店舗における現金管理の重要性や安全に管理する方法を解説

2024.09.27更新(2017.03.30公開)

近年、キャッシュレス決済の普及が進んでいますが、国内の店舗ではまだ現金支払いも多く見受けられます。また、消耗品購入のための小口現金など、店舗ではさまざまな現金管理が求められます。
一方で、現金の安全性を高めようと管理を強化すると、その分従業員の負担が増加します。多くの業種で人手不足が課題となっている現在、限られた人材を有効活用することが必要です。

そこで本コラムでは、店舗における現金管理の重要性や現金を安全に管理する方法についてご紹介します。

店舗での現金決済の現状

2019年から政府がキャッシュレス化を推進し、現在ではクレジットカードや交通系電子マネー、QRコード決済、バーコード決済などさまざまな決済方法があります。経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会とりまとめ」によると、キャッシュレス決済支払額及び比率は2010年から2020年にかけて倍増しましたが、キャッシュレス化が進んでも、支払方法として現金がなくなるわけではなく、引き続き現金管理の重要性が求められます。

以下のグラフは、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ネット通販等における食品や日用品の購入を対象に決済手段の利用状況を調査したものです。日常的な支払いでは4割近くが現金を選択していることが分かります。

購買全体における決済手段毎の利用状況

出典:経済産業省 キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会とりまとめ

店舗における現金管理の重要性

店舗運営において現金管理は重要です。現金管理が適切に行われていないと犯罪につながるだけでなく、店舗の信用を損なってしまう可能性があります。

盗難や内部不正の抑止

現金の取り扱いや取引の記録が正確に行われていると、金額の差異や収支の記載漏れなどが生じた場合に迅速に原因を追究することができます。また、現金管理を徹底することで盗難のリスク低減はもちろんのこと、従業員が現金を盗むといった内部不正の抑止にも繋がります。

税務署とのトラブル回避

現金が適切に管理されているかは、税務調査の調査対象とされている項目です。不明瞭な現金取り扱いや収支の記録漏れが続くと、税務調査が厳しくなります。そのため、日頃から帳簿を正しく記載する必要があります。

現金管理のトラブルはどのようなときに起きるのか

現金管理のトラブルはどのようなときに起きるのでしょうか。ここからは、店舗の一日を通してみていきましょう。

営業開始前

開店の準備に追われて忙しいことも多いと思いますが、レジ内に準備する釣銭の数え間違いは最終的に現金の過不足を引き起こします。どの時点でミスや問題が起きたのか曖昧にならないように、営業開始前の現金管理は徹底して行う必要があります。

営業中

釣銭切れはお客様に迷惑をかけてしまうため、トラブル防止のために、事前に十分な予備の釣銭を準備することが重要です。しかし、過剰に釣銭を準備すると「使えない資金」が増えてしまうため、適切な釣銭量を見極めることが必要です。
また、お釣りの渡し間違いにも注意しましょう。人的ミスを完全になくすことは難しいですが、定期的なレジの清算や高額紙幣を預かった際に声出しや二重チェックを行うなど、手間を惜しまないことが大切です。近年は自動釣銭機の普及も進んでいるため、必要に応じて設備投資も検討しましょう。

営業終了後

営業終了後は、店舗の片づけなどで慌ただしく、売上金の数え間違いが起こりやすくなります。そのため、一人で計数せずに複数の従業員で確認することが大切といえます。その日の売上はその日のうちに計数し、売上金を確定させることが重要です。また、営業終了時のスタッフが少ない時間帯は強盗被害のリスクもあるため、計数作業を行う際はしっかりと戸締りを行い、防犯対策を徹底しましょう。

売上金の入金時

売上金を精査した後は、必ず金融機関の口座へ入金する必要がありますが、お金の持ち運びには紛失や強盗のリスクが伴います。現金を持っていることが目立たないよう工夫し、できる限り2名以上で行動するなどしてリスクを最小限に抑えましょう。特に、夜間金庫を利用する際は周囲に十分注意を払い慎重に行動することが大切です。

深夜から翌朝までの無人の時間帯

深夜から翌朝までの無人の時間帯は、侵入や窃盗のリスクが高まるため、現金の保管方法も対策が必要です。金庫に保管していても金庫ごと売上金が奪われるケースもあります。夜間金庫を利用して可能な限り店舗に現金を置かないようにし、センサーライトや防犯カメラの設置、セキュリティシステムを導入して、防犯対策を講じましょう。

店頭で管理する現金の種類

店舗で管理する現金は大きく分けてレジ現金と小口現金、売上現金の3種類です。

レジ現金

レジ現金は、レジに入れておく釣銭用の現金のことをいいます。釣銭用現金は、毎日同じ金額をレジに残しておくことで、営業開始時と終了時の現金が一致するため、帳簿がつけやすくなります。また、違算金(レジと売上伝票の差額)も発見しやすくなり、過不足が発生した際に早期対応が可能です。繁忙期など、来店客数が日によって異なる場合は、見込み客数に合わせて調整すると良いでしょう。

小口現金

小口現金は、消耗品や食材など店舗の経費を払うために用意しておく現金のことです。売上には直接関係しないため、管理を雑にしている店舗も少なくありません。
さらに、レジ現金と小口現金一緒に管理すると、現金が合わないときに、どこで過不足が発生したのか特定できなくなるため、小口現金は必ずレジ現金と分けて管理しましょう。

売上現金

売上現金は、キャッシュレス決済を除いたその日の売上高のことです。売上現金の扱いは店舗の規模によって異なり、小規模の店舗は売上金をそのままレジに保管しているケースもあります。しかし、紛失や横領、盗難のリスクもあるため、営業後に回収し夜間金庫などに保管することをおすすめします。

店舗での主な現金管理の方法

店舗などを運営していく際には、主に「釣銭定額方式」「小口現金方式」という2つの現金管理の方法があります。それぞれのメリットやデメリットを理解し、事業や店舗に適した方法で現金を管理するようにしましょう。

釣銭定額方式

釣銭定額方式では、毎日一定額の釣銭をレジに残し、レジを締めるときの現金と翌日に回す釣銭との差額を普通預金に預け入れる方法です。
この方式のメリットは、レジを締めるときの現金と翌日に回す釣銭の差額をそのまま預け入れるため、日々の収支が把握しやすい点です。また、営業開始時と営業終了時の現金額が常に一定なので、帳簿がつけやすく、現金の過不足も発見しやすくなります。
一方で、手元の現金を使って簡単に支払いができるため、余計に経費を使ってしまうリスクがあるので注意が必要です。

小口現金方式

小口現金方式は、毎日の売上をすべて普通預金に預け入れ、小さな支出のみ手元に残してある小口現金で精算する方法です。
この方式のメリットは、売上をすべて預金することで、普通預金通帳を通じて資産の推移を確実に把握できることです。また、すぐに使用できるお金が小口現金に限られるため、無駄遣いを防ぎます。ただし、手元に余分な現金がないため、銀行振込などの作業が増え、現金帳簿として「現金出納帳」「小口現金出納帳」の2つを管理する必要があります。

現金出納帳とは

現金出納帳とは、帳簿に記録された現金の入出金と、実際の現金残高が一致しているかを確認できる帳簿です。経理業務上もお金の流れを把握するために重要とされています。
一般的に、日付・勘定科目・摘要・収入や支出の金額・差引残高という項目で構成され、これらを記録することで、現金が「いつ、どこで、何のために使われた、入ってきたのか」を可視化することができます。

安全に現金管理を行う方法

店舗での現金管理には窃盗や盗難のリスクが伴いますが、管理方法を工夫することでリスクを軽減できます。ここでは、安全に現金管理を行う方法をご紹介します。

管理方法のマニュアルを作成する

安全に現金管理を行うためには、管理方法を細かく記載したマニュアルの作成が重要です。レジ現金や小口現金の金額の設定、補充のタイミング、レシートの管理場所、売上現金の入金手順などを明確にしておくことで、現金の過不足が発生した際にミスの発生箇所を特定しやすくなります。
作成したマニュアルは現金を取り扱う従業員にも共有するようにしましょう。

固定できる金庫に保管する

現金は手提げ金庫ではなく床に固定できる金庫に保管しましょう。手提げ金庫の場合、金庫ごと盗まれる可能性があります。固定式の金庫はレンタルすることもでき、費用を抑えたい場合はレンタル金庫を活用しましょう。

入金機オンラインシステムを用いる

店舗での現金管理は窃盗や盗難リスク、管理する従業員の心理的負担も高いものです。そこで、おすすめなのが入金機オンラインシステムの活用です。
入金機オンラインシステムは出金機能や両替機能を備え、釣銭の準備も簡単に行うことができます。また、投入した現金は警備会社の管理下に置かれるため、窃盗や盗難のリスクを避けることができ、従業員の心理的負担の軽減につながります。

ALSOKの入金機オンラインシステムでは、店舗にいながら売上金を指定口座に入金でき、現金の計数作業も機械が行うため、少ない人数でも業務の効率化が可能です。また、インターネット上で投入金データや指定口座への振り込み情報を閲覧できます。さらに、小口現金の管理機能も備えており、現金管理の強化と生産性向上を実現します。

現金管理の方法を見直し安全かつ効率的に店舗を運営しよう

店舗の現金管理にはさまざまなリスクが生じるため、レジ現金、小口現金、売上現金の3種類に分け、それぞれ適切に管理することが大切です。また、店舗全体で現金管理を見直し、管理方法のマニュアル化を行うことで、店舗運営の効率化や生産性の向上に繋がります。日々の売上現金は店舗に保管するのではなく銀行へ入金する、もしくは入金機オンラインシステムを活用するなど、リスクを最小限に抑えましょう。

店舗の盗難・不正防止の対策としてセキュリティを強化することも必要です。ALSOKでは店舗向けの防犯カメラ・監視カメラやオンラインセキュリティサービスを提供しています。店舗の現金管理や防犯対策についてお悩みの場合はお気軽にALSOKにご相談ください。