鍵ものがたり
2016年05月30日時点の情報です
フランスの金庫メーカーFICHETが、1920年~30年代につくったとされる。高さ約102㎝×ヨコ約64㎝×奥行き約51㎝。約500㎏。鉄製で全体がえんじ色に塗装されている。
普通の金庫を囮にして使われていた?
昭和初期に使われていた金庫で、かなり高度なカムフラージュを施した逸品です。
表に見える引き出しの鍵穴はすべてダミー。一番上の引き出しの下端をグイッと押し下げると、その向こうに本物の鍵穴が現れるのです。
「金庫と鍵の博物館」の杉山泰史さんは、家具調ならではの使い方があるといいます。
「見た目は家具でも鉄製なので、触れれば金庫だとわかります。そこでもうひとつ普通の金庫を置き、取られてもいい程度のお金を入れておくのです。泥棒は普通の金庫に目をつけるので、家具調金庫には手をつけないでしょう」
重要な財産は家具調金庫の中で安全というわけです。家具調金庫の持ち主は、相当な資産家といえそうです。
金庫と鍵の博物館に収蔵された深いワケ
この金庫は日本のある会社の備品でしたが、経理担当者が退職する際、会社から譲り受けたそうです。この人が中に10万円の貯金証書を入れたまま鍵を紛失。そこで金庫の開錠のプロだった杉山さんの父に依頼がありました。しかしその費用が10万円。お互い困ってしまいましたが、この“チェスト”がすっかり気に入った杉山さんの父は、こう提案しました。「無料で開けましょう。その代わり、この金庫を譲ってもらえませんか?」
昭和40年代の話です。それ以来、博物館に重さ500キロのチェストがあるのです
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151