回復体位とは?必要な場面と姿勢のポイント

回復体位とは?必要な場面と姿勢のポイント
2024.02.26

隣にいた人が突然意識を失って倒れた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。もちろん救急車を呼んで救助を待つことも重要ですが、救急車の到着を待っている間にも状況は悪化するかもしれません。そこで知っておきたいのが回復体位です。この記事では、要救助者に対して有効な回復体位について解説します。

目次

回復体位とは

回復体位とは具体的にどのような姿勢でどのような場面で必要なのでしょうか。

回復体位とは

回復体位とは、呼びかけなどに反応はなくても(意識はない)、普段通りの呼吸をしている要救助者に対して行う、呼吸を妨げられないようにする「横向きに寝た姿勢」のことで、呼吸しやすく、気道が確保され、嘔吐しても喉に詰まらない姿勢です。

意識がない状態では、舌の根本が落ちこんだり、吐物・異物が気道を塞いでしまい、呼吸できなくなってしまうおそれがあるため、気道の確保が第一に重要です。救急車の到着を待っている間に回復体位をとらせることで、正常な呼吸を維持することができます。

なお、回復体位のように要救助者に対して行う最初の行動を「ファーストエイド(応急手当)」と呼びます。ファーストエイドは一般の人でも比較的安全に行えるので、この機会にやり方を身につけておきましょう。

どのような場面で必要?

回復体位が必要になる場面としては以下のような状況があります。

  • 心肺蘇生(AEDの使用を含む)を行い呼吸は戻ったものの、意識が戻らないとき
  • 意識がなく、吐血しているとき
  • 助けを呼ぶために、要救助者のもとを離れるとき など

回復体位の姿勢のポイント

回復体位

実際に回復体位をとらせる際は、以下の手順で行いましょう。

  1. 仰向けになっていた場合、救助者側にある腕を横に開く
  2. 出した腕の方向に、要救助者の肩と腰を持って静かに引き起こし、体を横に向ける(右手なら右向き、左手なら左向き)
  3. 上側の肘を曲げて手の甲を顔の下に入れ、頭を後ろにそらせて下あごを前に出し、気道を確保する
  4. 姿勢を安定させるため上側の膝を90度に曲げて腹部に引き寄せ、膝を床につけて横向きの状態を維持できるようにする

回復体位をとらせる目的は、意識がない状態でも正常な呼吸を維持することです。要救助者の安静を保ち、またスムーズに救急隊員などに引き継ぐためにも、次のポイントに注意してください。

  • 救助者と要救助者の安全を確保する(二次被害を起こさない)
  • 揺れやすいなど不安定な場所で寝かせない
  • 人通りが多いなど、人と接触しやすい場所で寝かせない
  • 周囲の人間が必要以上に騒ぎ立てない

要救助者を発見した場合

社内で倒れる人

回復体位という処置方法に限らず、要救助者を発見した場合には一時救命処置(心肺蘇生法やAEDの使用)やできる限りのファーストエイドを施すことで状態が悪化することを防ぎ、生存率の上昇などにつなげられます。

一緒にいる人や周囲にいる人が突然倒れ、救助が必要だと思われる場合は、以下の手順で対応しましょう。なお、要救助者を発見した場合の対処方法は成人・小児問わず共通です。

要救助者を発見したら周りに協力をお願いする

まず行うべきことは、周囲の観察と周囲に協力を求めることです。人通りの多い場所で倒れた場合などは、要救助者を安全な場所に移動させないと通行人と接触し、二次事故が起こる可能性があります。要救助者を安全な場所まで一緒に運んでくれる人、処置を手伝ってくれる人など、協力してくれる人を見つけたら速やかに安全を確保しましょう。

119番通報し・AEDを用意する

安全を確保できたら、できるだけ早く119番に通報してください。このとき、ケガの状況や出血の有無、呼吸や意識の確認などを行い、通報時に分かる範囲で伝えましょう。さらに近くにAEDがある場合には速やかにAEDを取りに行ってください。ただし1人では対応しきれないため、協力してくれる人の中から119番通報をする人、AEDを持ってくる人を指名してください。

人工呼吸と胸骨圧迫を行う

呼吸していない場合は、AEDを取りに行っている間に、胸骨圧迫や人工呼吸など心肺蘇生を行います。なお、人工呼吸は訓練を受けた方がいる場合に実施し、胸骨圧迫を優先的に行ってください。

AEDを使用して救命処置を行う

AEDが到着したら、AEDのアナウンスに従って処置を施します。AED付属の電極パッドを要救助者の胸部に貼り付けると、AEDが自動で心電図を解析し電気ショックが必要かどうかを判断してくれます。

AEDを使用したことがない方でも操作できるよう、AEDが操作手順やショック後の胸骨圧迫の有無などをアナウンスしてくれるので、AEDの指示に従って対応してください。

呼吸が正常になったら回復体位にし、救急車の到着を待つ

AEDによる救命処置や胸骨圧迫により呼吸が正常に戻ったら、傷病者を回復体位の姿勢にしましょう。その際、AEDの電極パッドは貼ったままにしておきます。
呼吸が戻らなかった場合は、救急車が到着するまでAEDの電極パッドを貼ったままにし、AEDのアナウンスに従って再度心肺蘇生を行ってください。

なお、AEDの使い方が分からないという方は、以下のコラムをご参考にしてください。

いざというときの知識を持っておこう

AED

ここまで、要救助者を発見した際に取るべき行動や、意識はないが正常な呼吸をしている場合に有効な回復体位についてご説明しました。しかし、実際に目の前で人が倒れた場合に冷静に対処できるかどうか不安な方がほとんどでしょう。

特にAEDは日常生活では接する機会が少ないため、「正しく使えるか不安」と思いがちです。社内や周囲で急な要救助者が出たときに備えて、AED講習を受けておく、AEDの設置場所を把握しておくなど、いざというときの知識を持っておくことが大切です。

ALSOKのAED講習

ALSOKでは、企業向けのAED講習を行っています。AEDの正しい使用方法だけではなく、どのような種類のAEDを導入するべきか、導入後の管理方法など、企業のAED導入に関してトータルでサポートしてします。

AEDの実技講習では、ALSOK独自の資格を保有している講師から、心肺蘇生法(CPR)の基礎知識とAEDの正しい使用方法を学べます。

AED講習の詳細については、以下のコラムをご確認ください。

AEDの設置場所

AEDを導入するにあたり、どこに設置すればよいのか悩んでいる担当者の方もいるでしょう。AEDの設置場所として適しているのは、おもに以下のような場所です。

  • 人目につきやすい場所
  • 誰でも取りに行ける場所
  • 階段やエレベーター付近(階層移動がしやすいように)
  • 温度や湿度が適切な場所

AEDの設置場所が分かりにくいと、要救助者を救助するまでに時間がかかってしまいます。迅速に救助をするためにも、どこに設置するかは非常に重要なポイントです。

なお、AEDの設置場所を決める際のポイントや、AEDの設置義務などに関しては以下のコラムもぜひ参考にしてください。

まとめ

回復体位は、声をかけても反応はない(意識はない)が、正常な呼吸が確認できる要救助者に対して有効な処置方法です。回復体位のやり方やAEDの使用方法など、応急処置に関する知識を社員に周知しておくことで、社内や周囲で要救助者が出た際も迅速に対応できるでしょう。

ALSOKではAEDの導入・管理・講習に関するトータルサポートを行っております。AEDの設置や講習をご検討の場合は、ぜひALSOKにご相談ください。