実は法律違反?身近に潜む軽犯罪などの違反行為とは
日常的に何気なく行っているさまざまな行動に対し、もし「実は法律違反にあたる」との指摘を受けたとするなら、多くの方が驚くと思います。しかし身近な行為のなかにも、軽犯罪法やその他の法令に抵触する可能性があるものが少なくありません。
この記事では、軽犯罪法をはじめとする法令に違反している可能性がある日常的な行為について、代表的なものをいくつかご紹介します。すべてが犯罪や法令違反につながるとは限らないものの、普段から違反にあたらない行動をとれるよう、それらを知識として身につけておくと良いでしょう。
※記載の内容はあくまで一例であり、状況によって法律の解釈は異なります。
※不安な場合は法律の専門家に相談しましょう。
※2022年10月19日時点での解釈となります。
日常生活における軽犯罪
以下は、警察庁の犯罪統計書「令和4年の犯罪」による令和4年(2022年)の軽犯罪違反による検挙数を、違反種別ごとに100件を超えたものについてまとめたグラフです。
「凶器携帯(刃物など人に危害を加え得る器具を正当な理由なく携行する行為/軽犯罪法1条2号)」が3,288件と、非常に多い点が目立ちます。また田畑等侵入(1,304件)や火気乱用(914件)、排せつ等(496件)なども多くなっています。
軽犯罪にあたるとは思わずに行為に至ったケースや、「この程度だから大丈夫」と思って行ったことで、検挙されてしまう可能性があることはグラフの結果からも読み取れます。
身近な物品を、ただ持ち歩いているだけでも軽犯罪法に抵触すると聞くと「そんなことがあるのだろうか」と思うかもしれません。しかし、軽犯罪法で罪とされている行為は33もあり、私たちが家庭内に常備するものや身近な習慣などにかかわる以下のような要件も該当します。
ドライバーなどの携行
一般のご家庭にも常備されているドライバーですが、これらを車に積むなどして携行すると、軽犯罪法第1条3号等に抵触し罪に問われる可能性があります。マイナスドライバーやバールなどの工具は「指定侵入工具」とみなされ、建物へ侵入する際に使用される恐れがあるものとして定められているためです。
なお、電気工事業や水道業、建設・建築業などの事業目的でこれらの工具を用いる際の携行に関しては罪に問われることはありません。一般の方の場合も、空き巣や不法侵入などに及ぶ意図による携行でなければ罪に問われる可能性は低いといえます。
ただし、「念のため修理工具としてドライバーやバールを自家用車に積載していた」という状況で、悪意がなくても検挙されてしまう可能性はあり得ます。工具類の携行には、十分に注意を払っておいたほうが良いでしょう。
住居の近くでの焚火
家やその塀、森林など火が点くと燃え広がる可能性のある物品や建物の近くで焚火を行うことは軽犯罪法第1条9号等に抵触し、火気乱用の罪などに問われる可能性があります。
物品や建物に限らず、ガソリンなど危険性のある可燃物の近くで焚火など火気を扱う行為があった場合も同じく火気乱用の罪等に該当する可能性があります。自宅近くや住宅街などでの焚火は可能な限り避け、屋外で火気を扱う場合はその状況や条件が法令に準拠するかどうかを事前に必ず確認しましょう。
行列への割り込み
公共の場所で交通機関や公演などを待つため並んでいる多くの人の列に威嚇を示して割り込み、列を乱す行為も軽犯罪法第1条13号等への違反の可能性があります。暴言などで周囲の人たちを威嚇しさらに迷惑をかける行為は、脅迫罪や強要罪等に問われる場合もあり得ます。またその場所が鉄道機関の施設内である場合は、鉄道営業法違反に該当することも考えられます。
道端などにつばを吐く行為
路上など公共の場所でつばを吐く行為は、軽犯罪法第1条26号等に違反する可能性があります。このような行為は犯罪に該当する以前に他人へ不快感を与えると同時に不衛生ですから、行わないようにしましょう。
これらのほか、「ごみなどを街頭や路上にポイ捨てすること(軽犯罪法第1条27号等)」や「他人の通行を故意に邪魔して不安を与えたり、迷惑をかけたりすること(軽犯罪法第1条第28号等)」なども犯罪とみなされる可能性があります。「ちょっとしたこと」や「単なる悪ふざけ」だと思ってしたことが、罪に問われてしまう可能性を意識して、日常生活に活かすことが大切です。
軽犯罪以外の身近に潜む法律違反
前の項目までは、軽犯罪法違反とみなされる可能性がある行為で、日常生活や習慣的な行為が犯罪につながる可能性について記載しました。ここからは、軽犯罪に限らずさまざまな法律違反にあてはまる可能性がある行動・行為についても見ていきましょう。
ごみの廃棄に関する法律違反
家庭などから出る廃棄物(ごみ)に関しては、複数の法律によって厳しく管理されていることを常に意識しましょう。まず、ごみ処理場に家庭などから出たごみを捨てる際、指定された日時以外にごみを持ち込むことは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の第16条等違反となる可能性があります。
また、先に危険が疑われる場所での焚火は軽犯罪法違反にあたる可能性があることをご説明しました。これに加え、ごみを私的に焼却処理することも手段によっては廃棄物処理法等に違反するとみなされ、処罰の対象となる場合があります。
焚火や焼却処理を行いたい場合は、その方法が法令に準じているかどうかをきちんと確認して実施の可否を検討することが必要です。
店舗での会計時に釣銭を多くもらって返さないこと
レジなどで会計の際に店員が釣銭の金額を誤り、多くの釣銭を渡されてしまったとします。その際、その場で気づいたにもかかわらずもらったまま放置することは詐欺罪等に該当する可能性があります。
店を出てから、あるいは帰宅してから気づいたのに返金を行わなかった場合は詐欺罪にはあたりません。しかし、刑法第254条に基づき占有離脱物横領罪等に問われる可能性があります。余分に渡した分の釣銭は、店側の占有から離脱した後にも店の所有物として扱われ、それを返却しなかったとみなされるためです。
病院で自分に処方された薬を他の誰かに渡すこと
病院で処方された風邪薬や痛み止めなどの処方薬を、余ったからといって誰かにあげることは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第24条等違反となる可能性があります。ご自身に処方された薬は残さず、きちんと飲み切るようにしましょう。
このほか、「ATMで取り忘れられたお金を持ち去ること(刑法235条窃盗罪または刑法第254条占有離脱物横領罪等の違反)」や「公衆トイレのトイレットペーパーを持ち帰ること(刑法235条窃盗罪)」なども、身近で起こり得る法律違反の可能性がある行為です。「誰にも何も言われなければ大丈夫だろう」と甘い認識をせず、何気なく行いそうになることも実は法律違反や犯罪行為となりかねないことを意識しましょう。
法令違反を起こさないためには
「うっかりしていた」「法律に反するつもりはなかった」と後から言っても、結果として取り返しがつかない事態を招いてしまうこともあり得ます。日常生活のなかで、「どうということのない行為」と思い込んでしたことが犯罪や違法行為につながらないよう意識づけるには、どのような心がけが必要なのでしょうか。
軽犯罪にあたることで、自分がしそうな行為を把握し注意する
今回ご紹介したいくつかの「意外な軽犯罪法違反の可能性がある行為」をはじめ、ご自身が日常的に行っていることのなかで法律に反する可能性があるものを把握しておくと良いでしょう。些細なことでもそれらの行為はしないよう意識して生活すると良いでしょう。
「ずるい」「不道徳」と感じることはしないよう努める
軽犯罪やその他の法律違反にあたる可能性があることの大半は、一般的な道徳観念に反していたり、他の人たちから見れば「ずるい」と感じたりするものです。悪意のないマイナスドライバー携行など特殊なケースを除き、法令に違反する行為は人が卑怯だと感じることや、不道徳と思うこととほぼ一致します。「少しぐらいいいだろう」と思わず、善悪の判断上避けるべきだと思うことはしない心がけを習慣づけましょう。
おわりに
万一、軽犯罪法違反とみなされても、逮捕に至る事件まで発展する可能性は高くないかもしれません。しかし、さまざまな法律違反が同時に発覚したことで刑法違反とみなされる可能性もあり得ます。軽犯罪で検挙された場合も、有罪が確定することで前科が付いてしまうため、そのような事態とならないよう日頃から気を付けておくことが大切です。
身近な行為が法律に触れる可能性について、知識を得ておくことはもちろん重要です。それとともに、ご自身がしようとしていることが道徳観念に沿うか、常に意識することを習慣にしましょう。その上で、少しでも良くないと感じたらしないという意識で、日常生活を送るようにしましょう。