災害や犯罪など生活の安全を脅かすリスクに備えるためには
地震や台風、集中豪雨による水害など、わが国においては毎年のように大災害が発生しています。そのような災害が起こると、残念ではありますがそれに便乗する形で被災地における犯罪も発生しやすくなる傾向があります。
今回は、災害が発生した際のセキュリティの低下や犯罪発生の事例や状況、災害時に効果があった防犯対策や災害に備えて検討したい防犯対策についてご紹介します。
目次
災害時に低下するセキュリティ
災害が起こると、被災地での犯罪も増加することがあります。災害によって被災地におけるセキュリティが低下し、犯罪が発生しやすくなってしまう理由には、以下のようなものがあります。
無人になる家や店舗が増加する
避難や建物被害などで人が出払ってしまい、完全に無人の状態となる建物が増えます。被害が大きくなれば施錠などの戸締まりも十分にできないまま無人となる建物も多くなるため、留守中の建物を狙った窃盗犯罪のターゲットになることがあります。
道路状況により緊急車両の到達が遅れる
災害が発生すると、道路が寸断されるなど交通に関する被害が発生することも少なくありません。この被害によって緊急車両の通行にも支障が出る場合があり、通報後に緊急車両が出動しても現場へいち早く着くことが困難になりがちです。この事情を把握した不審者が、逃走しやすいと判断して被災地を狙うケースもあります。
人命救助に優先して人員が投入される
災害発生時は、いかなる場合であっても被害に巻き込まれた被災者を救助することが最優先されます。人命救助に多くの人員を投入することとなるため、防犯面が手薄になっていると判断して被災地を狙う不審者も増加します。
近年起きた自然災害と犯罪発生状況
2015年から2019年に発生した大規模災害において、被災地で発生した犯罪被害には具体的にどのようなものが多かったのでしょうか。
リサーチデータを基に、ここ5年ほどにおける自然災害の発生にともなって発生した犯罪の状況についてご紹介します。
2016年熊本地震
まず、2016年の熊本地震発生以前と以降における、熊本県での空き巣の発生状況をグラフで見てみましょう。
熊本地震の発生は2016年4月ですが、上記のグラフによると2016年4月~6月の空き巣発生件数が増加していることが一目瞭然です。前年の2015年のデータでは4月の空き巣認知件数が少ないにも関わらず、地震発生月の2016年4月は前年の3倍近くの空き巣が確認されています。
2015年関東・東北豪雨(鬼怒川決壊)
北関東を中心に大規模な水害を引き起こした2015年の関東・東北豪雨の被災地においても、災害発生後に空き巣や自転車盗などの窃盗が増加しました。
2018年西日本豪雨
山陽地方や四国地方に大きな被害を及ぼした2018年の西日本豪雨ですが、このケースでは幸い目立った犯罪数の増加は確認されていません。
2019年台風15号による強風被害
千葉県の房総半島を中心に強風による被害をもたらした2019年の台風15号災害においても、幸い被災地での犯罪の増加はありませんでした。
2019年台風19号による水害
多くの河川が氾濫するなど、広範囲で大水害を引き起こした2019年の台風19号災害。千曲川の堤防決壊で多数の建物が浸水被害を受けた長野県長野市では、長期にわたって休業を余儀なくされる店舗や企業が相次ぎました。そのため被災後には、事務所荒らしや出店荒らし、空き巣など留守中の建物を狙った窃盗が増加しています。
また、同じく台風19号で大規模な水害に見舞われた宮城県丸森町においても、被災後は犯罪の発生総数や窃盗犯の数が前年よりも増加したというデータが得られています。
被災地で発生する犯罪の傾向
前の項目で、災害が発生すると被災地における窃盗被害が増えるケースが多いことが分かりました。ここでは窃盗に限らず、被災地で発生しがちなさまざまな犯罪の種類や傾向などについてもご紹介します。
空き巣
留守宅を狙う空き巣は「火事場泥棒」という言葉があるように、災害発生時に起こりやすいとされる代表的な犯罪です。建物が留守になっている時間が長ければ犯罪に遭うリスクも高くなるため、被災地においても避難生活が長くなるほど空き巣リスクが増加します。
事務所荒らしや出店荒らし(店舗の窃盗)
被災によって休業中の企業や店舗を狙う「事務所荒らし」や「出店荒らし」も、空き巣と同様に災害が発生すると増えがちな犯罪です。
路面の戸建て店舗などよりも、無人になったオフィスやビルで多発する傾向にあります。
自転車・バイク・自動車の盗難
被災によって放置された自転車やバイク、自動車の盗難も災害時に起こりやすい犯罪です。
避難所で発生する犯罪
被災した現場だけでなく、沢山の被災者がいる避難所でも犯罪が発生することがあります。セキュリティ面が脆弱になりがちな避難所では物品の盗難や置き引き、性犯罪などが発生しやすいとされています。
災害に便乗した特殊な犯罪
直接的な被害が落ち着いたあとに発生する、特殊な犯罪も災害時には付き物です。復旧や復興が視野に入ってきた時期に、被災家屋を訪問するリフォーム詐欺が代表的な例です。また義援金詐欺などの事例も多数あり、災害に便乗した犯罪の発生は復興段階にまで及ぶことがあります。
被災地で効果を発揮した防犯対策
被災地では留守の建物が増え、セキュリティ面が弱くなりがちです。しかし、地域の人たちが防犯対策に取り組み、効果があった事例も数多くあります。実際に効果を発揮した被災地での防犯対策について、以下にご紹介します。
夜回り(巡回)
当番を決め、犯罪が起こりやすい夜間に街や住宅街を見回りすることにより犯罪発生を防止する方法です。
立ち番・見張り
こちらも街や住宅街に見張り役の人を立たせ、人の目があることを意識させて犯罪発生を抑止に導く「人による防犯対策」の一環です。
夜回りや見張りといった「人の目による防犯対策」は、もっとも原始的ともいえる防犯対策です。しかし、人の目があるというだけで犯罪行為を思いとどまる人は多くいます。たとえば、店舗で店員さんが来店客の目を見て挨拶すると万引きが減るといわれています。そのように、人は誰かに顔を見られることで不正行為に及びにくくなる心理的傾向があるとされているのです。夜回りや見張りなどの対策が功を奏したのも、そのような人の心理が要因となっていると考えられます。
しかし、急な災害発生時に地域の人に夜回りや見張りを頼むことは難しい場合も予測できます。ALSOKでは警備を依頼した経験がない方でも、ガードマンの派遣を簡単に依頼できるインターネットサービス「ネットdeガードマン」を提供しています。不審者の見張りや見回りなどもガードマンに依頼可能ですから、万一の際にこのサービスをご存じであれば心強いはずです。
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またALSOKでは、警備会社ならではのノウハウを活かした災害対策サービスも提供しています。万一の停電に備える「可搬型蓄電システム」や、「災害時安否確認システム」など緊急時のリスク対策に必須のサービスはもちろん揃っています。またお客様の建物において災害が起こった場合の具体的な対処法を図上で訓練できる「災害図上訓練」などユニークなものも。
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その他、企業が行うべき防災対策についてもまとめていますので、以下の記事もぜひご覧ください。
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まとめ
今回は、大規模災害が発生した際に被災地で起こりやすい犯罪の特徴や傾向、被災地で実際に効果があった防犯対策などをご紹介しました。
災害はいつ発生するか予測が難しいだけでなく、近年は日本国内に住んでいれば何らかの災害に遭遇するリスクが常にともなうともいえる状況にあります。もちろん災害の発生時に人命を守ることが最優先ですが、災害後に発生する可能性がある犯罪などのリスクについても想定し、備えておく必要があるでしょう。