高齢者の方とのコミュニケーションで気を付けること
日本は高齢化社会といわれて久しく、両親や祖父母をはじめとして高齢者の方と接する機会が非常に多くなってきています。高齢者の方とのコミュニケーションは、大きな声ではっきりと発声するといったように、親族であっても気を配る必要があります。
今回は、高齢者の方と一緒に過ごすご家族などに向けて、高齢者の方とのコミュニケーションの重要性と円滑なコミュニケーションにつながる会話方法を解説します。
高齢者の方とのコミュニケーションは、個性を知り協力し合うために重要
内閣府の「令和5年版 高齢社会白書」によると、日本の総人口は令和4年10月1日の時点で1億2,495万人、そのうち65歳以上の人口は3,624万人であり総人口の29.0%を占めています。同白書によれば、65歳以上が総人口に占める割合は、令和17年に32.3%となり、令和47年には38.4%に達すると推計されています。令和47年には、実に日本人の2.6人に1人が65歳以上となる計算です。
そのような時代背景において、高齢者の方とコミュニケーションをとる機会は日常的に増えてきており、高齢者の方の家族にとっては、高齢者の方との円滑なコミュニケーションはとても重要です。ここで、高齢者の方との円滑なコミュニケーションが重要である理由を2つ説明したいと思います。
高齢者の方の個性を知り、気持ちを汲み取るために重要
コミュニケーションは人間関係を構築するために非常に重要です。高齢者の方と接する場合には、相手を介護の対象と見るのではなく対等な個人として見ることが大切です。
高齢者の方にも個性があり、すべての人に対して同じ介護の方法で対応できるわけではありません。高齢者の方にとってうれしい方法、お気に入りの方法があるなら、日々のコミュニケーションを通じて気持ちを汲み取りその方法を知る必要があります。
高齢者の方が家族であってもそれは同じで、今日の体調や気分についてよく話し合うことで、お互い気持ちよく過ごすことができます。介護する側もされる側もストレスを軽減するためには、日々のコミュニケーションが不可欠なのです。
高齢者の方と協力し合うために重要
高齢者の方の介護を行うにあたり、たとえば身体の向きを変えたり、腕や足を上げたりと、可能な範囲で高齢者の方が協力してくれることも少なくありません。高齢者の方からのこのような協力を得るためにも、コミュニケーションは非常に重要です。介護者の側が高齢者の方にどのような協力をしてもらいたいのかを上手に伝えられれば、互いの信頼感も高まり良好な関係を築けるようになります。その結果、もっとスムーズに介護を行うことができるようになるでしょう。
高齢者の方と円滑に会話を行う3つの方法
高齢者の方と円滑に会話を行うための3つの方法をご紹介します。
いくつかのポイントを押さえておくだけで、これまでよりも一層円滑なコミュニケーションが実現できます。是非試してみてください。
落ち着いた声でゆっくり・はっきり話す
第一に、落ち着いた低い声でゆっくり・はっきり話すことが重要です。
高齢者の方は高い音が聞こえにくくなる加齢性難聴(老人性難聴)になっていることが多いため、低い声のほうが聞き取りやすくなります。とくに60代以上になるとこの傾向が顕著です。
そのため高齢者の方と話す際には、できるだけ落ち着いた低い声で話すことを心がけましょう。声の高い女性の方は少し苦労するかもしれませんが、大きな声を出すよりは低い声を出したほうがコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。
早く話すと聞き取れないことが多いので、ゆっくり、はっきり話すようにしましょう。話者の顔が見える位置で話すよう心がければ、高齢者の方も口の動きを見ることができ、話している内容を理解しやすくなるでしょう。
聞き上手になる
一般的なコミュニケーションと同様に、聞き上手になることも重要です。
高齢者の方の話に興味を持ち、しっかりと耳を傾ければ会話がより弾むようになるでしょう。相槌を打ったり相手の話を遮らない程度に質問したりすれば、高齢者の方の個性(人柄)やこれまで歩んできた人生などもよく知ることができ、その後の介護にいかせる可能性もあります。
話を遮ること、批判すること、否定することは避けましょう。高齢者の方は以前話したことを繰り返すことが多いものですが、「その話はもう聞きましたよ」や「その後○○になったのですよね」など、話の腰を折ってしまうことがないように注意しましょう。
声の調子や仕草に注意する
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、他者とコミュニケーションを取る際に、言語情報(Verbal)、聴覚情報(Vocal)、視覚情報(Visual)のうちのどの情報が、優先して相手の印象に影響を与えるかを実験で調べました。その結果、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で影響しているという「メラビアンの法則」が導き出されました。
メラビアンが行った実験の結果から、コミュニケーションにおける、非言語コミュニケーションの重要性がよく分かります。
高齢者の方のコミュニケーションにおいては、普段のコミュニケーションよりも一層、優しいまなざしを向けること、目線を合わせること、そして、手を握ってあげることが重要です。こうした非言語コミュニケーションを日ごろから実践することで、より円滑なコミュニケーションが可能となるのです。
なかなかコミュニケーションが取れない場合
とはいえすべての高齢者の方が話し好きというわけではありません。ときにはなかなかコミュニケーションが取れない場合もあるでしょう。その場合の対処法について説明いたします。
介護者側から話題を提供する
もし高齢者の方がなかなか話をしてくれない場合には、介護者側から話題を提供しましょう。とくにコミュニケーションは取りたいけれど恥ずかしいなどの理由で自分から話せないという高齢者の方に対しては、この方法が非常に効果的です。介護者が自分の身の上話や出身地の話をすれば、徐々に会話が増えていくかもしれません。
しばらくして信頼関係が築けてきたと感じたら、少しずつ質問して相手方の好みや生い立ちなどの情報を得ることができるかもしれません。
無理に話し続けない
一方で認知症やうつ病などの影響で会話するのが難しい、脳梗塞などの疾病によって会話ができない高齢者の方の場合、介護者の方が話し続けるとストレスを感じさせてしまう恐れがあります。
そのようなケースでは無理に話し続けようとはせず、2人でただ時間を共有するだけでよいかもしれません。焦らず徐々に慣れるようにしましょう。
言語によるコミュニケーションが図れなくても、非言語的コミュニケーションは非常に有効です。微笑みかけたり背中をさすったりして高齢者の方を思いやっていることを伝えられれば、会話がなくても信頼関係を築いていけるでしょう。
円滑なコミュニケーションで高齢者の方を温かく見守る
高齢者の方にも、コミュニケーションを取るのが得意な方や不得意な方がいます。
それぞれの方の個性をよく理解したうえで、高齢者の方一人ひとりに合ったコミュニケーションを実践しましょう。そうすれば介護する方も介護される方も気持ちよく毎日を過ごせるはずです。
介護においては、介護者が一人で抱え込んでしまい疲弊する傾向にあります。実際、2018年3月の厚生労働省の資料によれば、家族介護者へのアンケート調査において、「介護による精神的な負担を感じているか」との問いに対し「とても感じている・まあ感じている」と回答された方は、全体の63.7%になっています(「あまり感じていない・全く感じていない」との回答 16.8%、「どちらともいえない」との回答 19.6%)[注1]。
一人で抱え込んで疲弊してしまう前に、自治体や民間の介護サービスを利用するという選択肢についても考慮することをおすすめいたします。
[注1]厚生労働省「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル〜介護者本人の人生の支援〜」
ALSOKグループが提供する「ALSOKの介護」では、高齢者の方の楽しい毎日を支える各種介護サービスを行っています。有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護など、高齢のご家族の状況に合わせてさまざまなサービスをご用意しております。
経験豊富なスタッフがご利用者様や入居者様と円滑なコミュニケーションを取りながら明るい生活を提供します。
Webで資料請求することもできますので、ぜひ一度お問い合わせください。