外壁調査の必要性やドローンを使った調査方法のメリット・デメリット
建築基準法で、竣工後もしくは外壁改修等から10年が経過した建物に義務付けられている「外壁調査」。従来の調査方法は期間や費用がかかるといわれてきましたが、近年はこれらの調査もドローンを活用して速く正確に行う方法が広まりつつあります。
本コラムでは、外壁調査の概要についてご説明しつつ、ドローンを活用する最新の調査法やそのメリットについてご紹介します。
目次
外壁調査とは
外壁調査とは、すでにある建物の劣化診断における一部の調査を指しています。日光や雨、風などで建物の外壁は次第に劣化していきますが、その度合いが現状どの程度であるかを定期的に調べるのが外壁調査です。令和4年4月の関係法令改正により、外壁の調査方法としてドローンによる赤外線調査が認められました。
外壁トラブルにも、ひび割れや白華(はっか)現象(外壁表面に白い粉のようなものが浮き出ること)、表面のタイルの浮きなどいくつかの種類があります。それらが発生していないか、発生している場合どの程度修繕が必要かなどを、打診調査・赤外線調査などの方法で調べます。
なお、外壁調査は建物の竣工後もしくは外壁改修等から10年が経過した時点で行うことが建築基準法で定められています。竣工から10年を過ぎても必要な外壁調査を怠っていたり、調査結果について虚偽報告を行ったりすると罰則が適用されることもあります。
外壁調査の必要性
外壁調査を実施する必要性は、次の通りです。
事故を防ぐため
外壁調査を実施・報告することが重要である理由の一つは、調査報告の指摘事項や注意点に則って適切な維持管理や修繕を実施することで、建物劣化を要因とする事故の未然予防につながることです。建物の外壁が劣化してくると外壁が崩れ、通行人が事故に遭う可能性があるため早めの整備が必要となります。
法律で義務化されているため
外壁の全面打診調査は、平成20年の建築基準法改正によって義務化されました。この「建築基準法第12条に基づく定期報告制度」では外壁点検の時期は次のように定められています。
- 特定建築物定期調査(打診、目視等)により異常が認められた場合
- 竣工後10年を超えた場合
- 外壁改修後10年を超えた場合
- 外壁の全面打診等調査の実施後10年を超えた場合
目視及び部分打診調査は8年〜10年ごと、全面打診等調査は10年ごとに実施して、調査結果を報告しなければなりません。
建物の外見を良くするため
外壁を調査し、適切に維持・管理することは建物の外見を良い状態に保つだけでなく、将来的な修繕コストを抑えることにも寄与し、建物管理者にとって大きなメリットとなります。外壁にひびや剝がれがあると不動産価値の下落にも繋がるため、しっかりと点検や調査することが必要です。
外壁調査の一般的な方法
ここでは、一般的に実施されている外壁調査のおもな方法についてご紹介します。
打診調査
打診調査とは、専用の道具(テストハンマー、打診棒など)を用いて、壁を叩いてその音を聴くことで状況を調査する方法を指します。仮設足場や高所作業車を使用する以外に、屋上からロープを使って降下しながら調査を行う「ロープアクセス工法」があります。
道具で壁を叩くと、叩いた箇所によってさまざまな音質を聴き取れます。その音の高低により、壁が浮いている箇所や壁の内部に損傷が発生している場所を発見できます。
打診調査を行う際には、目視による確認や触診も並行して実施されるため、調査員の腕前次第では非常に的確に外壁の状況を確かめることも可能です。ただし、調査員の技量に調査の精度が左右されるというデメリットもあります。
赤外線調査
赤外線調査とは、赤外線カメラによってサーモグラフィー画像を撮影し、温度の違いから外壁の状況を確認する非破壊検査です。この方法は足場を組む必要がないため、安全性が高く、低コスト、さらに短時間で調査ができるというメリットがあります。
ただし、地上から撮影し調査する場合は高層部分の精度が落ちることから、打診調査と併用する必要があります。また、外壁が乾いていなければ調査が難しく、天候などの条件によってはスケジュール通りに調査が行えない場合もあります。
それぞれの調査方法にはメリットとデメリットがあるため、これら2つの調査方法を組み合わせて調査するのが一般的です。
外壁調査はドローンの時代に
ドローンの市場規模は年々拡大傾向となっており、2023年度のドローンビジネス市場規模は前年比23.9%増の3,854億円となっています。さらに2028年度には、9,054億円に達すると予測されています。
空撮や物流、農業分野での活用のほか、近年では外壁調査などの点検業務においてもドローンを活用する方法が普及しつつあります。
高所の調査であっても、ドローンを活用すれば足場やはしごをかける必要がありません。そのため、従来の方法より安全面や効率化、コスト削減を図れるなどの特徴があり、今後も更なる普及が期待されています。
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ドローン調査のメリット
ここからはドローンを使った外壁調査のメリットをご紹介します。
短期間で調査できる
ドローンを外壁に沿って操作するだけですので、作業が非常にスピーディです。
品質の高い調査が可能
高解像度の赤外線カメラを搭載し、精度の高いデータを取得することができます。外壁のひび割れや膨れなどのほか、漏水・含水を検知するなど高品質な調査が可能です。
安全面でのリスクを抑えられる
ドローンで調査する場合、足場やゴンドラ等を設置する必要がありません。調査員が高所で作業する必要がなくなるため、安全面でのリスクを抑えることができます。
調査コストを抑えられる
ドローン調査では仮設足場を組む必要がなく、高所作業車を準備する必要もないため、比較的コストを抑えて調査を行うことができます。
修繕作業の正確な見積もりが可能
ドローンによる外壁調査では、空撮によって建物全体を点検することが可能です。手作業だと確認できる範囲が限られるため、修繕見積もりが実際の修繕範囲とずれてしまうリスクがありますが、ドローンを使うことで人の手が届かない部分まで調査できるため、より正確な見積もりを出したうえで修繕に取り組むことができます。
ドローン調査のデメリット
ドローンを使った外壁調査のデメリットは次のようなものがあります。
天候に左右されやすい
悪天候だとスケジュールを後ろ倒しせざるを得なくなるなど、調査の可否に天気・気候が影響してしまいます。赤外線カメラでの撮影を行う都合上、外壁が乾いていなければ調査できないほか、強風時には調査が出来ない場合もあります。
ドローンを飛ばせられない場所もある
隣接する建物との間が狭い場合や、国の重要施設などの周辺ではドローンを使用出来ないことがあります。
隠れた損傷や微細な劣化を検知しづらい
ドローン調査では赤外線や高精細カメラを使用した視覚的なデータを収集できますが、外観から確認できないような隠れた損傷や微細な劣化を検知することは難しいです。そのため、ドローン調査だけでは不十分な場合は、音で異常を検知する打診調査と併用するのが望ましいです。
ドローンを使った赤外線点検と従来の点検方法の比較
ここでは、従来の「打診・赤外線」の点検方法と、「ドローンを使った赤外線」の点検方法で、一般的な価格、精度、期間の相場を比較します。
足場を組んでの打診調査 | ゴンドラ(作業車)による打診調査 | ロープによる打診調査 | 地上からの赤外線調査 | ドローンを使った赤外線調査 | |
---|---|---|---|---|---|
価格 | ☓ | △ | △ | ○ | ○ |
精度 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
期間 | ☓ | △ | △ | ○ | ○ |
1.価格の比較
もっとも価格が高くなるのは、「足場を設置しての打診調査」です。危険が伴う作業を依頼することや、足場の設置コストそのものが高いため、その分コストがかかります。
次に「ゴンドラ(作業車)による打診調査」、「ロープによる打診調査」の順でコストがかかり、一番コストを抑えられるのが「地上からの赤外線調査」や「ドローンを使った赤外線調査」です。
2.精度の比較
「足場を組んでの打診調査」「ゴンドラによる打診調査」「ロープによる打診調査」は、いずれも打診調査であり、精度に差はありません。
赤外線調査は画像情報のみでの確認となるものの、「ドローンを使った赤外線調査」は壁面に沿って移動しながら一定の距離で撮影できるため高精度での調査が可能です。一方、「地上からの赤外線調査」は、高層部分の精度が低下してしまうため、精度面での信頼がやや劣ります。
3.期間の比較
短期間の調査が可能となるのは、基本的には1日で調査できる「ドローンを使った赤外線調査」です。次に、「地上からの赤外線調査」も1日から数日で終わります。
「ロープによる打診調査」や「ゴンドラによる打診調査」は、最短でも数日調査にかかります。「足場を組んでの打診調査」は、最短でも数週間、場合によっては数か月かかることもあります。
外壁調査を依頼する際のポイント
外壁調査を依頼しようと検討している場合は、次のポイントを踏まえて依頼しましょう。
複数社から見積もりを取る
外壁調査は業者によって料金設定が異なります。また、建物の規模や調査方法などでも差があり、仮設足場を設置したり、ゴンドラを準備したりとコストがかかる調査方法の場合は費用が高い傾向にあります。
事前に複数社から見積もりを取って比較検討し、納得した価格の業者に依頼すると良いでしょう。
外壁調査の実績やサポート体制を確認する
外壁調査は専門的な知識や技術が必要な作業のため、調査員の技術力に精度が左右される面があります。また、外壁調査の方法や流れなどが複雑な場合もあり、説明を受けないと、なかなか理解が難しいことも多いです。十分な実績がある業者か、手厚いサポート体制が整っているかをチェックしておくことが大切です。
ドローン調査の場合は天候に注意
ドローン調査は、安全に飛行できる気象状態でないと作業を実施することができず、天候に左右されやすいという特徴があります。雨に濡れた状態では赤外線調査自体が困難となりますが、雨や風はドローンの飛行性能にも大きく影響するため、安全な調査を行う観点からも、雨や強風の際には調査を延期することとなります。
ドローン調査の場合は天候に注意し、予備日の相談までを事前に確認して実施するのがおすすめです。
ALSOKのドローン調査では、訓練や実績を積んだ専門の担当者がドローン操作を行い、見積もりから修繕工事後の管理までワンストップでご提供しております。
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【ドローン外壁調査を実施する際の社内稟議書案用テンプレート】
(件名)ドローンを使用した外壁調査の実施について
(主旨)建築基準法の定めにより、当該施設の外壁調査を実施する必要があるが、安全面や調査期間、調査費用を考慮し、ドローンによる調査を実施したく、下記についてご決裁をよろしくお願いいたします。
記
- 1. サービス名
- ALSOKドローン外壁調査
- 2. 価格
- 〇〇〇〇円(別添見積書参照)
- 3. 実施期間
- 〇〇日(別添見積書参照)
- 4. 実施対象施設
- 〇〇
- 5. 理由
- ドローンによる外壁調査は、ドローンに搭載した赤外線カメラで撮影する調査手法であり、高所作業や足場の設置が不要なことから、従来のゴンドラやロープを使用した調査、足場を設置しての調査と比較して、安全面や調査期間のメリットが大きいほか、低価格で実施可能なため。
まとめ
今回は、外壁調査のさまざまな手法やその特徴を説明しながら、近年普及しつつあるドローンによる外壁調査の有用性についてご紹介しました。
ドローンによる調査のメリットは、調査期間が短く済むことと精度の高さ、安全面を両立できる点です。かかるコストを考えても、効率的でバランスの良い調査方法といえるでしょう。ドローンによる外壁調査を検討している場合は、ぜひALSOKにご相談ください。