鍵ものがたり
2016年08月29日時点の情報です
イギリスの有名な金庫メーカー、チャブ社製で、昭和30年代に日本で使われていたもの。
重さ700~800㎏。壁は厚さ40㎜の一枚鉄です。
脚付きのように見えますが、この部分は移動用の車台です。
ダイヤル錠を破るだけで200年かかる?
一般的な金庫の壁は厚さ数ミリです。この金庫は40ミリ。しかも一枚板の鉄、いわば無垢の鉄板です。どんなドリルを使っても穴をあけることはできません。金庫と鍵の博物館館長の杉山泰史さんは、これを博物館に収納する際に、移動用の車輪をつけるために底部にネジ穴をあけようとしましたが、「穴は1ミリもあかなかった」といいます。
鍵は三重になっていて、それぞれ太いシリンダーが閂の役目をしています。ダイヤルロックの組み合わせは1億通り。1つの組み合わせにかかる時間を1分としても、すべての組み合わせを試すのにおよそ200年かかります。
たこ糸が切れたら、だれにも開けられない
チャブ社製に見られる極めつけの仕組みが、たこ糸と、その先にぶら下がった分銅の重り落下式ロックです。たこ糸は扉内側の鍵の心臓部を通り、分銅は左下の筒の上で止まっています(上の写真)。鍵が破壊されれば、たこ糸も切れます。すると分銅が筒の下に落ち、閂が入らなくなる仕組みです。たこ糸は丈夫ですが、破壊にドリルや火が使われれば確実に切れる点がポイントです。
「しかも分銅は斜めになって筒の下に落ちるので、たとえ金庫を逆さにしても筒から抜けません。つまりこの金庫は二度と開かなくなるのです」
泥棒から守った結果、持ち主も開けられなくなる金庫。その機構はいまでも健在です。
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151