造を確認。さらに、役場や消防署、学校、病院などの災害救援に関わる施設を書き込んでいきます。
反対に、マイナスに働く防災資源なども記載するとより効果的です。危険物の貯蔵施設、倒壊の可能性があるブロック塀・石垣、屋外広告物など、災害時の危険が潜む場所をチェックしていきましょう。
ステップ2:想定される被害の書き込み(中級編)
中級編では、ステップ1で作成した基本地図をもとに、どのような災害が起こりうるのかを具体的に検討します。基本地図の上に新しく透明シートをかぶせ、大規模地震などの際に想定される被害状況などを書き加えていきましょう。
このとき、地域で調査している被害想定結果やハザードマップを活用すると効果的。建物被害・ガケ崩れ危険箇所など、被害想定を書き込んでいきます。
さらに、周辺地域で生活している参加者ならでは想像力を働かせ、想定される被害や災害時に重要な事柄を付箋に記載していきます。これによって、地域のハザードマップだけでは網羅しきれないような、より細かなリスクを洗い出すことができるのです。
ステップ3:実践イメージトレーニング(応用編)
応用編では、ステップ1・2で確認した周辺地域の防災力や想定される被害を前提として、災害発生時の具体的な対応や防災活動についてイメージトレーニングを行います。
進行役は、災害発生の時期や天候、被害状況など、あらかじめ定めておいたテーマを参加者に提示。参加者はその情報から、自分たちの身の回りではどのような被害が起こるのかを想像し、その事態に対してどのような行動をとるべきか検討します。
設問例としては、
・特定ポイントで住宅火災が発生。近隣者はどのように対応すればよいか?
・救急車が入れない特定ポイント付近で骨折した負傷者を発見。どう対応すべきか?
など。具体的に起こりうる事態に遭遇した際、どのように対応すべきかをグループで考えていきます。
さらにテーマや周辺地域の状況によっては、災害発生から数時間〜数日経過した場合を想定にしてイメージトレーニングを行うのも有効です。
3. 反省会
当日は、まずオリエンテーションから開始。初めてでもしっかり参加できるように災害図上訓練とはどのようなものなのかを簡単に説明し、目的や進行のルールを確認します。
グループで地図を囲んでディスカッションすることになるので、訓練を始める前に自己紹介やアイスブレイクを行うとよいでしょう。気軽に名前を呼びあって意見交換ができるように、名札を準備しておくのもおすすめです。
ALSOKの災害図上訓練で防災力を向上
災害図上訓練の意義から準備、実施の手順まで説明してきましたが、この訓練は形式化されている通常の避難訓練よりも複雑なもの。テーマの設定はもちろんのこと、ファシリテーターにもある程度の技術が必要となり、特に初めての実施では、準備の段階から専門家に依頼するのがおすすめです。
ALSOKではさまざまな防災訓練の支援を行なっており、プロによる講師のもとで災害図上訓練を行うプログラムもご提供しています。
(詳しくはhttps://www.alsok.co.jp/corporate/service/disaster_training/)
ALSOK版の災害図上訓練では、基本的な訓練の手順を踏まえつつ、お客様先の建物の図面や周辺地図を取り入れ、よりリアルで効果的なイメージトレーニングをすることが可能。ご準備いただいた情報や事前調査の結果をもとに訓練を設計しますので、危険箇所や備蓄品・消防用品の位置など、災害時に役立つ情報をしっかり確認いただけます。
また、訓練当日だけでなく、ご発注から準備、訓練実施までの流れもしっかりサポート。お客様の準備は最低限で、効果的な災害図上訓練を実施することができます。
マンネリ化した防災訓練を続けているだけでは、実際の災害時に起こりうるさまざまな事態に対応することはできません。自ら考えて判断力を養う「災害図上訓練」を防災訓練に取り入れ、防災対策・防災力向上に役立てていきましょう。
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