鍵ものがたり
2016年07月26日時点の情報です
古代エジプト錠の複製。横向きの木材が閂(かんぬき)。手前左の棒が鍵。閂の右端上面に鍵を差し込む穴があります。
中央のタテの木材は、閂を扉や壁に取りつけるための支柱です。横幅約40㎝、高さ約25㎝。
鍵でピンを持ち上げて閂をはずす
生まれは諸説ありますが、古くは紀元前2000年ごろという説もあり、世界最古の錠のひとつに数えられます。
古代エジプト錠は「ピン」を利用した点で画期的でした。閂に数個の穴をあけ、穴にピンをさしたり抜いたりすることで開閉する仕組みです。
鍵は孫の手のような木の棒で、この先にもピンがついています(左写真)。この鍵を閂のピンの真下まで差し込んで押し上げると、閂にささっていたピンがはずれます。
写真の古代エジプト錠の閂にあいている穴は6つですが、この穴の位置や数を変えることで、バリエーションをつくることができます。仕組みはシンプルですが、「この錠の外見だけで、開け方がわかる人はまずいないでしょう」と金庫と鍵の博物館の杉山泰史さん。現代人でも古代エジプト錠をピッキングするのは至難のわざのようです
家の玄関に使われているピンシリンダー錠の原型
古代エジプト錠は、現在の錠前の主流である「ピンシリンダー錠」の原型です。
19世紀半ば、アメリカで銀行の錠前をつくっていたライムス・エール氏が、古代エジプト錠を参考にピンを利用した錠前を開発しました。参考にした古代エジプト錠よりもはるかに小さく、大量生産が可能な錠でした。エール社は、いまでは有数の鍵メーカーです。
身近な鍵の元祖が古代エジプト錠、鍵1本にも悠久の歴史が流れているようです。
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151