誤嚥を予防する

高齢者 2021.03.19

歳を重ねると、食事のときにむせてしまったり飲み込むことが難しくなったりと、誤嚥(ごえん)を引き起こしてしまうリスクが高まります。

誤嚥によって喉に細菌がはいり、肺炎を起こしてしまうことも珍しくはありません。

最悪の場合、誤嚥は命を脅かすことになってしまうため、周囲の方は慎重に見守る必要があります。

誤嚥とは?

誤嚥とは
誤嚥とは

誤嚥とは、口から胃に送られるはずの食べ物や唾液が誤って喉頭(こうとう)や気管に入ることによる症状のことです。

食べ物を飲み込むことを「嚥下(えんげ)」といい、嚥下能力が低下することで嚥下障害になってしまいます。

独立行政法人国立長寿医療研究センターの調査によると、日本人の死因第4位は肺炎で、その9割が65歳以上の高齢者です。[注1]

肺炎で通院した患者のうち、6割が誤嚥によって引き起こされる「誤嚥性肺炎」と報告されており、高齢者における誤嚥の多さやリスクの高さがうかがえます。

誤嚥は、睡眠時の唾液の嚥下をする際にも起こりやすい症状です。

食事中だけではなく、睡眠中や普段の生活の中でも誤嚥が起きていないかを注意する必要があります。

誤嚥によるリスク

誤嚥のリスクは次のようなものが挙げられます。

  • 誤嚥性肺炎になる
  • 窒息して亡くなってしまうことがある
  • 食事が苦痛になり食事の量が減ることで栄養不足になり、免疫が低下する
  • 水分不足になり、脱水症状になる

誤嚥が多くなると食事が楽しくなくなり、食欲が低下してしまいます。

免疫や抵抗力が落ちた高齢者にとって、たっぷりと栄養補給をすることは健康を保っていくために欠かせないものです。

免疫力の低下を防ぐためにも、早めに予防策を講ずることが大切です。

高齢者が誤嚥を引き起こしてしまう4つの要因

誤嚥は高齢者だけではなく、若い方にも起こりますが、誤嚥を引き起こす頻度が高いのは、圧倒的に高齢者だといえます。

その要因は次のようなものが考えられます。

1唾液の量が減って飲み込みにくくなる

高齢になると、唾液の分泌量がどんどん減少します。

唾液は噛んだ食べ物と混ざって、喉どおりのよい「食塊(しょっかい)」へと変える役割があります。

この食塊が作れないと食べ物が口の中でバラバラになり、うまく飲み込めなくなってしまうのです。消化器官内をスムーズに流れない状態の食べ物を無理に飲み込もうとすれば、むせる要因になり、誤嚥を引き起こしてしまいます。

2飲み込むための筋力が不足してくる

加齢による筋力の低下も、誤嚥を引き起こしてしまう原因となります。

高齢になると喉を動かす力が弱くなるため、飲み込もうとした食べ物が喉の途中で詰まったり流しにくくなったりしてしまい、誤嚥が発生してしまいます。

筋力不足は医師の治療では改善しにくいので、体操などで筋力をつける必要があります。

3歯が減ってきてしまってものが噛めなくなる

高齢になると、部分的に歯が抜けてしまって食べ物を噛みにくくなってきます。

とくに硬いものを噛みくだけなくなるため、食べ物が喉の途中で詰まり誤嚥が発生しやすくなります。

食べ物はよく噛みくだかないと、通常よりも嚥下に必要な力が大きくなってしまいます。

筋力が低下している方には、歯が少なくても噛みくだきやすい柔らかい食べ物の方がスムーズに食事をとることが出来ます。

4病気による誤嚥

誤嚥の原因は、単なる唾液や筋力不足だけではありません。

誤嚥を引き起こす病気としては脳血管障害や咽頭がん、食道がんや舌炎などが挙げられます。

放っておくと危険なので、あまりにも誤嚥が多い場合は早めに病院で検査してもらうことをおすすめします。

誤嚥を予防する3つの対策

誤嚥を予防する対策
誤嚥を予防する対策

誤嚥を予防する方法についてご紹介します。

1食事の姿勢に気をつける

食事の姿勢に気をつけることで、誤嚥のリスクが減らせます。

ベッドの上で食事する人や、食事の介助を必要とする人はベッドや椅子にもたれたまま食事をすることもあるかもしれません。

しかし、上向きの姿勢で食事を摂ると食べ物が飲み込みにくくなり、誤嚥する可能性が高まってしまいます。

しっかりと体を起こし、前かがみ姿勢で食事をするとスムーズに嚥下ができるようになります。

介護が必要な方はベッドに枕やクッションを置き、無理なく体を起こせるようにサポートが必要です。

2食事のメニューを飲み込みやすいものにする

嚥下しやすい食事のメニューにすることも、誤嚥対策には重要です。

誤嚥しやすい食事としては、以下のものが挙げられます。

  • 水やお茶などサラサラとした液体
  • 芋や焼き魚など口の中がパサパサしやすい食材
  • モナカや海苔など口や喉に張り付きやすい食材
  • ナッツやイカなど硬くて噛みくだきにくいもの

誤嚥の多い方の食事としては、とろみのあるあんかけ風にした料理や細かく刻んで噛みやすくした料理がおすすめです。

ただし、完全に食材をすりつぶした流動食では食べる楽しみを感じられないので、状態に合った食材の調理法を見極める必要があります。

最近は高齢者用の食事やお弁当が通販などで購入できるため、ご自宅で作るのが難しい場合は、そういったサービスも活用していきましょう。

また、水分補給のため水やお茶などをとる際は、少しとろみをつけることでまとまった状態で喉を通るようになり、誤嚥を防ぐことができます。

3体操で舌や首のリハビリをする

誤嚥が起きないように周囲の方がサポートすることも大切ですが、筋力が衰えている場合は、本人にリハビリをしてもらう必要があります。

1日1回でもよいので、舌や喉の筋肉を活性化させるリハビリ体操を行うようにしましょう。

誤嚥対策のために行いたい体操を3つご紹介します。

舌を動かす体操

  1. 舌を上と下に交互に出したり、引っ込めたりする。
  2. 舌を下に出し、口角にあたるようにゆっくり左右に動かす
  3. それぞれ5回ほど行う

肩と首を動かす体操

  1. 両手を上げたり下げたりする
  2. 首をゆっくり左右に曲げたり、1周回したりする
  3. そのあと、つばを飲んで喉を動かす

顔や首、口周辺のマッサージ

空き時間や入浴時などに、指や手の甲などで顔や首、口周辺をもみほぐすようにマッサージして緊張を和らげる。

ほかにも、歌を歌ったり早口言葉で遊んだりすることも舌や首のリハビリには有効です。

舌や首を動かすことで、筋力の向上だけではなく唾液の分泌促進効果も得られます。

毎日行うと食事をより楽しめるようになるので、コミュニケーションの一環として楽しみながらリハビリをしてください。

誤嚥を引き起こしてしまう原因を理解して誤嚥を予防しよう

齢を重ねると、唾液や筋力不足によって誤嚥が増えてしまいます。

誤嚥は食欲低下や病気の原因になったりするため、誤嚥を引き起こす要因についてしっかりと理解し、対策をとりましょう。

ALSOK介護で提供している入居サービスでは、一人ひとりの症状に合った食事の提供やリハビリトレーニングを行っています。

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