建設現場で想定される事故・リスクと必要な安全対策とは
建設現場では高所作業や重機の使用機会が多い分、万全な安全管理のもとに作業を実施しています。そのような状況でも、事故そのものを完全になくすことはまだできていないのが実情です。
この記事では、建設現場で起こり得る事故のリスクについてご説明するとともに、事故の発生要因などを鑑みた事故防止のための安全対策についてご紹介します。
目次
建設業における事故発生状況
以下は厚生労働省による、建設現場における死傷事故・死亡事故の発生状況をグラフにしたものです。
死傷災害の全体数は増減を繰り返しながらほぼ横ばいを続けており、建設現場での事故がなかなか減らない状況であることが分かります。
死傷災害の型別にある「転倒」は、大事に至らない事故のように見えます。しかし転倒によって毎年1,500人以上もの作業者が負傷しており、転ぶ程度と侮ることなく事故減少に努める必要性を意識させられます。
また死亡災害は2022年より減っておりますが、事故の型別によっては増減を繰り返しているものがあります。
想定されるリスク・事故例
建設現場で起こり得る事故の例には、さまざまな要因によるものがあります。ここでは、建設現場において想定される事故の例やリスクについてご紹介します。
墜落・転落
高所作業の機会が多い建設現場では、転落や墜落などの落下事故のリスクが非常に高くなっています。現に、建設業での死傷事故の原因としてもっとも大きなものが、高所からの落下であるとされています。
実際に発生した事故では、トラックの荷台上で積み込み作業を行っている際に荷崩れによって作業員が落下し、負傷した事例などが挙げられます。足場の上で荷物の受け渡し時にバランスを崩し、落下して怪我をした例もあります。
崩壊・倒壊
埋設物の掘削時における溝や法面などの崩壊、あるいは工事中の建造物の倒壊などに作業員が巻き込まれる事故も想定されます。
民家の解体作業中に突然作業中の壁面が崩壊し、負傷者を出した事例があります。また、狭小地でブロックを積む作業を行っていた作業員が、ブロックの倒壊に巻き込まれた事故の例もあります。
交通事故(道路)
建設機器や建材などを車で輸送する際に発生する道路交通事故も、建設工事に際して想定される事故の1つです。道路やその付近で建設作業をしていた作業員が、交通事故に巻き込まれる可能性もあります。
実際に、橋梁改良工事の現場で道路を通行中の自動車にはねられるケースや、作業に従事する作業員を送迎中の自動車が事故を起こすケースなどの事例があります。
激突され
大きく重い機械や建材を吊り上げたり、移動させたりする機会の多い建設現場では、それらの機械や建材が作業員に激突することで生じる事故の可能性もあります。
建設現場で木の伐採を行っていた際に、伐採する方向を誤ったため木に激突される事例や、大型建設機器の稼働枠内で作業を行っていた作業員が、建設機器の稼働部に激突された事例などがあります。
飛来・落下
建材や機器・道具類の落下や飛来による事故も想定されます。建設機器で吊り上げて移動させていた建材が落下し、それに作業員が接触したことによる負傷の事例があります。また、建設現場で足場を組んで作業していた際、上の階層での作業に用いる建材を誤って落下させ、下層での作業員が怪我をした事例も報告されています。
挟まれ・巻き込まれ
機器や自動車での作業時に起こる挟まれや巻き込まれも、建設現場で頻発する事故の1つです。ドリル作業中に指が巻き込まれて刃で怪我をしたケースや、現場での自動車作業におけるバック時、後方不注意で別の作業員が壁と自動車に挟まれ怪我をした例などがあります。
事故が発生する要因とは
建設現場で事故が発生してしまうことには、いくつかの要因があります。
作業員の意識的要因
作業員の注意力・集中力の低下によるものや、事前の点検を確実に行わなかったなど、各作業員の意識面が事故を誘発してしまうケースです。
作業現場の環境要因
落下の危険がある高所の作業場に手すりを設置していなかったり、足場が確実に組み立てられていなかったなど、作業環境そのものが現場の安全を損ねる状況であったケースです。
管理的要因
作業員の体調管理がきちんと行われていないケースや、人手が足りていない状況で各作業員に無理な作業をさせていたなどのケースです。激務による疲労が蓄積し、高所作業中に何らかの理由で落下事故が発生した事例もあり、人手不足が指摘されている昨今においては看過できない要因の1つと言えます。
機器・道具的要因
機械や道具の欠陥や不備、劣化などによって事故が誘発されるケースです。機械や道具の標準化が行われていないことや、適切に点検・整備が行われていないこともこれに該当します。
事故発生率の高い時期
建設現場で起こる事故は、時期によって発生率が高くなる場合があります。例えば、暑さがピークに達する8月は熱中症になる人が多く、事故発生率も高くなります。また寒暖差によって作業員が体調を崩しやすい冬季期間中も事故発生率が上がります。
事故が起こる前にやるべきリスク対策
人命を最優先しながら質の高い作業をスケジュール通り遂行するためにも、事故の発生はなんとしても回避しなければなりません。ここでは、事故を未然に防ぐために行うべき建設現場のリスク対策についてご紹介します。
作業員の安全意識を高める
作業員の安全意識が低いと事故が発生するリスクが高まります。社内研修や外部研修などを活用し、作業員の安全に対する意識を高める取り組みが重要です。すべての作業員が、いつも事故のリスクと隣り合わせであることを強く意識し、安全第一であることを念頭に置いて作業を行える環境を作っていきましょう。
リスクアセスメントを導入する
リスクアセスメントとは、職場のリスク要因を見つけ出してそれを取り除いたり、低減したりするための取り組みを指す言葉です。具体的には、潜在的なリスクの洗い出しを行い、リスクの程度を見積もって対策を検討します。対策がまとまり次第、それを現場で実行する手順となります。
余裕を持った人員の配置・管理
人員不足が要因と考えられる事故の事例も、数多く報告されています。特に、建設機器や車両を用いて作業を行う際、誘導員の不足による事故の発生も問題視されています。作業員の管理体制を整えるとともに、余裕を持った人員の確保と配置を徹底することが必要です。
リスク発生後の対応・影響
事故は未然に防ぐべきであることが大原則ですが、万一建設現場で事故が発生してしまった際には、迅速かつ適切に対応する必要があります。ここでは、建設現場でリスクが発生した際の対処と、リスクによって想定される影響についてご紹介します。
もし事故が起こったら
建設現場で事故が発生してしまったら、以下のように順を追って適切に対応しなければなりません。
1.救命活動および被害拡大と二次被害発生の防止措置
まず事故発生場所への立ち入りを禁じ、現場付近の作業員を退避させます。稼働している機械があれば停止させましょう。この対応で被害拡大を防ぐと共に、二次被害を食い止めます。
同時に現場の状況を把握し、負傷者がいれば救助を行い救急要請します。この救助活動においても、安全な場所で行わなければなりません。並行して現場責任者や上司へ「第一報」を正確に報告します。
救急車を待っている間にも、救命処置と応急手当をします。特に負傷者に意識がない場合には、人命を最優先に行動しましょう。
なお、こういった事態に対応できるよう、あらかじめ救急措置やAED(自動体外式除細動器)の設置場所・使い方を習得しておく必要があります。
救急車が到着したあとは、負傷者に付添人を必ず同行させ、会社へ経過報告させるようにしましょう。
2.事故現場の保全と調査への協力および必要書類の準備
事故現場は片付けず、そのままにしておく必要があります。災害調査時の重要な証拠物件となるため、立入禁止とし調査を受けられる状況にしておくことが必要です。
調査が始まると、警察や労働基準監督署の聞き取りに協力する必要があります。この際さまざまな書類を提出しなければなりませんので、それらも準備しましょう。
【災害調査時に必要な書類(新規で作成するもの)】
- 災害速報
- 災害までの経過を時系列順に記録した書類
- 現場写真とそれを説明するための文書
- 被災者および会社名と会社概要、職長や作業責任者が確認できる書類
- 事故現場の見取図
リスク発生後に課されるペナルティや影響
万一事故が発生してしまうと、関係者への損害賠償だけでなく、企業活動そのものに重大な影響が及ぶこともあり得ます。
保険会社との契約料金が値上がりする、再発防止のための費用がかさむ等の企業自体への負担だけにとどまらず、事業の発注者から指名停止措置を受けることや現場監督に過失責任が問われることなども予測されます。
そして何よりも、企業そのものの信用を著しく低下させてしまい顧客が離れていくことにもなり得ます。リスクの発生はなんとしても未然に防ぐという意思のもとに、安全管理を徹底するようにしましょう。
建設現場で想定される事故以外のリスク
建設現場における事故のリスクについてご説明しましたが、建設現場においては事故の他にもさまざまなリスクが想定されます。事故以外のリスクの可能性についても、見ていきましょう。
窃盗・盗難
建設現場では、多くの作業員が立ち入って作業を行います。また、屋外作業では関係者以外の者が容易に立ち入れる状況になっているケースもあるでしょう。そのような状況下では、持ち物や資材が盗難に遭う可能性ももちろんあります。
情報流出
建設業においてもIT化が進んでおり、情報機器を用いて連絡や意思疎通しながら作業を進めている現場も少なくありません。情報セキュリティリスクへの対応が不十分である場合は、重要な情報の流出や漏洩のリスクも想定されます。
自然災害
作業時の事故ではなく、作業中に発生した地震や台風、噴火などの自然災害にともなう被害を受けるリスクもあります。
ハラスメント
内部不正行為の1つとして作業時の指導や管理、もしくは作業員同士の人間関係にともなうハラスメント(嫌がらせ)が発生する可能性も想定されます。
ALSOKが提供するサービス
ALSOKでは、建設現場のリスク発生を未然に防ぐためにさまざまなサービスをご提供しています。
防犯カメラ・監視カメラ
防犯カメラや監視カメラは常設するもので、建設現場には不向きであると考えている方も多いでしょう。しかし不特定多数が出入するからこそ建設現場では防犯カメラや監視カメラの設置が必要です。ALSOKの監視カメラには録画機器などを必要としない「短期利用型クラウド監視カメラ」もご用意しています。期間が決まっている建設現場でも、クラウドへの映像データ保管により柔軟に設置することができます。
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常駐警備
建設現場では敷地内への立ち入りの他に、車両の出入時の安全管理も求められます。現場内の作業員、一般通行人が事故に遭わないようにしないといけません。ALSOKでは、24時間365日施設を警備する常駐警備だけでなく、期間が決まっている建設現場向きの短期常駐警備も手配可能です。
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出入管理
多くの作業員が出入する建設現場では、一人ひとりの出入管理が煩雑になります。また、関係ない部外者の立ち入りを防ぐためにも出入管理は有効な手段です。顔認証を用いる事でなりすましを防止し、ハンズフリーで出入することができます。さらに、検温機能を備えたシステムを取り入れることで、認証と検温を同時に行う事ができ効率的な出入管理を実現します。
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災害対策
建設作業中に災害が起こると、現場にいる作業員が被災し帰宅困難者になることも考えられます。万一の災害に備えるための備蓄品や、感染症対策用品などもご提供しています。
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これらの他、車番認証など建設現場のリスク対策にも役立つさまざまなサービスをご提供しています。
まとめ
建設現場では、安全管理の徹底が進むなかでも未だに多くの労災事故が発生していると言われています。企業側による安全管理の徹底に加え、労働安全衛生法に基づく作業環境の整備や、安全への意識を高め人為ミスを未然に防ぐための作業員への研修なども怠りなく実施しましょう。作業員の注意力や判断力の低下を防ぐため、過重労働を避け適正に人員を配置・管理することも重要です。
事故を防止しながらそれ以外のさまざまなリスクにも備え、すべての作業員が安全に働ける現場を実現しましょう。