日本版DBSとは?いつから?対象となる事業や求められる措置
DBS(Disclosure and Barring Service:イギリス司法省管轄の犯罪証明管理および発行システム)は、子どもの安全を確保する目的で実施されている制度で、イギリスを筆頭にドイツやフランスなどでも同じ取り組みが実施されています。
日本でも2024年6月に「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(通称「こども性暴力防止法」)が成立し、日本版DBS制度の導入が決定しました。この記事では、日本版DBSとはどのような内容なのか、いつから実施されるのか、そして対象事業者や学校設置者、自治体などに求められる具体的な措置について解説します。
※2024年12月時点の情報です
目次
日本版DBSとは?
日本版DBSとは、教育・保育の現場における子どもに対する性犯罪を防止するため、対象の事業者に対し、子どもと接する仕事に従事する人について、性犯罪歴の確認を義務づける制度です。日本版DBSはイギリスのDBSを参考にしたもので、こども家庭庁を通じて性犯罪歴の有無を照会できるようにすることで、雇用時のリスク低減や再犯防止が期待できます。
日本版DBS導入の背景と目的
性犯罪や性暴力等により懲戒処分等を受ける教育職員等が後を絶たないことが社会問題となる中、令和3年(2021年)には「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(教員性暴力等防止法)」が制定されました。
また、保育現場でも児童に対するわいせつ行為等の事案が複数発生したことを受け、令和4年(2022年)の「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、日本版DBSの導入に先駆けて教育職員等と同様の規律を設けるなど取り組みを強化しました。
実際に、文部科学省「令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、令和4年度(2023年)に懲戒処分または訓告等を受けた教育職員は4,572人で、そのうち性犯罪・性暴力等が原因の人数は242人でした。令和3年度(2022年)は216人であったため、1割程度増加しています。また、文部科学省「令和3年度私立学校等実態調査結果」によると、私立学校において性暴力等により解雇処分を行ったと報告されたのは15件(うち、児童生徒に対する性暴力等による者は13人)でした。
そのほかにも、ベビーシッターが男児に性的暴行を加えていた事件や、学習塾講師が女子生徒を盗撮していた事件など、学校以外でも子どもの性被害は発生しています。
このような状況を受け、教育に関わる現場において子どもの性被害を防止する措置が不十分であることが指摘されてきました。その結果、2024年にイギリスやドイツ、フランスなど各国で導入されているDBSを日本でも採用することが決定したのです。
参考:参議院常任委員会調査室・特別調査室 「こどもの性被害防止に向けて-日本版DBS創設を含むこども性暴力防止法案の国会論議-」
文部科学省「令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」
日本版DBSはいつから?
日本版DBSが各種事業者に対して実施されるのは、2026年の予定です。厳密には、「公布の日(令和6年6月26日)から起算して2年6ヵ月を超えない範囲において政令で定める日」とされています。
日本版DBSの対象事業
日本版DBSの適用対象となる事業について見ていきましょう。
対象となる事業の範囲の考え方
日本版DBSでは、「支配性」「継続性」「閉鎖性」の3点を満たした事業が対象となります。
支配性 | 子どもを指導するなど、一方的な力関係があるなかで支配的・優越的立場に立つこと |
---|---|
継続性 | 子どもと生活をするなど、継続的に密接な人間関係を持つこと(時間単位のものも含む) |
閉鎖性 | 保護者などが監視できない状況下において、預かり・養護などをするものであり、他者の目に触れにくい状況を簡単に作り出せること |
つまり、子どもが抵抗しづらい関係性において、一定時間を一緒に過ごし、また第三者から隠れられるような状況にある性質の事業が日本版DBSの対象になります。
具体的な対象事業は、「学校設置者等」と「民間教育保育等事業者」の2つに分けられます。
学校設置者等(義務)
学校設置者等とは、犯罪などの問題が発生した場合の監督や、制裁の仕組みが整っている事業・施設を指します。以下の学校設置者等は、日本版DBSへの対応が義務付けられています。
【学校設置者等の例】
- 学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高校、特別支援学校等)
- 専修学校(高等課程)
- 認定こども園
- 児童福祉施設(保育所、指定障害児入所施設等、乳児院、母子生活支援施設、児童館、児童養護施設、障害児入所施設等)
- 児童相談所
- 指定障害児通所支援事業(児童発達支援、放課後等デイサービス等)
- 家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業または事業所内保育事業)
- 乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度) など
民間教育保育等事業者(認定)
民間教育保育等事業者とは、現時点で業務範囲の規制がない分野で、かつ行政が事業範囲を把握しきれない教育事業を指します。これらの場合、「義務の対象となる事業者が講ずべき措置と同等の措置を実施する体制が確保されていること」を認定する制度を設けることで、日本版DBSの対象となります。認定を受けた事業者は国が公表し、また事業者も認定を受けた旨を表示することができるようになります。
【民間教育保育等事業者の例】
- 専修学校(一般課程。製菓学校、簿記学校等)
- 各種学校(准看護学校、助産師学校、インターナショナルスクール等)
- 放課後児童クラブ(学童保育)
- 一時預かり事業
- 病児保育事業
- 認可外保育施設
- 児童自立生活援助事業
- 居宅介護事業(障害児を対象とするもの)
- 学習塾
- スポーツクラブ、ダンススクール など
対象事業者に求められる措置
日本版DBSの対象事業者である学校設置者、認定を受けた民間教育保育等事業者には、以下のような措置が求められます。
教員等への研修の実施
子どもの性被害を防ぐには、子どもを監督する立場にある教員等の意識や理解を高めることが必要です。そのためには、子どもの性被害に関する現状をあらためて理解できるよう、教員等への研修を実施すべきだとされています。
児童等との面談の実施・相談しやすくする措置
危険を早期に把握して子どもの性被害を防ぐために、子どもとの面談を実施することが求められます。また、日常的に子どもが相談しやすいような環境・体制をつくる措置も必要です。子どもが感じている不安や現状の悩みを面談や相談の場で引き出すことで、性被害を未然に防ぐことにつながります。
性暴力等の被害が疑われる場合の調査、被害児童等の保護・支援
子どもへの性暴力が疑われる場合には適切な調査を行い、被害が確認された際には迅速な被害児童の保護・支援が求められます。
対象となる性犯罪前科の有無の確認
現在働いている職員、今後新しく雇用する職員に関して過去に性犯罪歴がないかを確認しなければなりません。性犯罪歴がある場合や性暴力等の恐れがある場合には、教育・保育等の業務に従事させないなどの措置が求められます。
なお、性犯罪歴がある場合は本人に事前通知され、2週間は訂正請求ができます。通知を踏まえ、訂正請求期間内に内定辞退や退職をする場合は、対象事業者に犯罪歴の内容は通知されません。
日本版DBSの対象となる犯罪と照会期間
日本版DBSの対象となる犯罪と、犯罪歴の照会期間は次のとおりです。
対象となる犯罪
対象となる性犯罪は、「特定性犯罪」と定義されているものに限ります。特定性犯罪とは、こども性暴力防止法において定められる特定の性犯罪を指し、具体的には以下の通りです。
- 不同意わいせつ
- 不同意性交等
- 児童買春
- 児童ポルノ所持、提供等
- 児童買春等目的人身売買等
- 性的姿態等撮影
- 痴漢
- 盗撮 など
なお、現時点においては下着の窃盗やストーカー行為などは、特定性犯罪とは認定されていません。
犯罪歴の照会期間
性犯罪歴の照会期間は、判決によって異なります。
- 拘禁刑(服役)の場合:刑の執行終了等から20年
- 拘禁刑(執行猶予判決を受け、猶予期間満了)の場合:裁判確定日から10年
- 罰金刑の場合:刑の執行終了等から10年
参考:参議院常任委員会調査室・特別調査室 「こどもの性被害防止に向けて-日本版DBS創設を含むこども性暴力防止法案の国会論議-」
まとめ
日本版DBSは、教育・保育の場で子どもを性暴力等から守るための重要な制度です。対象事業者においては、教員等への研修や子どもが相談しやすい環境づくりなどのソフト面の対策に加え、防犯カメラを導入し監視体制を整備する等のハード面の対策も効果的です。
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