成年後見人とは?利用するメリットは?
超高齢化社会の波が押し寄せている現代において、成年後見人制度の注目度は高まりつつあります。ただ、その制度について詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。そこで今回は、成年後見人制度の種類とそのメリット・デメリットについて紹介します。
自身や親族の財産を守りたいと考えている人は、ぜひ本記事をお読みください。
成年後見人制度とは?
法務省では、成年後見人制度を以下のように定義しています。[注1]
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見人制度は主に「法定後見人制度」と「任意後見人制度」の2種類に分かれています。それぞれ、本人の権利や財産の保守、生活の支援が目的なのは共通していますが、他の内容が細かく異なるのです。
法定後見人制度
法定後見人制度とは、本人の物忘れが悪化したり、判断能力の低下が見られたりしたことにより、契約や財産管理に不安や不都合が出てきた場合に、初めて本人や親族が家庭裁判所に申し立てられる後見制度のことです。後見制度は判断能力が不十分な方が自身に不利益な契約などの法律行為をした場合に本人または成年後見人がその法律行為を取り消すことのできる制度です。したがって、判断能力の低下が見られてからでないと、利用できません。
裁判所で後見制度の審判を受けた場合、本人を被後見人、その保護者として財産管理などを行う人を後見人と呼びます。ちなみに、後見人の選任・権限は、裁判所の審判によって決定されます。
また、法定後見人制度には「後見」「保佐」「補助」3つの類型があります。それぞれで、支援する側の行動範囲が決められており、被後見人の判断能力がどれくらい低下しているかによってそのレベルが判断されるのです。
例えば「日常生活の買い物が1人でできない」など、判断能力がまったくない場合は「後見」に、「日常の買い物はできても、不動産の売買など重要な取引行為は一人ではできない」など、判断能力が著しく低下している状態とみなされれば「保佐」に、「不動産の売買など重要な取引行為を一人でするには不安がある」程度の判断能力低下であるとみなされた場合は「補助」に分類されます。
各類型によって支援する側に与えられる権利は以下の通りです。
類型 | 例 | 権利 |
後見 | 日常生活の買い物が1人で難しい | 代理権・取消権 |
保佐 |
日常の買い物は可 不動産売買など重要な取引行為は難しい |
同意権・取消権 |
補助 | 不動産の売買など重要な取引行為に不安あり | 一部の同意権・取消権 |
任意後見人制度
任意後見人制度とは、本人の判断能力が衰える前に後見契約をおこない、判断能力の低下が見えた後に後見契約の効力を生じさせる制度になります。判断能力低下よりも前に契約が可能な点が特徴的で、任意後見契約には公正証書が必要です。
また、任意後見人制度は誰を後見人にするか、どういった契約内容にするのかを判断能力が低下していない本人が自由に決められるのがメリットです。
自分の意志であることから、法定後見人制度では決められない「相続税」や「資産運用」に関する後見人も決められます。
ただし、任意後見人制度には取消権が適用されません。そのため、被後見人が不利益を伴う大きな契約をしてしまっても、それを取り消すことができないのです。もし取消権を適用させたい場合は、任意後見人制度を終了させて法定後見人制度に移行させる必要があります。
成年後見人制度を利用するメリット
成年後見人制度を利用することで得られるメリットは以下の通りです。
- 大きな金額かつ不当な契約を取り消してもらえる(法定後見人制度の場合)
- 自身の財産や資産を管理してもらえ、経済的な破綻が予防できる
- 自身に本当に必要な契約を適切な判断で行なってもらえる(介護など)
どのメリットにも共通しているのは、「適切な判断をしてもらえる点」です。近年は高齢者を狙った詐欺などが横行しており、高齢者でもあっても適切な判断が求められる時代です。成年後見人制度を活用しておくことで、未来の自分を守ることにもつながります。
成年後見人制度を利用するデメリット
一方、成年後見人制度を利用することでもたらされるデメリットもあります。
- 申し立てには労力とお金がかかる
- 後見人によっては報酬が発生してしまう
- 相続税対策が行えない可能性が高くなる
法定後見人制度を利用する場合、申し立てを行なってから実際に利用が開始できるまで、4ヵ月ほどかかると言われています。また申し立てのために必要な準備まで含めると、より長くかかると考えられるでしょう。申し立てのすべてを司法書士や弁護士に委任し、労力を減らすこともできますが、代わりに10万〜30万円ほどのお金がかかります。
また、法定後見人制度の場合、後見人を決めるのは家庭裁判所です。その際に後見人として専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が選ばれると、報酬が発生してしまいます。さらに、本人の資産を保護するという観点から、資産運用や相続税対策が難しくなる可能性もあるのです。
成年後見人制度は、こうしたメリット・デメリットを踏まえたうえで利用するかどうかを決めることになります。
成年後見人制度を利用する必要がある場合
上述したように、成年後見人制度は判断力が低下し、経済破綻してしまう恐れのある方を守るための制度です。成年後見人制度を利用しなければいけないケースはまさにそこにあります。
とくに身近に親族がいない場合は、任意後見人制度を活用して本人の財産管理を、他者に行なってもらうようにしておかないと、経済破綻のリスクが高まるでしょう。
ご両親が安全な生活を送るための日々の取り組み
歳を重ねるごとに判断能力が低下することは、仕方のないことです。だからこそ、安全な生活を送るための取り組みについて、考えておく必要があります。
少なくとも本人の財産だけは、なんとか失わないようにしたいところです。
成年後見人制度も手段のひとつとして考え、ご両親やご自身、ご親族の安心につなげましょう。
もしものときに備えよう!
判断能力の低下とともに認知力の低下も心配なところ。そんな方に備えていただきたいのがALSOKの「まもるっく」です。
「まもるっく」は通話機能のついたGPS端末のため、徘徊や迷子でいなくなった場合に、端末を持っている方の位置情報をリアルタイムで把握することができます。
また、転倒などの異常を感知するセンサーもついており、使用者の反応がない場合には自動で警備センターに通報され、緊急事態の場合は、ガードマンが現場まで急行する「駆けつけ機能」を利用することも可能です(オプション)。
備えあれば憂いなしという言葉もあるように、もしものときのために購入を検討してみてはいかがでしょうか。
ご高齢の方を見守るサービス
ALSOKの「まもるっく」