AEDの使い方や重要性、心肺蘇生の手順を解説

防災 2024.09.18更新(2020.09.14公開)
AEDの使い方や重要性、心肺蘇生の手順を解説

不整脈や心停止はいつ発生するかわかりません。令和4年(2022年)に発生した心原性心肺機能停止傷病者のうち、一般の方によって目撃された数は28,834人でした[注1]。
不整脈や心停止により倒れてしまった場合、その場に居合わせた人が胸骨圧迫や人工呼吸といった応急処置を迅速に実施できるか、AEDによる電気的除細動を適切に行えるかが、傷病者の生死を左右します。
しかし、迅速に応急処置ができるのか不安に思うことも多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、AEDによる応急措置の重要性や、AEDを使用した心肺蘇生の手順についてわかりやすく解説します。

[注1]総務省消防庁:令和5年版 消防白書

目次

AEDとは?一般の方も使える自動体外式除細動器

一般市民がAEDを使用した数

出典:総務省消防庁『令和5年版 消防白書』

AED(自動体外式除細動器)とは、学校・ターミナル駅・空港などの公共施設を始めとして、様々な場所に設置されている救急救命製品の1つです。
心臓の筋肉がけいれんを起こすことを「心室細動(しんしつさいどう)」や「心室頻拍(しんしつひんぱく)」と呼びます。心室細動や心室頻拍の状態が続くと、心臓のポンプ機能が失われ、全身に血液を送ることができなくなり心停止となります。心臓停止・呼吸停止・大量出血の経過時間と死亡率の目安をグラフ化した「カーラーの救命曲線」によると、心臓停止から3分経過した場合の死亡率は約50%です。
こうした心臓突然死の対策として、国や地方自治体が管理する救急救命サービスだけでなく、その場に居合わせた一般の方(バイスタンダー)による迅速な心肺蘇生が不可欠です。

出典:総務省消防庁 救える命を、救いたい

心室細動や心室頻拍の治療手段として有効なのが、心臓に機械的な電気ショックを与えて、正常なリズムを取り戻す「除細動器」の使用です。AEDは持ち運びでき、誰でも簡単に使える除細動器として、2004年7月より一般の方の利用が許可された製品です。胸骨圧迫や人工呼吸と併せて、AEDを正しく使用すれば、多くの命を救うことができます。

総務省消防庁の「令和5年版 消防白書」によると、令和4年(2022年)における心肺機能停止傷病者のうち、一般市民がAEDを使用した除細動実施件数は1年間で1,229人に達しています[注1]

[注1]総務省消防庁:令和5年版 消防白書

AEDはどんな時に使う?

AEDは、傷病者の意識がないときや通常通りの呼吸が確認できないとき、心停止していると判断した場合に使用します。もし倒れている方の呼吸状況がわからない場合は、まず心肺蘇生とAEDの使用を試みましょう。AEDは必要なときにしか電気が流れない仕様になっているため、安心して使用することができます。

AEDを使用した心肺蘇生の重要性

なぜ、AEDを使用して心肺蘇生を行う必要があるのでしょうか。3つのデータからAEDによる除細動の重要性を解説します。

心臓突然死の件数は1年間で約9.1万人

日本AED財団によると、心臓突然死の発生件数は1年間で約9.1万人です[注2]。1日に約200人、7分に1人が心臓突然死により命を落としています。生活リズムが不規則になりがちで、ストレスを抱える人が増えている現代社会では、心臓突然死のリスクがますます高まっています。

[注2]日本AED財団:心臓突然死の現状

1分ごとに救命率が7~10%下がる

上述でも解説の通り、心停止の主な原因は心室細動や心室頻拍とされています。心室細動は心停止の状態であり、心室頻拍は持続すると心室細動に移行する可能性がある段階の状態です。心室細動や心室頻拍が発生した場合、一刻も早く電気的除細動が必要です。特に心室細動を起こした方を救命できる確率は、1分経過ごとに約7~10%低下するといわれています[注3]

総務省消防庁の公開情報では、令和4年(2022年)の救急車の現場到着所要時間の全国平均は約10.3分で、病院収容所要時間は約47.2分でした[注4]。救急車の現場到着所要時間を考えると、1人でも多くの命を救うためには行政サービスだけでなく、その現場に居合わせた人(バイスタンダー)の迅速な応急処置が重要であることがわかります。

[注3]日本医師会 救急蘇生法
[注4]総務省消防庁:令和5年版 救急・救助の現況

AEDを使用した人の1カ月後生存率は50.3%

次に、現場でAEDによる電気的除細動を受け、無事生還した方の割合を見てみましょう。総務省消防庁によると、2022年に一般市民により心肺機能停止時点で目撃され、AEDによる処置を受けた方の人数は1,229人で、そのうち1カ月後生存者数は618人、生存率は50.3%となっています。また、1カ月後社会復帰者数は523人(社会復帰率は42.6%)で、約4割が無事社会復帰を果たしています[注1]。AEDを正しく使うことで、無事に命を取り留めるだけでなく、早期に社会復帰できる確率が高まります。
このように統計データを見ても、救急救命にとってAEDがいかに有効であるかがわかるのではないでしょうか。

AEDの正しい使い方と心肺蘇生の手順

AED
                の正しい利用タイミング

適切に心肺蘇生を行うには、正しいタイミングでAEDを使用することが大切です。いざというときのため、救急救命の手順やAEDの使い方を解説します。

①まずは周囲の安全確認を

まずは周囲を見渡し、自分や傷病者が危険な場所にいないか、車が近づいてきていないかなどを確認します。安全確認を怠ると、傷病者だけでなく、救助者も二次的被害に巻き込まれるリスクがあります。傷病者が危険な場所にいる場合は、救助者自身の安全も確保した上で、傷病者を安全な場所へ移動させましょう。

②肩を軽くたたいて耳元で意識の有無を確認する

周囲の安全が確認できたら、傷病者の両肩を軽くたたきながら、耳元で「大丈夫ですか」と声掛けを行って、意識があるかどうか確認しましょう。傷病者の反応がなければ、再度声量を上げて声掛けをします。声掛けの際は、いきなり肩を強くたたいたり、体を大きく揺さぶったりすることは避けましょう。

③助け・応援を呼ぶ

傷病者が呼びかけに応じず意識がないと判断したら、すぐに大声で助け・応援を呼びましょう。心肺蘇生には、周囲の協力が欠かせません。自分で心肺蘇生を行う場合は、119番への通報と、AED搬送の2点を別の方にお願いします。このとき「誰かお願いします」だけでは、自分以外の誰かに依頼しているのでは?という考えがめぐり、行動が遅れてしまう可能性があります。協力を仰ぐ際には、周囲にいる特定の人を指差し「あなたは、119番に通報してください」「あなたはAEDを持ってきてください」などと具体的に伝えることにより、迅速に対応できるようになります。

④呼吸があるかどうか確認する

次に、傷病者の胸・腹部等の動きを目視でチェックし、通常通り呼吸しているかどうか確認します。呼吸確認の目安は10秒以内です。なお、傷病者が呼吸していない場合だけでなく、呼吸確認の判断が難しい場合も、心停止とみなして迅速に救命措置をとる必要があります。

⑤胸骨圧迫と人工呼吸を実施する

傷病者の気道を確保した上で、救急蘇生法を実施します。まずは胸骨圧迫(30回)から始め、次に人工呼吸(2回)を行います。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)は、胸の真ん中を強く・速く・絶え間なく押すのがポイントです。小学生~大人に胸骨圧迫を行う場合、深さは5cm程度で100~120回/分のテンポで押していきます。未就学児や乳児の場合は、胸の厚さの約1/3の深さまで押します。
人工呼吸ができる場合は、片手で傷病者の額を抑えながら、もう片方の手の指先をあごの先端に当て持ち上げて行いましょう。傷病者の顔や口から出血している・嘔吐している場合など、口と口を直接接触させて人工呼吸を行うことがためらわれる場合は、人工呼吸を省略し胸骨圧迫のみを行います。
AEDが到着するまでの間、胸骨圧迫と可能な限り人工呼吸を繰り返し実施しましょう。救急救命はその場にいる人々(バイスタンダー)の協力が大切です。訓練経験の長さに関わらず、救急蘇生法を知っている方が率先して心肺蘇生を行いましょう。

⑥AEDによる電気的除細動を行う

AEDが到着したら、まず電源を入れます。自動で音声ガイダンスが流れるため、AEDの音声ガイダンスに従い、2種類の電極パッドを傷病者の体に貼りましょう。電極パッド表面のイラストにも、パッドを貼る場所が表記されています。電気的除細動が必要とのガイダンスが流れたら、ショックボタンを押し、電気ショックを開始します。電気ショックを行う際は安全確保のため、周囲の人にその場を離れてもらいましょう。
電気ショックを行った後は、音声ガイダンスに従いすぐに胸骨圧迫を再開します。

⑦救急隊員が到着するまで心肺蘇生を続ける

救急隊員に引き継ぐまで、そのまま胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使用を続けましょう。
救急隊員が到着したら、傷病者が倒れていた状況や実施した応急手当、AEDによる電気ショックの回数などを伝えます。

心肺蘇生を続けている間に、傷病者が意識を取り戻したり普段通りの呼吸が出現したりしても、AEDの電極パッドは外さず電源も入れたままにして、傷病者を観察しながら救急隊を待ちましょう。

AEDは、電気ショックの必要性を自動で診断して作動しますので、必要ない場合には作動しません。もし、電気ショックを与えて容態が悪化したらどうしよう・・・と考える必要はまったくありません。また、AEDを使用して助からなかったことに対して法的責任を問われることを恐れ、AEDを使用しないケースがあります。
しかし、法的責任では、心肺機能停止傷病者の意識回復を目的として使用された場合は「緊急避難(刑法第37条)」に該当します。民事責任では、「緊急事務管理(民法第698条)」に該当するため、重大な過失がなければ責任を負うことはありません。

AEDを使用する際の注意点

AEDを使用する際、いくつか注意点があります。

女性や子どもでもためらわずにAEDを使用する

救助者が男性で傷病者が女性の場合、近くに女性がいれば救助を手伝ってもらうことができますが、いない場合は男性がAEDを使うことになります。AEDのパッドがつけやすいように衣類をずらしたり体に触れることもあるため、女性へのAEDの使用を躊躇してしまうかもしれません。
しかし、心停止している場合には命を救うために一刻も早い心肺蘇生を行う必要があります。そのため、女性であってもためらわずにAEDを使用することが大切です。
AEDは肌に直接つけられれば問題ないため、下着を無理に外す必要はなく、またタオルやジャケットなどを体に掛けても良いとされています。配慮しながらも心肺蘇生ができると良いでしょう。

また、子どもや妊娠中の方の場合、AEDが子どもや胎児に影響を与えるのではないかと不安になるかもしれません。基本的に、子どもや妊娠中の方であってもAEDを使用することが可能です。
未就学児の場合は、未就学児用パッドを使用し未就学児用モードに切り替えます。未就学児用のパッドやモードが備わっていない場合は、小学生~大人用パッド・モードを使用しましょう。(小児用/成人用と記載されている場合もあります)

女性にAEDを使用する際の注意事項は以下の記事でも詳しくご紹介しています。

AEDパッドは肌に密着させる

AEDパッドは、肌にしっかりと密着させる必要があります。下着などの衣類を挟まないよう注意しましょう。また、体毛が多い方は、AEDにカミソリや除毛テープといった剃毛セットが付属していることもあるので、剃毛をしてからAEDを使用します。
胸に貼り薬やアクセサリーがある場合は、AEDのパッドを貼ることはできません。貼り薬は剥がして薬剤を拭き取ってからパッドを貼るようにしましょう。ネックレスなどのアクセサリーも外します。

体が濡れている場合はタオルで拭いてから使用する

胸部を含む体が濡れている場合、パッドが貼り付かなくなります。また、体が濡れていると電気が逃げてしまい、効果が十分に発揮されないことがあります。体が濡れている場合は、タオルで水分を拭き取ってからパッドを貼りましょう。パッドが水に濡れないよう注意してください。

AEDの使い方を正しく理解して心臓突然死を防止しよう

心室細動や心室頻拍が発生し心停止の状態になると、1分経過するごとに救命率は約7~10%下がります。そのため、心停止した方が現れたら行政の救急サービスだけに頼るのではなく、その場にいる人(バイスタンダー)が率先して救急救命活動を行う必要があります。心肺蘇生の手順に従い、正しいタイミングでAEDを使用しましょう。

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