病院への監視カメラ設置で防犯対策!その他のセキュリティ対策も解説
病院は、年代や属性を問わず不特定多数の人が来院します。診療・治療やお見舞い、納品など正当な目的で来院する方がほとんどですが、診療時間中は誰でも入館できるため、窃盗や他人に危害を加える等、悪意を持った人物が紛れ込む可能性があります。実際に、病院荒しや薬剤の盗難、異物の混入など深刻な事態が発生しており、監視カメラ(防犯カメラ)の設置など病院のセキュリティ対策が求められています。
そこで本記事では、病院におけるセキュリティリスクをご説明しながら、監視カメラの設置など具体的な防犯対策についてご紹介します。
目次
病院荒しは近年増加傾向にある
病院に関する犯罪のうち「病院荒し」に関しては、次のようなデータがあります。 以下のグラフは警察庁の「犯罪統計書 令和5年の犯罪」による、侵入犯(病院荒し)の認知・検挙状況です。
上記グラフのとおり2014年から2023年までのデータを見ると、2022年は認知件数545件、検挙件数194件に対し、2023年の認知件数は344件、検挙件数は306件となっています。認知件数は減少傾向にあり検挙率も改善しているため、全体的に犯罪が減少傾向であると分かります。
しかし、2023年の認知件数は依然として300件以上あるため、被害を防ぐために病院の防犯対策の徹底が必要といえるでしょう。
病院で起こるセキュリティリスク
病院には地域の医療連携を担う役割や災害時の医療拠点の役割があることから、「しっかり管理されていて安全」というイメージが定着していると思われます。しかしながら、不審者の侵入や異物の混入などの問題が発生した事例も報告されています。
ここでは、病院で起こりうるセキュリティリスクの一部をご紹介します。これだけ数多くのリスクがあると考えると、様々な対策が必要であることが分かります。
夜間の侵入者や窃盗
先の項目でご紹介した通り、病院荒しなど犯罪目的での侵入や窃盗のリスクが挙げられます。
薬剤の紛失・盗難
病院内に保管されている薬剤の紛失や盗難に遭うケースも想定できます。医薬品の適正な使用や安全管理のため、院内での保管には厳しいリスク管理が求められます。
院内の盗難・いたずら
病院内の設備や備品の盗難、いたずらなどで破損や汚損被害に遭う事案です。院内外双方の者によって、故意に行われる可能性があります。
個人情報漏えい
病院内にはカルテや支払いに関する情報など、重要な個人情報および機密情報が多数保管されています。紙の文書のほか、電子データの取り扱いや管理も厳重に行う必要があります。
乳幼児の連れ去り
入院中の乳幼児が連れ去られるケースのほか、来院している患者の乳幼児が標的となるケースも考えられます。
異物混入
病院食や薬剤などに故意に異物が混入される事案です。このケースは部外者のほか、院内関係者による事案も想定できます。
無断退院や徘徊
入院患者や外来患者が無断で病院を抜け出すことや、勝手に外へ出て周囲を徘徊するなどの事案のリスクも想定できます。
火事や自然災害
病院も建物設備である以上、火災や地震・台風・噴火などの自然災害に巻き込まれるリスクが存在します。特に入院患者などは「災害弱者」と呼ばれることもあり、適切なリスク管理で被害を最小限に食い止める取り組みが必要となります。
設備不良などによるトラブル
病院内には入院患者や外来患者の安全を守るため、さまざまな設備が導入されています。それらがトラブルを起こすと、患者だけでなく病院関係者の安全がおびやかされる可能性もあります。
病院内に監視カメラを設置する効果
病院内に監視カメラを設置することで、次の4つの効果が期待されます。
不法侵入の抑止と証拠映像の録画
病院内は診療時間中、エリアによっては比較的自由に出入りできる場合が多く、不審者が侵入する可能性があります。不審者の侵入によって、患者やスタッフが危険にさらされるリスクや、盗難などの被害が発生するリスクも否定できません。
対策として、病院内に監視カメラを設置することが有効です。監視カメラの設置により、病院荒しや薬品などの盗難・持ち出しへの対策につながります。また、医薬品や専門家の管理下で使用すべき薬剤は、薬局でしか購入できないものや厳重な管理が必要なものが多いため、流出を防ぐためにも適切な管理が求められます。
さらに監視カメラによって録画された映像は不審者や不正行為の証拠として活用することもできるため、外部からの侵入対策だけでなく、病院内部で発生する不正行為への抑止効果も期待できます。
患者の安全確認やトラブル対策
監視カメラを設置することで、深夜や早朝など、スタッフの数が少ない時間帯でも病院内の状況を確認することができます。これにより、患者の容態が急変した際の早期発見と迅速な対応、安全確認、受付・会計窓口や待合室でのトラブル対策が可能になります。また、入院患者の徘徊や患者同士のトラブルへの対応にも役立ちます。
スタッフの業務効率向上
監視カメラの設置は、スタッフの業務効率の向上にもつながります。入院患者の様子や手術室の状況などをカメラの映像で確認することで、病院内の状況を把握しやすくなり、医療プロセスのモニタリングやチームコミュニケーションの向上が期待できます。
さらに、備品管理・補充の効率化といった資材管理業務の改善にも役立ちます。これにより、医療業務全体の効率化が図られ、スタッフ間の連携強化や作業フローの見直しにもつながります。
病院内の監視カメラ設置場所
病院内に監視カメラを設置する場合、どのような場所に設置すると良いのでしょうか。
ここからは監視カメラの設置場所についてみていきましょう。
不特定多数の人が利用する場所
受付や会計窓口、外来ロビー、待合室などの共用スペースは基本的に誰でも立ち入ることができるため、不審者が通る可能性が高く、緊急事態が発生した場合には逃走ルートにもなります。また、子どもが滞在するキッズスペースや保育室、駐車場などの外構にも監視カメラの設置が有効です。
特定の人が利用する場所
スタッフなど特定の人しか立ち入らない場所にも、内部犯行や内部不正の発生を未然に防ぐため、監視カメラを設置すると良いでしょう。また、部屋への出入口に電気錠を設置して出入管理することもおすすめです。
サーバルーム
個人情報や機密情報の漏えいなどのリスクがあるため、サーバ管理者など許可された人しか立ち入れないように、出入りを厳重に管理する必要があります。監視カメラの設置に加え、出入管理システムの導入や鍵保管庫による鍵管理などの対策が有効です。
ナースステーション・事務所
病棟には入院患者だけでなく、患者の家族や見舞客、福祉関係者などさまざまな人が訪れます。ナースステーションには出入管理システムの導入等で病院関係者しか入室できないような仕組みを構築しなければなりません。また、個人情報やカルテなどの重要な情報を扱う場所でもあるため、出入口付近に監視カメラを設置するなどセキュリティを強化しましょう。
病院事務所にも患者や職員の個人情報、病院の運営に関わる重要情報が保管されています。ナースステーションと同様にセキュリティを強化しましょう。職員が個人のスマートフォンを充電するなどの安易な目的でパソコンに接続することで思わぬ情報流出につながるリスクもあるため、スマートフォンをパソコンに接続できないようにする対策も必要です。
調剤室・薬剤の保管室
薬剤を取り扱う人しか出入りしない場所ですが、紛失・盗難などが発生すると大きなインシデントにつながるため管理体制の強化が必須です。監視カメラを各室の出入口および薬剤の保管場所付近に設置し、不正な持ち出しを抑止・監視しましょう。
更衣室・ロッカールーム
更衣室やロッカールームは職員のプライバシーに関わる場所のため、監視カメラ(防犯カメラ)の設置に抵抗を感じる場合もあります。しかし、これらの場所は盗撮や盗難などの犯罪や職員間のトラブルが起こり得る場所でもあります。
こうしたリスクを防止し、万が一トラブルが発生してしまった際の証拠としても活用できるため、出入口に監視カメラを設置することをおすすめします。設置する際は、更衣室やロッカールームの外側に入退室する人の顔が映る角度で取り付け、更衣室内が映りこまないよう注意しましょう。
また、定期的に盗撮目的で設置された機器がないか組織的に点検することもおすすめします。
これらのほか、個人開業医などご自宅にクリニックを併設している場合、ご自宅とクリニックの境界部分に防犯カメラ・監視カメラを設置することも有効です。
病院の監視カメラ設置で注意するポイント
ここでは、病院内に監視カメラを設置する際のポイント・注意点をご紹介します。
プライバシーに配慮する
入院患者がいる病棟にカメラを設置する際には、患者や職員のプライバシーを侵害しないよう設置場所に配慮する必要があります。設置場所だけでなく、録画映像の保存期間や録画時間、映像の取り扱いや管理など、録画した情報に関する管理を徹底することも重要です。
監視カメラの設置をアナウンスする
監視カメラを設置する際は、患者やスタッフに対して、監視カメラの設置目的を事前にアナウンスしましょう。監視カメラで記録される映像(音声を含む場合もあります)には、顔や体格といった身体的特徴や、場合によっては氏名、住所などの個人情報が含まれる可能性があります。
そのため、監視カメラの設置がプライバシーの侵害と受け取られることを防ぐため、院内の掲示板や案内板などを活用して監視カメラを設置する場所や目的について患者やスタッフに知らせましょう。
また、病室内に監視カメラを設置する場合は、監視カメラに関する取り決めについて、事前に患者や家族に説明し同意を得ることも大切です。
威圧感・存在感があまりないカメラを選ぶ
院内に設置する場合、患者やスタッフに威圧感を与えないよう、目立ちにくいドーム型カメラがおすすめです。なお、駐車場などの外構に設置する場合は、防塵・防水機能を備えた、存在感のあるボックス型カメラを選定すると良いでしょう。
その他病院のさまざまなリスクを防ぐ対策
病院には年代や属性を問わず不特定多数が来院すること、また建物設備ならではのさまざまなリスクがあり、適切な安全管理が必要です。
ここでは、先述したさまざまなリスクへの対策についてご紹介します。
出入管理システム
病院関係者の出入りを管理できる「出入管理システム」を導入することで、効率的に院内セキュリティを強化することができます。機密書類がある事務所や、薬剤の盗難リスクへの対策として薬剤保管庫に設置するとともに、夜間入り口にも設置することで鍵の閉め忘れがなくなり不審者の侵入を防ぐことができます。
予算の都合で「出入管理システム」導入できない場合、重要な書類や薬剤の保管場所には、鍵管理装置を設ける方法も一案です。各々の鍵に使用制限を設け、使用履歴を残すことができるため、使用者の特定が容易になります。
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蓄電池・災害時の安否確認・防災訓練
犯罪などのリスクと同様に、災害のリスクにも備えておくことが重要です。停電などで電源が失われた際に、予備として活用できる蓄電池を用意しておくことは基本と言えます。
また、災害時にスタッフの安否確認をスムーズに行える仕組みも取り入れておきましょう。メールや職場内SNSなどですぐに安否情報を確認・共有できるようにしておくと有用です。
先にも述べましたが、病院には入院患者など「災害弱者」と呼ばれる人が多いという特徴があります。地震や台風での被害はもちろんですが、火災が発生した際に重大な被害につながる可能性も想定できます。防災訓練などを積極的に導入し、スタッフの防災意識を高める取り組みを行いましょう。
ファシリティマネジメント
病院も、一般的なビルと同様に設備の不具合に対して備えておく必要があります。特に病棟を備えている場合は、24時間建物内が適正に維持管理されていなければなりません。
この機会に日常的な施設管理の強化も検討すると良いでしょう。
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医療機関はサイバー攻撃への対策も欠かせない
電子カルテや医療情報連携ネットワークなどが普及している一方で、日本を含む世界の医療機関でサイバー攻撃の被害が増加しており、医療機関におけるサイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。
医療機関のサイバーセキュリティ対策について政府が策定したガイドラインとして、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」があります。このガイドラインでは、電子的な医療情報を安全に取り扱うための基本的な管理手法や責任のあり方について詳しく解説されています。また、医療技術や制度の進化に合わせ、ガイドラインの内容は随時更新されているためその都度内容を確認し、適切に対応することが求められます。
医療機関のサイバーセキュリティ対策
医療機関のサイバーセキュリティ対策として主に3つ挙げられます。
- セキュリティソフトウェアの導入
- 従業員への教育
- トラブル時の対処マニュアル作成と訓練の実施
セキュリティソフトウェアの導入
セキュリティ対策として、病院内で使用するパソコンにセキュリティソフトウェアを導入しましょう。セキュリティソフトウェアを導入することで、外部からのサイバー攻撃を遮断し、情報システムの安全性を高めることができます。
さらに、インターネットと病院内の情報システムを分離することで、外部からの侵入リスクを最小限に抑えることができます。セキュリティソフトウェアの導入に加えて、重要な情報などが管理された部屋への入退室の管理や、外部・内部からのアクセス履歴を残しておくことも大切です。
従業員への教育
セキュリティ対策において、病院で働く従業員への教育はとても重要です。具体的には、定期的なパスワードの更新や院内システムの使用後は必ずログアウトする、ログイン情報を第三者に見えるところに貼らないなどの情報セキュリティに関する教育が必要です。不正アクセスや個人情報の取り扱いなどについて教育することで、情報漏えいやセキュリティ被害を防ぐことができます。
トラブル時の対処マニュアル作成と訓練の実施
不正アクセスや情報の流出など、予期せぬトラブルが発生した際に迅速に対処するためには、事前に対処法を決めておくことが大切です。
具体的には起こり得るトラブルごとに、その時の対処についてマニュアルを作成し、スタッフに共有します
また、マニュアルを作成するだけでなく、定期的に訓練を行うことも重要です。訓練を通じて、実際にトラブルが発生した時に落ち着いて対応し、被害を最小限に抑えられるよう体制を整えておきましょう。
ALSOKでは、いつ起こるかわからない情報漏えいを防ぐために、ネットワークセキュリティやIT資産管理などさまざまな対策サービスをご提供しています。
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病院・クリニック向けのALSOKの防犯サービス
病院には病院荒しをはじめ、不審者の侵入や薬品の盗難、持ち出しなどのセキュリティリスクが存在します。監視カメラの設置だけでなくさまざまなセキュリティ対策が必要でしょう。
ALSOKでは、病院・クリニックへ向けた防犯サービスをご提供しています。お客様のご要望や状況に合わせて最適なプランをご提案いたします。
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ALSOKの防犯カメラ・監視カメラサービスでは、昼夜問わず高画質な映像を現地だけでなく離れた場所からでも閲覧できるため、責任者が現地にいない場合もパソコンやスマートフォンから遠隔で確認することができます。
その他にも、非接触型の顔認証による出入管理システム、機密文書の安全な集荷・廃棄、災害時の安否確認システム、災害時の停電対策として使える可搬型蓄電システムもご提供しています。
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上記でご紹介した各種サービスを、病院の特徴や性質に合わせてコンサルティングしながら導入・維持をサポートする「病院・クリニック向けセキュリティ」もご提供しています。
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まとめ
今回は、病院における防犯対策についてご紹介しました。
病院内では不審者による病院荒しや薬剤の盗難、個人情報の漏えい、入院患者によるトラブルや院内暴力など、病院特有のセキュリティリスクがあります。大規模な病院にとどまらず個人開業のクリニックなどにも特有のリスクがあるため、各施設に合ったセキュリティ対策を導入すると良いでしょう。
ALSOKでは各施設の状況やご要望に合わせて、適切な防犯・防災対策をご提案、サポートしております。対策の選定に迷った際にはお気軽にご相談ください。