がんを防ぐための12か条と健康について
日本人の死因第一位は、がんです。[注1]とくに40歳から89歳までの人はがんで死亡する数が圧倒的に高く、誰でもがんになる可能性があるとされています。
それでは、がんになりやすい人はどんな特徴を持っているのでしょうか。今回は、がんになりやすい人の特徴とがんを防ぐ生活習慣についてご紹介していきます。
そもそもがんとは?
まずは、がんがどんな病気なのかについて知識を深めていきましょう。
がんは遺伝子変異により引き起こされる
私たち人間や動物が生きていくためには、絶えず細胞分裂を繰り返すことが欠かせません。細胞分裂をするときに私たちの遺伝子情報が複製されますが、ごく稀に遺伝子情報に変異が生じてしまうことがあります。この変異した遺伝子は異常に増殖して塊になり、「細胞のがん化」「腫瘍形成」につながっていくのです。
異常に増殖した細胞の塊は、放置しておくと血液などに入り込んで全身に広がるため注意が必要です。この状態を「浸潤」といい、転移することで全身に新しいがん組織を増殖させてしまうリスクが高まります。
年齢を重ねれば重ねるほど、細胞分裂の回数は増えていきます。そのため、異変が起こる可能性も増えていくのです。
がんになる確率は2人に1人!
日本人の死因第一位であるがんですが、一体どれほどの確率でかかってしまうのでしょうか。
がん研究振興財団の調査によると、男女ともに2人に1人の確率で生涯に1度はがんにかかる可能性があることがわかっています。[注2]
ただし、がんになったら必ず命を落とすということではなく、多くのがんは早期発見すれば治癒が可能です。がん研究振興財団の調査によると、がん患者の5年後の生存率は58.6%だと報告されています。[注3]早期発見すればそのぶん生存率は上がるため、40歳を超えたら定期的ながん検診を受けることが非常に大切です。
[注2] [注3] がん研究振興財団:がんを防ぐための新12か条
死亡率の高いがんの種類
がんにはさまざまな種類があり、種類によって症状や生存率は大きく変わります。日本人で患者数が多いがんの種類としては、以下の5つが挙げられます。[注4]
- 大腸がん
- 胃がん
- 肺がん
- 前立腺がん
- 乳がん
また、日本人の死亡率が高いがんの種類は、以下5つです。
- 肺がん
- 大腸がん
- 胃がん
- 膵臓がん
- 肝臓がん
もしも体調不良が続いて、体に異変を感じる場合は、上記のがんが発生していないか重点的に調べることをおすすめします。
がんになりやすい人の5つの特徴
がんは、細胞分裂を繰り返す人間にとって避けられないものです。しかし、生活習慣により「がんになりやすい人」と「なりにくい人」がいるのは事実です。
ここからは、がんになりやすい人の生活習慣についてご紹介していきます。
1喫煙している
がんのリスクを高める生活習慣として有名なのが、喫煙習慣です。喫煙すると、ほぼすべてのがんリスクを高めてしまいます。たとえ喫煙習慣がない方でも、受動喫煙で「肺がん」「喉頭・咽頭がん」のリスクが上がってしまうので、本人だけではなく周囲の方も注意が必要です。
がんにならないためにはタバコを吸わないことが重要ですが、今喫煙をしている方も禁煙することでがんリスクを減らすことは十分に可能です。高齢で喫煙習慣がある方は、健康のために禁煙を検討したほうがよいかもしれません。
2過度な飲酒をしている
食欲の増進や血行促進、ストレスの緩和など、適度な飲酒は健康にメリットをもたらすといわれてします。しかし、お酒に含まれるアルコールは肝臓でADH(アルコール脱水素酵素)、MEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)へと分解され、その後は発がん性が疑われるアセトアルデヒドになります。そのため、がんを引き起こす要因となってしまうことも否定できません。
とくに、飲酒すると以下のがんリスクが高まってしまうといわれています。
- 口腔がん
- 咽頭がん
- 喉頭がん
- 食道がん
- 大腸がん
- 肝臓がん
- 乳がん
また喫煙者が飲酒すると、よりがんリスクが高まってしまうことが報告されています。喫煙習慣も飲酒習慣もある方は、どちらかを控えることでがんのリスクを下げるように対策を取るよう心がけましょう。
3がんのリスクを上昇させる食材を食べている
テレビや本などで、発がんリスクを高める食べ物について目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。食べ物や栄養の発がん性については研究が行われていますが、実際にがんリスクが高まるとわかっているものはごく僅かです。
たとえば、がんのリスクを上げる可能性がある食べ物や栄養としては、以下のようなものが挙げられます。[注5]
- 赤身肉や加工肉(大腸がん・胃がん)
- βカロテン(肺がん)
- 飲料中のヒ素(肺がん)
- 塩蔵食品(胃がん)
食事は毎日取るものなので、体に与える影響は非常に大きいです。ぜひ食生活にも気をつけましょう。
逆に、がんのリスクを下げるとされている食べ物や栄養もあります。
- 食物繊維を含んでいる食材(大腸がん)
- 非デンプン野菜(口腔がん・咽頭がん・喉頭がん)
- にんにく(大腸がん)
- 果物(口腔がん・咽頭がん・喉頭がん・肺がん)
- カルシウム(大腸がん)
- コーヒー(肝臓がん・子宮体がん)
以上の食材や栄養を意識して摂ることで、がんにかかるリスクを下げることができる可能性があります。また、バランスの取れた食事を摂って塩分を控えることも、がん予防には大切なことです。
[注5] 国立がん研究センター:がんの発生要因
4適度な運動をしていない
がん予防をするためには、適度な運動も非常に大切です。運動することで結腸がんのリスクが下がることがわかっており、閉経後の乳がんや子宮体がんにかかるリスクを下げる可能性もあることが報告されています。これは、運動による肥満の解消や免疫機能の向上、脂質の代謝効果が影響していると考えられているためです。
さらに身体活動が高いと、がんだけではなく心疾患や糖尿病のリスクも下がります。健康寿命を延ばすために運動は欠かせないものなので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。
5肥満・痩せ気味
肥満や痩せ気味の体型の方は、がんのリスクが高くなることがわかっています。女性はBMIが25の人、男性はBMIが19~24.9の人がもっともがんで死亡するリスクが低く、そこから離れるごとにリスクが高まっていきます。[注6]
がんのリスクを下げるためには、体重を適切な範囲に維持することが非常に大切です。男性ならBMI21~27、女性は19~25の範囲内になるように管理しておきましょう。
がんを防ぐための12か条
最後に、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが発表している「がんを防ぐための新12か条」をご紹介します。
- たばこは吸わない
- 他人のたばこの煙を避ける
- お酒はほどほどに
- バランスのとれた食生活を
- 塩辛い食品は控えめに
- 野菜や果物は不足にならないように
- 適度に運動
- 適切な体重維持
- ウイルスや細菌の感染予防と治療
- 定期的ながん検診を
- 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
- 正しいがん情報でがんを知ることから
[引用元] 公益財団法人 日本対がん協会:がんを防ぐための新12か条
喫煙や飲酒を控える、バランスのとれた食事などは、がんを防ぐのに効果的なことは広く知られていますが、ウイルスや細菌の感染予防・治療も忘れずに心がけましょう。ウイルスや細菌への感染は、喫煙に次ぐほどのがんのリスクでもあるのです。たとえば、肺がんの原因としてB・C型肝炎ウイルス、胃がんの原因としてヘリコバクターピロリ菌が挙げられます。
日本対がん協会の発表は、研究で集められた証拠をもとに作られたものなので、確実にがんのリスクを下げることができる項目ばかりです。ぜひ毎日の生活で意識してみてください。
生活習慣を見直してがん予防をしよう!
日本人の死因第一位の疾患はがんですが、生活習慣の見直しや早期発見によって罹患を予防したりがん罹患後の生存率を上げたりすることが可能です。ぜひ今回ご紹介した、がんになりやすい人の特徴やがんを防ぐための12か条に関する知識を活かして、がん予防をしてみてください。
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