増加する太陽光発電施設などのケーブル盗難とは?金属盗への対策を紹介

太陽光発電施設
2024.09.26

近年、太陽光発電システムは持続可能なエネルギー源として注目されています。一方で、銅価格の上昇により太陽光発電施設内のケーブル盗難が相次いでおり、太陽光発電事業者に多大な影響を与えています。
また、銅線ケーブルだけでなく多くの金属が金属盗に狙われています。

本コラムでは増加するケーブル盗難の現状と金属盗への対策についてご紹介します。

目次

増加する金属盗

金属盗の認知・検挙件数
出典:警察庁「令和6年警察白書(p20)」

警察庁の「令和6年警察白書」では、令和5年の金属盗の認知件数は16,276件となっています。統計をとり始めた令和2年の認知件数は5,478件であり、令和2年から5年にかけて認知件数が3倍に急増していることがわかります。一方、令和5年の検挙件数は3,226件と令和4年の検挙件数を下回っている状況です。

金属盗増加の背景

金属盗が増加している背景には以下の理由が関係しているとされています。

・銅価格の上昇

1つ目に銅価格の上昇が挙げられます。
銅や銅合金の価格を決める指標となるのが「ロンドン金属取引所(LME)」です。このロンドン取引所が公開している銅相場が、国際的な銅価格の基準となっています。日本国内での流通価格については、JX金属がロンドン金属取引所で公開している銅相場を基準に公開しています。
ロンドン金属取引所(LME)銅価格の月次推移では、2022年7月に1トン7,544.81ドルでしたが、その後価格は上昇し、2024年5月には10,139.33ドルを記録しています。また、年次推移でも、2003年は1,779.14ドルであったのに対し、2023年は8,490.29ドルとなっており、20年間で約8倍に価格が上昇しています。

こうした銅価格の上昇が金属盗増加の要因の一つになっていると言われています。

出典:ロンドン金属取引所(LME)

・市場需要による換金のしやすさ

2つ目に、市場需要による換金のしやすさが挙げられます。銅やほかの金属は、電気機器やインフラ、建設などさまざまな分野で需要があります。特に銅はリサイクルが容易で、再利用しても品質が劣化しにくいため、金属リサイクル業者が積極的に買い取る傾向があります。
さらに、金属リサイクル業者やスクラップ業者は全国に多数存在しており、これらの業者に金属を持ち込むことで簡単に換金が可能です。

また、換金のしやすさは制度的な側面もあります。日本では、金属リサイクル業者やスクラップ業者が金属を買い取る際に、一定のルールが設けられています。具体的には、盗難防止の観点から、金属の売買においては身分証の提示や取引の記録を求める条例が存在します。ただし現実には、すべての業者がこれらのルールを厳格に守っているとは限らず、課題となっているのが現状です。実際に警察庁では、条例未整備の31の都府県の警察に対して、金属スクラップの母材の盗難防止条例を制定する必要性を検討するよう指示しています。

特に、現金取引が可能な業者では匿名での取引が可能なため、盗まれた金属でも追跡されにくく、換金しやすくなっています。警察では、金属リサイクル業者に対して、取り扱った金属類が盗難品や不正品と感じたら、買い取る前に警察へ通報するよう呼び掛けています。

銅価格の上昇によって増加するケーブル盗難

銅線

ここからはケーブル盗難の具体的な犯行事例についてみていきましょう。

外国人ケーブル窃盗団による犯行事例

カンボジア人の指示役がSNSを通じて国内の実行犯を募り、太陽光発電施設内に侵入し銅線ケーブルを盗んだ事例です。この犯行グループは不法残留者などで構成されています。
現場では見張り役と実行役にわかれて作業を行い、実行犯は工具を使用して太陽光発電施設に侵入し、太陽光発電施設に接続されている銅ケーブルを切断しました。窃取した銅線ケーブルは中国人の故買屋などに売却され、換金されていました。
また、覚醒剤などの違法薬物を使用した上で犯行に及んでいた事例も報告されています。

このように、太陽光発電施設から銅線ケーブルを盗む事件では、SNSを利用した犯行計画や不法残留者による犯行が特徴的です。

出典:警察庁「令和5年における組織犯罪の情勢」

なぜ太陽光発電施設が狙われるのか

太陽光発電施設は銅線ケーブルを多く使用しているうえに、郊外や山間部など人目につきにくい場所に設置されていることが多く、犯行グループに狙われやすいといえます。
そのほか、太陽光発電は夜間に発電を行わないため、感電のリスクが少ないことも狙われやすい要因の1つといえるでしょう。

ケーブル以外にも多くの金属が狙われている

太陽光発電施設を中心に多発する金属盗難ですが、狙われるのはケーブルだけではありません。金属類の取引価格高騰に伴い、ケーブル以外にも多くの金属が狙われています。
盗難被害の多い金属は次のものが該当します。

盗難被害の多い金属

  • 側溝の蓋などのグレーチング(格子状の蓋のこと)
  • 水道の蛇口
  • 金属板
  • 室外機・給湯器
  • マンホールの蓋

金属盗難を未然に防ぐために、防犯カメラやセンサーライトの設置、機械警備の導入、定期巡回の強化といった施設の防犯対策の強化を図ることをおすすめします。

ケーブル盗難への対策

太陽光発電施設のフェンスと警告ポスター

ここからはケーブル盗難への対策についてご紹介します。

使用していない銅線ケーブルは鍵のかかる場所に保管

まず、ケーブル盗難対策の大前提として、使用していない銅線ケーブルなどは屋外に置かず、鍵のかかる場所に保管するようにしましょう。

取引価格の低いアルミケーブルなどへの変更

銅より取引価格の低いアルミケーブルに変更することも1つの手段です。
アルミの価格は銅の1/4程度のため、アルミケーブルを導入することで、ケーブルが盗まれにくい環境を作ることにつながります。

ケーブルの埋設やコンクリートで固めるなど、露出させない対策

露出している配線は窃盗のリスクを高めるため、ケーブルを地中に埋設したり、配線等などをコンクリートなどで固めたりすることでケーブル周りを強化しましょう。ケーブルを露出させない、引き抜けない対策を行うことで盗難被害防止につながります。

フェンスや柵の設置

施設周辺に頑強なフェンスや柵を設置することも侵入を防ぐ有効な対策です。

警戒中の看板を設置

「警戒中」「防犯カメラ作動中」「定期巡回中」「設備セキュリティ警戒中」などと多言語でポスターを提示することで、日本語が読めない外国人に対して注意喚起することができます。
また、警察が定期的にパトロールしているなど、警察と連携していることを知らせることで犯行を諦めさせることにもつながるでしょう。

定期的な見回りを行う

ケーブルを盗もうと企てている人は下見を行い、ケーブルの設置場所などを確認することがあります。そのため、定期的な見回りを行い、下見の形跡や異常がないか確認するようにしましょう。

センサーライトの設置

侵入者は光や音を嫌います。センサーライトは人の動きや熱を感知する人感センサーが搭載されており、侵入者を感知すると自動で点灯します。侵入者の存在に気付くきっかけになるだけでなく、心理的なプレッシャーを与える効果があり、ケーブル盗難対策にも有効です。

防犯カメラの設置

施設内に防犯カメラを設置することで、犯罪の抑止効果や犯罪・不正行為を監視・記録することができます。万が一、犯罪被害に遭ってしまった場合も、防犯カメラの録画映像が証拠となり、早期解決にもつながります。

機械警備の導入

機械警備の導入もケーブル盗難対策につながります。機械警備であれば、24時間365日、夜間など見通しの悪い状況でも太陽光発電設備を監視します。異常を発見した場合は、ガードマンが現地に急行、状況に応じて関係機関と連携します。
警備員を配置して行う有人警備に置き換えることで、管理の手間や人件費などのコストを抑えることができ、効率的にセキュリティ対策を行うことが可能です。

ケーブル盗難対策はALSOKにおまかせ

相次ぐケーブル盗難は、銅価格の高騰により換金目的で金属を狙った外国人グループなどが犯行に及ぶケースが多いです。防犯カメラの設置や機械警備の導入、見回りの定期巡回など施設のセキュリティ強化を行う必要があります。十分な対策を行い、盗難を諦めさせる環境と被害を最小限に抑える体制をつくりましょう。

ALSOKではケーブル盗難対策に活用できる防犯カメラやセキュリティサービスをご用意しています。

ALSOKの防犯カメラは設置・メンテナンス・運用までトータルサポート

ALSOKの防犯カメラは、夜間や逆光でも高画質な映像を記録できるもの、遠隔地から現地の様子を確認できるものなど、施設に合わせて選択することができます。設置から保守・メンテンナンス・運用までトータルサポートを行っていますので、安心して防犯カメラをお使いいただけます。

また、オンラインセキュリティシステム「ALSOK-G7」と組み合わせることで、異常を検知した瞬間から現場のライブ映像を確認することができ、迅速かつ適切な対応が可能です。既存の防犯カメラや監視カメラ、各種センサーと接続することもでき、火災監視にも対応しています。夜間や休日など無人の際には、センサーカメラが異常を感知した瞬間に現場のライブ映像と音声が自動的にガードセンターへ通報され、ガードマンが現地に急行し、状況に応じて関係機関と連携します。

人物検出に特化したAIカメラで盗難予防

ALSOKでは、クラウド上でAI解析・検知が可能なAIカメラもご提供しています。高精度な人物検出が可能で、映像は最長180日間クラウドに保存できるため、犯人の特定や再発防止に役立ちます。
また、敷地内の侵入やフェンス越えを検知し、管理者へアラート通知が行われるため、被害発生前に現場に向かい対応することも可能です。

3Dレーザーレーダーセンサーで侵入検知

従来の監視カメラでは、光や夜間、天候の影響を受けて検知能力が低下してしまうという課題がありました。3Dレーザーレーダーセンサーは、物体の3次元画像を取得することで立体的な監視ができ、可視光に頼らない高精度の検知が可能です。車のヘッドライトや太陽光の影響を低減できるため、屋外警備のシーンでも活躍します。
また、人物なら30m、車両なら100m先まで検知が可能なため、太陽光発電施設といった広域なエリアでの不審車両の進入などを効率よく監視でき、ケーブル・金属盗難の対策にも役立ちます。ALSOKの機械警備と組み合わせることで、リアルタイムで異常を検知し、ALSOKの監視員が侵入者に対して音声で威嚇することもできます。

広大な敷地を持つ施設の巡回警備もおまかせ

ALSOKでは、訓練を積んだ警備員が太陽光発電施設などの見回り巡回を行い、不審者の早期発見・被害拡大防止に努めます。ケーブル盗難が多発する地域では機械警備と合わせて巡回警備をご利用いただくことで盗難対策の強化と同時に業務効率化も図ることができます。

ALSOKの「ネットdeガードマン」は、依頼したい警備の内容、ご依頼場所、日時などの条件を入力するだけでWeb上で簡単にお見積りができ、お急ぎの方にも安心してご利用いただけます。ぜひ、ALSOKのネットdeガードマンをご活用ください。

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