もし高層マンション・タワーマンションで火災が起きたら?
快適な毎日が実現できる、高層マンションやタワーマンション(※)での暮らし。高層マンション・タワーマンションの購入を検討されている方や既にお住まいの方の中には、火災のリスクについて気になるという方も多いのはないでしょうか。
本コラムでは、日本の高層マンション・タワーマンションについての火災に関する情報を取りあげながら、万一の火災発生時にはどのように対応すべきかについて説明してまいります。
※注:高さ60m超(階数にしておよそ20階以上)の居住用建築物を指して、タワーマンション(超高層マンション)と呼ぶことが多いようです。
目次
建物の高層階における火災の発生状況
東京消防庁の「令和4年中の火災の状況」によると、令和4年に管轄区域内の建物から出火した火災は2,778件であり、そのうち11階以上の階から出火した火災は、141件となっています。11階以上の階から出火した火災について、平成25年から令和4年までの10年間の推移を見てみると、増減を繰り返しながら増加傾向で推移しています(平成25年から平成29年までの5年間では年平均約98件、平成30年から令和4年までの5年間では年平均約123件)。
日本国内で発生した高層マンション火災としては、例えば、次のような事例があります。
発生時期 | 地域 | 概要 |
---|---|---|
2016年2月 | 埼玉県所沢市 | 午後8時10分頃、31階建てタワーマンションの15階から出火、82平方メートルの住戸を全焼し、翌日午前1時50分頃鎮火した。 一時は、100人が1階ロビーに、130人が近所の旧市庁舎に避難した。男女2名がやけどをして病院に運ばれた。 |
2021年1月 | 東京都江東区 | 午後7時半過ぎ、44階建てタワーマンションの9階から出火。男性2名が煙を吸うなどで病院に運ばれた。 |
2022年6月 | 東京都品川区 | 午前5時頃、44階建てタワーマンションの18階から出火。400人近くが避難した。男女4名が煙を吸うなどで病院に運ばれた。 |
2024年1月 | 東京都荒川区 | 午前9時45分頃、39階建てタワーマンションの5階から出火。女性1名が煙を吸うなどで病院に運ばれた。 |
海外では、次のような高層住宅火災の事例があります。
2010年11月、中国・上海において午後2時15分(現地時間)頃、改修工事中の28階高層住宅で火災が発生し、58人の死者が出ています。
2017年6月未明、英国ロンドンにおいて、24階建ての高層住宅グレンフェル・タワー(Grenfell Tower)で大規模火災が発生しました。この火災による死者数は70人(死産の胎児1人を含まず)であり、英国内では第二次世界大戦後最悪の死者数を出した火災となりました。
日本の高層マンションは安全か
次に、日本国内の高層マンション・タワーマンションにおいて、どのような防火対策がなされているのかについて説明してまいります。
法令による規定について
対象 | 法令 | 法令により義務付けられる求められる事項 |
---|---|---|
11階以上の建物 | 消防法 | スプリンクラー設備の設置 |
15階以上の建物 | 建築基準法 | 特別避難階段の設置 |
高さ31mを超える建物 | 建築基準法 | 非常用エレベーター設置 |
全住宅に住宅用火災警報器の設置が義務付けられています。
11階以上の建物にはスプリンクラー設備の設置が義務付けられています。
15階以上の建物の場合は、特別避難階段の設置が原則義務付けられています。
高さ31mを超える建物(政令で定めるものを除く)においては、建築基準法で非常用エレベーターの設置が義務付けられています。
高さ31mを超える高層マンションは、消防法において「防炎防火対象物」に該当する建築物とされており、防炎対象物品については、基準を満たす防炎性能を備えた「防炎物品」を使用しなければならないとされています。
【防炎対象物品】
カーテン、布製ブラインド、絨毯など
日本の高層マンションはさまざまな法規制の基準を満たしていなければならないことから、日本の高層マンションは他国と比較して安全性が高いと言えるでしょう。
もし万が一、火災が発生したら?
高層マンションで火災が発生した場合、住人はどのような行動をとると良いのでしょうか。ここでは高層マンションで火災が発生した場合の対処法を見ていくことにしましょう。
避難する際は非常階段で下りる
火災時には火事による停電や機械の故障によりエレベーターが途中で動かなくなり、中で取り残されてしまう危険があるので、高層マンションでの避難はエレベーターを使用せず、非常階段を使って避難することが基本です(避難ハッチを使う方法については後述します)。なお、通常のエレベーターについては、運転中に火災が発生すると管制運転に切り替わります。管制運転に切り替わると、降りたいフロアのボタンを押してもすべてキャンセルされ、避難階(通常は建物のエントランス階)まで直行運転となり、乗客が退避した後、休止モードとなります。
ドア・窓は閉めて避難する
避難する際には、室内のドアは閉めてから避難しましょう。扉や窓が開放されていると空気が供給されて延焼が速くなってしまいます。扉や窓を閉めてから避難することで被害の拡大を防ぐことができます。
避難ハッチを有効利用する
避難はしごにつながる「避難ハッチ」がベランダに設置されていますので、そちらを避難の際に活用する方法もあります。非常階段を使用した避難などが困難な場合には、避難ハッチから階下へ降り、安全な場所への避難が可能な階まで逃げるようにしましょう。
ただし、避難ハッチは全室にあるとは限らないため、自室にない場合はベランダから設置場所まで移動する必要があります。自室の階の避難ハッチが設置されている場所は確認しておきましょう。また、11階以上の階層では避難ハッチ自体設置されていない場合もあります。
火災が起こる前に確認しておくべきこと
いざ火災が起こってしまってから慌てることのないよう、火災が起こる前に今一度、お住まいのマンションの火災の備えについて確認しておきましょう。ここでは、火災が起こってしまう前に確認すべきことについてご紹介します。
自室からの避難経路
お住まいの部屋から、どのような経路を通って避難できるのかを必ず確かめておきましょう。非常階段や避難ハッチの場所、ベランダ間の移動方法などを確認しておくとともに、複数の避難経路を想定しておくようにします。1つの避難経路しか想定していなかった場合、非常時にはその経路が使えない、ということもあり得ます。あらゆる状況を想定し、1つの経路だけでなくなるべくたくさんの避難経路を確認しておくようにしましょう。
火災保険の加入の有無や契約状況
分譲マンションにお住まいであれば、多くの方が火災保険に加入されていることと思います。保険契約の内容や約款などは必ず確認し、万一の際に受けられる補償について確実に把握しておきましょう。管理組合が一括で火災保険に加入している場合には、管理組合に問い合わせるなどして契約内容の確認を行ってください。
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ALSOKでは、高層マンションなどでご利用できるホームセキュリティ「HOME ALSOKアパート・マンションプラン」を提供しています。
HOME ALSOKアパート・マンションプランを導入していれば、火災や不審者の侵入などの異常が発生した場合には、訓練を受けたガードマン(警備員)が現場に急行し、適切な処置を行います。また、急病のときには非常押しボタンを押していただくことで、ALSOKに通報することができ、必要に応じて救急車の要請などの対応を行います。
ALSOKのホームセキュリティを快適なマンション生活にプラスして、セキュリティ対策の強化を図ってみてはいかがでしょうか。