鍵ものがたり
2016年10月31日時点の情報です
昭和12年ごろに造られた陸軍専用の金庫。
純日本製で当時30台ほど造られたが、現在残るのは「金庫と鍵の博物館」にある1台のみです。
世界に1台の金庫なのです。
スパイ防止のための純日本製金庫
火事でも焼けないこと。壊れないこと。開けられないこと。これが金庫の役割ですが、軍用金庫にはもうひとつ大事な役目がありました。スパイを見張ることです。
軍用金庫は鍵の仕組みが外国に知られないよう純日本製です。扉にある「機械式押しボタン錠」のボタンは50個もあります。一般的な押しボタン錠はせいぜい10個だったそうですから、それだけ金庫破りも大変だったはずです。
スパイ防止策は、金庫の分厚い扉の中にある円盤に仕組まれています。
扉の内側に直径2㎝ほどの小窓があり、そこから赤い針が、円盤上のある数字を指しているのが見えます。この数字は金庫を開けた回数です。金庫を開けるたびに円盤がカチッと回って、小窓から見える数字が1つ増えるのです。
金庫を勝手に開けたヤツはだれだ?
たとえば金庫係が毎日1回扉を開けるとします。昨日は赤い針は20を指していました。今日開ければ21を指しているはず。ところが22を指していたとしたら? 勝手に開けたヤツがいるぞ! と、スパイの存在がわかるのです。
軍の情報が敵に知られると作戦上とても不利になります。だからこの金庫には、軍の作戦に使う文書の「暗号解読表」が保管されていました。
「このように保管する物の機密性が高いほど、金庫は複雑な仕組みになります」と金庫と鍵の博物館館長の杉山泰史さんは言います。
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151