介護による離職が増えている?介護と仕事の両立のために企業が取り組むべき支援【前編】
働き盛り世代といわれる40代~50代。しかし仕事の充実度が上がると同時に親族の介護に関する問題を抱えがちな年代でもあります。この記事では、現在深刻な社会問題となりつつある介護による離職の問題を取りあげながら、正規労働者・パートタイム労働者のどちらであっても、働き盛り世代に仕事と介護を両立できるように企業が取り組むべき支援制度の活用などをご紹介します。
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目次
深刻化している企業の人手不足
少子高齢化が急速に進む日本では、各業界における慢性的な人手不足が大きな社会的課題となっています。今後も人口減少の流れは続くと見られており、社会の担い手となる就業人口も同時に減っていくことが見込まれている状況です。
そのような現状のなか、親族などの介護のために仕事を辞めざるを得なくなり「介護による離職」に踏み切る方が増えています。介護による離職によってさらに人材が流出し、人手不足を加速させます。
以下の表は、厚生労働省「雇用動向調査」による、2017年から2023年の7年間に介護や看護を理由に前職を退職した人の数をまとめたものです。
男性 | 女性 | 合計 | |
---|---|---|---|
2017年 | 35.8 | 57.1 | 92.9 |
2018年 | 18.8 | 79.5 | 98.4 |
2019年 | 20.4 | 79.8 | 100.2 |
2020年 | 17.8 | 52.7 | 70.5 |
2021年 | 24.0 | 71.2 | 95.2 |
2022年 | 25.7 | 46.9 | 72.6 |
2023年 | 17.0 | 56.0 | 73.1 |
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(2017年~2023年)
「就業形態、雇用形態、企業規模、性、年齢階級、離職理由別離職者数及び構成比」
2019年までは年々微増傾向にあり、2019年に介護・看護による離職者数は10万人を突破しました。その後、2021年の増加もあったものの、近年は約7万人まで減少しています。
介護・看護による離職者の内訳を見てみると男性が約1.7万人、女性は約5.6万人となっています。現状では女性が介護・看護を担う傾向が多いですが、少子化や家族構成の変化、テレワークなどの多様な働き方の普及などを背景に、男性が介護を担うケースが今後も増えていくと予想されます。
内閣府が発表した「令和6年版高齢社会白書」では、2011年度から2021年度の11年間で要介護・要支援の認定を受けた人が161.6万人増加していることが示されています。こうした結果から、介護・看護による離職者は今後ますます増加し、企業の規模を問わず、従業員が親族の介護をしなければいけないタイミングが増えていくでしょう。企業としても将来を見据えて対策する必要性が高まっているといえます。
なぜ介護・看護による離職が多いのか?
さて、今後さらに社会の就業人口が減っていくと推測されるなか、なぜ介護や看護を理由とした離職が多いのでしょうか。
家族としての責任
家父長制が長く続いてきた日本では、「目上の親族は最期まで家庭内で面倒をみるべき」との考えが尊重されてきました。時代が変化し核家族化が進んだ今も、各家庭や地域によってはその価値観が残り、親族の介護を家族で行う傾向も見受けられます。親族を施設に入れることに対する抵抗感があるなどの理由で、家族としての責任感から家庭内での介護を選択する方が多いとされているようです。
仕事と介護の両立が難しい
親族を介護する機会が訪れるのは、多くの方において40代~50代頃からといわれています。体力や精神力の消耗をともなう介護が中高年になってから加わることで、体力が持たない、見通しが立たない状態が続き精神負担を大きく感じる、介護のための休暇がとりづらいなど、仕事との両立を困難に感じる方もいるでしょう。実際に両立を試みたものの、心身共に疲弊し離職せざるを得なくなった方も少なくありません。
介護業界の人手不足も問題視されている
介護施設などへの入所を検討していながら、施設に空きがない、空いていても人手が足りないなどで自宅介護を余儀なくされる状況も想定できます。介護の仕事は常時人手不足といわれており、2024年8月時点の介護業界の有効求人倍率は4.02となっており、全体平均倍率1.13やその他のさまざまな職種と比較しても高い傾向にあることがわかります。
また、仕事と自宅介護を両立できていた方も、要介護者の方の症状悪化などにともなって介護の負担が重くなり、離職せざるを得なくなったという事例が多々あります。
介護と仕事を両立させるための支援制度
介護と仕事の両立が難しく、離職してしまう方が多い現状を何とか変えたいと考えている企業も多いことでしょう。介護離職が依然として多いことの要因の1つとして、国などが設けている制度が周知されていない点も考えられます。
ここでは、介護と仕事の両立を図るために用意されている各種制度についてご紹介します。
育児・介護休業法
働く人が、要介護状態(負傷や疾病、身体上もしくは精神上の障害により2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にあるご家族を介護するために休業期間を取得できる、育児・介護休業法に基づく制度です。2022年4月1日より、休業取得予定日の93日後から6か月以内に雇用契約を終了する予定がない人が対象(同じ職場に勤めている期間が1年未満の人は労使協定の締結により除外可)です。
1人の対象家族の介護に対し通算3回、93日が取得の上限となっています。
介護休業中の経済的支援として、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす方には公共職業安定所(ハローワーク)から休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。
常時介護を必要とする状態に関する判断基準はこちら
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/img/common/youkaigo.pdf
介護休暇
まとまった休業期間を取得する介護休業とは異なり、日ごとの介護行事に合わせて単発取得できるのが介護休暇で、こちらも育児・介護休業法に基づいています。介護サービスの手続きや通院付き添いなどの理由で取得でき、対象となる要介護家族が1人の場合年度あたり5日を限度に、2人以上の場合は10日を限度に取得可能です。
また、1日または時間単位で取得することができます。時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する方は、時間単位での取得を除外する労使協定を締結している場合、対象の労働者は1日単位でのみ取得可能です。休暇取得期間中の給与を無給か有給にするかは企業の判断に委ねられています。
短時間勤務
所定外労働の制限とは「従業員がその家族を介護することにともなう残業の免除」にあたり、時間外労働の制限は「従業員がその家族を介護することにともない時間外労働の上限(1か月あたり24時間以内、1年あたり150時間以内)を設けること」です。また深夜業の制限とは、「介護の理由による従業員の申請に応じて22時~5時の勤務をさせないこと」となっています。
企業においては上記の制度内容を把握し、介護にあたる従業員向けの福利厚生を法令に則ってさらに充実させることが求められます。
育児・介護休業法については、以下厚生労働省のホームページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html
就業規定の改定などを行う際には、以下もご参考にしてください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
育児・介護休業法は2024年5月に改正され、翌2025年4月以降に段階的に施行されることとなっています。仕事と育児の両立に加え、介護離職防止も軸に位置付けられているため押さえておきましょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
ALSOKの介護支援サービスで人材流出を防止
ご家族の介護をしなければならない従業員の支援のために、介護支援サービスを企業の福利厚生メニューに加えてはいかがでしょうか。ALSOKでは、従業員の方に向けて、警備会社ならではの安全安心な「セキュリティ」や「みまもり」と介護を組み合わせたさまざまなサービスをご提供しています。企業から従業員に向けて介護支援サービスの紹介を行うことも介護と仕事の両立につながるでしょう。
ALSOK介護
ALSOKでは、介護を担う方の日常生活を支える各種介護サービスをご用意しております。
- 有料老人ホーム
- グループホーム
- 通所介護(デイサービス)
- 訪問介護
- 居宅介護支援
- 福祉用具(車いす・介護用ベッドなど)貸与・販売
また、キャリア入社研修・階層別研修・自己啓発・初任者研修・資格取得セミナーなど、年間200回超の研修プログラムを実施し、働くスタッフの資質向上にも力を注いでおり、利用者様に安全安心な介護サービスをご提供いたします。介護についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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みまもりサービス
離れて暮らすご家族をコントローラー1つでみまもりできるサービスです。日常的な健康相談や緊急時の通報をボタン1つで行え、「いつも」と「もしも」の両面から安心感をプラスできます。
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みまもりタグ
みまもりタグは、ご高齢の方が外出時に身に着けられる小型の端末です。お持ちの方が今どこにいるか、おおよその現在位置を把握できるほか、移動履歴もご家族や保護者の方がスマホなどから簡単に確認可能です。
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まとめ
介護と仕事の両立のために企業が取り組むべき支援【前編】では、働く方の仕事と介護の両立の現状や、企業が従業員の介護離職を防ぐために活用可能な制度についてご紹介しました。介護を理由に優秀な人材が離職してしまうケースなども考えられるでしょう。企業として優秀な人材の流出を避けるためにも、これらの制度を活用するなど両立のための支援を行う必要があります。
後編では、企業が実際に介護離職防止の取り組みを行っている事例や、企業に必要とされる具体的な介護支援・サポート策などをご紹介していきます。
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