防災意識の自己評価は何点?
みんなの防災意識と知っておきたい防災知識
2011年に起こった東日本大震災は、東北地方を中心とした一帯に大きな被害をもたらしました。これをきっかけとして、災害対策の重要性を理解し、防災グッズを用意したという人も多く見受けられます。しかし、長い月日が経った現状において、交換時期を迎えた防災グッズをそのまま保管しているケースも少なくありません。そこでここは、世間の防災意識の変化について解説し、身につけておくべき防災の原理原則をご紹介します。
家庭の災害対策!世間の防災意識はどれくらい?
世間の防災意識の変化を明確に把握できる機会は多くありません。大きな災害が起こった後は一時的に防災グッズのニーズが高まりますが、本当に防災意識のレベルが上がっているかどうかは別問題です。ALSOKが2018年に調査を行った結果があるので、それをもとに世間の防災意識の実情をチェックしておきましょう。
増えたと感じている人は減ったと感じている人の2倍
東日本大震災の直後と比べて、家庭における災害対策の実施状況が変化したと感じている人は全体の30%ほどです。そのうち、減ったと感じている人は約10%であるのに対し、増えたと感じている人は約20%もいます。つまり、後者のほうが2倍ほど多く、世間の感覚としては災害対策の実施状況は拡大傾向にあるということです。ただし、残りの約70%は変わっていないと感じているので、決して顕著な傾向とはいえません。
足りていると感じているのは4人に1人だけ
災害対策が現状で足りていると感じている人は少数派です。「十分足りている」と「ほぼ足りている」を合計しても全体の1/4にもなりません。また「十分に足りている」と感じている人は全体のわずか5%です。残りのおよそ3/4の人は不足していると感じており、全体の3割強の人が「全く足りていない」と考えています。現状の災害対策に対して、ごく一部の人以外は災害対策は不足していると感じていることがわかります。
災害対策の自己採点は平均33点
自分の家庭の災害対策に関して多くの人が低い点数をつけています。100点満点で評価した自己採点の結果、平均は33点という結果となりました。30点以下のいわゆる赤点を付けた人が全体の半数以上を占めています。この点数が「大きな災害が発生したら対処し切れない」と考える人がいかに多いかを物語っているといえそうです。
どのような原則があるの?防災の基礎知識を身につけよう!
防災対策には過去の悲惨な経験から生まれた原理原則があります。自分で行う防災対策に自信をもつためには、まずはこれらの原理原則をしっかり習得しておくことが大切です。ここでは日本防災士機構の「防災士教本」に掲載されている「知っておくとためになる」防災の原理原則を4つご紹介しておきましょう。
避難三原則
避難三原則
- 想定にとらわれるな
- その状況かで最善を尽くせ
- 率先避難者たれ
出典:日本防災士機構「防災士教本」
防災教育が功を奏した逸話として有名なのが、東日本大震災における「釜石の奇跡」です。
地震発生から数十分後、岩手県釜石市には想定を遥かに超える高さの津波が押し寄せ、避難所として指定されていた場所さえも飲み込まれてしまいました。ところが、この数年前から先進的な防災教育を受けていた釜石市の小中学生たちは「もっと安全な場所へ」と自らの判断で率先して避難し、結果、周囲の大人達の命を救うことにもつながりました。
この「釜石の奇跡」をもたらした防災の教えを集約したものを「避難三原則」といいます。
東日本大震災に伴い発生した津波がそうだったように、自然の猛威は人間の想定をしばしば上回ります。与えられた想定に安堵することなく自分で状況を判断し、「より安全に」なるような行動をとりましょう。
また、警報が発せられた際に「どうせ大したことにならないだろう」 「他の人の様子を見てから動こう」と考えてしまいがちな人間心理は、避難の初動を遅らせる原因となります。空振りを恐れず、率先して避難行動を開始する勇気を持つようにしましょう。
パニック発生の4条件
パニック発生の4条件
- 差し迫った危険が存在するという認識が人々の間にあるとき(単に思い込むだけでも)
- 脱出の可能性があるとき
- 脱出口に制約があるなど、全員が避難できないと考えられるとき
- 正常なコミュニケーションが欠けているとき
出典:日本防災士機構「防災士教本」
大勢の人がいる場所で緊急避難を行う際に、冷静さを失った人々が先を争って避難口に殺到する、いわゆる「パニック」が発生すると、転倒や将棋倒しといった二次災害につながったり、避難効率の悪化により被害者が増えたりしてしまう恐れがあります。パニックが起きるのはここに掲げた4つの条件がほぼ同時に満たされたときで、このうちひとつでも欠けるとパニックは起こりにくくなると考えられています。
緊急時に避難誘導を行う立場にある方は、いたずらに①の「差し迫った危険の存在」を隠すのではなく、脱出口の明確な表示や適切な通知によって、避難者の③「脱出口に制約がある」「全員が避難できない」という認識をいかにして払拭するかを考えておきましょう。
避難者一人ひとりにおいても、パニックの原理や弊害を正しく理解したうえで、④「正常なコミュニケーション」を失わないように、「慌てなくても大丈夫」「みんな避難できるから落ち着いて」といった声を掛け合うことや、日頃から訓練などを通じてコミュニケーションを図っておくことが大切です。
人が死なない防災
(出典:日本防災士機構「防災士教本」)
被災後にどのように避難生活を送るか、いかにして身内の安否を確認するかといった問題への備えは、災害から生き延びることができてはじめて意味を持つ、「生き延びた人のための防災」であるといえます。もちろん、これらの備えも重要ですが、まず第一に備えるべきは、被災したそのときに命を守るための「人が死なない防災」です。
たとえば、1995年1月に発生した「阪神・淡路大震災」では、直接死の死因のうち約8割が、家屋や家財等の倒壊による「窒息・圧死」や「外傷性ショック」でした。人が住まう住戸、多くの人が集まる公共施設では、災害耐性や減災対策が不十分であることは死に直結します。普段から多くの時間を過ごす場所ほど、耐震性の強化や家具などの転倒対策を施すようにしましょう。
日本は世界で最も自然災害リスクの高い国であるといわれます。あらゆる災害をイメージし、被災したそのときに命を守るための備えや訓練を疎かにしないようにしましょう。
姿勢の防災教育が大切
従来から行われている防災教育の手法は、大きく二つに分類できます。
ひとつは、「過去にこんな恐ろしい災害があった」といって恐怖心を喚起する「脅しの防災教育」。しかし、人間は怖いという気持ちを持続しにくいため、その教育効果も時間が経つにつれて減衰していきます。
もうひとつは「こうすれば大丈夫」「ここなら安全」といった、「知識の防災教育」。ハザードマップがその典型ですが、単に知識として情報を与えるだけでは災害イメージの固定化を招き、想定を上回ったことに対処できなくなってしまう恐れがあります。
一方、先に紹介した「釜石の奇跡」の舞台となった釜石市で取り組まれていた防災教育は、「姿勢の防災教育」と位置づけられています。これは、「避難三原則」にあるように、自分の命を守るために主体性を持って行動する意識の醸成を目指すものでした。
自然災害の怖さやその対策について学習しても、学んだことを基に実際に減災の取り組みを行ったり、いざという時に行動に移そうとしたりしなければ意味がありません。いかにして「防災に取り組む姿勢」を身に付けられるかが、今後の防災教育の課題であるといえます。
いざというときに役立つALSOKの災害対策商品・サービス
いかがでしたでしょうか。防災・減災に関する原理原則については共感できるところがあったのではないでしょうか。
ALSOKでは防災・減災に役立つ商品・サービスの提供を行っています。その一部をご紹介します。
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ALSOKでは警備だけではなく、このような災害に対するソリューションもご提供しています。地域や会社等で防災・減災に関する施策の実行、トレーニング等をされる際にはぜひお気軽にご相談ください。