オフィス換気の重要性とは?二酸化炭素濃度の影響や換気の方法を解説
オフィス内の換気をしていない状態が続くと、室内の二酸化炭素量が増え、健康被害や業務の効率が低下するなどさまざまな影響が出てくる可能性があります。さらに、季節性インフルエンザや新型コロナウイルスなど、感染症が蔓延しやすい環境を作り出してしまうことも大きなリスクです。
そこで今回は、オフィス換気の重要性や換気方法、二酸化炭素濃度と仕事の効率の関係性などをご紹介します。
目次
換気の重要性とは
人が室内で健康で安全に過ごすため、オフィスの空気環境には一定の基準が設けられています。
ここでは、空気環境の基準を定めた法律やそれを管轄する省庁、具体的な基準の詳細についてご紹介します。また、近年感染症対策にともない見直されている換気の重要性についてもご説明します。
換気とは
換気とは、室内の汚れた空気を新鮮な外気と入れ換えをすることをいいます。室内の汚れた空気には、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物、ホルムアルデヒド、ハウスダスト(花粉やダニ、繊維くず、細菌、ウイルスなど)が含まれています。換気は、これらの汚れた空気を室外の新鮮な空気と入れ替え、室内を常に清潔な環境に保つ役割を果たしています。
このような換気の効果は、空気を循環させるエアコンや、汚れを吸引する空気清浄機では実現できないことであり、定期的な換気が快適で健康的な空間を維持するために不可欠です。
換気の種類
換気方法は「自然換気」と「機械換気」の2つに分けられます。
自然換気
自然換気は機械動力を使わず、風や温度差などの自然の力を利用して室内の空気を外に排出し、新鮮な空気を取り入れる換気方法です。具体的には、窓や吹き抜け、換気口といった建物の構造を活用して、外部から空気を取り入れます。
室内外では風圧差や温度差が生じるため、空気の流れが自然に発生します。特に室内の空気の圧力が外より低い「負圧」の状態になると、外から空気が流れ込み、室内外への圧力を均等にしようとします。また、冷たい空気は密度が高く重いため、暖かい空気の下に流れ込む性質があります。このような空気の性質を利用することで、建物の換気口の位置や開口部の面積を適切に調整し、自然の力を使って効果的な換気することが可能です。
機械換気
外気を取り入れる送風機や換気扇を使用し、機械による力で換気を行います。機械を使用するため、電気代はかかりますが、天候などに左右されずに換気することが可能です。機械換気の方式は、自然換気と機械換気の組み合わせによって「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の3タイプに分けられます。
第一種換気
給気と排気の両方を機械で行う方式です。空気の流れを完全に機械制御するため、計画的な換気ができ、管理が必要なオフィスビル、劇場、映画館など多くの施設で採用されています。近年では、高気密・高断熱の住宅でも採用され、エネルギー効率の高い換気が可能です。
第二種換気
給気を機械で行い、排気は自然換気で行う方式です。強制的に空気を送り込むことで室内を正圧(室内の圧力が外より高い状態)に保ちます。これにより、外部から埃や汚染物質が入りにくくなるため、無菌室や手術室、食品加工工場、精密機器工場など、清浄度が高く求められる空間で利用されています。
第三種換気
給気を自然換気で行い、排気を機械で行う方式です。強制的に室内の空気を外に排出することで、室内は負圧(室内の圧力が外より低い状態)になります。これにより、室内で発生した煙や臭いなどを他のエリアに広がる前に排出することが可能です。そのため、トイレや厨房など湿気や臭いが発生する空間で多く利用されています。
オフィスの空気環境基準
オフィス内の空気環境基準は、厚生労働省によって具体的に定められています。基準の詳細については、次の表をご覧ください。なお、空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準となります。
1.浮遊粉じんの量 | 0.15mg/m3(※1)以下 |
---|---|
2.一酸化炭素の含有率 | 100万分の6以下(=6ppm(※2)以下) |
3.二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000ppm以下) |
4.温度 | ①18℃以上28℃以下 ②居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと |
5.相対湿度 | 40%以上、70%以下 |
6.気流 | 0.5m/秒以下 |
7.ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/m3以下(=0.08ppm以下) |
※1:mg/m3は空気1m3(1,000L)中に存在するmg数を指す
※2:1ppm(100万分の1)=0.0001%。10,000ppmが1%にあたる
出典:厚生労働省 ビル管理法における空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準
感染症対策にともなう換気の重要性
季節性の感染症、特にインフルエンザや風邪、新型コロナウイルスの感染症対策として、こまめに室内の換気を行うことが重要です。オフィス環境では、密接な会話や多人数の集まり、空気のこもりやすい空間が「三密」を形成し、感染症拡大のリスクを高めます。感染は主に飛沫やエアロゾル(空気中に浮遊する微小な固体や液体の粒子のこと)によって広がるため、定期的な換気によってウイルスの濃度を低減し、感染リスクを下げることができます。
特に「密閉」状態は空気の入れ替えが滞り、感染症リスクを高める要因となります。適切に換気することで、感染症予防だけでなく、清潔で快適な環境が保たれ、結果的に業務の生産性の改善も期待されます。
次の項目では、事業所内で換気を行わないことによってどのような弊害が危惧されるかについてご紹介します。
換気をしないことによる弊害
オフィス内の換気については、最近では感染症対策としてほとんどの事業所が積極的に導入を図っているかと思います。しかし換気を行わないことで、感染症にとどまらず業務上においてもさまざまな弊害が生じることをご存じでしょうか。
湿度上昇によるカビの発生
換気をしないことで湿度が上昇し、室内がカビなどの菌類の生育に適した環境となることで不衛生な状態を招いてしまう可能性があります。
アレルギー物質の濃度の上昇
オフィス内の空気にも、ハウスダストや建材から放出される化学物質などのアレルギー物質が混入している可能性があります。それらも、こまめな換気を行わなければ次第に濃度が上昇します。その結果アレルギー体質の従業員の体調に悪影響を及ぼしたり、新たにアレルギー症状の発生を誘発したりする可能性があります。
感染症リスクの増加
先述していますが、室内の換気を行わず空気がこもったままの状況にしておくことで、ウイルスや菌などによる感染症のリスクが高まります。感染症リスクを高める「密閉」状態を回避するため定期的な換気はとても重要です。
一酸化炭素濃度の上昇による健康被害
二酸化炭素濃度とともに、換気を怠ることで室内濃度が上昇すると健康に悪影響を及ぼすとされる物質に、一酸化炭素があります。一酸化炭素は空気中の濃度が急激に上昇すると中毒症状を誘発し、死亡することもある危険な物質です。またそのような危険に至らない程度の濃度であっても、一定濃度を上回れば室内の人に頭痛や疲労感、吐き気やめまいなどの症状が現れる可能性があります。
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二酸化炭素濃度と仕事効率の関係性
二酸化炭素とは、空気中に含まれる物質の1つで、私たちの呼吸や物の燃焼などの生産活動によって生成されます。室内の二酸化炭素濃度がごく少量であれば人体への影響はありません。しかし換気の不足などで濃度が上昇すると、倦怠感や頭痛、めまい、耳鳴りなど不快な症状が出ることがあります。
そのため室内の二酸化炭素濃度が高くなりすぎると、室内にいる人の健康に悪影響を与えてしまいます。また健康被害に至るほどではなくとも、二酸化炭素濃度が高い室内で作業をすることは、従業員の生産性にも影響を及ぼしてしまう恐れがあります。
このためオフィスの二酸化炭素濃度が上がると業務効率にも悪影響を及ぼすといわれており、積極的に換気することで二酸化炭素濃度を抑え、快適な環境で仕事ができるようになります。
屋内の二酸化炭素濃度の基準
屋内の二酸化炭素濃度には建物によって一定の基準が設けられており、室内の人の健康を守るためにこの濃度を上回らないよう努めることが必要です。
おもな施設内での二酸化炭素濃度の基準値と、基準を定めている省庁は次のとおりです。
- 建築物(全体)において:1000ppm以下(厚生労働省の「建築物環境衛生管理基準」による)
- 教育施設において:1500ppm以下(文部科学省の「学校環境衛生基準」による)
また、室内において快適とされる二酸化炭素濃度は600ppmとされています。二酸化炭素の濃度を計測するCO2モニターの設置により、室内の二酸化炭素濃度の状況をどなたでも確認することが可能です。従業員の健康と業務生産性確保のためには、濃度が基準を上回ることがないようこまめな換気に努めることが必要といえるでしょう。
オフィス内の二酸化炭素濃度を測る方法
オフィス内の二酸化炭素濃度を測定する場合、二酸化炭素濃度センサーの導入が効果的です。
二酸化炭素濃度センサーは、室内の二酸化炭素濃度を測定し、その数値を目安に換気を促すシステムです。濃度が一定値を上回ると通知されるため、換気が必要となったタイミングが誰でも判断できます。
ただし、オフィスの室数が多い場合には、設置するセンサーの数が増え、その分管理が煩雑になる可能性があります。センサーの数が増えると、管理が煩雑になるデメリットもあるため、導入を検討する際はその点も意識する必要があります。
オフィスでの換気方法
一定のサイクルで室内の換気を行うためには、業務効率や従業員の快適性を損なわないよう配慮のもとに実施することが大切です。
換気を行うためには、空気の入り口と出口が必要となります。たとえば窓を開放して換気する場合、1箇所だけでは効率的な換気ができません。
また、換気による空気の出入りは部屋の端ともう一端で行われることが理想的です。オフィスのどこか限定的な箇所だけに空気の流れを生むのではなく、空気がオフィス全体を流れるように換気を実施しましょう。もしオフィス内に窓が1箇所しかなければ、窓の代わりにドアを開けると良いでしょう。
対角線上の2箇所で換気を行う
もし換気扇や換気口が室内にあるなら、その対角線上にある窓を開けることで空気の通り道を作ると効果的です。窓が対角線上(向かい合った状態)で2箇所以上あるなら、その両方の窓を開放して換気しましょう。
窓と換気扇/サーキュレーターの併用
換気効率を高めるためには、窓を開けることと換気扇やサーキュレーターを併用するのが効果的です。多くのオフィスでは24時間換気システムが導入されていますが、24時間換気の換気効率は窓による定期的な換気(1時間あたり2回、5分弱の窓開け換気を行うモデル)よりも少し低めです。24時間換気を取り入れているオフィスでも、窓開け換気を併用して効率的に換気を実施しましょう。
もし、換気口があっても窓がない/窓が開かないオフィスの場合、ドアを開けて室内に扇風機を置くことで窓開け換気と同等の換気を行えます。排気用の換気口が室内にある場合は、換気口から室内の空気を外に出すように扇風機を置きましょう。換気口が室外(廊下など)にあれば、室内奥とドア付近の2箇所に扇風機を置き、いずれも室外に向けて空気が排出される向きにしましょう。
窓の高低差を利用
複数の窓の位置(高さ)が異なる場合は、高低差によって生じる温度差を利用して空気の流れを作ると効果的です。暖められた空気は上へと流れる性質があるため、高い窓と低い窓がある場合は低い窓→高い窓へと空気が流れます。
窓が少ない・換気が難しい場合
窓が1つしかない部屋や、空気がこもりやすいスペースの換気には、扇風機やサーキュレーターを活用して空気を循環させましょう。上記の2でご紹介した方法も、ご参照ください。
オフィスの必要換気量と必要換気回数・時間
オフィスで換気を行う際は、できるだけ業務に支障をきたさず円滑な実施も考慮する必要があります。オフィスにおける換気の考え方について、一般的に提唱されているものを次にご紹介します。
必要換気量
建築基準法第20条に基づいて算出されたオフィスの必要換気量は、「在室者1人あたり20m³/h」です。その一方で、空調・衛生工学会規格による必要換気量は「1人あたり30m³/h」となっています。このため一般的には、在室1人あたり30m³/hを満たしていれば十分な換気量にあたるとされています。この30m³/hを浴槽の水にたとえると、浴槽1杯の水0.2m³(200L)×150となり、お風呂150杯分もの換気が必要ということとなります。
必要な換気回数・時間
一般的には、「1時間あたり10分程度」の窓開け換気を実施することが理想的とされています。季節によっては室温に影響を及ぼす可能性もあるため、多くの場合は「換気1回あたり5分より少し短い時間とし、それを1時間に2度実施する」ことが望ましいといわれています。
オフィスで換気する際のポイント
オフィスでより効率的な換気を行うために、適切な換気のタイミングを知ることも大切です。
ビルの換気設備を確認する
ビルの換気設備の数やタイプを事前に確認することが重要です。特に大型ビルの場合、集中管理されていることが多く、室内の空気循環が建物全体で一元的にコントロールされています。そのため、事前に管理会社に設備の状態や運用方法を確認することをおすすめします。
一方で、雑居ビルや個別に管理されているオフィスの場合、建物全体ではなく各フロアや部屋ごとに換気が行われることもあります。このような場合は、窓が開けられるかどうかも確認し、自然換気が可能であれば積極的に活用することでより効果的な換気が行えます。
冬場は湿度低下にも注意する
オフィスの温度や湿度は、労働安全衛生法の「事務所衛生基準規則」が設けられています。エアコンなどの空調を設けているオフィスでは、湿度が40%以上70%以下に保つことが努力義務とされています。湿度が低く乾燥した環境では、ドライアイや喉の不調、さらにはインフルエンザの蔓延などの健康被害が生じる恐れがあります。
具体的な対策としては、加湿器を使用して適切な湿度を保つことが重要です。また、サーキュレーターを活用して空気の循環を促し、オフィス全体の温度や湿度のムラを減らすことも効果的でしょう。これらの対策を講じることで、従業員の健康を守り、快適な作業環境を維持することができます。
出典:厚生労働省 事務所衛生基準規則
複数の人が集まる場所は頻繁に換気を行う
複数の人が集まる場所では、頻繁な換気が重要です。特に会議室や食堂、共有スペースなどは、多くの人が同じ空間に集まりやすく、密閉・密接のリスクが高くなりがちです。これらの場所では、可能な限り定期的に窓を開けて換気を行い、空気を外部と入れ替えるようにしましょう。
また、窓がない密閉空間の場合は、空調設備やサーキュレーターを活用して空気の循環を促し、効果的な換気を行うことが大切です。
快適なオフィス環境維持には換気扇の掃除も重要
快適なオフィス環境を維持するには、換気扇の掃除やメンテンナンスも重要です。ここからは、換気扇のメンテナンスの必要性と交換タイミング、換気扇の掃除についてご紹介します。
換気扇の定期メンテナンスの必要性
オフィス内の二酸化炭素濃度を、継続的に基準内に保つためには換気扇の定期的なメンテナンスが必要です。換気扇は定期的に掃除しないと埃が溜まり、オフィス環境にさまざまな影響を及ぼします。具体的には、換気効率低下による電気使用量の増加、湿気によるカビの発生、埃の蔓延による健康被害が挙げられます。
換気扇の点検や清掃などの定期メンテナンスに関して、社内対応が難しい場合は専門業者に依頼して清潔で好調な状態を維持しましょう。
換気扇の交換タイミングとは?
換気扇を稼働させ、次の状況であれば機器を入れ換えるタイミングといえます。もしこれまであまり動かしていなかった換気扇を換気のために活用したい場合、必ず状態を確認して入れ換えの判断をしましょう。
- スイッチを入れても動作しない
- 普段の使用時と異なる音が気になる
- 換気扇を動作させても、空気を吸い込まない
オフィス内の従業員だけでは交換が必要かどうか判断することが難しい場合は、専門業者(取り付けを依頼した販売店など)に相談して早めに対処しましょう。
換気扇の定期的なメンテナンス方法
換気扇はファンを回すことで空気を流動させる機器であるため、継続使用することで汚れが発生しやすい特徴があります。換気扇の汚れが付着したままでは不衛生になりやすく、せっかく感染予防のために行っている換気の効果が適切に得られません。そのため換気扇も定期的にメンテナンスする必要があります。
換気扇ファンの埃汚れ掃除
ファンに溜まった埃による汚れを、ハタキやハンディモップなどで掃って落としましょう。ファンに油性の汚れがこびりついているときは、中性洗剤での拭き掃除や取り外しての洗浄が有効です。
ダクト清掃
換気扇の使用にともない、ファンが格納されている換気ダクトの内部にも、さまざまな汚れが付着しやすくなっています。掃き掃除や拭き掃除で、ダクト内の汚れもしっかり落としましょう。
もちろんこれらの清掃も、換気扇が高所や危険をともなう箇所に設置されている場合、従業員の手で行うことは困難です。そのようなときには販売店や専門業者に相談し、メンテナンスを依頼しましょう。
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ALSOKでは、機械警備・オンラインセキュリティ「ALSOK-G7」のオプションサービスとして「換気促進ソリューション」をご提供しています。
ALSOKの換気促進ソリューションは、「ALSOK-G7」に二酸化炭素濃度センサーを追加し、オフィス内の二酸化炭素濃度が基準値を超えると自動でメール通知を行い、オフィス内の従業員に換気の目安を自動通知する仕組みです。新たに機械警備を導入されるお客様はもちろんのこと、既に機械警備を導入しているお客様でも追加が可能です。
セキュリティ対策と同時に換気対策も行うことができます。
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換気対策の強化とともに、換気設備の定期メンテナンスもALSOKにお任せください。ALSOKのファシリティマネジメントは、ビル管理の一環として換気扇など換気設備のメンテナンス、ビル内の清掃もお引き受けします。
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まとめ
オフィスの換気は、従業員の健康状態を良好に保つことで業務効率の維持や向上に役立つものとされてきました。近年では感染症対策としての有効性も叫ばれ、より屋内換気の必要性が強調される機会が増えています。
ALSOKでは、二酸化炭素濃度センサーによる換気お知らせ機能を備えた警備システムも登場し、オフィスの防犯対策を行いながらより効果的・効率的な換気を実施することができます。これらのシステムを活用することで、従業員の安全を確保しつつ、快適で効率的な作業環境を整えることができます。
ぜひこの機会に、オフィスの換気環境の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。