電気設備とは?その種類や受変電設備の耐用年数・よくあるトラブルについて
電気設備は人々が生活する上で欠かせない設備の1つです。電気設備にトラブルが発生するとその建物だけでなく近隣の建物にも影響を及ぼし、建物や施設の種類によっては命にかかわる可能性もあります。そのため、リスクやトラブル発生時の対処法や、万が一応急処置が必要になった場合の体制を確立しておくことが必要です。
本コラムでは電気設備とは何か、その種類や受変電設備の耐用年数、電気設備不良によって起こるトラブルについてご紹介します。
目次
電気設備とは?
電気設備とは、安全かつ安定的に電気を供給するための設備のことをいいます。例えば、電子レンジや冷蔵庫といった電化製品や照明器具、作業場の電動工具、生産機械などが当てはまります。広義の電気設備はそれだけではなく、建物や施設内のさまざまな場所に電気を送るための設備や防災設備を含む電気設備を指します。
電気はさまざまな機械や装置を動かす力として使われ、建物の見えないところで重要な役割を果たしています。
電気設備の種類
電気設備の種類は大きく3つに分けられます。
- 発電設備
- 送配電設備
- 構内電気設備
・発電設備
発電設備は電力を作り出す設備のことです。代表的なものとして、水力発電、火力発電、風力発電、原子力発電、蓄電池が該当します。
・送配電設備
送配電設備は、発電設備で作られた電気を送電線・変電所、配電線などの電力設備を通して利用者に届けています。一般家庭には低圧にして届け、工場・ビルなどの建物には規模により特別高圧または高圧などで供給します。
・構内電気設備
送られてきた電気を利用するための設備を指します。例えば、幹線、動力設備、電灯、コンセント設備、電話設備、放送設備、防災設備、自動火災報知設備などが該当します。
電気工作物の種類
経済産業省の定義によると電気工作物は発電、蓄電、変電、送電、配電または電気の使用のために設置する工作物のことをいいます。受電設備、ダム、水路、貯水池、電線路などがこれに該当します。
電気工作物は一般電気工作物と事業用電気工作物に分けられます。
- 一般用電気工作物
- 事業用電気工作物
一般用電気工作物
600V以下で受電または一定の出力以下の小規模発電設備で、受電線路以外の線路で接続されていないなど、安全性の高い電気工作物のことです。
おもに、一般の住宅・商店・小規模の事務所、コンビニ等の屋内配線、一般家庭用の太陽電池発電設備が該当します。
事業用電気工作物
一般用電気工作物以外の電気工作物のことをいい、設置者は保安規定の届出や主任技術者の選任などの保安措置が必要です。電力会社や工場などの発電所、変電所、送配電設備等が該当します。また、事業用電気工作物は小規模事業者用電気工作物と自家用電気工作物に分けられます。
【小規模事業者用電気工作物】
小規模事業用電気工作物には10kw以上50kw未満の太陽光発電設備や20kw未満の風力発電設備などが該当します。
【自家用電気工作物】
自家用電気工作物には600V超で受電する工場やビル等の電気設備が該当し、設置者は国に届出が必要です。
電気工作物のうち、一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物、自家用電気工作物の電気工事を行う場合は電気工事業の登録等の手続きが必要です。
出典:経済産業省 電気工作物の保安
電気事業法
電気工事業の業務の適正化に関する法律
工場やオフィスビルに設置される受変電設備とは?
工場やビル、病院、学校といった大量の電気を使う施設には必ず、受変電設備があります。受変電設備は、発電所から変電所を通して送られてくる高圧の電気を受け入れて、最終的に使用できる電圧に変換するための設備一式のことをいいます。
発電所で発電される電気は通常50万Vに近い高圧で、さまざまな規模の変電所を通って電圧を下げながら需要家(※1)や消費者に供給されます。電気が高圧で送電されるのは、送電ロスを回避し、高圧で引き込む方が安い単価で利用できるからです。しかし、実際に使う機器類は通常200Vや100Vとなり、消費者に供給する前に変圧する必要があるため、受変電設備で一旦電気を受け取り、電圧を下げた上で供給します。
また、受変電設備は単に電圧を下げるだけでなく、落雷や漏水といった配電時の事故が起こった際に接続された負荷設備を保護して波及事故(※2)を防ぐ役割もあります。波及事故が発生すると機器の損壊など自社の損害だけでなく、近隣の信号機や周辺の建物なども停電する恐れがあり、建物や施設の種類によっては人命にかかわる可能性もあります。そのほか、他社工場の生産や商業活動にも影響が及んだ場合、多大な損害賠償を請求されるケースもあります。
安全性を確保するため、受変電設備を所有する事業所はその保安点検が電気事業法で規定されています。
(※1)おもに高圧受電以上の電力大口利用者のことを指します。
(※2)工場やビルなどの自家用電気工作物が原因で広範囲に長時間停電を引き起こす事故のことをいいます。
受変電設備の種類と構成
ここからは受変電設備の種類と構成を紹介します。
受変電設備の種類
受変電設備にはキュービクル式と開放型の2種類があります。
1 | 閉鎖型受変電設備 (キュービクル式) |
金属製の箱に受変電用の機器類を収めた高圧受電設備 | 屋内外問わず設置できるため、商業施設や店舗、工場、オフィスビルなどさまざまな施設に設置されている変電所ともいえる |
---|---|---|---|
2 | 開放型変電設備 (オープン式) |
パイプや鋼材のフレームで基礎を作り、その内部に変圧器・遮断器・計器類・コンデンサなどの機器を設置する高圧受電設備 | 大容量の電力を必要とする工場などで使用される |
受変電設備の構成
受変電設備は、高圧の電気を受け入れて変圧し、構内の各機器に配電するための機器によって構成されています。
- 区分開閉器(PAS)
電気を高圧(6,600Vなど)で使用者の敷地内に引き込む場合に、引き込み点に設けられるスイッチです。区分開閉器は電力会社等と電気の使用者の責任分界点(責任分界点は、電力会社とお客様の保安上の責任範囲を分けている場所を指す)となります。 - 断路器(DS)
高電圧の電気回路に使われるスイッチです。負荷電流のない状態で電路を開閉するための機器のことをいいます。 - 負荷開閉器(LBS)
変圧器やコンデンサなどの高圧機器・回路の開閉を目的として設置される電気機器です。電気事故が発生した場合に波及事故を防ぐ役割を持っています。 - 遮断器
通常の負荷電流を遮断する機械です。そのほか、機器や電力系統に異常が発生したときに過電流継電器などと組み合わせて自動的に回路を遮断し故障系統を切り離すことができます。 - 変圧器(トランス)
高圧の電気を使用者が使用する電圧に変換するものです。トランスとも呼ばれます。変圧器で高圧送電の電圧を下げることでさまざまな場所で最適に利用できます。 - 保護継電器
規定した電気量や物理量に応じて作動し、電気回路を制御する機器のことで、いわば中継役といえます。保護継電器は用途に応じて複数の種類がありますが、使用頻度の高いものはおもに次の3種類です。過電流継電器 過電流や短絡電流を検知する継電器 不足電圧継電器 停電を検知する継電器 地絡継電器・地絡方向継電器 地絡事故を検知する継電器 - 制御装置
受変電設備を監視して制御する装置のことをいいます。 - 計測機器
おもに電気量を数値の表示または指示などにより直接的に計測できるもので、電圧計、電流計、電力計、力率計などの機器のことをいいます。 - 配線用遮断器(MCCB)
電路を遮断する装置のことです。電気設備では何かしらの要因で異常電流が流れた際に電路を遮断し、電線を保護する役割を持ちます。
受変電設備の耐用年数
受変電設備はさまざまな機器を組み合わせた複雑な構造をしており、機器によってそれぞれ耐用年数が異なるため注意しましょう。ここでは法定耐用年数と実用耐用年数に分けて解説します。
法定耐用年数
受変電設備には工業標準化法のJIS規格で定められた「法定耐用年数」があります。国税庁のサイトでは、受変電設備の法定耐用年数は15年から22年となっています。
法定耐用年数は税法上の観点から定められており、課税の公平性を確保するといった理由で国が決めている使用年数といえます。そのため、必要なメンテナンスや更新工事を行うことで、定められた年数を超えて使用し続けることも可能です。ただし、設備の管理状態・使用状態によって左右されるため、実際の耐用年数はさまざまな条件によって異なります。
実用耐用年数
受変電設備の実用耐用年数は、機器の種類やメーカー、機器の使用状況、環境条件などにより異なりますが、一般的には20年から25年程度といわれています。
受変電設備は、工場の生産設備や建物の照明・空調・エレベーターなどに電源を継続的に供給する必要があり、堅牢性が求められます。そのため、故障が発生してからの対応ではなく、定期的な予防保全や保守点検、部品交換といったメンテナンスが必要です。これらを行うことで、受変電設備の劣化や寿命を見定めることができます。
ただし、定期的にメンテナンスや更新工事を行っていない設備は、老朽化や機器の機能低下などによりさまざまな事故やリスクが生じる原因になり得ます。
出典:国土交通省 内外装・設備の標準的な期待耐用年数の導出について
電気設備不良によって起こるトラブル
電気設備トラブルの内容によっては利用者の生活やビジネスに直接影響を及ぼしてしまいます。また、トラブルの放置や誤操作によって二次災害につながる可能性もあり、迅速な対応が必要となるでしょう。
ここでは、電気設備不良によって起こるトラブルについてご紹介します。
予期せぬ停電
電気設備では、自然災害、事故、設備トラブルなどが原因で予期しない停電が発生することがあります。停電の対処法が分からず放置したり、慌てて復旧しようと誤作動させてしまったりすると二次災害を引き起こし、さらなる損失や人命にかかわる事故に繋がる恐れがあります。
電力効率が低下し余分な電気コストがかかる
漏電や不適切な配線により電気回路内で電流が漏れ出し、電力損失が発生すると、エネルギー効率が低下します。電力効率が低下することで、必要以上に電気を消費し、電気コストが増加してしまいます。
漏電や感電
電気設備の老朽化やケーブルの損傷、接点の接触不良・異物付着などにより漏電が発生することがあります。また、電線に電流が流れている状態(活線状態)に気付かず作業した場合、感電する恐れがあります。
機械故障や通信障害
設備更新時や移設時に誤操作、誤接続によって機械故障や通信障害が発生することがあります。また、電気機器や配線が過負荷や過電圧によって損傷し、正常に機械が機能しなくなることがあります。
自動火災報知設備の故障
自動火災報知設備は、感知器が熱や煙を自動的に感知し、受信機を通して火災信号を送り、警報ベルなどで建物内の人たちに火災を知らせる設備です。
自動火災報知設備には停電時の予備電源が内蔵されていますが、停電が長時間継続すると動作しなくなり、警報ベルも鳴動しなくなります。電気が復旧するまでは自動火災警報設備による監視ができなくなるため、建物内の連絡体制(火災の周知)の確立、避難誘導方法を再確認しましょう。
電気設備のトラブルを放置してはいけない理由
電気設備は利用者の生活やビジネスに直結するものであり、万が一電気設備のトラブルによって停電や漏電になってしまうと、生活や仕事に大きな支障をきたす恐れがあるでしょう。
電気設備を問題なく使用し続けるためには、定期的な点検やメンテナンス、トラブル時の迅速な対応が求められます。
また、2020年4月の民法611条改正により賃貸物件において故障等で設備が使用できなくなった場合、賃料の減額対応や賃借人は契約を解約できるとされています。これに伴い、もし賃借人から設備故障の申し出があった場合は賃貸人であるオーナーは賃料減額を行うほか、故障した設備を修繕しないとテナント解約や新規テナントが集まらない可能性があります。
さらに、管理会社にとってはオーナー・賃借人・現場作業への対応工数が増加することで、人員不足や担当者の業務負荷、従業員満足度の低下などさまざまなリスクが考えられます。
出典:e-Gov法令検索 民法
国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集
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電気設備はビルや工場など建物に欠かせない設備です。電気設備の故障やトラブルが発生すると、建物の賃貸人や管理会社、施設の利用者、周辺に住む住民にとって大きな損害に繋がる可能性があり、トラブル発生時には迅速な対応が求められます。
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