職場環境の整備に必要なストレスチェック
2024.10.28更新(2019.04.16公開)
従業員が働きやすい環境づくりをするのは、企業にとって大きな役割です。近年ではメンタル面のケアも非常に重要視されており、2015年12月からはストレスチェックも義務化されました。
従業員の心の健康は、職場環境の整備だけでなく、従業員のモチベーションや企業の業績にも関わる大切なもの。従業員が皆、いきいきと働けるような環境作りに取り組みましょう。
ストレスチェックの必要性
ストレスチェックとは、従業員のメンタル不調を未然に防ぐために行われるものです。各企業において年に一度は健康診断が行われていると思いますが、健康診断は体の健康状態をチェックするものであるのに対して、ストレスチェックは心の健康診断と言えます。
周知の通り、近年は過労死や過労自殺といったキーワードへの注目度が高まっており、働き方改革の名のもとに多くの企業で職場環境を改善が行われています。実際、令和5年度の過労死は認定されたものだけで1,099件、そのうち死亡・自殺(未遂を含む)は137件に上ります。過去数年、過労死等に関する請求件数は増加傾向にあり、認定されているだけでも年間でこれだけ多くの人が過労死または過労自殺に陥っており、その問題の深刻さが窺い知れます。
また、こういった最悪の事態までは至らなくとも、メンタル不調を原因とする問題はあらゆる企業において多数発生しています。ストレスが積み重なれば、うつ病や適応障害をはじめ、会社を休みがちになったり、仕事の成績が伸びなくなったりすることもあります。
そういった事態を未然に防ぎ、従業員の心の健康を保っていくために行われるのがストレスチェックです。そして2015年12月からは、一定基準を満たす事業所にストレスチェックの実施が義務付けられており、各業界で対応が急がれているというのが現状です。
出典:厚生労働省 令和5年度「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
ストレスチェックの対象となるのは
労働安全衛生法によってストレスチェックの実施が義務付けられているのは、労働者が50名以上の事業所です。対象となる事業所は1年に1回の頻度でストレスチェックを実施し、所轄の労働基準監督署に報告書を提出しなければなりません。
ストレスチェックを実施し、労働基準監督署に報告書を提出すべきことは労働安全衛生法第100条で義務付けられており、報告を怠ると50万以下の罰金が課せられる可能性があります。ただし、現状では実施しなかった場合の罰則や報告の期限などについては特に規定されていないのも事実です。
一方で、義務化から数年が経過した現在においては、ストレスチェックの対象となっているにもかかわらず実施していない事業所は、所轄の労働基準監督署から指導が入るケースも見られるようになっています。
ストレスチェック義務化の対象となるのは労働者数50名以上の事業所ですが、反対に、その基準に満たない事業所でもストレスチェックを実施しているという事例も少なくはありません。あくまでも基準となる単位は事業所ごとですが、基準を満たす事業所とそうでない事業所を持つ場合に、全社一同にストレスチェックを実施するといった企業も見られます。
ストレスチェックの実施状況
厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)によると、令和5年にストレスチェックの対象となる事業所のうち、ストレスチェックを実施していると回答した割合は89.6%に上ります。規模の大きな事業所ほど、実施率は高いという結果になっています。
このように多くの企業がストレスチェックに取り組んでいる一方で、一部の事業所では、未だにストレスチェックを実施していないという結果も明らかになっています。先に述べたように指導が入るケースもあり、今後ますます労働環境の改善が求められることが予想されます。実施対象となる事業所では、きちんと対応する必要があるでしょう。
ストレスチェックの結果についてもいくつか見ていきましょう。公益社団法人全国労働衛生団体連合会の調べによれば、2023年中のストレスチェックの結果、「高ストレス者」(ストレスを強く感じている人)と判定された人の割合は、全体で14.9%でした。男女別にみると、男性が16.7%、女性が12.3%で、女性に比べて男性がいくぶん高い数値になっています。また、年代別でみると最も高ストレス者の割合が多いのは30代です(いずれも素点換算法)。
高ストレス者と判定された労働者には、医師による面談指導を促し、希望する場合は面談を実施するという義務があります。しかし、公益社団法人全国労働衛生団体連合会の2023年のデータでは、 同連合会のストレスチェックを実施した労働者のうち、医師の面談を受けた人は2.0%でした。また、ストレスチェック実施後には、結果を全社や部署単位などで集計・分析する「集団分析」を行い、職場環境の改善に取り組むことが努力義務とされています。しかし、2023年のデータによると実際に集団分析を行っているのは、ストレスチェックを実施した事業所のうち78.9%となっています。
制度化から10年以上が経過し、実施率は高くなっているものの、単にストレスチェックを実施しただけで終わりにしてしまっては十分とは言えません。得た結果を踏まえ、高ストレス者にどのようなフォローを実施し、職場環境をどのように改善していくかといった点が今後の課題となっていくでしょう。
出典:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」
公益社団法人全国労働衛生団体連合会「令和5年全衛連ストレスチェックサービス実施結果報告書」
ストレスチェック実施の流れ
ストレスチェックの実施には、意外に多くの業務フローが必要です。特に初年度については、準備から事後の報告までひと通り行うのに2〜3ヶ月程度の期間が必要となります。ここで大まかな流れを確認しておきましょう。
1. 実施準備
ストレスチェックを実施する方法やスケジュールなどの社内ルールを策定し、告知を行います。
2. ストレスチェックの実施
厚生労働省のガイドラインに沿った調査票や外部サービスを利用して、ストレスチェックを実施。紙またはWeb上で調査票の質問に回答してもらいます。
3. 集計・医師による判定
回答をもとに個人のストレス状況を評価するとともに、産業医等によって面談指導が必要な高ストレス者の判定が行われます。
4. 結果通知・面談指導の督促
個人にストレスチェックの結果を通知します。面談指導が必要と判定された高ストレス者に対しては、産業医等の面談を促す義務があります。
5. 面談指導の実施
高ストレス者のうち、面談指導を希望した労働者については産業医等の面談を実施。その結果、就業上の措置が必要と判断されれば、適切に対応しなければなりません。
6. 労働基準監督署への報告・集団分析
ストレスチェックと面談指導の実施状況について、決められた様式で所轄の労働基準監督署に報告書を提出します。また、努力義務ではあるものの、ストレスチェックの結果から集団分析を行い、必要に応じて職場環境の改善を行います。
ストレスチェック実施において生じる問題
制度化から数年が経過した現在、特に大きな問題が発生したという報告は聞かれていないものの、ストレスチェックの実施に関して何かしらの悩みを抱える企業は少なくないようです。
受検者が少ない
全従業員がストレスチェックに応じてくれるとは限らず、受検率が上がらなくて悩んでいるという企業は意外に多いようです。 より多くの従業員に受検してもらえば正確な結果が出せますが、あくまでもストレスチェックは強制すべきものではなく、受検者が少ないからといって咎められるわけでもありません。ストレスチェックは受検率を上げるためには、実施期間の途中で、社員や部署の受検状況に応じて受検を促進することが重要です。また、社員が気軽に・リラックスして受検できればもっと受検しやすい環境が整います。会社だけでなく、自宅や外出先でも受検できるなど工夫する事で、受検が参加しやすくなります。職場環境を正しく把握するには重要なことですので、多忙ななかでもなるべく受検してもらえるように呼びかけを行いましょう。
個人情報や結果の扱いについて
ストレスチェックの回答や結果は、重要な個人情報に当たります。人によっては、回答内容が査定や人事に影響するのでは、と不安になることもあるようです。
ストレスチェックの実施は基本的に人事・総務の領域になりますが、取りまとめをする実施事務従事者(担当者)は直接の人事権を持つ人以外で選出する必要があります。さらに、重要な個人情報を扱ううえでも、事前に社内規定において担当者を明確にしておくことが大切です。
手間がかかる
上記で説明した通り、ストレスチェック実施には多くの業務が必要となり、担当者にかかる負担は決して少なくありません。その点については周囲で配慮・カバーする必要があるでしょう。
さらに、ストレスチェックは毎年実施するものですので、できるだけシステム化していくことが求められます。厚生労働省のガイドラインをもとに自力で実施することも可能ですが、規模によっては外部のサービスを利用することで、一連の業務を大幅に効率化できるでしょう。
結果の活用方法がわからない
義務化されていることもあり、ストレスチェックを実施してはいるものの、その結果を上手く活用できていないという場合も多いのではないでしょうか。
ストレスチェックの最終的な目標は、高ストレス者への適切なフォローや、職場環境の改善によって従業員のメンタル不調を未然に防ぐことです。自力での対応が難しかったり、何かと相談したいことがあったりする場合は、専門サービスの導入をおすすめします。
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ALSOKでは、ストレスチェック義務化に対応する「ストレスチェックサービス」をご提供しています。ストレスチェック実施をトータルでサポートし、実施事務の負担軽減、問題の解決にご協力いたします。
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一連のサービスには、ストレスチェック実施後の専門医によるストレス判定や面談医師紹介も含まれます。産業医のみで高ストレス者の見極め・面談指導に対応しきれない場合でも、確実に事後のフォローを行えます。
さらに、集団分析までカバーできるのはALSOKがご提供する「ストレスチェックサービス」の大きな強みです。ストレスチェックの結果をどう活用すべきか悩んでいる場合は、ぜひこちらの分析結果をもとに組織の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
集団分析の結果はweb上で確認可能
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