柔道の基本ルールを知って試合を楽しもう!改正点や見どころを紹介

スポーツ 2024.05.29更新(2021.07.21公開)
柔道の基本ルールを知って試合を楽しもう!改正点や見どころを紹介

梅木 真美 選手

さまざまな国際大会で多くのメダリストを輩出するなど、日本国内で特に盛んなスポーツの1つとして、柔道が挙げられます。柔道の基本的なルールは複雑ではなく、観戦初心者の方でも比較的分かりやすいでしょう。
この記事では、柔道の基本ルールや最新の改正点、観戦を楽しむポイントについてご紹介します。

目次

柔道はどんなスポーツ?

まず、柔道がどんなスポーツなのかを簡単にご説明します。

畳の上で行われる1対1の格闘技

柔道は選手同士1対1が畳の上で試合をする格闘技です。競技が行われる場所は「試合場」と呼ばれ、最大10m×10mの畳の上を「場内」と呼びます。場内の外側には「場外」と呼ばれる安全地帯にあたるスペースがあり、場外には畳が敷かれています。
試合場の場内と場外の境界は見て分かりやすいよう、畳の色分けがされています。

柔道の歴史

柔道は日本古来の武術である「柔術」をベースに発展した日本のスポーツです。柔道の歴史は明治時代から始まり、講道館柔道の創始者である嘉納治五郎(かのうじごろう)によって柔術の各流派が融合され、現在の柔道の形となり広く普及されました。柔道は国内の学校教育や警察機関だけでなく、さまざまな国際大会で広く採用されるようになり、現在では世界各国で親しまれています。

「礼」を重んじる競技

柔道では、試合の前後に必ず選手が「礼」をします。これは「礼に始まり、礼に終わる」という柔道の基本的な考え方に基づいたものです。単に身体の強さを競うだけではなく、競技を通じて精神を鍛錬し日常においても体と心を有効に使い、人と人との礼節に寄与するという理念が根幹となっています。

柔道着にはなぜ白と青があるの?

柔道着にはなぜ白と青があるの?

柔道の道着は「柔道衣」と呼ばれますが、「柔道衣の色といえば白」というイメージをお持ちの方が多いでしょう。しかし近年の試合では、白い柔道衣の選手と青い柔道衣の選手をそれぞれ見る機会があります。
長らく柔道衣は白一色でしたが、選手や勝敗の区別がしやすく技も見やすいという理由で「カラー柔道衣」の使用が提唱されました。1997年の国際大会で白色に加えて青色の柔道衣が採用され、それ以降世界的な柔道の大会では白と青の柔道衣がおなじみとなっています。
日本国内の大会では長く白色の柔道衣のみが用いられていましたが、2021年の一部大会から初めて青色の柔道衣が導入されています。

柔道のルールは?技の評価方法や禁止行為

柔道の技や勝敗に関するルールもある程度知っておくと、観戦をより楽しめ協議に対する興味も深まります。ここでは、テレビ観戦などにも役立つ柔道の競技ルールを分かりやすくご紹介します。

柔道の基本ルール

柔道の試合は、1試合「4分」の制限時間で、その間に両選手が獲得したポイント数で勝敗が決まります。また、「一本」「技ありを二回取る」のいずれかが決まった場合や、試合終了時に「技あり」のスコアで差が出た場合、「反則負け」「負傷等による棄権」があった場合はその時点で終了となります。
試合時間が4分経過した時点で、両選手のポイントが同じであれば、「ゴールデンスコア」と呼ばれる時間無制限の延長戦が行われます。ゴールデンスコアは「一本」「技あり」が決まった時点で勝敗が決まります。なお両選手の「指導」数が同じであった場合、先に「指導」を取られた選手が負けとなります。

さまざまな戦術が楽しめる!柔道の階級制度

柔道では選手の体重別に階級が設けられ、その階級に属する選手同士で試合を行います。柔道になじみの薄い方でも、国際大会のメダリストを紹介するとき「男子73kg級銀メダル ○○選手」などと呼ぶのを耳にすることがあるでしょう。このように階級を必ず称するのは、その階級における試合でメダルを獲得したという意味です。

男子 60kg級 66kg級 73kg級 81kg級 90kg級 100Kg級 100Kg超級
女子 48kg級 52kg級 57kg級 63kg級 70kg級 78kg級 78Kg超級

なぜ柔道には階級制が設けられているのでしょうか。
対戦相手同士に体重差があると、基本的な体力や試合中相手に体重がかかった際の圧にも差が生じます。また、体格差の大きい選手同士が技をかけ合うことには、怪我などの危険も伴います。体格差によって試合の公平さを欠くことを防ぎ、また競技中の安全を確保するために体重別の階級制を設けているのです。
階級制があることで、選手たちは互いの技術や戦術を駆使して試合ができ、観戦する側にとっても柔道の面白さをより実感することができます。

柔道の勝敗はどう決まる?技の評価方法

柔道の勝敗はどう決まる?技の評価方法

柔道は、単に身体の強さだけで勝敗を決める競技ではありません。それがひと目で理解できるのは、試合で華麗に技が決まった瞬間でしょう。柔道の勝敗には、技の美しさや正確さも評価すべき要素として大きくかかわっています。
ここでは、柔道の試合における技の評価についてご紹介します。

一本

選手のどちらかが、相手を制しつつその背中が大きく畳に付く形で、一定の強さと速さで投げを打った場合に評価される技です。「相手を制していること」「相手の背が畳に付いていること」「投げに強さがあること」「投げが速いこと」の4条件が満たされて初めて「一本」が決まったとみなされます。
また、相手を抑え込んだ場合は20秒以上技が続行すると「一本」と評価されます。あるいは、技の受け手が降参の意志を示した場合にも「一本」となります。
「一本」が決まると決めた選手の勝ちとなり、その時点で勝敗が決まります。

技あり

選手のどちらかが相手を制しつつ投げた際に、先にご説明した「一本」に必要な他の3要素「相手の背が畳に付いている」「投げの強さ」「投げの速さ」のうち1つについて、一部が条件を満たさなかった場合「技あり」の評価がなされます。「一本」の評価には届かなくても、あと少しで「一本」といえるような技が決まった場合に「技あり」の評価がされると考えてよいでしょう。
抑え込みの場合は、相手を10秒以上抑え込んで20秒未満まで技が続行すると「技あり」となります。なお「技あり」が2つ評価されると「合わせて一本」の評価にあたり、そこで勝敗が決まります。

有効(2020年の国際ルール改正で廃止)

選手のどちらかが相手を制しつつ投げた際、「一本」に必要な他の3要素のうち2つについて、一部が条件を満たさなかった場合に「有効」と評価されます。
ちなみに「技あり」が2回あれば「一本」の評価と同等になりますが、何度「有効」があっても「技あり」と同等の評価にはあたりません。なお、現在の国際競技ルールでは「有効」は廃止され、「一本」と「技あり」のみの評価制となっています。

柔道の禁止行為とは

他のスポーツと同様、柔道にもルール違反に該当する禁止行為があります。どのような行為が、柔道の試合において違反とされているのでしょうか。

軽微な違反行為に対する「指導」とは

柔道においての禁止行為とは、以下のような行為が挙げられます。

  • 消極的な態度
  • 偽造的な攻撃
  • 故意に組み合わない
  • 自ら場外に出る、相手を故意に場外へ押し出す
  • 極端な防御姿勢 など

試合に対して消極的な態度をとることや、相手への危害となる可能性のある技や動作、また、柔道の精神に反する発言をすることも禁止行為にあたります。これらの禁止行為があった場合、それが軽度であれば「指導」の措置が採られ、1試合中に「指導」を3回受けるとその選手の負けが決まります。

重大な違反行為に対する「反則負け」

柔道において重大な違反行為となる反則負けは、以下のような行為が挙げられます。

  • 河津掛を試みる
  • 肘関節以外の関節を取る
  • 肘関節以外の関節を取る
  • 主審の指示に従わない
  • 柔道精紳に反する行為 など

これらの他、「指導」を二回受けた選手がさらに軽微な違反行為を犯した場合に「反則負け」とされます。
禁止行為の程度が重大(※)であるとみなされた場合、その時点(違反1回)で違反した選手の負けとなります。

(※)程度が重大とは、審判の制止にもかかわらず意図的に相手へ攻撃を加えることなどが該当します。

柔道衣の規定

試合の公平性と選手の安全性を重要視する柔道では、着衣による有利・不利や身体の危険がないよう、柔道衣にも詳細な規定があります。
まず、試合に出場するためには定められた規格を満たし認証を受けている柔道衣の着用が求められます。
上衣は帯を締めたときお尻まで全て覆うもので、袖も手首までを覆っていなければなりません。その他、上衣の袖回りに持たせるゆとりや下衣の丈などにも詳細な規定が設けられています。これは選手の安全を確保しながら、公正な条件下で試合を行えるための配慮でもあります。

主要国際大会での柔道のルール変更

柔道は、国際大会のルール改正が多い競技としても知られます。近年行われたルール改正によって設けられた国際大会における新ルールには、以下のようなものが挙げられます。

【主要国際大会でのルール改正ポイント】

  • 「有効」ポイントの廃止
  • 抑え込みの「技あり」評価を15秒から10秒に短縮
  • 「指導」の累積数による反則負けを4回→3回に短縮
  • 「男子5分、女子4分」の制限時間を「男女とも4分」とする

「有効」の廃止は大きな変更点ですが、それ以外は比較的細かな改正です。しかし、柔道好きな人と試合を観たり、柔道について話したりするときに知っておくと、より観戦を楽しめるでしょう。

柔道を楽しもう!柔道の見どころ

柔道観戦での注目ポイントといえば、一見不利に思われる選手が有利とみられた相手を一発逆転の大技で制するシーンでしょう。これは柔道の基本精神の1つとして知られる「柔よく剛を制す」という言葉にも表されています。
柔道観戦の楽しさを知るには、逆転劇や大技も確かにつかみやすい要素でしょう。しかしそこに至るまでの、両選手のマインドゲームとも呼べる熾烈な駆け引きも大きな見どころです。
また選手たちが試合に臨む迫真の表情や、礼儀を重んじる爽やかな物腰に魅力を感じる方も多いのではないでしょうか。

ALSOKのスポーツ活動

柔道は、ALSOKでもっとも早期から行われている社内スポーツでもあります。これまでも国際大会で多くのメダリストを輩出しているALSOK柔道部。現在も日本柔道の主力と呼ぶべき数々の選手を擁しており、さまざまな大会で活躍しています。ぜひ、熱いご声援をよろしくお願いいたします。

まとめ

「技を決めるか、相手を長く抑え込んだら勝ち」「違反が多いと負け」など、柔道のルールを漠然と思い浮かべられる方は多いと思います。そこからもう一歩詳しくルールが把握できていると、テレビ中継での実況アナウンスや解説の理解も深まり、より柔道観戦を楽しめます。一緒に試合を観る人とルールについて話し合いながら観戦するのも楽しいですね。

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