ファシリティマネジメントとは?
建物寿命をむかえる前に効率的・戦略的に運用しよう

2017.12.12 (2019.12.19修正)

施設全体の管理・設備の点検はマンションや複合商業施設、オフィスビルなどすべての建物において欠かせないものです。これらの業務は効率的かつ効果的に行う必要があり、それらはお客様の安全安心にもつながります。また経営管理としてのファシリティマネジメントも近年注目を集めています。

建物を適切に運用することの重要性

商業施設やオフィスビル等の各種ビル、マンションなど、建物を安全・快適かつ長期的に運用していくためには適切な管理等を行う必要があります。

例として、鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造のマンションの耐用年数は47年。しかしこの耐用年数は建物の寿命とイコールではなく、資産価値を計算するために便宜上定められた年数です。適切なメンテナンス等を行えば、コンクリート造の建物自体は100年以上でも維持できるとされます。

このように建物を長い期間利用・運用するために必ず考えるべきことが、「ライフサイクルコスト(LCC)」です。ライフサイクルコストとは建物の企画から解体までの全段階で発生するコスト総額を意味し、それを最適化していくことを「ライフサイクルマネジメント(LCM)」と呼びます。

上記のように、建物は竣工をスタート地点として数十年~100年に渡って運用していく必要がありますが、そのライフサイクルコストのなかでは、清掃・設備管理・警備等の保全コストや修繕コスト、水道光熱費等の運用コストなど、ランニングコストが大きな割合を占めます。建物の規模などにもよりますが、設計や建設にかかるイニシャルコストはライフサイクルコストの一部にすぎません。そういったことを考えれば、長期的視野を持って建物を運用していくことがいかに重要かわかるでしょう。

そして何より、商業施設やオフィスビル、マンションといったあらゆる建物は、お客様や利用者が安心して快適に過ごせる環境が不可欠。適切な運用や管理を行うことは、建物を長持ちさせたり、コストを削減したりするためだけでなく、建物の存在価値にも直結すると言えるでしょう。

このようにさまざまな建物の運用や管理を適切に行う手段として、「ファシリティマネジメント」という方法があります。では、具体的にファシリティマネジメントとは何を指すのでしょうか。以下では、ファシリティマネジメントの解説をいたします。

ファシリティマネジメント(FM)とは?

「ファシリティマネジメント(FM)」は、ライフサイクルコストと並んで現代の建物の運用において非常に重要な考え方のひとつです。ファシリティ(Facility)とは“施設・設備”という意味。ファシリティマネジメントとは、そういった建物・土地・設備などの施設資産やその環境を総合的に企画、管理、活用することを言います。

かつての日本においては建物を長く使うという意識が薄く、バブル期までは「スクラップ&ビルド」という考え方に基づき、老朽化した建物はすぐに取り壊して新しい建物を作ることが主流でした。しかし近年では経済の変化等によって、建物を長い年月使用する考え方へと移り変わり、企業等にとってファシリティ(=建物や設備等)はヒト・モノ・カネ・情報と並ぶ重要な資源とされ、経営において重要な役割を担うようになっているのです。

「ファシリティマネジメント(FM)」と「施設管理の違い」

伝統的な「施設管理」では、基本的には現状を優先する考え方で建物を維持・管理していく手法が採られてきました。たとえば「ビル管理」と聞けば、現状を保つことを第一に修繕や美化を行うことを連想する方が多いでしょう。

それに対し「ファシリティマネジメント」とは、ライフサイクルや将来も視野に入れ、経営的視点で改善ポイントを提案することまで行います。さらにその上で、ビル・施設という資産全体をより良く活用できるよう、最大限の取り組みを行っていきます。

日本のファシリティマネジメントでは、経営戦略に則りPDCAサイクルを回し、建物等の運用方針から効率化・低コスト化を図っていきます。もちろん改善に取り組むだけでなく、日常的な清掃・保全など維持管理の合理化までを含む、トータルなマネジメントが行えると考えるとよいでしょう。

ファシリティマネジメント(FM)のメリット

ファシリティマネジメントの考え方は、さまざまな組織が運用する建物にとって重要になります。企業のオフィスビルなどはもちろん、商業施設や宿泊施設、行政施設や病院、学校など公共の施設に至るまでにメリットがあると考えてよいでしょう。
ファシリティマネジメントの考え方に基づき建物を運用することで、費用対効果や効率性、快適性などを向上できます。それらとともに建物等の寿命も延ばすことに繋げられ、より施設自体の価値を高めていくことができます。

建物の運用におけるマネジメント業務

建物の運用に紐づいて必要となるマネジメント業務は多岐に渡ります。商業施設やオフィスビル等の各種ビル、マンションなど、建物の種類や保有する団体・組織にもよりますが、建物の運用では大きく分けて不動産系、営業系、総務・経理系の3種類の業務が必要となります。

不動産系

不動産系の業務は、主に建物そのものに関する維持管理や保全といった内容です。清掃や設備等のメンテナンス、消防点検、空気環境測定、水質検査といった日常的・定期的な業務のほか、建物の寿命を延ばす修繕計画や省エネ化、より快適な環境にするための方策など、建物の管理全般についての領域を含みます。ALSOKの「ファシリティマネジメント」ではこういった不動産系の業務をメインに請け負っています。

営業系

営業系の業務は、テナントの管理や販売促進、対外折衝といった内容です。一般的にテナントや入居者の対応、募集や誘致の計画・施策、各種契約の管理、官公庁への届出などが営業系の領域に含まれます。建物自体の管理を行う不動産系と並んで、建物を活用していくために欠かせない業務です。

総務・経理系

総務・経理系の業務は、売上げや入出金の管理、決算書・報告書の作成などのほか、上記2つをスムーズに進めるためのさまざまな調整を行います。不動産系や営業系の業務のように直接的に建物の管理や運営には関わらないものの、重要な資産である建物等を長期的かつ効率的に運用していくための土台となります。

こういった建物の運用におけるマネジメント業務は、建物の規模や組織における立ち位置などによって、より複雑で広範囲的なものとなる場合があります。ライフサイクルマネジメントやファシリティマネジメントの考え方に基づいて費用対効果を最大化したり、建物を長持ちさせ、過ごしやすい環境を整備したりするためには、どの業務もおろそかにすることはできません。

建物の運用で起こりうる問題点

ファシリティマネジメントにはさまざまな要素が含まれますが、建物等を重要な資源と考える以上、不動産系の業務は関連が深いものとなります。適切な管理ができていなければ無駄が生じたり、予期せぬ問題が発生して利用者の満足度が低下してしまったりする可能性があることを忘れてはいけません。

例えば、建物の現状を維持することばかりを優先し、不具合のあった設備等だけに場当たり的な対応を行っていると、予防や事前の対策にはつながりません。ほかの箇所でもいずれ同じ事態が発生することが予想されるにもかかわらず適切な処置をせずにいた場合、手間や費用が必要以上にかかってしまったり、より問題が深刻化してしまったりする恐れがあります。また、長期的視野で考えていなかったために、建物の劣化を見逃しているということも考えられます。

現場に任せきり、担当者や業者が個別にそれぞれの担当箇所のみを管理する、といった状況にも注意が必要です。各々がしっかりと対応していれば問題が起こる可能性は低くとも、建物全体の状態を把握できていないために、必要な修繕計画を立てたり効率化を図ったりすることが困難になる可能性があります。経営的な視点を踏まえ、全体を見回しながら管理していかなければ、刻一刻と変化する社会・環境に適した価値ある建物づくりをすることはできません。

建物の運用を効率的に行うには

ALSOKの「ファシリティマネジメント」では、以下のような建物の運用に関連するさまざまな業務を請け負い、安全安心な建物の運用をサポートいたします。日常的な清掃や設備管理等の業務はもちろんのこと、国内最大級のグループネットワークを持つALSOKならではの品質の高い警備業務までトータルでご依頼いただくことが可能。管理業務にかかるコストを削減します。

さらに、ファシリティマネジメントの考えに基づき、長期的視野で建物の適切な運用をご提案。現状維持にとどまらず建物の価値を向上させていけるよう、必要な修繕工事やリニューアル等も計画から実行までワンストップで対応いたします。

管理サービス業務

電話応対、受付、設備遠隔制御システム、遠隔画像システムなど。安全安心で気持ち良く建物を利用できるようにサポートを行います。

清掃管理業務

日常清掃、定期清掃、特別清掃など。館内はもちろん外観や植栽等の状態は建物の印象を左右するポイントですので、いつでも清潔感のある建物づくりを行います。

環境衛生管理業務

空気環境測定、給水管理、排水管理、害虫等防除、水質検査など。利用者が快適に過ごせるように建物の環境を保全します。

設備管理業務

電気通信設備、空気調和設備、給排水衛生設備、昇降機設備など。建物を機能させるさまざまな設備の点検や整備を行います。

建築物保全管理業務

建築物設備保全管理、特定建築物定期調査・検査など。地盤や屋根・屋上、壁、床といった建物の各箇所に問題がないか調査を行い、建物の安全性を管理します。

防災業務

消防点検、防火対象物点検、防災管理点検など。定められた防災設備の点検等を行い、万が一の事態にもしっかり対応できる環境づくりを行います。

警備業務

常駐警備、機械警備、入退出管理など。ALSOKならではの警備、最新のセキュリティ機器等を駆使して建物の安全を守ります。
建物を適切に運用していくためには、さまざまな管理業務が必要になります。ファシリティマネジメントやライフサイクルコストなどを踏まえ、外部委託サービスを有効活用したり、長期的視野で運用方針を立てたりすることで、コストを最適化できるとともに、より建物の価値を高めていくことができます。一度、建物の運用体制を見直してみてはいかがでしょうか。

ALSOKのファシリティマネジメントの強み

ALSOKでも、ファシリティマネジメントサービスを行っています。ALSOKのファシリティマネジメントは、単に維持管理作業を請け負うだけのものではありません。ビル管理業務のすべてを一本化する形で代行するとともに、設備や施設自体のリニューアルを検討する際にもその提案から実際の作業に至るまでサポートしています。

また、全国展開する警備会社でもあるALSOKならではのノウハウを活かし、緊急時や施設内での万一のトラブルにも24時間365日迅速な対応が可能です。これらの実績を長く積み上げてきたALSOKなら、独自の管理手法でコストの最適化も実現。請求・受付を1つの窓口とすることで、事務作業も効率化できます。

まとめ

今回は、ファシリティマネジメント(FM)について、従来の施設管理との違いを踏まえながらご紹介しました。単に現状の維持に努めることにとどまらず、現代の価値観にマッチしたファシリティマネジメントで、価値を高め長く親しめる建物管理をめざしましょう。