鍵ものがたり
2017年01月30日時点の情報です
ずっしりと重たい鉄製の錠。下部の筒に合い鍵を差して回すと、半円形のツルの左端がパカッと開いたり閉じたりします。筒は長さ約20センチ、直径約5センチ。合い鍵の長さは約19センチ。先端の4センチがネジになっています。
ネジをくるくる回すイスラム式南京錠
1700年代、現在のアフガニスタンのあたりで作られた錠です。特徴はネジを利用していること。
合い鍵の先は直径8ミリほどのネジになっています。一方、錠の筒の右側には鍵穴が。穴をのぞくと、奥のほうまで、きれいにネジ山が切られています。ネジは差し込むほうを〝オスネジ〟、穴があいているほうを〝メスネジ〟と呼びます。つまりこの錠では合い鍵がオスネジ、錠本体がメスネジです。このメスネジが閂と連動しているのです。
開閉の仕組みは南京錠と同じですが、金庫と鍵の博物館館長の杉山さんは、「これほど精密なネジは、この地域ならではでしょう」と高い技術力に注目しています。
ネジの幅も高さもピッタリのすごさ
オスとメスのネジ山の幅と高さがピッタリ合わないとネジは回りません。少しでもずれると途中で止まってしまいます。実はオスネジ・メスネジがいつどこで発明されたのかはっきりしません。ただ18世紀のイスラム圏に高度な技術があったことが、この鍵からわかります。ちなみに18世紀の日本は江戸時代。ネジとはほぼ無縁の生活でした。
現アフガニスタンのあたりは、紀元前の時代からさまざまな民族が行き交い、シルクロードを通じて東西の文化の交流地点でもありました。このネジの技術はだれがもたらしたのか? 想像してみるのも楽しいですね。
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
東京都墨田区千歳3-4-1
☎03-3633-9151