ドローン免許制度(国家資格)の開始はいつから?免許制度のポイントや試験内容を解説
近年技術の発展がめざましいドローン(無人航空機)は、空撮や農業の肥料散布など、さまざまな場面で活用されるようになっています。しかし、ドローンの飛行にともなう接触事故や墜落事故なども報告されており、安全性を保ちながらドローンを使用できるように法整備が年々進められています。
そんな中、2022年12月に開始されたのがドローンの免許制度(国家資格)です。
この記事では、免許制度によって従来のルールと何が変わったのか、具体的なポイントについて解説します。併せて、試験内容についてもご説明致しますので、免許取得を考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
【2022年12月5日開始】ドローンの免許制度(国家資格)
航空法の改正にともない、2022年12月5日からドローンの免許制度「無人航空機操縦者技能証明等」が開始されました。
この免許制度は、ドローン(無人航空機)を操縦する際に必要な知識・能力を証明するものであり、所有していなくても操縦することは可能ですが、飛行形態によっては、免許を取得していないとドローンを操縦することができなくなりました。
具体的なポイントは以下で詳しく説明しますが、ここではまずドローンの免許制度が開始されることになった背景をご紹介します。
ドローン免許制度の背景
ドローン免許制度が開始された背景を、次の3点に分けて見ていきましょう。
- 社会課題をドローン活用で解決
- 飛行申請に関わる作業の簡略化
- 物流業界における「2024年問題」の改善
社会課題をドローン活用で解決
労働人口の減少や、困難になっている地方のインフラ基盤の維持といった社会課題をドローンの積極活用によって解決するという構想に基づいています。ドローンは、建設現場の監視や測量、農業といったさまざまな分野での活用が期待されています。しかし、ドローンの運行には一定のリスクを伴います。そのため、ドローンの運航に必要な技能や知識を身に着けた上で、安全に運航することができる操縦者を育成するドローン免許制度を開始することにより、社会問題を解決しようという目的があります。
飛行申請に関わる作業の簡略化
ドローン飛行に関する申請は年々増加しており、2021年は7万を超える件数となりました。社会インフラとしてドローン活用を推進するためには、飛行申請の手続きをスピーディーに行う必要があり、免許制度個別審査の一部が省略もしくは簡略化されました。
物流業界における「2024年問題」の改善
物流業界の2024年問題とは、働き方改革関連法により、物流業界において時間外労働時間に上限が設けられることをきっかけに生じる諸問題のことです。物流業界の労働環境は、若手の入職者不足とドライバーの高齢化、長時間労働の慢性化という課題を抱えています。
この問題を解決するため、ドローンを活用した荷物の配送が注目されています。ドローン免許制度は、ドローンを活用した荷物の配送を促進することで、物流業界の2024年問題を改善しようとしています。
ドローン免許制度のポイント4つ
ドローン免許制度のポイントを、具体的に4つご説明します。
レベル4飛行が可能となる
ドローンの飛行は、飛行形態によって以下4つのレベルに分けられています。
- レベル1:目視内での手動操縦飛行
- レベル2:目視内での自動/自律飛行
- レベル3:無人地帯*における(補助者なし)目視外飛行
- レベル4:有人地帯における(補助者なし)目視外飛行
*…人(住民や歩行者等)がいない地帯のこと。
従来の航空法で飛行が許されていたのは、レベル3まででした。しかし、今回始まったドローン免許制度により、一等資格(詳しくは後述)の所持者はレベル4飛行が可能になります。なお、レベル4に該当する飛行例は、多くの人がいるイベント会場上空での飛行などが挙げられます。
一等資格と二等資格に分けられる
ドローン免許制度の国家資格は、一等資格・二等資格に分けられます。それぞれの違いは、飛行形態のレベル別に、1.飛行可能なのか 2.国土交通省への飛行申請が必要なのか です。
一等資格
一等資格の大きな特徴は、有人地帯において補助者なしでの目視外飛行が可能になることです。一等資格とそれ以外の資格との大きな違いは、レベル4飛行が可能かどうかといえます。
二等資格
レベル4以外(レベル1~3)に対応する資格で、保有していることで無人地帯での飛行において制約が緩和されます。
一等資格と二等資格の違いを、民間資格と併せて下表にまとめました。
一等資格 | 二等資格 | 民間資格 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
飛行 | 国土交通省への申請 | 飛行 | 国土交通省への申請 | 飛行 | 国土交通省への申請 | |
レベル1 | ○ | 不要※1 | ○ | 不要※1 | ○ | 必要 |
レベル2 | ○ | 不要※1 | ○ | 不要※1 | ○ | 必要 |
レベル3 | ○ | 不要※1 | ○ | 不要※1 | ○ | 必要 |
レベル4 | ○ | 必要※2 | × | × | × | × |
※1 特定飛行のうち、人口集中地区の上空・夜間・目視外・人または物件から30mの距離を取らない飛行の場合のみ、かつ第二種認証機体が必要
特定飛行とは、「航空法において規制の対象となる空域における飛行または規制の対象となる方法による飛行(国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則」より引用)のことを指し、以下の空域と飛行方法が該当します。
<飛行空域>
- 150m以上の上空
- 緊急用務空域
- 人口集中地区の上空
- 空港等の周辺
<飛行方法>
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人または物件から30m未満での飛行
- 催し場所上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
※2 第一種認証機体が必要(後述参照)
機体認証制度とは
機体認証制度とは、ドローンの強度・構造・性能に関して検査し、機体の安全性を証明する制度です。認証には、型式認証と機体認証があり、それぞれ第一種・第二種があります。
1機ごとに所有者が検査を受けて認証されるものを「機体認証」、ドローンメーカーが機種ごとに検査を受けて認証されるものを「型式認証」といいます。
- 第一種型式認証/第一種機体認証:立入管理措置を行わない飛行が目的の機体が対象
- 第二種型式認証/第二種機体認証:立入管理措置を行う飛行が目的の機体が対象
立入管理措置とは、無人航空機の飛行経路下において、第三者(無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者)の立入りを制限することを指します。
上表の※2にあるとおり、レベル4の飛行に際しては、国から第一種機体認証を受けなければなりません。
登録制度の義務化
ドローンでの事故や、無許可で飛行する事例の増加を受け、2022年6月20日には「100g以上の無人航空機の登録義務化」が始まりました。この制度により、現在100g以上の全ドローンに対して、所有者および操縦者の氏名・住所や機体情報などの登録、機体への登録記号の表示・リモートIDの搭載が義務づけられています。リモートID機器から電波で機体の識別情報を発信することで、飛行中であっても登録の有無を判別することができ、空の安全を確保します。また、登録対象の機体重量は従来の200g以上から100g以上に変更されている点にも注意が必要です。
違反しているドローンを飛行させた場合は、航空法に則り、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
ドローン免許の試験内容
ドローン免許の国家資格「無人航空機操縦者技能証明」を取得するには、以下2つの方法があります。どちらもドローン情報基盤システム2.0(通称:DIPS2.0、無人航空機の各種手続きをオンラインで実現可能とするシステム)にて技能証明申請者番号を取得します。
- 指定試験機関の実地試験を受験し合格する
- 登録講習機関(国土交通省が認定したドローンスクール)で学科・実地講習、修了審査を所定の時間受講したうえで、指定試験機関で実地試験を受験し合格する
講習を受けずに指定試験期間の実地試験の合格を目指すのはかなり難易度が高く、基本的には講習を受けたうえで受験することになります。
講習時間
受験に必要な講習の受講時間は、以下の表のとおりです。初学者とは、ドローン操縦経験がない人を指し、民間資格を含む資格保有者は経験者として扱われます。
資格には以下のように基本のほかに「限定変更」という追加で受けられる講習が用意されています。限定変更を行うことで、目視外飛行や夜間飛行、最大離陸総重量25㎏以上の機体の飛行などが行えるようになります。
初学者 | 経験者 | |||
---|---|---|---|---|
学科 | 実地 | 学科 | 実地 | |
一等無人航空機操縦士基本 | 18時間以上 | 50時間以上 | 9時間以上 | 10時間以上 |
二等無人航空機操縦士基本 | 10時間以上 | 10時間以上 | 4時間以上 | 2時間以上 |
限定変更したい場合はそれぞれ追加で講習を受け、試験に合格する必要があります。
- 基本:昼間飛行+目視内飛行
- 限定変更:目視外飛行
- 限定変更:夜間飛行
- 限定変更:最大離陸総重量25㎏以上の機体の飛行
試験内容
指定試験機関での試験内容は学科試験・実地試験に分かれており、試験以外に身体検査も行われます。それぞれの内容については、以下のとおりです。
【学科試験】
一等資格 | 二等資格 | |
---|---|---|
実施方法 | 全国の試験会場のコンピュータを活用するCBT方式 (Computer Based Testing) |
|
形式 | 三肢択一式(70問) | 三肢択一式(50問) |
試験時間 | 75分 | 30分 |
合格基準 | 90%程度 | 80%程度 |
試験科目 | 無人航空機に関する規則、無人航空機のシステム 無人航空機の操縦者及び運航体制、運航上のリスク管理 |
|
有効期間 | 合格後2年間 |
【実地試験】
実地試験は、机上試験1つ・口述試験3つ・実技試験1つの計5つに分かれています。机上試験と口述試験においては一等と二等の内容はほぼ同じですが、実技試験のみ内容が大きく異なります。
一等資格基本 | 二等資格基本 | |
---|---|---|
机上試験 | 飛行計画の作成 | |
口述試験 | 作動前の機体点検、飛行空域及びその周辺の確認、作動点検 | |
実技試験 | 高度変化を伴うスクエア飛行、 ピルエットホバリング、 緊急着陸を伴う8の字飛行 |
スクエア飛行、8の字飛行、 異常事態における飛行 |
口述試験 | 飛行後点検、飛行後の記録 | |
口述試験 | 事故及び重大インシデントの説明 | |
合格基準 | 80点以上/100点 | 70点以上/100点 |
なお、登録講習機関で実地講習を修了している人は、実地試験が免除になります。免除には申請が必要なので、講習を修了したら忘れずに免除申請を行いましょう。
【身体検査】
身体検査の項目は、以下のとおりです。
項目 | 身体検査基準 (一等25kg未満限定及び二等) |
---|---|
視力 | 視力が両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上であること、 または一眼の視力が0.3に満たない者若しくは一眼が見えない者については、 他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること。 眼鏡・コンタクトレンズといった矯正器具を用いることで 飛行の安全が確保されると認められる場合は、 条件を付けることにより技能証明の付与が可能となる。(眼鏡着用時に飛行可能など) |
色覚 | 赤色、青色及び黄色の識別ができること。 |
聴力 | 後方2メートルの距離から発せられた通常の強さの会話の音声が正しく聞き取れること。 補聴器などの矯正器具を用いることで飛行の安全が確保されると認められる場合は、 条件を付けることにより技能証明の付与が可能となる。(補聴器着用時に飛行可能など) |
一般 | 1.施行規則第236条の62第4項第1号または第2号にあげる身体の障害が無いこと。 2.1.に定めるもののほか、無人航空機の安全な飛行に必要な認知または 操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる四股又は体幹の障害があるが、 法第132条の44の規定による条件を付すことにより、 無人航空機の安全な飛行に支障を及ぼす恐れがないと認められること。 |
身体検査は、以下のいずれかの書類を提出することで受検ができます。
1. 有効な公的証明書の提出
以下の書類の内1つ(※医師の診断書提出の場合はいずれも不要)
- 自動車運転免許証
- 指定航空身体検査医による航空身体検査証明書
- 無人航空機操縦者技能証明書
2. 医療機関の診断書の提出
- 医師の診断書(一等25㎏未満限定及び二等)
条件:申請前6か月以内に受けた検査の結果が記載されていること
以下の指定様式を用いて医師に記載してもらうこと
無人航空機操縦者身体検査証明書 - 医師の診断書(一等25㎏以上)
条件:申請前6か月以内に受けた検査の結果が記載されていること
以下の指定様式を用いて医師に記載してもらうこと
無人航空機操縦者身体検査証明書
無人航空機操縦者身体検査証明書 別紙
3. 指定試験機関の身体検査受検
証明書ダウンロードなどはこちら
https://ua-remote-pilot-exam.com/guide/physical-examination/
ドローン免許を取得するまでの流れ
ドローン免許は、基本的に次のような流れで取得します。
- 技能証明申請者番号の取得
- 登録講習機関で講習を受け、修了
- 指定試験機関で学科試験や身体検査を受け合格
- 試験合格証明書の取得
- 技能証明発行の申請
- 技能証明の取得
指定試験機関での試験から、技能証明の発行までは最短でも15日程度必要です。
前述のとおり、ドローンの民間資格を持っていれば以下のようなメリットがあるため、可能なら事前に取得しておくことをおすすめします。
- 免許制度に関する講習・試験が一部免除される
- 講習・試験にかかるコストを抑えられる
- ドローンの操縦実績を作ることができ国家資格取得に役立つ
ドローンの民間資格5つ
ドローンの資格には、国家資格以外に民間資格もあります。ここでは、代表的なものを5つご紹介します。
DJI CAMP認定資格
DJI CAMP認定資格は、ドローンメーカーのなかでも最大手のDJI JAPANが指定する民間資格です。この資格は国土交通省航空局が認可している資格のため、取得していると飛行許可申請を簡略化できます。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://djicamp.aeroentry.jp/
IAU(一般社団法人国際無人航空機協議会)認定資格
国土交通省航空局の管理団体であるIAUが運営する資格で、取得することで実務的な技能と知識を証明できます。IAU認定資格の種類は、「操縦技能認証・安全運航管理責任者認証」の2種類です。こちらも資格取得していると飛行許可申請が簡略できるほか、ドローンに関する法律の正しい知識・技術を習得できるため、国家資格受験に役立つでしょう。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://www.iau-drone.org/
JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)ドローン資格
ドローンを活用した新しい産業・市場の創出を目指すJUIDAによるドローン資格で、内容はIAU認定資格と同様です。JUIDAライセンスを保有していることで、国土交通省への飛行・承認に利用できます。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://uas-japan.org/
DPA(一般社団法人ドローン操縦士協会)認定資格
DPA認定資格には、「操縦士資格・インストラクター資格」の2種類があります。操縦士資格は、ドローンの操縦に必要な基礎知識と、基本技術を証明する資格です。一方インストラクター資格はより高度なレベルの内容で、ドローン操縦士回転翼3級の座学・実地を講習するために必要な知識・技能を証明します。
DPA資格取得のメリットは飛行許可申請の一部を簡略化できることです。また最短2日間で取得できるドローン資格であるため、未経験者・初学者でも取得しやすい資格として広く知られています。国家資格取得の足掛かりになるでしょう。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://d-pa.or.jp/
ドローン検定(無人航空従事者試験)
ドローン検定は、ドローン検定協会が実施している検定試験で、1級~4級に分かれています。資格取得することで、ドローンを安全に使用するための必要な基礎知識が得られます。また国家資格取得の際に基礎技能講習の座学(4時限)が免除でき、国土交通省への飛行許可申請時に資格証明書を添付可能です。オンラインで自身の飛行ログを管理できるため、技術向上にも役立ちます。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://drone-kentei.com/
民間資格取得者は国の登録を受けた講習機関(登録講習機関)の講習を修了した場合、国家資格の実地試験を免除されるなど、優遇措置があるため、国家資格を取得しやすくなっています。ただし、民間資格ではレベル3飛行までとなっているため、レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)を行う予定であれば国家資格取得は必須です。
詳しくは以下より、ご確認ください。
https://coeteco.jp/drone-school/schools/unten/courses/1686
ドローンを活用した「ALSOKドローン外壁調査」
先述した社会課題を解決する方法としてもドローンの可能性は大きく広がり、多くのビジネスでドローンが活用されるようになっています。
ALSOKではドローンを活用した、外壁調査サービスを提供しております。
外壁調査は、ゴンドラに乗っての高所作業や、足場の組み立て、ロープアクセスによる目視などコスト面や安全面に課題を抱えています。
ALSOKの外壁調査サービスでは、ドローンを活用することで、作業員の怪我や事故のリスクを抑えながら、安全かつ効率的に外壁調査が可能です。また、高解像度の赤外線カメラを使用するため、目視では発見困難な外壁の劣化部分を発見できます。
外壁調査をお考えの場合は、ALSOKにぜひご相談ください。
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太陽光発電・メガソーラー点検「ドローン空撮サービス」
太陽光発電・メガソーラー設備は定期的にメンテナンスしないと発電効率が下がると言われています。しかし、太陽光発電・メガソーラー設備の設置場所は広大な敷地や屋根の上であることが多く、日々のメンテナンスや目視での確認は困難です。また、トラブルや故障が発生した際の早期発見も課題です。
ALSOKではドローンを活用した空撮サービスを提供しています。訓練を積んだALSOK専属の空撮隊が広大な敷地、近接困難場所でもドローンで空撮します。飛行するドローンは2種類のカメラを搭載しており、目視やカラーカメラによる撮影と比べて高精度の点検が可能です。点検結果や取得した画像はレポートでご提出するので、太陽光発電・メガソーラー設備の健康状態を可視化することが可能です。また、点検結果に基づき、専門家による詳細な検査や各種処置サービスもご利用いただけます(オプションサービス)。
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まとめ
2022年12月5日から、国家資格であるドローンの免許制度「無人航空機操縦者技能証明等」が開始されました。ドローン免許の一等資格を取得することで、これまでは認められていなかった、レベル4の飛行が可能になります。
ドローンが活用される場面は年々増えてきており、今後もドローンの新しい活用方法やビジネス利用が出てくることが予想されます。ドローンを安全に、正しく使用するためにも、ドローンを操縦する方は国家資格の取得を検討してみてください。