FSSC22000とは?規格の特徴やメリット、認証取得方法をご紹介
昨今では、改正食品衛生法によって2020年6月1日よりHACCPが義務化され、ますます食品安全の需要が高まっています。そこで今回は、食品安全システムの規格であるFSSC22000についてご紹介します。規格の特徴やメリット、認証取得の方法までご説明しますので、FSSC22000の理解を深めたい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
FSSC22000とは
FSSC22000とは、「Food(食品) Safety(安全) System(システム) Certification(認証) 22000」の略であり、FSSC22000財団によって開発された食品安全のためのシステム規格です。消費者に安全な食品を提供するための「食品マネジメントシステムの確立」を目的としており、その実現に向けてあらゆる要求事項(FSSC22000財団が規格取得のために求める要件=規格の取得や維持を目指す企業が実現すべき基本要件)が定められています。
FSSC22000は3つの構成で成り立つ
FSSC22000はISO22000という別規格をベースにしつつ、PRP(前提条件プログラム)の技術仕様書である「ISO/TS22002-1またはISO/TS22002-4」及び「FSSC独自の追加要求事項」が統合されています。つまりISO22000よりもさらに厳しいプログラムが設定されており、より高いレベルの食品管理が求められる規格です。
1.ISO22000
ISO22000のISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称で、スイスのジュネーブに本部がある民間機関です。
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2.ISO/TS22002(前提条件プログラム(PRP))
食品関連事業向けの前提条件プログラム(PRP)がISO/TS22002です。前提条件プログラムとは、ハザード管理を機能させるための前提となるルールのことを指します。前述のISO22000よりも、前提条件プログラムが詳しく記述されているのが特徴です。
3.追加要求事項(食品防御・食品偽装の軽減・アレルゲン)
前項とは別にFSSC22000独自の追加要求事項があります。具体的には「食品防御」「食品偽装の軽減」「アレルゲン」などに関する項目が追加され、これにより確実な食品安全管理を実現することができるようになります。
またFSSC22000はGFSI(国際食品安全イニシアチブ)承認の認証スキームなので、GFSIとFSSC22000の要求事項を同等にする必要があります。そのため、ISO22000の要求事項を補強する形で追加されています。
FSSC22000の特徴や対象事業
ここではFSSC22000ならではの特徴と認証取得できる対象事業をご紹介します。
GFSI承認の認証スキームの1つ
GFSIとは「Global Food Safety Initiative(世界食品安全イニシアチブ)」の略称で、世界の流通・食品大手約 650社が加入する民間団体(CGP:Consumer Goods Forumが策定)のことです。食品の安全性を高め、消費者の信用を獲得することを目的としており、承認を得るためにはGFSIガイダンス・ドキュメントに記載されている要求事項を満たさなければいけません。
FSSC22000はそのGFSIに承認されている認証スキームの1つです。GFSIによる認証は権威性が高いため、FSSC22000は「信用に足る食品安全の規格」として認識されています。
予期せぬ危害要因を考慮している点
食品を扱う事業ではアレルゲンの微量混入や組織ぐるみの食品偽装、悪意のある第三者による毒物混入など、予期せぬ危害の可能性はゼロではありません。
そこでFSSC22000では食品を扱う事業者に対して、危害要因を考慮し、抑制また低減、除去する方法の取り決めや実施を求めています。そのため、より安全な衛生管理の仕組み作りが可能となり、必然的に食品安全の質が高くなる点が大きな特徴です。
バージョンアップの頻度が多い
先述したGFSIでは重大な食品事故が起きると、その対策を含めた要求事項にするため、規格の改訂を行います。FSSC22000はGFSIの要求事項と同等にしなければならないので、当然ですがFSSC2200の要求事項もその都度バージョンアップが必要です。
他の規格と比較するとISO規格は5年ごとに見直しがあり、必要であれば改訂が行われます。一方、GFSI認証のFSSC22000は1~2年ほどの間隔で改訂される傾向にあるため、世間で注目されるような大きな食品事故などが発生した場合、その都度対策事項が要求事項に加わることとなります。このことから、同様の食品事故の発生を早い段階で防ぐことが可能です。食品安全の向上と消費者の信頼強化を目的に食品安全管理に取り組んでいる規格であるといえるでしょう。
非通知審査がある
GFSI承認スキームであるFSSC22000は、「非通知審査」を原則3年に1回受けなくてはなりません。非通知審査とは、一定期間内に突然審査員が訪問してくる抜き打ちチェックのようなものです。定められた食品安全への取り組みが日常的に実施されているか審査されます。
仮に非通知審査を拒否した場合は認証が一時停止され、6カ月以内に審査を受けなければ認証自体が取り消しになるというルールがあります。
FSSC22000の対象事業者
FSSC22000認証を取得できるカテゴリ(業種)は限られています。どのような業種が対象に含まれているのかチェックしていきましょう。
・食品製造
魚・肉・野菜などの腐敗しやすいものの加工・製造、ピザや総菜などの混合製品の加工・製造、缶詰やパンなどの常温で保管・販売される製品の加工・製造をする事業です。
・ケータリング業
レストランやホテルなど顧客が指定する先に出向いて食事を配膳、提供する事業です。
・食品包装及び包装材の製造
プラスチック・紙・金属・木材などで包装材として使用する製品の製造・ラベル製造などを行う事業です。
・その他のカテゴリ
畜産・水産・動物の飼料製造・流通・輸送、及び保管サービスの提供・化学製品の製造でも取得可能です。
HACCPやISO22000との違い
FSSC22000と同様の食品安全規格として、HACCP(ハサップ)やISO22000などがあります。FSSC22000はこれらの規格とどのような違いがあるのでしょうか?いくつかのポイントに焦点を当てて解説していきます。
1.生まれた経緯や目的
HACCP・ISO22000・FSSC22000の3つの規格の内、最初に生まれたのがHACCPです。
HACCPとは食品が作られる工程において、どのような危害が発生し、どのような対策を練れば良いか記載したガイドラインのことです。それまでの衛生管理から飛躍的に食の安全レベルを向上させた考え方として知られています。
しかしHACCPは国や認証団体によって基準が異なるため、すべての業界や業種に完全に対応することはできません。そこで世界的に基準を統一した国際規格としてISO22000が誕生しました。ISO22000でも一部の要素は事業者任せになっていたため、食品事故などが発生する要因となっていました。
そこで、ISO22000よりさらに厳密な規格として生まれたのがFSSC22000です。
このように食品の安全レベルをより向上させるという目的は一緒ですが、生まれた経緯はそれぞれ少しずつ異なります。
2.前提条件プログラム
HACCPでは前提条件プログラムの具体的な項目や基準について定めはない一方、ISO22000とFSSC22000では明確化されています。
さらにISO22000とFSSC22000にも細かい違いがあります。ISO22000では取り組むべき項目は明確になっていますが、具体的な内容は認証を取得する各事業者に一任されています。一方、FSSC22000ではより詳しい内容が指定された前提プログラム(TS22000)が導入されています。
3.ハザード管理
食品を扱う工程の中で発生する危害要因を予測、管理することをハザード管理といいます。HACCPでは「日常的な管理」、もしくは「重点的な管理」でハザード管理を行いますが、ISO22000とFSSC22000では「中間の管理」という追加項目があるのが明確な違いといえるでしょう。
4.適用範囲
HACCPは基本的に食品製造業者(食品の製造・加工、調理、販売等)が対象となっており、令和3年6月にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられました。しかし、農業や水産業における食品の採取業については対象外です。
一方、ISO22000とFSSC22000の適応範囲は食品製造業者だけでなく、農業や漁業などの一次生産者や運送業者も対象となっているという違いがあります。
下図のFSSC22000、ISO22000、HACCPの関係図では、FSSC22000は他の規格を内包しており、厳密な規格であることがわかるでしょう。
FSSC22000認証取得のメリットと認証後の効果
FSSC22000は認証取得の義務化はされていないものの、取得することで得られるメリットや効果は非常に大きいものがあります。ここでは認証後に期待できる効果をチェックしていきましょう。
認証取得による期待できる効果
FSSC22000を取得すると、以下のように企業内外での効果が期待できます。
・食品の安全な提供に関するリスクの低減
FSSC22000を取得すると、食品トラブルの防止やリスクの回避ができます。食品トラブルは消費者や取引先に対する信頼が落ちてしまうため、防止・低減を図ることは極めて重要です。
・仕事の見える化による作業の効率化、業務継承の円滑化
FSSC22000では、原材料の調達から始まる一連の工程を「見える化」することができます。それにより無駄な作業の特定や改善もできるので、仕事の効率化が可能です。担当者が別の担当者に業務を引き継ぐ場合も円滑に進められるでしょう。
また、万が一トラブルが発生したとしても、工程の可視化により起因となったセクションを突き止めやすい点もメリットです。対応や改善に素早く取り組むことができます。
・継続的な改善による企業価値の向上
継続的に業務改善をすると消費者や取引先からの信頼を得られ、企業価値も向上します。加えて、FSSC22000は高い水準の食品管理が求められる規格です。認証を受けることだけでも、顧客や企業からの信頼獲得に繋がります。
・法令順守(コンプライアンス)の推進
組織内の従業員に対する法令順守(コンプライアンス)の認識・推進が計れます。従業員一人一人に責任や義務、品質、安全に対する意識の向上が生まれ、組織規模での強化が見込めるでしょう。
・海外企業を含む取引要件の達成
GFSI承認規格であるFSSC22000は、海外顧客との取引要件に含まれている場合があります。海外の顧客や大手企業との取引では、対外アピールになるので極めて重要です。
FSSC22000認証取得による効果の事例
ギフト菓子メーカーの事例
企業の繁忙期を避け食品マネジメントに取り組んだ結果、短期間でFSSC22000の認証を取得。検査や安全の確認に関するルールが確立され、工程の戻しが減少し作業工程の効率化にも繋がっています。また、商品企画から生産を開始するまでのルートで誰が何をしなくてはいけないか明確になったことで社員の意識も変わり、安全安心なPDCAサイクルを継続しています。
ウォーターサーバーメーカーの事例
顧客に安心した水を届けるために、国際基準でもあるFSSC22000を取得。衛生状況・管理の徹底を行った結果、日頃から当たり前のように行ってきた作業を見直すことができました(使用している機材の溶剤などの把握、使用記録に残すなど)。
認証取得のみで満足をせず、継続を意識したPDCAを実行中です。国際基準を取得することで、自信をもってお客様に商品を提供しています。
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FSSC22000認証取得の手順と認証の有効期限
FSSC22000認証取得には、さまざまな準備や審査が必要であり、認証取得までの期間も長いことから、ある程度の期間を想定しなければいけません。ここでは認証取得までの流れをご紹介します。
システム構築・運用
① 状況の理解、組織能力の課題、リスク及び機会への取り組み、経営基本方針、食品安全方針、重点課題、食品安全目標の策定
② マネジメントシステムの運用、手順・規定類に基づく活動を行う
③ 活動の記録や分析、評価、内部監査と是正処置の実施など
④ マネジメントレビューの実施、システムの見直し
FSSC22000認証に必要なシステム構築・運用を1年~1年半程度かけて行います。PDCAの手順に沿って進める形で、初めに企業内の現状把握から計画(Plan)し、システム運用を実行(Do)。そして、システム運用に関する点検(Check)をしたのち、見直しなどの処置(Act)を行います。
認証取得
⑤ 登録審査(ファーストステージ審査)
⑥ 登録審査(約1ヵ月後、セカンドステージ審査)
⑦ 登録証発行(約1ヵ月後)※有効期限は3年間
認証取得までには2つのステージがあり、登録審査のファーストステージ審査では「マネジメントシステムの構築状況の確認、およびセカンドステージ審査のための情報収集」が行われます。ファーストステージ審査に通過すると最短1カ月の期間を経て、セカンドステージ審査に進行し「適用範囲のすべてを対象に、マネジメントシステムの実施状況、規格への適合性」を審査されます。
2つの登録審査の報告書をもとに登録の可否が判定され、登録可の場合には「3年間を有効期限とした登録証」が発行されます。
システム運用・認証維持
登録証発行後は認証を維持するため「第1回定期審査」「第2回定期審査」「更新審査」が行われます。
⑧ 第1回定期審査(登録証発行後2年目)
⑨ 第2回定期審査(登録証発行後3年目)
⑩ 更新審査(登録証発行後4年目)
第1回・第2回定期審査のどちらか一方は、告知のない「非通知審査」であることが重要なポイントです。そして最後の更新審査で更新可と判断されれば、また新たに3年間を有効期限とした登録証が発行されます。
定期審査・更新審査で不適合事項が指摘された場合、適切な是正処置を講じる必要があります。その後のフォローアップ審査で効果的な解決がされていないと判断されると認証が取り消されることもあります。
以下は、認証取得のステップを図版化したものです。併せて確認してみてください。
ALSOKのフードディフェンスに繋がるサービス
HACCPの義務化にともない、食品業界では今後ますますFSSC22000のような「国際基準の高い安全性」を求める声も多くなりそうです。ALSOKでは、食品検査・衛生検査の実施や非接触商材の提供など、フードディフェンスに繋がるサービスを提供しています。
エムビックらいふの食品検査
ALSOKグループのエムビックらいふでは、食品事業者に向けた食品検査・衛生点検を実施しています。衛生管理の状況を知りたい方や衛生レベルの向上を計りたい方におすすめです。
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非接触で検温可能なサーマルカメラ
非接触で体温や体表面温度を測りたいのであれば、サーマルカメラ(表面温度測定機能付カメラ)がおすすめです。検温機能を備えたサーマルカメラは、「顔」を登録することで顔認証も可能となります。また、入退室管理にも対応しています。
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事業所の衛生・安全管理については、以下のコラムもぜひご参照ください。
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おわりに
FSSC22000は認証を取得した後も定期審査が行われるため、継続して食品安全に取り組まなければなりません。しかしその反面、FSSC22000認証によるメリットや効果はとても大きく、認証取得できれば企業価値の向上や顧客獲得に繋がるでしょう。食品安全規格を取得しようと考えている食品事業者は、この記事を参考に取り組んでみください。