鍵ものがたり
2016年12月26日時点の情報です
(上)中心の鍵穴をよく見ると、穴の内側に左右ひとつずつ小さな突起があります。(下)合い鍵。鍵穴の突起に引っかからないよう側面にスリット(溝)が入っています。この合い鍵の谷は6つ。どこが谷かわかるかな?
ヒントは4000年前の古代エジプト錠にあった
ピンタンブラー錠は、その名にあるようにピンが主役です。1860年代にアメリカで開発されました。その原型になったのが、約4000年も前に作られた古代エジプト錠です。ピンを利用した世界最古の錠といわれています。
古代エジプト錠ではピンは1本の棒でしたが、ピンタンブラー錠のピンは2本に分断されています(図①)。ドライバーピンとタンブラーピンの切れ目「シアライン」をそろえることで鍵が回るようにしたのです。
シアラインをそろえるのが合い鍵のギザギザの「谷」です。長いタンブラーピンの谷は深く(図②のA)、短いタンブラーピンの谷は浅く(図②のB)なっているのが、わかりますか? つまり「タンブラーピンの長さ+合い鍵の谷の深さ=6本とも同じ」です。
ピッキングに強いディンプルキーも
大量生産しやすいことも、ピンタンブラー錠の特長です。ドライバーピンとタンブラーピンの長さを変え、合い鍵の谷の位置や高さを調節することで、バリエーションが異なる商品を簡単に作れます。
「ローコストで、非常にたくさんの鍵が作れることも、世界的に普及した理由でしょう」と金庫と鍵の博物館の杉山泰史さんは言います。
ピンの数を増やし、ピッキングに強いといわれる「ディンプルキー」もピンタンブラー錠の一種です。ピンタンブラー錠の時代はまだまだ続きそうです。
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151