マンション大規模修繕とは?管理組合が知っておきたい費用・進め方
マンションの安全性や建物の資産価値を保つためには、定期的な大規模修繕が欠かせません。マンションの管理組合に加入している方やマンション購入の予定がある方は、大規模修繕の周期や進め方、費用、工事内容などについて気になるのではないでしょうか。
この記事では、マンションの管理組合に加入している方が知っておきたい大規模修繕の費用や進め方について解説します。大規模修繕のタイミングが近くなっている場合や、管理組合で大規模修繕について話し合う必要がある場合などに、ぜひお役立てください。
目次
マンションの大規模修繕とは
そもそもマンションの大規模修繕とは、何を指すのでしょうか。必要な理由や通常の修繕との違いについて解説します。
大規模修繕とは?
建築基準法によるとマンションの大規模修繕とは、以下のように定義されています。
- 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
大規模修繕とは、経年劣化したマンションの設備や、建物自体の主要構造部を定期的に修繕することです。主要構造部とは、壁・柱・床・はり・屋根・階段などを指します。
マンションは躯体が大きく、部分的な修繕は日常的に行えても、外壁や屋上などマンション全体の修繕は簡単には行えません。そのため、10数年に一度大規模な修繕を行うことが一般的です。
大規模修繕の必要な理由
大規模修繕のおもな目的は、以下の2点です。
- 経年劣化への対策
- 資産価値の維持
新築当時は綺麗だったマンションも、時間の経過と共に鉄筋コンクリート造であっても外観や設備などが劣化します。特に外壁やタイル、屋根などは日々雨風にさらされ、ひび割れなどの劣化が起こりやすい部分です。このような部分を定期的に修繕することで、建物自体の劣化を防ぐことができます。
また、大規模修繕には資産価値の維持という側面もあります。外観が劣化し、設備も古くなったマンションは安全で快適な生活を送れなくなるため資産価値が下がり、家賃や売値も下がることになるでしょう。マンションの資産価値を守るためにも、大規模修繕は必要なのです。
改良・改修と修繕の違い
よく耳にする、改良・改修と修繕の違いは何でしょうか。国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では、改良工事と改修工事の違いについて以下のようにまとめています。
改良工事 | 建物各部の性能・機能をグレードアップする工事。マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替ることや、新しい性能・機能等を付加することなどがある。 |
---|---|
改修工事 | 修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事 |
引用:国土交通省「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」
上記によると、一般的に性能をアップさせることが改良であり、修繕や改良によって性能を改善することが改修です。
マンションの大規模修繕の進め方
マンションの大規模修繕を行うタイミングや、具体的な進め方について見ていきましょう。
マンションの大規模修繕のタイミング
国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、マンションの大規模修繕工事を行うタイミングは全体の約7割が平均12年~15年周期で、特に13年がもっとも多くなっています。
初めて大規模修繕を行う場合、外壁や設備等の状態を考慮したうえで13年前後を目安に実施計画を立てると良いでしょう。
※国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を基に作成
修繕計画の立案
大規模修繕を実施する際は、マンション管理組合が中心となって修繕計画を作成します。このとき、「修繕委員会」のような大規模修繕を取りまとめる委員会を設置しても良いでしょう。
修繕計画の作成時には、マンションの劣化状況を把握するために専門家による建物調査を行い、修繕が必要な箇所と不要な箇所を見極めます。部分別に工事の優先度を洗い出すことで、予算を充てる際にもスムーズに進みます。ただし、専門的な工事内容について管理組合だけで決めることは難しいため、専門家の助言を聞きながら計画を立てることが重要です。
施工会社の選定
修繕計画の作成後は、施工会社を選ぶ段階に入ります。複数の施工会社に見積もりを依頼し、相談した際の対応が適切かどうかなどを慎重に見極め、施工会社を選定してください。施工会社の選定を誤ると、施工ミスやスケジュールの遅延、不要な施工費用の追加請求など、トラブル発生の原因になり得ます。
なお、発注設計管理全般をコンサルティング会社に委託するケースも多くありますが、悪質なコンサルティングによる不正受注、水増し請求などの事例が発生しており、厚生労働省でも注意を促しています。コンサルタントに依頼している場合でも、施工会社の選定が適正に行われているか注意する必要があります。
参考:国土交通省 設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の 相談窓口の周知について(通知)
組合員の合意を得る
マンションの大規模修繕は、住民全員に関わる工事です。管理組合が決めた内容で修繕工事を実施して良いか、施行会社に発注する前に組合員の合意を得る必要があります。施行会社・工事内容・費用などに関して説明会を開催するなど、納得してもらうための活動を行いましょう。
マンションの大規模修繕にかかる費用
「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目のマンションの大規模修繕にかかる費用は、110.2万円/戸が中央値でした。割合で見ると、100~125万/戸がもっとも高く、次点で75~100万円/戸、125~150万円/戸という順です。
【費用例】
例)30戸のマンション、110.2万円/戸の場合
- 30戸×110.2万円=3,306万円
例)100戸のマンション、110.2万円/戸の場合
- 100戸×110.2万円=1億1,020万円
実際の費用はマンションの劣化状況や戸数によって大きく変わります。工事の優先度や予算、施工会社の見積内容をよく検討しましょう。また、2回目以降の大規模修繕では1回目と比べて費用が高くなる傾向にある点にも留意しましょう。
出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
マンションの大規模修繕の内容
マンションの大規模修繕の内容は、仮設工事・建物・設備の3つに大きく分かれています。それぞれ内容を見ていきましょう。
仮設工事
直接仮設工事と共通仮設工事の2種類があります。
【直接仮設工事:工事を行う作業員や周辺住民の安全を守るための工事】
- 大規模修繕を実施するための足場の設置
- 周囲に塗料や資材が飛び散らないためのメッシュシートの設置
- 防犯カメラ、センサーライトの設置 など
【共通仮設工事:おもに作業員のためのインフラを整える工事】
- 事務所・休憩所の設置
- 資材置き場、仮設トイレの設置
- 業務で使用するインターネット環境の整備
- 電話機・コピー機の設置 など
建物
1回目の大規模修繕では、建物の工事がおもな対象になります。具体的な工事内容は、以下のとおりです。
- 屋根防水:屋根部分の修繕(保護・露出)、傾斜屋根や庇(ひさし)の修繕
- 床防水:階段・廊下・バルコニーなどの床防水
- 外壁塗装等:躯体コンクリート補修、外壁塗装、軒天塗装、タイル張補修、シーリング打替など
- 鉄部塗装等:鉄部塗装(屋上フェンス、配電盤類などの塗替)、非鉄部の塗装など
- 建具・金物等:建具関係、手すり、屋外鉄骨階段、集合郵便受けなど金物類の点検・取替
- 共用内部:エントランスやエレベーターホールなど共用部分の補修
参考:国土交通省長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント
設備
設備の工事内容は以下のとおりです。給排水設備やガス設備などの生活インフラに加え、自動火災報知設備のような消防用設備も工事の対象となります。自動火災報知設備の不具合は火災発見の遅れにつながるため、必ず確認しましょう。
- 給水設備:給水管、貯水槽、給水ポンプの補修・取替など
- 排水設備:排水管、排水ポンプの補修・取替など
- ガス設備:ガス管の取替
- 空調・換気設備:空調設備、換気設備の取替
- 電灯設備等:電灯設備、配電盤類、幹線設備、避雷針設備、自家発電設備の取替
- 情報・通信設備:電話設備、テレビ共聴設備、インターネット設備、インターホン設備などの取替
- 消防用設備:屋内消火栓設備、自動火災報知設備、連結送水管設備の取替
- 昇降機設備:昇降機の補修・取替
- 立体駐車場設備:自走式・機械式駐車場の補修・取替
大規模修繕に合わせて検討したい性能向上工事項目
マンションを安全に保つためには耐震工事や防犯対策も欠かせません。また、少子高齢化が進みバリアフリー化も必須です。大規模修繕を行うタイミングに合わせて、耐震工事やバリアフリー化工事、防犯工事など建物の性能を向上させる工事も検討すると良いでしょう。
具体的にどのような工事項目があるのか、以下で簡単にご紹介します。
耐震
- 耐震壁の増設
- 柱・はりの補強
- 免震工事
- 設備配管の補強
- 耐震ドアへの交換
- エレベーターの着床装置・P波感知装置の設置 など
バリアフリー
- スロープの設置
- 手すりの設置
- 自動ドアの設置
- エレベーターの設置・増設 など
省エネルギー
- 断熱(屋上、外壁、開口部)
- 昇降機、照明等の設備の制御 など
防犯
- 照明照度の確保
- オートロックの設置
- 防犯カメラの設置 など
その他
- 情報通信(インターネット接続環境の整備等)
- 給水方式の変更(直結増圧給水方式への変更等)
- 電気容量の増量(電灯幹線の増量等)
- 利便施設の設置(宅配ボックス等)
- エレベーターの安全性向上(戸開走行防止装置の設置等)
- 外部環境(外構、植栽、工作物等の整備) など
マンションの大規模修繕・管理に役立つALSOKのサービス
ALSOKでは、マンションの大規模修繕工事中に役立つ防犯システムや、効率的な建物管理を実現するサービスをご提供しております。
修繕工事中の防犯対策
修繕工事中の防犯対策におすすめなのが、「ALSOK足場警備」です。工事中はメッシュシートが目隠しとなるため、足場を利用して不審者が不法侵入する可能性が高まります。「ALSOK足場警備」では、仮設足場を24時間365日オンラインで監視することで、不審者の侵入や覗き見を防止することに役立ちます。配線不要の侵入センサーによって不審者を感知し、万が一の際はガードマンが駆けつけ一次対応、状況によって各関係機関と連携します。
ALSOKの関連商品
効率的な建物管理
効率的に建物を管理したい場合は、コスト管理や資産価値の向上までALSOKがマンション運営をトータルサポートする「ファシリティマネジメント」や「ALSOKのビル管理・清掃業務」をぜひご活用ください。清掃など日常的なメンテナンスから、建物診断・保全、給排水処理、修繕工事に至るまでマンションの管理全般をALSOKにお任せいただけます。
ファシリティマネジメントでは、機械警備(オンラインセキュリティ)と設備管理を連携させることで、万が一異常が発生した場合に、一次対応の迅速化や点検作業の効率化を図ることができます。
また、修繕工事の際の外壁調査を効率的に行いたいという場合には、「ALSOKドローン外壁調査」をおすすめします。赤外線カメラを搭載したドローンを活用することで、人の手による高所作業の事故リスクを低減し、人件費も削減できるため調査費のコスト最適化にもなります。
ALSOKの関連商品
建物の防犯強化
マンションの防犯を強化したい場合には、ALSOKの「防犯カメラ・監視カメラサービス」の導入が役立ちます。ALSOKでは防犯カメラの設置から運用までトータルサポートを行っており、導入・運用時の負担を軽減できます。昼夜を問わず高画質な映像を撮影できるカメラなど、多彩なラインナップを取り揃えており、ご要望に応じて最適なプランをご提案します。
ALSOKの関連商品