相続トラブルは発生しやすい?遺産相続トラブル事例と防止対策
知人が仲の良かったご家族との相続に関するもめ事で悩む様子を見て、驚いた経験をお持ちの方も多いかもしれません。どんなに親しい家族間でも、こと遺産相続となるともめてしまう可能性が少なからずあるといわれています。
この記事では、遺産相続でトラブルが起こりやすいケースをご説明しながら、トラブルを未然に回避する対策を相続人・被相続人それぞれの例に分けてご紹介します。
遺産相続トラブルが発生しやすいケース
遺産相続に関するトラブルは長引きやすく、親しかった家族間の分断を引き起こす可能性もあります。疎遠になってしまうことや絶縁という最悪の事態を防ぐためにも、どのような状況が遺産相続トラブルを招きやすいのかを知っておきましょう。
分割の難しい遺産が含まれている
分割することの難しい資産が遺産に含まれる場合、公平な相続が難しくなりがちです。もっとも代表的なものを挙げるなら、土地などの不動産がそれに該当します。相続する遺産に不動産が含まれている場合は、評価が流動的なことも含めてトラブルを招く可能性があるといえます。
また、被相続人が会社を生前経営していた場合も、法人は分割困難な遺産にあたるため同様にもめやすいケースと考えられます。
特定の相続人が一方的な主張をする
遺言が残されていない状態で遺産相続が難航するケースとしては、相続人の1人が遺産の独占を一方的に主張するなどで話がこじれる事態が考えられます。信用できない相続人がいて話を進めにくい場合、弁護士による仲介を依頼することが得策と考えられます。
遺言の内容に偏りがある
被相続人が残した遺言状の記載内容が極端に偏っている場合も、もめ事の発端になりがちです。相続人のうち特定の誰かの分与額だけが高額で、且つそれが生前の被相続人への貢献など納得できる理由がないケースなどは、特にトラブルを生みやすいでしょう。
このほか、被相続人に借金があったケースや、音信不通などで疎遠な相続人がいて連絡が取りにくいケースなどが、トラブルを招きやすい例として考えられます。
以下は、2009年から2021年までの13年間における相続財産の金額の構成比の推移をグラフにしたものです。
従来から比率の高い土地などの不動産に加え、近年は株などの有価証券の比率が高くなる傾向が見られます。不動産や有価証券は、現金とは異なり分割して相続することが難しい財産のため、相続においてトラブルが発生しやすい要素が垣間見えます。
遺産相続トラブルは資産家だけの問題ではない
いつか訪れる遺産相続の機会に備え、法的に有効な遺言状を作っておくことや、手持ちの資産を明確な状態にしておくことが重要です。しかし、「自分は多額の資産なんて持っていないから関係ないだろう」と、遺産相続トラブルを他人事と考えている方も少なくないのではないでしょうか。
持ち家などの不動産や預貯金、株などの有価証券は高額でなくとも将来遺産となる可能性のあるものです。それら相続する財産が少額だとしても、相続トラブルと関係がないとは限りません。
最高裁が集計した2021年のデータを見てみると、遺産相続に関する紛争において裁判所での調停が成立したケースでは金額1,000万円以下が3割強を占めています。5,000万円以下で見ても全体の4分の3となっており、相続トラブルは一般的な水準の家庭でも起こり得る問題と考える必要があるでしょう。
多いのは、将来被相続人となる人が「遺産が多額でなければ相続税が課税されないので特別な備えは不要」と考えてしまうケースです。多くの資産を持っていなくとも、自宅などまとまった財産にあたるものを所有していれば相続でもめる可能性はあると考え、備えておく必要があります。
被相続人が遺産相続トラブルを防ぐ対策
被相続人(死後遺産となる財産の所有者)が、将来の相続に備えてトラブルを回避するためにしておきたいことは、おもに以下の2つがあります。
財産目録の作成
被相続人の死後、相続人が遺産について何も分かっていない状況から明らかにしていくことは簡単ではありません。被相続人となる予定の方が、生前のうちに手持ちの資産を明らかにしておくと相続人の手間がなく、トラブル回避にもつながります。
財産目録は法的に作成が求められている書類ではないため、決まった書式などはありません。自由に記載できますが、不動産や預貯金はもちろん、今ある財産以外に借金など負の財産まで記載する必要があります。相続にともなう財産目録は被相続人の死後相続人が作成するケースが一般的ですが、被相続人となる人が生前に把握可能な財産をある程度まとめておくことをおすすめします。
法定相続人の把握と遺言書の作成
法定相続人にあたる人がどれだけいるかを、あらかじめ把握しておきましょう。法定相続人とは、民法によって規定された遺産を相続できる親族のことで、3つの順位に分けられています。
- 第一順位:子と代襲相続人
- 第二順位:両親と直属尊属
- 第三順位:兄弟姉妹及び代襲相続人
被相続人が法定相続人をあらかじめ把握しておき、その法定相続人を想定した内容での遺言書を作成しておくと、相続トラブルの多くは回避できるといわれています。
ご自身で法的に有効な遺言書を作成することが難しい、自信がないという場合には、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家へ一任する方法もあります。
相続人が遺産相続トラブルを防ぐ対策
相続人(遺産を相続する権利を持つ人)が、相続にあたってもめ事を招かないためにしておきたいこととしては、おもに以下の2つが挙げられます。
遺言の有無を確認
まずは被相続人が法的に有効な遺言書を作成していたかどうかを確かめましょう。遺言書があり、それに沿った相続が行える状況が確認できれば、トラブルの可能性はかなり少なくできます。可能であれば、被相続人が生前のうちに遺言書について相続人となる人(配偶者、子、父母、兄弟姉妹のいずれか。なお、配偶者はどのような場合であっても必ず相続人となります)へ伝えておくと良いでしょう。
トラブルが予測される場合は相続放棄を
被相続人に多額の借金や負債がある、他の相続人が被相続人の事業を継承すると決まっているなど、事前にトラブル発生の可能性を予測できるケースもあり得ます。そのような状況である場合は、思い切って相続放棄をすることも1つの手です。
相続放棄とは、遺産の受け取りを不要としてご自身の相続権を返上することです。相続放棄の手続きは、相続権が発生してから3か月以内に家庭裁判所で行う必要があります。3か月の期間内にじっくり考えることもできますが、もし早い段階で相続放棄をしようと決めているなら、できるだけ早期に申し出たほうが良いでしょう。
相続したご実家が空き家になったら
遺産相続に関するトラブルについてくわしく知り、円満に相続手続きを進めるための準備をしておくことは大切です。しかしそれと同時に、相続したご実家が空き家になってしまったときなどのリスク備えておくことも必要です。
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空き家の距離が物理的に離れている場合や留守中の管理が困難な場合は、警備会社に依頼して適切に維持・管理するのがおすすめです。
まとめ
「遺産相続トラブルはお金持ちの家庭の話で、縁のないこと」と、大抵のご家庭では考えているかもしれません。しかし実際には1,000万円を超えない少額の財産でも長期にわたるもめ事が数多く起こっており、どのようなご家庭でも相続に関することは慎重な準備が必要です。
可能であれば被相続人となる予定の方が生前のうちから相続に関する準備を進め、いざ相続が発生したときどう話を進めて良いか分からなくなることを防ぎましょう。財産の相続人にあたる方々は、親御さんがお元気なうちから相続に関して前向きに相談をしておくことがおすすめです。