小売店(コンビニ・スーパーなど)開業の流れや準備、必要な資格など

小売店(コンビニ・スーパーなど)開業の流れや準備、必要な資格など
2024.09.30更新(2020.09.03公開)

雑貨店やコンビニなどの「小売店」は、若者から高齢者まで幅広い層の来店が期待でき、取り扱う品目によっては、社会情勢に売上を左右されにくいという特徴を持っています。独立して小売店の開業を検討している方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、小売店の開業を検討している方のために開業の流れや準備、必要な資格についてご紹介します。どのように計画を立て、開店に向けどのように行動すべきなのかを知り、経営に向けた意識を準備段階から作っていきましょう。

目次

事業計画の作成(計画の立て方・収支計画など)

事業計画の作成(計画の立て方・収支計画など)

事業計画は、どのような事業を始める場合でも初めに必ず行っておく必要があります。
事業計画書に記載する事項としては、創業理由・代表者の経歴・具体的なビジネスモデル・事業の見通しなどが挙げられます。つまり、どのような人物がどのような理念を持って、どのようなビジネスを成立させようとしているのかが、明確に伝わるようにすることが大事です。

事業計画を作成するおもな目的は、収支計画などを明確にし、計画に沿い戦略的に事業を進めやすくすることです。また、開業資金の一部を融資や補助金などで調達する予定があるなら、その審査で事業計画書を提出する必要があります。開業資金をスムーズに工面するためにも、事業計画書は時間をかけて作成したほうが良いでしょう。

業態別に見る開業資金

1.コンビニなどのフランチャイズ店舗

小売店のなかでも、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)はフランチャイズ制の出店形態をとっているため、個人の経営者が参入しやすい利点があります。一から店舗を作るよりも少ない資金で開業できるメリットがありますが、自身の裁量だけで経営を続けられないデメリットもあります。

コンビニを例に、フランチャイズ店の開業資金の目安を見ていきましょう。

  • フランチャイズ加盟金:100万円から300万円
  • 開店準備金:50万円ほど
  • 自身や家族の生活費としての余剰金:100万円~200万円ほど

これらを合計すると400万円ほどで開業が可能です。しかし、コンビニは利益率が高くないため、集客力が経営に大きく影響します。立地やアクセスの良さが非常に重要なため、顧客視点で「立ち寄りやすさ・買い物のしやすさ」を考慮して出店を検討することが大切です。

2.直営店舗による小売店開業

直営店舗を構えて開業するスタイルは、もっとも多くの開業資金を必要とします。
例えば、首都圏に1店舗を開店するためには最低「1,000万円」の資金が必要といわれています。その資金の内訳は、次のとおりです。

  • 物件の取得費用:100万円から200万円
    └内訳:保証金(敷金)・礼金・仲介手数料・前家賃・造作譲渡料・保険料など
  • 物件の改装工事費用:300万円ほど
  • 向こう2~3ヵ月分の家賃や人件費:400万円ほど
  • 資格や許可取得などの開業費用:2万円ほど

上記の資金を事業主だけで調達することが難しい場合、半額程度の500万円ほどを自己資金で用意し、残りは融資や補助金などで工面するのも方法の一つです。また、首都圏ではなく地方での開業や、自店舗向けの設備があらかじめ整えられた「居抜き物件」の場合は、開業資金を抑えられる場合もあります。

具体的な準備(資金調達・物件探し・資格・各種申請)

具体的な準備(資金調達・物件探し・資格・各種申請)

小売店を開業するには、資金調達以外にも、さまざまな申請や手続きなどの準備が必要です。また、実店舗を構える場合には物件を確保しなければなりません。
ここからは、小売店の開業に向けて必要な「行動面」での準備事項をご紹介します。

資金調達で押さえたいこと

開業資金を全額自己資金で賄えるなら、それに越したことはありません。しかし、実店舗の開業には1,000万円程度かかることを考えると、現実的には難しい場合もあるでしょう。
資金調達の際は、次のような方法をうまく活用してみてください。

  • 日本政策金融公庫の融資を受ける方法
  • 国や自治体の補助金、助成金を活用する方法

融資は返済が必要ですが、補助金や助成金は基本的に返還不要です。スケジュールに余裕を設けて、まず補助金や助成金の受給を検討し、その可否や金額次第で残りの資金を融資で賄うという方法が良いでしょう。自分がどのような補助金や助成金を利用できるのか、一度リサーチしてみてください。

なお、補助金や助成金は、種類によって受給金額や審査の程度に差があるといわれています。特に審査に大きく影響するのは、「事業計画書」の内容だとされているため、事業計画書は入念に作成することが大事です。

店舗物件探しのポイント

店舗物件探しのポイント

実店舗で開業する場合は、物件探しも大切です。物件探しの際は、借りたい物件の条件を明確にしておきましょう。少なくとも、次の3点は事前に想定し、それに沿って物件を探してみてください。

  • 立地
  • 間取り
  • 家賃

出店地域や立地の選び方

実店舗の開業が成功するかどうかは、出店地域や立地選びが鍵となります。「立地」は地域だけでなく、アクセスや物件の性質(周辺の人通り・エリアの賑やかさ・駐車場の有無など)の要件も含まれます。さまざまな考慮を踏まえて、顧客を集客しやすい場所に店舗を構えることが重要です。出店を予定する地域に、実際に足を運んで商圏調査や競合店調査を実施し、特性を見て決めましょう。

家賃や間取りの選び方

物件選びの際は、店舗のコンセプトや取り扱う商品に適した間取りであることもポイントです。「間取り」は、狭すぎるのは良くありませんが、広ければ良いというものでもありません。間取りが広いとその分、改装工事費用や家賃などのランニングコストがかかってしまいます。物件の間取りは、取り扱う商品の嵩(かさ)や数量などから判断しましょう。

「家賃」は店舗の規模にもよりますが、「月商の7%~10%が目安」といわれています。家賃がこの比率を上回ると、経費において赤字になる可能性が高くなるとされています。しかし、「月商の10%以内に必ず収めなければ」と、とらわれすぎると選択できる物件が限られてしまうため、無理のない上限を決めて探すと良いでしょう。

また、先にもご説明しましたが、居抜き物件の活用も得策です。小売りの場合は、飲食店と異なり改装費用が安く済む傾向にあるため、居抜きを選択肢に入れない方も多いかもしれません。しかし、開業資金を抑える工夫として頭に入れておくと良いでしょう。

開業に必要な資格や届け出

事業を開業する際には、税務署へ開業届出書の提出が必要です。個人事業の場合は、事業開始の事実があってから1ヵ月以内、法人事業の場合は、設立後登記してから2ヵ月以内に開業届出書の提出が必要です。
また、従業員を雇用する場合は健康保険や厚生年金、労災保険、雇用保険に加入する必要があります。雇用保険の加入条件を満たす従業員を雇った際、その翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を職業安定所に提出し、労災保険については事業開始から10日以内に「保険関係成立届」を労働基準監督署に届け出る必要があります。これらの手続きを行い、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。

小売店も、取扱品や店舗の性質によって、資格の取得や届け出が必要になります。以下に主な資格・届け出のケースをまとめました。

  • 古物商許可(管轄の警察署):中古品を扱う場合に必要
  • 食品関係営業許可(管轄の保健所):食料品を扱う場合に必要
  • 飲食店営業許可:飲食店の開業に必要
  • 一般酒類小売業:酒類を販売する場合に必要
  • 動物取扱業(自治体ごとに異なる窓口):ペットなどを扱う場合に必要
  • 食品衛生責任者:飲食店では1店舗につき1人必要
  • 防火管理者:多数の人が利用する防火対象物に必要

食品関係営業許可は、農家が生産物を直送する場合や、加工品の仕入れ販売のみの場合は不要です。また、動物取扱業も扱う生体が魚類や昆虫の場合は除きます。
防火管理者に関しては、資格区分が甲種・乙種と分かれており、建物の条件によって取得するべき区分が異なります。詳細については、次の消防庁のページなどでご確認ください。

東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

自身の取り扱う店舗にはどのような資格や届け出が必要なのか、よく調べるようにしましょう。

開業準備(内外装・備品調達・従業員の確保・商品の仕入れ・オペレーションの整備)

開業準備(内外装・備品調達・従業員の確保・商品の仕入れ・オペレーションの整備)

物件を決め、開業日が近づいてきたら、改装や備品調達など、本格的な準備に取り組まなければなりません。ここでは開業する際の準備における注意点についてご紹介します。

内外装の改装や設備導入

内外装のデザインや設計などは、集客したい年齢層や店のコンセプトに合わせて検討しましょう。内装工事業者は、適切な価格で実施してもらうためにも、実績があり信頼できる業者を選ぶことも重要です。
小売業の開業時における改装費用の目安は、物件の状況によって差はあるものの、おおよそ「200万円以内」で収められる場合が多いとされています。また、スケルトン物件は理想の内装にできる反面、費用は多くかかることが一般的です。一方で、居抜き物件を見つけて既存設備を活用すれば、「50万円」ほどに抑えられることもあります。

さらに内外装の改装に伴い、設備を新しく導入する必要も出てくるかもしれません。最近は中古市場も充実しているため、費用を抑えたい場合は検討するのもおすすめです。その他にも、「休憩室や倉庫などは最安の内装材を使う」など、コストを抑える工夫は数多くあるので、アイデア次第で節約も可能でしょう。

什器や制服などの備品準備

備品は、こだわりを取り入れて選定したいという方も多いでしょう。特にこだわりがない場合は、開業にまつわるさまざまな備品を一括で調達できる、通販サイトを利用することも選択肢の一つです。必要なものが揃っているため、選定に頭を悩ませる必要がなく、量販店にはないプロ仕様の備品が手に入るメリットもあります。
備品購入の際には、チェックリストなどを作成しておくとオープン時に必要な備品を漏れなく揃えられるでしょう。

従業員の採用

店舗の開業に伴い従業員を雇う場合は、資金が少ない中で人件費の準備が必要です。人件費は、基本給や残業代だけではありません。通勤手当や社会保険料など、従業員を雇うのに必要な経費すべてを含みます。
人件費は毎月発生する固定費用であり、家賃や原価と並んで経費の大きな割合を占めます。そのため、適切な人材を確保するために、採用したい人物像を明確にし、求人媒体への原稿作成など、採用に向けた準備も進めていきましょう。

ちなみに、売上に対しての人件費の割合(売上高人件費率※)は、次の通りです。

  • 小売店全体で12.4%
  • コンビニ含む飲食料品小売業で12.9%
  • 書籍などその他小売りで12.3%

出典:e-Stat 中小企業実態基本調査 令和4年確報(令和3年度決算実績)

※売上高人件費率は、「人件費÷売上×100」で算出されます。

数字が高いと人件費にそれだけ費用を回していることになるため、経営に影響が出ることもあります。適切な数字になるよう準備しておきましょう。

商品の仕入れ

商品の仕入れ

商品を仕入れる際は、どうしても原価の金額に目が行きがちですが、重要なのは「原価率」で考えることです。小売店の原価率の目安は、「50%~75%」といわれています。業態別ではスーパーが最も高く75%ほどで、百貨店は50%ほどが目安とされています。

また、小売店が長期的に営業を続けるには、特定の問屋との信頼関係を作ることも大切です。ただし、開業して間もないなど資金が十分にない場合は、不利な取引を提示される可能性もあるため、仕入れ先は複数検討すると良いでしょう。同じ商品を他よりかなり安く仕入れられるオンライン問屋などを活用する方法もあります。

オペレーションマニュアルの作成

  • 就業規則マニュアル
  • 接客マニュアル
  • 業務マニュアル

「就業規則マニュアル」は、従業員の労働時間や賃金といった就業規則のほか、職場のルールなどをまとめたマニュアルです。例えば、「遅刻や早退時の連絡方法」や「休暇申請の手順」など従業員が働く上で守るべき規則を具体的に記載します。就業規則マニュアルは従業員が円滑に働くための指針となる重要なマニュアルです。

「接客マニュアル」は、顧客対応における挨拶や言葉遣い、表情、身だしなみといった接客マナーの基本や接客トラブルの対応法についてまとめたマニュアルです。例えば、「お客様が来店した際の第一声の挨拶」や「クレーム対応のフロー」など従業員が迅速に対応できるよう、具体的な接客スキルを記載します。また接客中のトラブルやクレーム対応についてもまとめておくと、いざというときに従業員が適切な行動を取ることができます。

「業務マニュアル」では、接客以外の業務タスクを進めるための手順やガイドライン、災害対策などについてまとめたマニュアルです。例えば、「在庫管理の方法」や「商品の陳列手順」など業務の流れを具体的に記載します。また、「災害時の避難手順」など緊急事態に備えた対策も盛り込みましょう。

それぞれのマニュアルは従業員が業務にスムーズに取り組めるよう、わかりやすく具体的に作成することが大切です。事業の標準化・効率化に関するノウハウなどは、実際に事業を始めないとわからない部分も多くあります。一度作成したあとも、定期的に見直し、その都度最適なものに更新しましょう。

なお、マニュアル作成については、専門のコンサルタントに依頼し、相談しながら作る方法もおすすめです。

店舗開業に向けてその他押さえておきたいポイント

店舗開業に向けてその他押さえておきたいポイント

店舗の内装・外装が決まり、人件費や商品の仕入れ、オペレーションマニュアルなどの詳細を詰めたら、いよいよ開業目前です。しかし、開業自体はできても、お客様が来なければ当然経営は成り立ちません。
ここからは、店舗開業に向けてぜひ行っておきたい、その他の準備についてご説明します。

従業員への研修

従業員を採用したら、オープンに向けて従業員研修を行う必要があります。新規店舗の従業員は、お店の印象に関わる大切な役割を担うため、店舗のコンセプトや商品知識などをしっかり覚えておく必要があります。しかし、新規オープンに向けた研修は短期間で行われることが多いので、遅くともオープン1ヵ月前~2週間前までは研修を開始するのが理想です。研修の内容は、事前に最低限覚えて欲しいポイントをまとめてマニュアルを用意しておくと効率的に進めることができます。

宣伝活動

新規店舗を開店する際、オープン前からどのように宣伝・告知を行うかが集客に大きく影響します。代表的な宣伝方法としては、チラシの配布やポスティング・目立つスタンド看板の設置・フリーペーパーへの広告掲載などが挙げられます。
また、近年ではSNSでの告知も欠かせません。特に若い世代では、SNSの利用率が高いため、目を引くような特徴的な宣伝をSNSで行うことで、一気に拡散される可能性があります。SNSの活用によって、効率的に店舗の認知度を高めることが期待できます。

売上管理

宣伝活動にも力を入れ、スムーズに開業できたとしても、思ったように利益が出るとは限りません。利益を出すためには、売上管理もしっかり行う必要があります。
売上管理では、週次・月次の売上を計算するだけではなく、時間帯別(ランチ・ディナーなど)に売上を記録することも重要です。どの時間帯にどのような客層が来店しているのか、よく売れる商品は何なのかと、さまざまな観点から売上データを収集することで効果的な戦略を立てることができるでしょう。これにより、店舗の運営を効率的に進め、売上アップにつながります。

セキュリティ対策

店内での万引きや強盗などの犯罪対策も、大事な開業準備の一つです。お客様に安心して来店してもらえるよう、防犯カメラの設置やセンサーライト、セキュリティシステムなどを導入し、防犯対策を具体的に検討しておきましょう。
さらに、営業時間外に侵入者が現われたり、内部不正が発生したりする可能性もあります。店舗内のセキュリティ対策を強化することは、トラブルを未然に防ぎ、店舗経営を円滑に進めるために重要です。

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まとめ

今回は、小売店(コンビニ・スーパーなど)開業の流れや準備、必要な資格などについてご紹介しました。小売店にはさまざま業態があり、実店舗を設ける場合は、物件探しや改装などの店舗準備もあります。また、店舗と商品が揃えばすぐに開業できるわけではなく、業態によっては許可や届け出が必要な場合もあります。
「開業したい店舗の業態」や「必要な準備」を明確にし、入念に作成した事業計画に基づいて早めに準備を始めることが大切です。
また、開業時には売上管理や防犯対策などを行い、お客様や従業員が安心できる環境を整えましょう。小売店の開業準備のサポートは、ぜひALSOKにお任せください。