テレワークにおける労務管理とは?新しい働き方と労務管理のポイント

テレワークにおける労務管理とは?新しい働き方と労務管理のポイント
2024.06.13更新(2022.02.15公開)

新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって大きく変化したものの1つに「働き方」があります。新型コロナウイルス感染対策としてテレワークを導入し、そのまま継続している企業も少なくないでしょう。しかしその一方で、「労働時間の管理が難しい」など働き方の変化に応じて従業員の労務管理に関する課題が生じているかと思います。
この記事では、従業員のテレワーク環境における労務管理で生じる課題に、どう対応すべきかをご紹介します。

目次

国が推奨する働き方改革

国が2015年に施行し、2019年に一部改正を行った「働き方改革関連法」で言及される働き方改革とは、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を各自が選べるようにするための改革であるとされています。共働きや育児・介護など各家庭の生活スタイルが多様化する状況にともない、適切なワークライフバランスを実現するための手段といえるでしょう。2019年に施行された働き方改革関連法に基づくテレワークの推奨に加え、感染症対策としてテレワークが広まったことを経て、多様かつ柔軟な働き方が一気に定着しつつあります。

では、テレワークはどれくらい導入されているのでしょうか?以下の図は、総務省の「令和5年通信利用動向調査」による企業のテレワーク導入状況をグラフ化したものです。

企業のテレワーク導入状況グラフ

出典:総務省「令和5年通信利用動向調査」

テレワークを導入している企業の割合は49.9%、今後導入予定の企業が3.0%となっています。未だテレワークを導入していない、導入予定がない企業は47.1%ありますが、2019年に30%未満だったテレワーク導入率が50%前後を推移し、一気に導入が進んだことがわかります。

昨今は働き方も大きく多様化し、テレワークや在宅勤務に従事する方が一気に増加しました。企業の労務管理も、テレワーク・在宅勤務へ速やかに対応できるよう、ICTを活用した対策が求められています。令和4年6月10日に総務省は厚生労働省と連携し、テレワークに関するICTと労務管理の双方について、ワンストップで相談できる窓口「テレワーク・ワンストップ・サポート事業」を設置しました。テレワークや在宅勤務は、今後も働き方の選択肢の1つとして広がっていくことでしょう。

「テレワーク・ワンストップ・サポート事業」について詳しくはこちら

多様な働き方における労務管理

上述のテレワークや在宅勤務のように多様な働き方が定着してきたこれからの社会においては、労務管理の見直しが求められるケースも多くなります。以下で、労務管理の概要と働き方改革にともなう労務管理の課題についてご紹介します。

労務管理とは

労務管理とは、企業で働く従業員の給与や勤務時間などの労働条件、働く環境、福利厚生などを管理する業務を指します。具体的な業務内容としては、給与計算や労働時間の管理、社会保険に関する手続きなどを行うものです。
正しく労務管理ができていないと、従業員が働きにくくなり労働力の定着に影響したり、労働生産性が担保されなくなったりするなどのデメリットが生じます。

テレワークにおける適切な労務管理とは

オフィス勤務時には従業員の始業・休憩・終業を一目で把握することができますが、テレワーク時には勤務状況の報告方法をあらかじめ取り決めておかなければ適切に管理することが困難です。

自宅やサテライトオフィスなどのテレワーク勤務もオフィス勤務と同様に、労働基準法をはじめとする労働基準関連の法令が例外なく適用されます。

労働者に対し就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。

テレワークにおける適切な労務管理とは

また、テレワークの実施とあわせて、始業及び終業の時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければなりません(労働基準法施行規則第5条第1項第2号)。

出典:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」

厚労省のガイドラインに記載のように、テレワークを行う際は従業員に対して労働条件の明示を行わなければなりません。また原則としてテレワークを行う従業員の労働時間を適正に把握する等、労働時間を適切に管理する責任があります。

労働時間制度の適用と留意点

テレワーク従業員の労務管理を適切に行う際、留意すべき点が2つあります。

労働時間を適切に把握する

通常の労働時間制度に基づいたテレワークを行う場合、みなし労働時間制が適用される従業員や労働基準法41条に規定する従業員を除き、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置におけるガイドライン」(平成29年1月20日策定)に基づいて労働時間管理を適切に行わなければなりません。
適切な労働時間管理を行う方法として、タイムカード・ICカードの打刻時間・パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。やむを得ず自己申告制によって労働時間を把握する場合においても厚労省のガイドラインを踏まえた措置をとる必要があります。(自己申告とパソコン上の使用時間の記録との著しい乖離がある場合は実態調査を行い所要の労働時間に補正する、36協定の延長可能時間数を超えているにも関わらず、記録上は規定を守っているように労働者によって労働時間を操作されていないか確認する、など)
テレワークなどの多様な働き方に対して柔軟な管理を行うためには、ICT環境での勤怠管理ツールやシステムを活用すると良いでしょう。始業・終業と決まった時間帯に取る休憩のほか、中抜けなども適宜記載できるものがおすすめです。

テレワーク中に起きやすい中抜けについて

テレワーク中は従業員が業務から一定時間離れる中抜け時間が発生しやすいと考えられています。
例えば、従業員から銀行や役所などへの用事を目的に休憩時間の延長による終業時刻の繰り下げを希望する場合、厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」で所定労働時間の変更などが可能とされています。(あらかじめ就業規則への記載が必要です)
そのため、テレワークの勤怠管理については柔軟な働き方の実現に対応する臨機応変な判断を求められることが少なくありません。
以下は厚労省「テレワークにおける労務管理ガイドライン」に記載されているテレワーク時の中抜けの取り扱い例になります。

テレワーク中に起きやすい中抜けについて

出典:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」

中抜け時間に関しては、労働時間管理者に開始と終了時間の報告を行い休憩時間として扱うことで、従業員のニーズに応じた働き方を実現することができます。
なお、始業や終業の時間変更が行われる場合は、その旨を就業規則に記載しておかなければならないため留意しましょう。また、時間単位の年次有給休暇を従業員が取得できるようにする場合は労使協定を締結しておく必要があります。

テレワークにおける労務管理の注意点とポイント

ここからはテレワークや在宅勤務に合わせて労務管理を見直す際、管理者が特に注意すべきポイントについても見ていきましょう。

テレワークにおける労務管理の注意点とポイント

社内コミュニケーション

従業員が業務において高いパフォーマンスを発揮できるようにサポートするのも労務管理です。従業員のサポートにはコミュニケーションが欠かせません。また、社内での円滑なコミュニケーションは従業員が働きやすい環境づくり推進にもつながります。
テレワークにより従業員とのコミュニケーションが対面で行えないことで課題を感じている企業も多いでしょう。しかし状況に合わせ、オンライン会議やビジネスチャットなど、ICTを活用したさまざまなビジネスコミュニケーションツールを積極的に活用することで、対面と同等の円滑なコミュニケーション環境を構築することも可能です。

テレワーク時の労災認定

テレワーク中に労働災害が発生した場合、労災認定が難しいという課題にも直面します。オフィスに出社していないタイミングであっても、業務にかかわることに起因して傷病に見舞われた場合、労災保険適用の対象となります。
ただし傷病事案の発生時、どのような仕事内容に取り組んでいたか明確でなければ、労災として扱えるか判断が困難な場合があり、労災認定には慎重な判断が求められます。テレワーク従業員に対しては、前項でご紹介した厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」に基づいたアドバイスを行うようにしましょう。

出典:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」

労務管理システム導入のメリット

自宅やサテライトオフィスなどのテレワーク勤務もオフィス勤務と同様に、労務管理システムを導入することで以下のメリットが得られます。

・コスト削減、業務効率化を図れる

労務管理に関する書類のやり取りなどアナログ業務にともなう金銭的コストや時間を削減でき、業務を効率化できます。

・正確な集計、計算が可能

ICTを活用した労務管理を取り入れることで、手作業で行う管理業務に起こり得る人為ミスがなく、正確な集計結果が得られます。

・勤務情報の一元管理が可能

従業員が在宅勤務やテレワークで1箇所に集まれないときでも勤務情報を一括で管理でき、管理者も場所や時刻を問わず従業員の勤務情報を確認することができます。

・従業員の個人情報管理についてセキュリティ強化できるシステムもある

労務管理に欠かせない従業員に関する情報は、社内の最重要機密にあたる個人情報でもあります。労務管理システムを選定する際は、セキュリティ機能についても考慮する必要があります。

労務管理システムの導入にコスト面でのハードルを感じている企業もあるでしょう。その際、補助金を上手に活用してシステム導入を実現できることもあります。ぜひ、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

ALSOKのサービスで業務効率化をサポート

ALSOKでも、労務管理や企業の働き方改革に役立つサービスをご提供しています。

・テレワーク従業員の健康管理手段としても使える安否確認システム

24時間365日、企業と社員のコミュニケーションルートを確保し、災害が発生した場合でも自動でメールを送信し結果を集計します。従業員とその関係者の状況を手間なくすぐに把握することができます。

  • 安否確認メール(自動配信)
  • 緊急連絡メール(管理者による手動配信)
  • 安否確認メールや緊急連絡メールの自動再送信
  • 災害情報などの情報配信サービス

など

急な災害時の安否確認はもちろんのこと、テレワーク従業員の健康管理にも役立ちます。

・労災対策に役立つ「みまもりサポート」

コントローラーひとつで在宅勤務中の従業員の非常時に備えられる、緊急通報機能を備えたみまもりサービスです。もしもの時の駆けつけや、熱中症などの急な体調不良やケガ、災害時の避難支援など各種見守りも充実しており、テレワーク中の労災対策にも役立ちます。

・「ALSOK-G7」

オフィスを24時間365日守る機械警備と、ICカードによる従業員の出退勤管理・出入管理を組み合わせた総合オンラインセキュリティです。遠隔での警備操作だけでなく、ライブ画像確認やWebで操作履歴が確認できるので、サテライトオフィスで勤務している従業員の確認や出退勤時刻の確認、従業員が帰宅した後に機械警備がセットされていない場合には携帯電話やスマートフォンなどから遠隔で機械警備をセットすることも可能。サテライトオフィスのセキュリティ強化と労務管理の効率化を実現します。

  • 各種センサーによる防犯・防災対策
  • 24時間365日の監視体制
  • リアルタイムの画像監視・音声警告
  • 出入管理と出退勤情報を一元管理
  • 警備かけ忘れをメールでお知らせ
  • 携帯電話やスマートフォンから警備セット、警備開始の操作が可能
  • 設備の状態をWebで確認、制御が可能
  • 非常押しボタンによる非常通報監視

ALSOKのノウハウを詰め込んだ総合オンラインセキュリティサービスが、さまざまなリスクからお客様をお守りします。

まとめ

感染症対策だけでなくワークライフバランスの充実化や生産性向上にもつながるテレワーク導入ですが、同時に労務管理の見直しを行うことも欠かせません。働き方の多様化にともなうセキュリティ対策などの課題も併せ、まとめて解決できるシステムの導入をこの機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。