住宅用火災警報器の設置基準について解説

防災 2020.10.30

火災が発生した際、いち早く知らせてくれるのが「住宅用火災警報器(住警器)」です。就寝中や別のことに集中している時は、住警器がなければ出火に気づきにくく、逃げ遅れてしまうことがあります。また、自分が火災に気が付かなくても、火災警報器の鳴動に隣人が気づき、消防が駆けつけて事なきを得たケースもあります。平成16年(2004年)の消防法および消防法施行令の改正によりには住警器の義務化が行われたため、それ以前に住宅を建てた方や購入された方は設置を検討する必要があります。本記事では、大切な命と財産を守るうえで欠かせない住警器の設置基準や必要性について、わかりやすく解説します。

【消防法・消防法施行令】住宅用火災警報器の設置基準を解説

住宅用火災警報器の設置基準
住宅用火災警報器の設置基準

住宅用火災警報器(住警器)は、住宅火災を早期発見し、大切な命を守るために欠かせない設備です。従来は住宅用火災警報器の明確な設置義務は設けられていませんでしたが、平成16年(2004年)の消防法および消防法施行令の改正により、次の箇所への住警器の設置が義務化されました。

消防法施行令 第五条の七

イ 就寝の用に供する居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。ハにおいて同じ。)

ロ イに掲げる住宅の部分が存する階(避難階を除く。)から直下階に通ずる階段(屋外に設けられたものを除く。)

ハ イ又はロに掲げるもののほか、居室が存する階において火災の発生を未然に又は早期に、かつ、有効に感知することが住宅における火災予防上特に必要であると認められる住宅の部分として総務省令で定める部分[注1]

[注1]e-Gov

つまり、住宅の「寝室」および「階段」への設置が、消防法において義務付けられています。これに加えて、消防法第9条の2の2項では、「住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準その他住宅における火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定める」と規定しています。[注2]

[注2]e-Gov

住宅用火災警報器の設置にあたっては、消防法および消防法施行令だけでなく、お住まいの市町村の条例に従うことが大切です。たとえば、東京消防庁では、住宅用火災警報器の設置基準を次の表の通りに設けています。

設置場所 住警器の種類
居室(居間、ダイニング、子供部屋、寝室など)

階段
煙式
台所又は火災以外の煙を感知し警報を発するおそれのある場所 煙式又は熱式

煙式とは、火災にともなう煙の変化を見つける感知器です。また、熱式(定温式)とは、火災による温度変化を見つける感知器です。通常、住宅用火災警報器としては火災を素早く検知できる煙式の設置が適していますが、キッチンなど煙が日常的に発生する場所では、誤報を防ぐため熱式を設置するケースがあります。その他、ワンルーム・1Kといった間取りの違い、3階建て・4階建てなどの階数の違いにより、都道府県によって独自の基準が設けられています。わからないことがあれば、お近くの消防署に確認しましょう。

住宅用火災警報器を設置する3つのメリット

住宅用火災警報器を設置することで、具体的にどのような利点があるのでしょうか。総務省消防庁が提供する情報を元に3つのメリットを解説します。

住宅火災は早期発見が鍵を握る

消防庁の「令和元年版 防災白書」によると、平成30年度(2018年)に発生した火災のうち、失火(過失)が原因となるものは全体の73.2%に達しています。その多くが火の消し忘れを始めとした「火気の取扱いの不注意や不始末」で、気づかないうちに出火が発生し、火災に至るケースが大半です。同様にして、火災による死者発生状況の約半数にあたる49.4%が、「逃げ遅れ」に起因しています。[注4]住宅火災による被害を防ぐためには、住宅用火災警報器を設置し、火種の早期発見に務める必要があります。

住警器がある家庭の死者数は4割減

平成28年(2016年)から平成30年(2018年)にかけての調査では、住宅用火災警報器を設置している家庭の方が、設置していない家庭よりも火災による死者数が少ないことがわかっています。住宅火災100件あたりの死者数を分析すると、未設置の家庭では死者数が11.1人/100件であったのに対し、設置済みの家庭では約4割減となる6.8人/100件でした。[注5]このように政府統計で見ても、住宅用火災警報器の設置が、大切な命を守るうえで有効であることがわかります。

火災による損害額・焼損床面積は半減

同様に、火災による住宅の焼損床面積や、それに伴う損害額を見てみましょう。住宅用火災警報器が未設置の家庭では、火災1件につき60.1平方メートルが焼損し、被害額の平均は310.7万円でした。一方、設置済の家庭を見ると、焼損床面積は火災1件あたり28.7平方メートル、損害額は1件あたり168.1万円と、おおむね半減という結果になっています。[注5]住宅用火災警報器を設置すれば、火災による経済的損害を抑えることも可能です。

住警器の誤作動が起きたときの対処法

住警器が誤作動を起こしたときの対処法
住警器が誤作動を起こしたときの対処法

警報が鳴ったのにもかかわらず、火元が確認できない場合、火災報知システムの誤作動の可能性があります。住警器の誤作動が起きた場合、まず何をすればよいのでしょうか。ご家庭で設置している製品によって違いますが、次の3つのステップで対処しましょう。

まずは警報音を止める

室内に火種がないことが確認できたら、まずは住宅用火災警報器の警報音を止めましょう。止め方はメーカーによって異なり、住警器に付属している紐を引く、停止スイッチを押すといった方法があります。不安な方は、本体裏側の商品名(商品記号)を確認し、メーカー側に問い合わせましょう。

誤作動の原因を探る

次に、住宅用火災警報器の誤作動が発生した原因を探りましょう。代表的な原因として挙げられるのが、天井からの水漏れによる浸水や、梅雨の時期に多い本体内部の結露の発生です。熱式・煙式共に誤作動が起きる原因となりますので、結露や水漏れの有無を確認しましょう。

また、熱式の感知器に多いのが、エアコンの温風が直接当たったり、暖房をつけて室内の温度が急上昇したりすることにより、誤作動を起こすケースです。消防法でも、住警器とエアコンは1.5メートル以上の間隔を開けるよう定められているため、設置の際は注意が必要です。

新しい住宅用火災警報器に取り替えを

もし誤作動の原因がわからない場合は、機器が経年劣化を起こしている可能性があります。住宅用火災警報器は、適切に維持管理を行っていても、およそ10年を目処に取り替えが必要です。誤作動が頻発するようであれば、新しい機器への取り替えも検討しましょう。

住宅用火災警報器の設置が大切な命や財産を守る

火災における死亡原因の約半数が「逃げ遅れ」です。住宅用火災警報器を設置すれば、火種の早期発見により、火災による被害を最小限に留めることができます。住宅用火災警報器には、煙式や熱式、グループ登録によりワイヤレス(無線)で連動するタイプなど、様々な種類や価格帯の商品があります。大切な命や財産を守るため、消防法や条例の設置基準に基づき、住宅用火災警報器を設置しましょう。

ALSOKは火災を煙で感知する「煙式」、熱の温度変化で感知する「熱式」といったように、火災の早期発見につながる住宅のさまざまな場所にマッチした火災警報器を用意しています。

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