子どもの交通安全教育は小学校入学前に積み重ねておく必要がある
警視庁の「令和5年上半期 子供の交通人身事故発生状況」によると、子どもの交通人身事故は、令和4年と比べ発生件数が増加しています。特に小学生による事故が多く、帰宅時間となる「午後4時から6時」の夕方に多発しています。
また、警察庁が平成30年(2018年)~令和4年(2022年)に起きた子どもの交通事故を分析したところ、歩行中の小学生の死者・重傷者はこの5年間で2,185人。状態別では歩行中の事故が最も多く、過去5年合計で約6割を占めています。中でも小学1年生の歩行中死者・重傷者数は6年生の約3.2倍です。
学年が低いほど歩行中の事故の割合が高く、学年が高くなると自転車乗用中の割合が高くなっています。子どもが安全に1人歩きできるようになるためには、未就学児のうちからの交通安全教育が重要です[注1]。
[注1]警察庁交通局「令和4年における交通事故の発生状況について」
この記事では未就学児から12歳までを『子ども』と定義し、子どもの交通事故被害の統計や、交通事故から子どもを守るための4つの取り組みについてご紹介いたします。
目次
子どもの交通事故被害の60%以上が小学生
警視庁によると、令和5年上半期の東京都内における交通事故件数1万4,815件のうち、子どもが関係する交通事故は890件でした。
上記の学齢別発生件数の図を見ると、小学生が63.0%と半数以上を占めています。
小学生の学年別で最も多かったのは小学5年生の108件で、うち94件が自転車乗用中の事故です。一方、歩行中の交通事故の件数は小学2年生の54件が最も多くなっています[注4]。
低学年のうちは歩行中での事故に遭いやすく、高学年になるにつれて自転車での移動も増えるため、自転車乗用中に事故に遭う確率が高くなっていることが考えられます。}
小学生になると、今まで一緒に行動していた親の手を離れ、1人で登下校したり、遊びに出かけたりする機会が増えることも原因のひとつでしょう。
男児の交通事故被害は女児のおよそ2.74倍
子どもの交通事故発生件数を各学齢で男女別に比較すると、幼児60人:33人、小学生411人:150人、中学生181人:55人と、全ての学齢において男児が多く、性別で合計するとその差はおよそ2.74倍です[注3]。
小学生の歩行中交通事故発生率が高い時間帯は14〜17時
警察庁の統計によると、令和4年における小学生の歩行中の死者・重傷者618人のうち、全体の半数以上の372人が、14時から18時の時間帯に事故に遭遇しています。この時間帯は小学生が下校し、友達と遊びに行ったり、自宅に帰宅したりする時間帯です[注1]。
特に気候が穏やかで、外遊びが活発になる5月や10月は注意が必要です。特に5月は、小学1年生ならば入学から1ヵ月経過し、学校や1人行動にも慣れ、油断が生じる時期でもあります。
また、小学生の歩行中の通行目的別死者・重傷者数の割合では、全体の26.1%(86人)は下校中で最も多く、20.6%(68人)が遊戯で2番目に多いという結果が出ています[注1]。
子どもの歩行中交通事故で多いのは「飛び出し」
小学生の歩行中の交通事故で、最も多い法令違反は「飛び出し」で、平成30年〜令和4年の5年間で760人(全体の35.6%)の死傷者が出ています。
また、警察庁が平成31年3月に発表した統計では、飛び出しは特に小学1年生から3年生までの低学年に多く、全体の40%を小学1年生が占めていたことがわかっています[注5]。その理由としては、小学1年生の平均身長がまだ115cmほどで、ドライバーが認識できない高さであること、子どもの視野の狭さ、交通ルールへの認識の薄さなどが挙げられます。
小学校高学年以降は自転車乗車中の交通事故に注意
小学校低学年は歩行中の交通事故で死者・重傷者が多いのに対し、小学4年生以降は自転車乗用中の事故で死者・重傷者が多い傾向にあります。警察庁の統計資料では、小学生の交通事故の死者・重傷者(令和4年)のうち、38.0%は自転車乗用中に遭遇しており、歩行中の遭遇(53.4%)に次いで多いことがわかっています[注1]。
交通事故から子どもを守るための4つの取り組み
子どもの交通事故を未然に防ぐためには、保護者による次の4つ取り組みが重要です。
小学校入学前に交通安全教育を積み重ねておく
小学1年生が1人で安全に道路を歩けるようになるには、未就学児の頃から家庭での交通安全教育を十分に行っておく必要があります。通学路や近所の公園を子どもと一緒に歩きながら、横断歩道の渡り方や見通しが悪い曲がり角の確認方法など、交通ルールを繰り返し教えていきましょう。
子どもの目線の高さを意識した交通指導を心がける
小学校に上がったあと、1人歩きに慣れてくる5月あたりは歩行中の交通事故が多発する時期です。登下校だけでなく、習い事や遊びで利用する歩行ルートを把握し、子どもの目線の高さでチェックしておきましょう。
大人の目線では問題がないようでも、子どもの目線の高さでは見通しが悪く、危険な場所はたくさんあります。特に小学校低学年はまだ背も低いうえ、この年代の子どもの視野は大人の70%ほどしかありません。立て看板や高い塀がある道、トラックなどの大きな車が駐車されている場所などを一緒に確認し、子どもが安全に歩けるよう指導しましょう。
子どもの自転車走行ルートや運転の仕方を確認する
小学3年生あたりから、子どもの行動手段として自転車が活躍します。それに伴い自転車乗車中の交通事故も増えてくるため、自転車の走行ルートや正しい運転の仕方をしっかり教えておきましょう。
自転車での行動範囲に危険な場所はないか、友達と並んでの走行、2人乗り、片手運転など、子どもがやりがちな危険運転をしていないかなど、子どもの自転車走行ルートや普段の運転の仕方について、定期的にチェックしてあげることも大切です。また、自転車に乗るときは乗車用のヘルメットをかぶるよう、日頃から指導しておきましょう。
保護者自身が正しい交通ルールの手本となる
周囲の大人が信号無視や横断歩道が設けられていない道を無理に渡るような横断などを行っていると、それを見た子どもが真似をしてしまいます。子どもが正しい交通ルールを身につけるためには、一番身近な大人である保護者がお手本となることが重要です。
警視庁安全教育センターや地域で行われる交通安全教室に積極的に参加し、まずは保護者が正しい交通ルールを再確認しておきましょう。
いつでも子どもの安全を確認したい
子どもの歩行中交通事故による死傷者は、1人歩きデビューする小学1年生から2年生のあいだにピークを迎えます。小学校に入学する前から正しい交通安全教育を積み重ね、安全に1人で歩くことができるよう準備しておくことが大切です。
しかし、1人で出かけた子どもの所在や安否状況はいつでも把握しておきたいという保護者の方は多いのではないのでしょうか。
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