民泊でよくあるトラブル事例と対策!民泊を始める際の申請方法も解説

民泊でよくあるトラブル事例と対策!民泊を始める際の申請方法も解説
2024.09.25更新(2020.03.17公開)

国内での空き家問題や観光客の増加にともなう宿泊施設不足が深刻化する中、住宅を活用した「民泊」が注目されています。自宅や空き家、マンションの一部を民泊として活用してみたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
民泊には業態・特徴の異なる3つの種類があり、それぞれ必要な申請や手続き方法が異なります。また、民泊運営に際し発生しやすいトラブルへの対策も必要です。
今回は、いま話題の「民泊」の種類や申請方法、民泊でよくあるトラブル事例や対策方法についてご紹介します。

目次

民泊とは?

民泊とは「民家や集合住宅の一部または全部を他の人へ有償で貸すこと」を指します。個人所有の自宅の一部を民泊として活用するケースがよく知られていますが、不動産業者が元は民家だった空き家やマンションを活用して民泊専用施設とするケースもあります。

民泊のニーズは高まっている反面、公衆衛生の確保や、近隣住民とのトラブル防止などの課題も指摘されています。そのため、国内で民泊を営業する際には、

  1. 旅館業法の許可を得る
  2. 国家戦略特区法(特区民泊)の認定を得る
  3. 住宅宿泊事業法の届け出を行う

のいずれかが必要となっています。

参考:民泊制度ポータルサイト

民泊の種類

民泊には「旅館業民泊」「特区民泊」「新法民泊」と3つの種類があります。それぞれどのような業態・特徴があるのかを見ていきましょう。

旅館業民泊 特区民泊 新法民泊
基づく法 旅館業法
(簡易宿所営業)
国家戦略特区法 住宅宿泊事業法
所管省庁 厚生労働省 内閣府(厚生労働省) 国土交通省
厚生労働省
観光庁
許認可 許可 認定 届出
住居専用地域での営業 不可 可能
(認定を行う自治体ごとに制限している場合あり)
可能
(各自治体の条例により不可もしくは営業期間の制限あり)
営業日数の制限 なし 2泊3日以上の滞在が条件 年間提供日数180日以内
(条例で実施期間が制限される場合あり)
宿泊者名簿の作成・
保存義務
あり あり あり
玄関帳場(フロント)
の設置義務
(構造基準)
なし
(条例によってはフロント設置義務あり)
なし なし
最低床面積 33m²以上
(宿泊者数10人未満の場合1人あたり3.3m²以上)
原則25m²以上/1室 1人あたり3.3m²以上
衛生措置 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供 換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等
非常用照明等の
安全確保の措置義務
あり あり
(6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要)
あり
(家主が同居しており宿泊室の面積が小さい場合は不要)
消防用設備等の設置 あり あり あり
(家主が同居しており宿泊室の面積が小さい場合は不要)
近隣住民とのトラブル防止措置 不要 必要
(近隣住民への適切な説明、苦情及び問合せに適切に対応するための体制及び周知方法、その連絡先の確保)
必要
(宿泊者への説明・苦情対応義務)
不在時の管理業者への
委託業務
規定なし 規定なし 規定あり

参考:住宅宿泊事業(民泊)を始める方へ
民泊制度ポータルサイト

旅館業民泊

旅館業民泊は、旅館業法に基づく簡易宿所として営業します。簡易宿所として扱われるのは民泊の他に民宿、ペンション、ユースホステルなどがあり、複数名で宿泊場所を共用する形態です。旅館業民泊には、「自治体の許可を得る必要がある」「運営可能な地域が限定されている」など運営のハードルが高いという特徴があります。また、条例によってフロントの設置が義務づけられている場合もあります。しかし、営業可能日数に制限が設けられていないため年間を通して営業ができ、特区民泊や新法民泊よりも大きな利益を期待できるのがメリットです。

特区民泊

特区民泊とは、「国家戦略特別区域(国家戦略特区)」において「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」を定めた区域での民泊運営を指し、旅館業法の適用対象外となります。
国家戦略特区のうち条例を定めている自治体で、都道府県知事から特区民泊の認定を受ければ、旅館業法の許可なしで運営することが可能です。
「国家戦略特別区域(国家戦略特区)」とは、国の経済成長と地方創生を目的として規定された経済特区のことで、2024年6月現在、旅館業法に関する特区として5区域が指定されています。

参考:内閣府 国家戦略特区指定区域

特区民泊は、年間の営業日数に制限がないため1年を通じて施設運営が可能ですが、2泊3日以上の滞在が条件となっておりビジネスなど短期滞在のニーズには対応ができません。

新法民泊

2018年に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行され、民泊事業者は都道府県等へ「住宅宿泊事業届出書」の届け出をすることで民泊の運営が可能となりました。これにより簡易宿所としては営業できなくても、空き家や自宅の空き部屋を宿泊場所として提供できます。
旅館業民泊や特区民泊よりも運営のハードルは低いといえますが、届け出のみで民泊を運営する場合は1年間に180日までしか営業することができません。

民泊運営の申請の出し方

民泊の運営を開始する際は、許可申請・認定取得のための届け出が必要です。民泊の種類によって申請方法が異なるので注意しましょう。

旅館業民泊の申請方法

旅館業民泊は、管轄の都道府県の保健所(保健所を設置する市、特別区を含む)へ申請して許可を取得することが必要です。許可申請を行う前に都道府県等の窓口へ事前に相談するケースが多いようです。使用する施設の構造設備が基準を満たしていることを確認し、必要書類を提出して簡易宿所営業の許可を取得しましょう。申請書類は自治体によって異なるため、該当地域の都道府県等の窓口に確認してください。

特区民泊の申請方法

特区民泊は、自治体の窓口で申請して認定を受ける必要があります。窓口となる部署や認定を受ける際の細かいルールは自治体によって異なるため、各自治体に確認しましょう。
例として、東京都大田区の場合は申請前に生活衛生課への事前相談、消防への事前相談・手続き、近隣住民への事前説明が必要になります。申請時には、申請書のほかに賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款、施設の構造設備を明らかにする図面などの必要な書類を提出します。

参考:大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の手続きについて

新法民泊の申請方法

新法民泊は、民泊制度運営システムを利用して管轄の都道府県知事等へ届け出を行う必要があります。電子申請・届け出のほか、一部書類を窓口で提出する方法、システム上で書類作成の上窓口で提出する方法があります。住宅宿泊事業届出書を提出し、審査を通過すると営業が可能です。
旅館業法の許可を得ておらず、特区民泊でもない場所において届け出なしで民泊を運営することは「ヤミ民泊」と呼ばれ、違法な民泊とみなされてしまいますので注意しましょう。他にも、家主がいない建物で民泊を運営する場合、「住宅宿泊管理業者への管理委託」も同時に行い、適切な管理が常にできる状態にしておきましょう。

民泊トラブルと対策法【1.利用者の安全を守る】

民泊トラブルと対策法【1.利用者の安全を守る】

まずは、利用者の方の安全に関する民泊トラブル対策について、見ていきましょう。

室内でのケガ・病気への対策

ちょっとした切り傷や擦り傷、打ち身や虫刺されなどには利用者自身でも対処できるよう、救急セットを備えておきましょう。また万が一の健康不安に備え、建物の分かりやすい場所にAEDを常備しておくことも大切です。

火事などのトラブル

火災対策も民泊運営には欠かせません。一戸建てか集合住宅か、宿泊室の床面積や、民泊オーナーの居住有無など、それぞれの火災危険性に応じて、必要な消防用設備が異なります。

例えば、一戸建てで民泊を運営する場合、①家主が民泊を運営する住宅に不在とならない、かつ②宿泊室の床面積の合計が50m²以下であれば一般住宅の消防法が適用されるため、住宅用火災警報機の設置が義務となります。
上記以外の場合、自動火災報知機や誘導灯、消火器は必ず設置しなければなりません(※)。11階以上の建物の場合は、スプリンクラー設備も必要となります。
※各自治体による条例等が定められている場合もありますので、民泊運営の際には地域の所轄消防署に確認しましょう。

貴重品の盗難

貴重品の盗難についても注意する必要があります。宿泊者の持ち物が盗難被害に遭った場合、オーナーの信用問題にかかわることもあります。宿泊者が他の宿泊者の貴重品を盗むことはもちろん、オーナーが居住している場合、オーナーの貴重品が盗まれることも考えられますので、現金や貴重品の盗難を防止するため金庫などを設置しましょう。宿泊者が入浴時や外出時でも安心して利用できるように、貴重品の盗難防止対策は重要です。

民泊トラブルと対策法【2.オーナーの財産・利益を守る】

次に、オーナーの財産や利益を守るための民泊対策をご紹介します。

備品の損傷

民泊を運営する際は、備品の損傷や破損についても想定しておく必要があります。部屋に置いていた壺が損傷し、オーナーと宿泊者でトラブルになったという事例もあります。
宿泊者へルールを周知することはもちろんですが、オーナー側でも損害保険に加入したり大切なものは部屋に置かないなど、適切な対策を行っておきましょう。

備品の盗難

部屋の備品が盗難されるケースも想定できます。実際に、民泊運営のために買い置きしていたティッシュなどの日用品がすべてなくなっていたというトラブルも発生しています。他にも、Wi-Fiルーターやドライヤーなどの備品も盗難に遭うことが多いとされています。
そのため、日本語だけでなく外国語でも利用ルールを明記するなどの対策に加え、民泊専用の保険に加入することも大切です。

不審者等の侵入

民泊はフロントにスタッフが常駐していない場合が多く、宿泊者以外の人も簡単に出入りできてしまいます。宿泊者が安心して利用できる環境を整えるためにも、防犯カメラやスマートロックを設置し、宿泊者以外の不審な人物が出入りすることがないか確認することが重要です。侵入対策を講じることは、オーナーの備品や所有物・資産を守るだけではなく、民泊を利用する宿泊者の身の安全確保、盗難被害防止にもつながります。

チェックイン・チェックアウト時間を守らない

民泊は通常の宿泊施設と違い、スタッフが常駐しているわけではありません。そのため、事前に知らされていたチェックイン時間を過ぎてしまうとスムーズに対応ができず、トラブルとなる場合があります。また、チェックアウト時間を超過すると、次の宿泊者のチェックインに間に合わないという事態にもなりかねません。宿泊者がチェックイン・チェックアウト時間に遅れる場合は、必ず早めに連絡してもらうよう伝えておくと良いでしょう。

虚偽内容での予約

民泊を予約する際、宿泊料を安くするために人数を偽って宿泊しようとするケースがあります。特に民泊はスタッフが常駐していないため、防犯カメラを設置したり罰則を設けたりするなどして、申告以上の人数で宿泊したり宿泊者以外の人が客室に入ることがないよう対策が必要です。

民泊トラブルと対策法【3.近隣トラブルを防ぐ】

民泊トラブルと対策法【3.近隣トラブルを防ぐ】

民泊運営に際して、オーナーがもっとも不安に思うトラブルが「近隣トラブル」といわれています。最後は、近隣トラブルの対策について紹介します。

夜間の騒音トラブル

宿泊者には、騒音防止への配慮を説明する必要があります。宿泊者が外国人である場合は外国語で書面などを準備しましょう。
トラブルを回避するためには、ある程度の騒音が発生する可能性を事前に近隣の方へ伝えておくことも対策の一環です。特に夜間は、「飲酒による騒ぎ声や大きな物音がうるさい」といった苦情が発生するケースが多くなっています。近隣の方には民泊開業前に必ず説明し、一定の理解を得ることは大切でしょう。
また、規模が大きい民泊の場合は、コールセンターなどの受付窓口を開設することも一案です。

ごみの不法投棄

ごみを近隣に不法投棄されるリスクも、民泊運営には付き物です。宿泊者に必ずルールを提示し、発生を予防しましょう。もちろん日本語だけでなく、外国語での表記も必要です。また防犯カメラを設置しておくことで状況を確認できるほか、抑止効果にもつながります。

ALSOKの民泊運営サポートソリューション

ALSOKでは、民泊運営にともなう各種支援やサポートを行っています。AEDや防犯カメラ、防火設備の設置や火災予防・防犯のためのセキュリティサービスなど、常駐スタッフが不在の民泊施設でも安全に営業するための備えを各種ご提供しています。これから民泊を始めたい方も、すでに民泊運営を行っている方も、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

今回は、民泊を運営するにあたって民泊オーナーが把握すべきさまざまな対策をご紹介しました。入居者のいない建物や空き部屋の有効活用手段として注目されている民泊ですが、法的手続きなどのほか、防犯・防災関連、トラブル対策のための備えが多数必要です。ALSOKでは民泊運営における防犯・防火・トラブル対策もトータルでサポートしていますので、安全で円滑な民泊運営のためにぜひご利用ください。