カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?事例や対応策について解説

カスタマーハラスメント
2025.01.24

近年、社会的に問題となっていることの一つに、カスタマーハラスメント(カスハラ)があります。厚生労働省は令和6年12月に行われた審議会において、カスタマーハラスメントから労働者を守るための対策をすべての企業に義務づける方針を定めました。企業にとって、カスタマーハラスメント対策の強化は急務となっています。実際にカスタマーハラスメントが起こった際には、どのような対応が適切なのでしょうか。

この記事では、カスタマーハラスメントの概要や具体的な事例、企業にとってのリスクや適切な対応策についてご紹介します。

目次

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

クレーム対応

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先などから受けるクレーム・言動のうち、不当なクレームや過度な要求のことです。

カスハラにあたる具体的な行動は業界や企業によって異なるため、明確な定義はありませんが、厚生労働省では以下に該当するものをカスハラとしています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

引用:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

クレームとカスタマーハラスメントの違い

クレームには商品やサービスの改善を目的とした正当な指摘がある一方、度を超えた要求や理不尽な主張などの悪質なクレームもあります。両者の線引きは曖昧ですが、このような悪質なクレームや嫌がらせ行為などが「カスタマーハラスメント」に該当すると考えられます。

カスタマーハラスメントの発生状況

「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「過去3年間に相談件数が増加している」と回答した割合が最も多かったものが「顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)」でした。また、「過去3年間に相談件数が増加している」と回答した割合が「過去3年間に相談件数は減少している」を上回り、ハラスメントの中でもカスハラが増加傾向にあることがわかります。

過去3年間に相談があった企業における相談件数の推移
引用:令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)

悪質なクレームは昔からありましたが、それらがハラスメントの一種として扱われるようになったこともカスタマーハラスメント増加の一因と考えられます。また、近年カスハラの被害が増えている原因の一つに「SNSの普及」も挙げられます。SNSは匿名性が高く情報が拡散しやすいため、顧客側の発言力が高まり、カスハラが生まれやすい状況につながっています。

カスタマーハラスメントの事例と判断基準

カスタマーハラスメントかどうかを判断するには、厚生労働省が示す以下の基準に照らし合わせて考える必要があります。

1. 顧客等の要求の内容が妥当性を欠いていないか

要求や主張の内容が事実なのか、因果関係はあるか、自社に瑕疵はないかなどを確認したうえで、妥当性があるかを判断します。

【事例】

  • 商品やサービスに問題がないにも関わらず、クレームを執拗に繰り返す
  • 要求の内容が自社の商品やサービスの内容と関係がない など

2.要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当でないか

顧客等の要求の内容が妥当かどうか確認するとともに、その要求を実現するための方法が一般的に考えて相当がどうかを確認します。
また、要求内容に妥当性がある場合であっても、暴力的・威圧的・継続的・拘束的・差別的・性的な言動などによって、要求を実現しようとしている場合は社会通念上不相当であるといえます。

【事例】

  • 長時間に及ぶクレーム
  • 従業員に対して個人的な侮辱や罵倒を行う
  • 店舗やオフィスに押しかけ、脅しや暴力などの身体的危険行為に及ぶ
  • SNSなどのインターネット上で従業員の氏名を公開する、名誉棄損や誹謗中傷にあたる書き込みを行う
  • 従業員へのつきまといやわいせつ行為、盗撮を行う など

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

なお、カスタマーハラスメントの判断基準は業界や企業によって異なるため、業界や企業ごとにあらかじめ判断基準を明確にしたうえで、企業方針の明示、対処ルールのマニュアル化、従業員に周知しておくことが重要です。

カスタマーハラスメントによる企業へのリスク

落ち込む従業員

カスタマーハラスメントを受けることにより、企業には以下のようなリスクが生じます。

従業員の業務効率の低下

長時間の拘束や繰り返しの要求など、継続的なハラスメント行為がある場合、対応する従業員の業務時間が削られてしまいます。現場での対応だけではなく、電話応対や顧客への謝罪、弁護士への相談など、顧客対応に要する時間が増え、残業時間の増加や業務効率の低下などが起こりえます。また、他の顧客に十分なサービスを提供できなくなることも考えられるでしょう。

休職者・離職者の増加

カスハラにより、従業員が心身ともに大きなストレスを受けてしまうケースもあります。睡眠不足・頭痛・精神疾患などの健康不良に陥り、休職・離職に追い込まれることも少なくありません。また、暴力的な発言や性的な言動などを繰り返し受けることで、職場対応に恐怖感を感じるようになり、配置転換や休職、退職を希望する従業員もいるでしょう。

企業イメージの低下

カスハラの現場に居合わせた他の顧客に十分なサービスを提供できなくなる、来店する他の顧客の利用環境や雰囲気の悪化などで企業の評判が下がり、来客数の減少や顧客取引への悪影響、業績悪化などの原因になりえます。
また、根拠のない書き込みや迷惑動画がインターネット上で拡散されてしまい、社会的なイメージダウンにつながるおそれもあります。

従業員への安全配慮義務違反のリスク

企業がカスタマーハラスメント被害を放置した場合は、労働契約法第5条の「使用者(企業)が従業員の安全に配慮する義務」に違反する可能性があります。実際に、カスハラを受けた従業員に対して適切に対応しなかったとして、企業側が損害賠償責任を問われたケースもあります。

企業が行うべきカスタマーハラスメント対策

ここでは、企業が行うべき具体的なカスハラ対策の例をご紹介します。

ハラスメントに対する企業方針の明示

ハラスメントに対する基本方針やポリシーなど、企業方針を明示することが重要です。企業方針には、ハラスメントとなる具体的な事例や、従業員の人権を尊重すること、ハラスメント発生時には毅然とした対応をとることなどを盛り込みましょう。企業方針の明示は、顧客にとってはハラスメントの抑止力になり、従業員にとっては安心感のある環境づくりにつながります。

対処マニュアルの作成と従業員への教育

迷惑行為や不当な要求への対処ルール、報告フローをマニュアル化し、従業員に周知します。マニュアルに盛り込む要素の例は、以下のとおりです。

  • 過去にあったカスハラの事例
  • 具体的な対処の流れ(本社・本部への報告・相談を含む)
  • カスハラに関する情報の記録方法(会話・通話を録音するなど)
  • 適切な対応例・不適切な対応例
  • 外部機関(弁護士・警察など)との連携フロー など

マニュアルの作成後は、定期的にアップデートして社内で共有する機会を設けましょう。

社内にハラスメントの相談窓口を設ける

ハラスメントを受けた従業員用の相談窓口を社内に設けることで、被害を受けたあとだけでなくハラスメント発生のおそれがある場合の迅速かつ適切な対処、被害情報の一元管理が可能になります。また、相談窓口の有無にかかわらず、人事部門や法務部門とも連携がとれる体制を構築しましょう。従業員の心身の状態にも配慮し、臨床心理士などの協力を得ながら対応することも大切です。

弁護士や警察などの外部機関に相談する

法的処置を検討している場合は、弁護士や警察への相談も必要です。相談する際に証拠として利用できるので、被害状況を整理し、カスハラの証拠(カメラ映像・音声録音など)を記録しておくようにしましょう。

カスタマーハラスメントから従業員と企業を守るALSOKのサービス

ALSOKでは、企業のカスタマーハラスメント対策に役立つサービスをご提供しております。

防犯カメラ・監視カメラサービス

ALSOKの防犯カメラ・監視カメラサービスは、施設やお客様のご要望に合わせて多種多様なラインナップから最適なプランをご提案します。昼夜を問わず高画質な映像を記録でき、シンプルなオペレーションで誰でも簡単に操作、離れた場所からでも映像を確認することができます。工事費込みのお得なパッケージプランもご用意しています。オプションサービスで、ALOSKのデータセンターで録画映像を保管するクラウドサービスも利用可能です。

機械警備

カスタマーハラスメント対策には、ALSOKの機械警備・オンラインセキュリティ「ALSOK-G7」の導入をおすすめします。施設内への侵入を検知した場合や非常押しボタンが押された場合にALSOKが駆けつけ一時対処するだけでなく、施設に設置したカメラのリアルタイム画像を、昼夜問わずパソコンやスマートフォンから確認可能です。施設のセキュリティ管理、スタッフによる不正防止にも役立ちます。また、通話機能を使い、離れた場所などから施設内の確認や指示を出すことも可能です。

まもるっく

特定の従業員へのつきまといやストーカーなどのトラブル発生時に役立つのが、ALSOKの見守りサービス「まもるっく」です。見守り・駆けつけ・通話ができるGPS端末で、ストラップを引くだけで防犯ブザーが鳴動するとともに、すぐにALSOKと電話がつながり、緊急時には駆けつけ対応も行います。また、状況に応じて110番・119番通報も行うなど、外部機関との連携もスムーズです。

ALSOKの関連商品

まとめ

カスタマーハラスメント(カスハラ)を受けると、従業員の業務効率の低下や休職・離職者の増加、企業のイメージダウンや業績悪化などにつながるおそれがあります。
カスハラに適切に対応するには、ハラスメントに対する企業方針を明示する、マニュアルを策定して従業員に周知する、相談窓口の設置や外部機関と連携できるように体制を構築するなどの対策が重要です。また、いざという時に適切に対処するために、防犯カメラやセキュリティサービスの導入もおすすめします。
カスタマーハラスメント対策にお悩みの場合は、お気軽にALSOKにご相談ください。