ヒートショックを防ぐには?予防対策と起こった時の対処法
冬になり、気温が下がってくると、ヒートショックを起こすリスクが高くなります。地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター」の研究によると、ヒートショックに関連した入浴中急死は年間約1万7,000人と推計されており、交通事故による死亡者数を大きく上回っています[注1]。また、厚生労働省人口動態統計(令和4年)によると不慮の溺死及び溺水の死亡者数は8,677人となっており、交通事故死亡者数3,541人の2.5倍になっています[注2]。
ヒートショックは日頃の対策でリスクを低減することができますので、正しい対策方法や対処法を覚えておきましょう。
本コラムでは、ヒートショックの特徴と効果的な対策、もしもの場合の対処方法を説明いたします。
[注1]地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター「冬場の住居内の温度管理と健康について」
[注2]厚生労働省人口動態統計(令和4年)「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
目次
ヒートショックが起こりやすい状況
まずはヒートショックが起こるメカニズムについて知っておきましょう。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が上下することで体が受ける影響のことです。
暖かい場所から寒い場所へ移動すると体が急激な温度変化にさらされ、血圧が上下に大きく変動し心臓に負担がかかるため、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳出血などを引き起こすことにつながります。
特に暖かいリビングから寒い浴室やトイレへ移動する際は注意が必要です。
どのような状況でヒートショックが起こりやすいか
人の体は、暖かい場所から寒い場所に移動する際、体温の低下を防ぐために体を震わせて熱を生み出します。
例えば、冬場は暖房の効いた部屋から寒い浴室やトイレに移動すると、体が寒さに対応しようとして血管を収縮させ、血圧が上昇します。その後浴室に入り浴槽に浸かると今度は浴槽の温度に体が対応しようとして血管が広がり、血圧が下がります。浴室へ向かう際に上昇した血圧が、熱いお湯に対応するために一気に低下するのです。このように寒い場所に移動したり、熱いお湯で急に身体を温めたりすることで、血圧が急激に変化すると、ヒートショックが起こりやすくなります。
ヒートショックが起きるとどうなる?
短時間で血圧が乱高下すると、心臓や血管に大きな負担がかかり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳出血といった心血管疾患を引き起こす原因となります。また、血圧が急激に低下すると、めまいやふらつき、意識消失などの健康障害が発生し、その場で転倒してしまうこともあり、打ち所や倒れた場所が悪ければ命にかかわるおそれがあります。
ヒートショックが発生しやすい場所
ヒートショックは急激な温度変化によって引き起こされるため、温度差が大きい場所ほど発生のリスクが高まります。
中でも、最もヒートショックが起こりやすいのは冬場の浴室です。
- 暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動(血管が縮んで血圧上昇)
- 寒い脱衣所で衣服を脱ぎ、裸になって冷えた浴室に入る(さらに血圧が上昇)
- 浴槽でお湯に浸かる(血管が広がり血圧低下)
- お風呂から上がり、再び寒い脱衣所へ入る(血管縮んで血圧上昇)
このように血圧が乱高下すると、ヒートショックを招きやすくなります。
また、暖かいリビングから移動して寒いトイレに入り、冷たい便座に座る時も注意が必要です。
ヒートショックになりやすい人
特に以下の条件にあてはまる人は、ヒートショックになるリスクが高いといわれています。
- 65歳以上の高齢者
- 狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの脳疾患にかかった経歴がある人
- 不整脈や高血圧、糖尿病などの持病がある人
- 食事や飲酒後に入浴する習慣がある人
- 熱いお湯に浸かったり一番風呂に入ったりする習慣がある人
- 浴室や脱衣所、トイレに暖房がない家に住んでいる人
- 浴室の床がタイル貼りなどで冬に冷たくなる家に住んでいる人
- リビングと浴室・トイレの距離が離れていて、暖房が行き届いていない家に住んでいる人
65歳以上の高齢者や、心疾患系・脳血管系の病歴のある人、不整脈・高血圧・糖尿病などの持病のある方は、血圧変動の影響を受けやすく、ヒートショックのリスクが高い傾向にあります。また、食事や飲酒の後は、血圧が上昇・低下しやすい状態に陥るため、夕飯や晩酌の後に入浴する習慣がある人は要注意です。
食後は、消化のために血流が胃腸に集まり、脳への血流が保てずめまい・失神を起こすことがあります(食後低血圧)。この食後低血圧を起こしたことのある人は、食事の前に入浴を済ませるか、または、食後1時間以上の休みをとってから入浴するようにしましょう。
なお、ヒートショックは一般的に、年齢が高くなるほどリスクが高くなるといわれていますが、若い方がヒートショックを起こすこともあります。さまざまな条件が重なれば、若年層でもヒートショックになるリスクが高まってしまうため、注意が必要です。
ヒートショックを防ぐための5つの対策
ヒートショックの発症リスクを低減するために、ぜひ実践したい対策方法を5つご紹介します。
脱衣所やトイレを事前に暖め温度差を減らす
脱衣所やトイレなど気温が下がりやすい場所には、小型の温風ヒーターなどを設置するのがおすすめです。お風呂に入る前に、あらかじめヒーターのスイッチを入れておけば、脱衣所とリビング・浴槽との間に生じる寒暖差を緩和することができます。
冬場においてトイレが寒くなる場合は、暖房便座を活用するとともに、ハロゲンヒーターなどの小型のヒーターでトイレルームを暖めるようにすると、ヒートショック対策に役立ちます。
浴室が暖まっていない場合は、入浴する前に、シャワーで給湯する、浴槽のフタを開けるなどの方法で浴室全体を温めておくようにしましょう。浴室の床が冷たい場合は、マットやスノコを活用しましょう。
入浴前後には水分をしっかりとる
入浴中に汗をかくことで、体内の水分が減少し血管が詰まりやすくなります。入浴の前、そして、入浴の後に、水分をしっかりとるよう心がけましょう。
食事の前に入浴する、または、食事の後1時間たってから入浴する
食事をすると、消化器官に血液が集中する分、体全体の血圧が低下しやすい状態になります。食事の前に入浴するか、食事の後1時間以上たってから入浴するようにしましょう。
アルコールを摂取した場合も血管が拡張して血圧が低くなりがちであるため、飲酒後の入浴は控えるようにしましょう。
お風呂の温度は38~40℃とし、長湯は控える
お風呂の温度が42℃以上になると、心臓に負担をかけることが知られています。消費者庁のパンフレット「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」では、入浴の温度・時間の目安を「41℃以下10分まで」としています。なお、41℃以上になると浴室での事故が増えるとの報告もあることから、できるだけ「ぬるめの温度」(38℃~40℃)とすることをおすすめします。
冷え込む深夜の入浴を避け、お湯に浸かる際は心臓から遠い場所(手足)にかけ湯を行い、ゆっくりお湯に浸かると良いでしょう。心臓病・高血圧などの高リスクの方は半身浴、肩が寒いときはお湯で温めたタオルをかけるなど対策を行いましょう。
お湯に浸かっている状態から急に立ち上がると、体にかかっていた水圧がなくなって血管が拡張し、めまいや立ちくらみ、ふらつきが起こって転倒する可能性があります。立ち上がるときは、ゆっくりとした動作で徐々に立ち上がるようにしましょう。
入浴前に家族に一声かける
入浴中にヒートショックが起こって気を失うと、溺死してしまう可能性があります。ご家族などと同居している場合は、入浴前にひと声かけてから入浴するようにしましょう。また、高齢者と同居している家族におかれましては、高齢者が入浴する前に、浴室や更衣室が十分に温まっているかどうか確認することをおすすめします。
ヒートショックが起こったときの対処方法
ヒートショックでめまいやふらつきを感じたら、無理に立ち上がろうとせず、体勢を低くして、気分が落ち着くまでじっと待ちましょう。
同居しているご家族において、入浴している方がヒートショックを起こしていることに気づいたら、直ちに救急車を要請します。湯船で溺れていた場合は浴槽から出しますが、人手や力が足りない場合は、お湯を抜いて助けを待ちます。頭を打った場合、嘔吐して異物が喉に詰まるおそれがありますので、顔は横向きにしておきましょう。
冬場はヒートショックが多発
気温が下がる冬場はヒートショックが多発します。冬場を迎える前に、適切にヒートショック対策ができているかどうか、確認したおくことが大切です。
高齢者のもしもに対応する「みまもりサポート」
特に高齢者はヒートショックの発症率が高いので、「熱いお湯に浸からない」「浴室やトイレはあらかじめ暖めておく」「食事や飲酒後の入浴を避ける」など、ヒートショックのリスクを抑える対策を行うことが大切です。
高齢者のみの世帯では、ヒートショックだけでなく日々の体調の不調や持病の発作など心配ごとも多くあるでしょう。そんなときは、ALSOKの見守りサービスの導入がおすすめです。離れた場所にいても見守ることができます。
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ヒートショック対策だけでなく、日々の心配事や万が一の対策も講じましょう。
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