蓄電池を利用した防災対策
万一の災害が起こった場合、夜間の照明や通信手段の確保のため電源確保が必要になります。特に各企業においては重要でしょう。
今回は、非常時の電源確保のために準備したい蓄電池について、その重要性や活用用途、また種類で異なる特徴や価格などをご紹介します。
目次
災害時の電源確保の難しさ
2011年の東日本大震災や、2017年の熊本地震・2018年の北海道胆振東部地震、そして2019年の台風15号・19号と、2010年代には大きな災害が数多く発生しています。それらにより、災害時に電源確保が難しくなることは多くの国民に周知されることとなりました。
一般的には、各種ライフラインのなかで電力はもっとも早期の復旧が可能といわれていました。2011年の東日本大震災のケースにおいては、電力は1週間以内におよそ99%の世帯で復旧し、次いで水道が3週間後に99%、ガスが5週間後に99%の世帯で復旧しています。
しかし、2019年の台風15号被害における千葉県での電源復旧が当初の予定よりかなり遅くなったことは記憶に新しいことと思います。台風15号は、特に強風による被害が異例といえる規模だったため、電柱の倒壊に加え飛来物による電線の断線被害が甚大なものとなりました。
さらに、大規模な電源喪失により現地の情報がきわめて得にくくなったことで、停電被害の実態の把握がかなり遅れたことも復旧遅延に拍車をかけました。現地へ派遣するため準備していた電源車も、被害を受けた現場自治体からの情報がほとんど伝わらないことで出動できず、被災規模がさらに拡大したことも報じられています。
災害時のライフラインの復旧の速さは「電気→水道→ガス」の順、ご家庭や企業で備えておくべき優先順位は「水→電気=ガス」と一般的にはいわれます。しかし、災害の性質によっては電力供給の復旧が想定以上に遅くなるケースがあることも、各々において認識が必要となってきたといえそうです。
電源確保をする重要性
ここでは、災害に遭った際に電源を適切に確保しておくことの重要性についてご紹介します。災害時の停電に備え、特に非常時用の電源を準備しておくべきシーンについて考えてみましょう。
1.照明の確保
昼間は太陽光で視界が確保されますが、日没後は暗くなるため電源による照明がなければ被災地での生活や復旧活動に支障が出てしまいます。
2.通信手段の維持
電話や無線通信なども電源が確保できなければ運用できないため、企業においては社員の安否確認や取引先への連絡など伝達手段確保のためにも電源は重要です。
3.情報源の確保
ラジオ・テレビ、インターネットを利用できれば被災状況や復旧に関する情報をリアルタイムに近い状態で得ることができます。新たな情報をいち早く確認するためにも、電源の確保が重要になります。
4.地域社会への貢献
被災時においても企業単位である程度の電源容量が確保できれば、地域の被災者の方への貢献活動もできます。スマートフォンの充電などに電源を提供することにより、災害現場でも地域社会とのコミュニケーションを円滑に行えるでしょう。
BCP対策としての電源確保
災害時の電源確保は、人命の保護や日常生活の復旧に向けた取り組みにとどまらず、事業の継続もしくは早期復旧にも重要となります。
企業が保有・管理する各種データを維持し消失を防ぐことや、通信手段を維持することなどBCP対策において非常に重要な要素に、電源の確保は大きくかかわっています。
BCP計画をしっかり立て、なかでも重要な要素となる電源確保についても事前にきちんと検討しておくことは、企業としての事業の継続性を高めることにもつながるといえます。
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電源確保のための蓄電池
近年において大規模災害が立て続けに発生するなか、企業の電源確保のために蓄電池を活用することが注目されています。
蓄電池とは?
蓄電池とは、1度だけ使用するのではなく、充電を繰り返して何度も使用できる電池を指しています。モバイル機器などに用いられるリチウムイオン電池や、一般的な自動車のバッテリーに使用される鉛蓄電池、ハイブリッド自動車や乾電池型蓄電池などのニッケル水素電池が良く知られています。また、太陽光発電と組み合わせて家庭用電源としての効率を高めている家庭用の蓄電池も普及し始めています。
蓄電池のメリット
企業やご家庭に電源として蓄電池を設置することには、おもに以下のようなメリットがあります。
【蓄電池のメリット1】太陽光発電と組み合わせて、生産した電気の自家消費を促進できる
今後、太陽光発電による売電のメリットは薄くなることが予測されているため、太陽光発電は「節電のため」に用いることが現実的になっていくといわれています。そのためには、太陽光発電で作った電気は企業やご家庭で自家消費することがもっともお得になるでしょう。蓄電池と太陽光発電を組み合わせることで自家消費率を高め、太陽光発電の本来の目的である「節電」により役立つ仕組みとすることができます。
【蓄電池のメリット2】深夜電力をおもに使用することで電気料金を抑えられる
蓄電池の導入により、電力会社との契約を割安な「深夜電力」に切り替えることが現実的になります。太陽光発電で発電した電気を使うことに加えて、安い深夜電力を蓄電に利用し早朝に貯めた電気を使えるため、より電気料金をお得にすることができます。
【蓄電池のメリット3】停電時、予備電源として使用できる
災害時における蓄電池のもっとも大きなメリットといえば、この要素です。停電により電力供給が一時的にストップしても、太陽光発電で作った電気を貯めておくことで必要に応じて利用できます。電気が止まると照明やテレビなどが使用できなくなるだけでなく、電話などの連絡手段や給湯も止まってしまう可能性があります。緊急時の電力確保に備え、蓄電池を導入する企業やご家庭がここ数年で急増しているそうです。
蓄電池のデメリット
大きなメリットがある蓄電池ですが、デメリットについても把握しておきましょう。
【蓄電池のデメリット1】初期導入時のコストが高い
規模の小さいシステムではないため、蓄電池の導入時には相応のコストがかかります。
【蓄電池のデメリット2】長年使用すれば劣化による入れ替えが必要になる
蓄電池は、何度も繰り返し使うことで劣化してしまいます。そのため、電池部分の劣化により寿命が来れば入れ替えが必要になるというデメリットもあります。
上記の蓄電池のデメリットは、次にご紹介する補助金制度の活用である程度低減できます。もし補助金制度が利用できるなら、万一の災害が起こってしまう前に蓄電池の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
補助金制度
蓄電池の導入には補助金制度が設けられていますが、国による補助金制度では蓄電池単体だけの設置は対象となっていません。蓄電池の導入に補助金を活用したい場合は、各地方自治体による補助金制度に合った導入を検討することが現実的でしょう。
たとえば、東京都が2020年3月末まで申請を受け付けている蓄電池設置に関する補助金制度があります。こちらでは、「機器費の2分の1」、「1kWhあたり10万円」、「上限60万円」のうちもっとも安い金額条件が適用され補助を受けられます。蓄電池の購入費用はメーカーや大きさなどにより違いがありますが、最低でも機器費の2分の1は補助を受けて蓄電池を導入できることが想定できます。
各自治体では、ご家庭用の蓄電池設置に関する補助金制度も設けられています。しかし、おおむね業務用の蓄電池の設置で受けられる補助金のほうが家庭用よりも上限は高いと考えられます。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば日常業務での節電効率も上がりますし、そのうえ災害発生時にも蓄電池はさまざまな活用が可能です。そのため、企業における蓄電池の導入を積極的に検討する余地はありそうです。
蓄電池の種類
先にも少しご紹介しましたが、蓄電池にはいくつかの種類があります。
【蓄電池の種類1】鉛蓄電池
19世紀に発明された歴史の古い蓄電池で、コストが低く抑えられ寿命も長いことで現代でも数多く利用されています。現代においては、おもに自動車のバッテリーとして使用できる機会が多いはずです。
【蓄電池の種類2】ニッケル水素電池
急速充電が可能であるという大きなメリットを持つ、小型の蓄電池です。後でご紹介するリチウムイオン電池が普及するまでは小型蓄電池の主流で、現在も一部のデジタルカメラや音楽再生機器などに利用されています。
【蓄電池の種類3】NAS電池
大きな電力貯蔵施設や、再生可能エネルギー施設などで用いられることが今後見越されている蓄電池です。充電・放電の両方においてエネルギー効率を高められ、寿命も長いというメリットがありますが、300℃ほどまで加温しなければ稼働させられないというデメリットも。
【蓄電池の種類4】リチウムイオン電池
携帯電話・スマートフォンやモバイル機器の蓄電池として、幅広く利用されている蓄電池です。小型蓄電池のイメージが強いかもしれませんが、近年では大規模な施設へ導入するための大容量蓄電池も開発されています。長寿命である点が大きなメリットですが導入コストがまだ高めで、普及にともなう低価格化が期待されています。
ALSOKの蓄電池
ALSOKでご提供している蓄電池は、前の項目の最後でご紹介した「リチウムイオン電池」です。そのため、少量の充放電を繰り返すことで寿命が短くなる「メモリー効果」もなく、長期間使用できるメリットがあります。
またリチウムイオン電池の特徴を活かした小型・軽量タイプのため、通常時の保管にも大きな負担がありません。小さくて軽いけれど、万一の事態にはフルに活躍してくれることが期待できるでしょう。
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まとめ
今回は、災害時における電源の確保についてご説明しながら、災害時の停電対策として企業で蓄電池を導入し、活用するポイントをご紹介しました。
蓄電池を備えておくことで事業活動におけるBCPとしての備えが整備できるほか、災害時の地域の人々との共助やコミュニケーションの手段としても大きく役立つでしょう。