射撃ってどんなスポーツ?ライフル射撃・クレー射撃のルールを知ろう
岡田 直也 選手
射撃は、銃で標的を撃ち、その正確性を競うスポーツです。銃を持つことが法律によって規制されている日本では親しむ機会は多くありませんが、世界ではとても人気があります。この記事では、ライフル射撃・クレー射撃という2つの種目の違いやルール、観戦の楽しみ方についてご紹介します。
射撃の基本【ライフル射撃とクレー射撃】
射撃は決められた標的を狙って銃を撃ち、精度の高さを競う競技です。銃が最初に普及した欧州では、競技として15世紀ころから始まったという古い歴史があります。日本国内では、種子島に鉄砲(火縄銃)が伝来したことを機に「砲術(ほうじゅつ)」と呼ばれる武術として取り入れられました。日本での競技射撃の始まりは西洋式の銃が広まった明治時代といわれ、スポーツとして射撃が本格的に行われ始めたのは、大正初期に射撃の大会が開催されたことが契機とされています。
射撃競技は他のスポーツと比較すると、高い身体能力(筋力や瞬発力)は求められません。その分非常に強い集中力や精神力が求められますが、経験によってそれらを養うことで技術を伸ばせるチャンスがあるともいえます。このため射撃競技は、とても幅広い年齢層の選手がチャレンジできるという利点も備えています。
射撃競技には大きく2つの種類があり、「ライフル射撃」と「クレー射撃」に分けられます。
ライフル射撃
固定された標的の中心を銃で狙って撃ち、命中した弾丸がどれだけ標的の中心に近いかによって、得点の高さを競います。
クレー射撃
「クレー」と呼ばれる素焼きの皿を空中に飛ばし、それを狙って散弾銃で撃つ競技がクレー射撃です。ライフル射撃と大きく異なる点は、標的が固定されておらず動くところでしょう。また、クレー射撃では得点数ではなく撃ち落とすことのできたクレーの枚数で順位が決まります。
意外と複雑?射撃のルール
銃を撃つという単純なスポーツかと思われるかもしれませんが、意外にも射撃は種目が多く、種目ごとに射距離や撃てる数も違うのです。ここでは、それぞれの種目の競技内容やルールについてご紹介します。銃は基本的に火薬で弾丸を撃ちますが、エアライフルは圧縮空気を使用します。
ライフル射撃
ライフル射撃には「ライフル銃」を用いる種目と、「ピストル銃」を使用する種目があります。どちらも同心円が描かれた紙製の的を狙って撃ち、中央に近いほど高得点です。近年は瞬時に点数を表示できる電子標的も採用されています。
・ライフル銃を使う種目
国際大会での競技種目は、50mライフル3姿勢・10mエアライフルの2つです。射撃姿勢には、立って銃を構える「立射(りっしゃ)」、片足の膝を立ててその上に銃を置く「膝射(しっしゃ)」、伏せた体勢で銃を構えて撃つ「伏射(ふくしゃ)」の3つがあります。
50mライフル3姿勢は「立射・膝射・伏射」を連続して行う競技で、10mエアライフルは「立射」で行われます。50mライフル3姿勢は長時間銃を構えなければならないことから高い集中力と体力が必要とされ、「ライフルのマラソン競技」とも呼ばれています。
10mエアライフルの場合、10点を取るにはわずか直径0.5mmの的の中央を狙わなければなりません。さらに最も中心に近い着弾が、満点の10.9点となります。円の中央から外側に2.5mmずつ離れるにつれて1点ずつ得点が下になります。
50m種目の場合、10点圏内となる点の直径は1.4cmで、8mmずつ外側にずれると1点ずつ得点が下がります。
・ピストル銃を使う種目
国際大会での競技種目は、25m火薬ピストルと10mエアピストルがあります。いずれの種目も「立射」で行われ、本射で計60発を撃って獲得した得点を競います。
25m火薬ピストルの場合は、前半の精密射撃と後半の速射射撃で違う標的を使います。精密射撃の際、10点圏内の直径は5cm、2.5cmずつ外側の円にずれると1点ずつ得点が下になります。速射射撃の撃ちこみ時は、中央直径10cmの点が10点満点、外側の円は4cmごとです。
クレー射撃
クレー射撃の競技種目には、トラップとスキートの2種類があります。
・トラップ
トラップは射台が5つ並んでおり、15m先の延長線上に発射されるクレーを狙います。クレー射撃のなかでもシンプルなルールで競技が行われるため、クレー射撃に初めて挑戦する方はトラップから始めることが多くなります。
選手は5カ所の射台から順番にクレーを狙い、クレー1枚につき2発まで撃つことができます。クレーが飛ばされる軌道には右・ストレート・左の3種があり、トラップハウス内にある発射台からランダムに放出されます。クレーが発射される枚数は右・左がそれぞれ10枚、ストレートが5枚です。
プーラーハウスにいる係員がクレーの放出指示を出します。(※プーラーハウスとは、クレー放出の指示を出す人が待機する場所のこと。)
・スキート
スキートでは、直径およそ36mの半円形の位置に射台が置かれ、選手は射台を順番にまわってクレーを撃ちます。クレーはハイハウス・ロウハウスの2カ所からランダムに発射され、選手は自分に向かうクレーや逃げるように飛ぶクレーを瞬時に狙って撃ち落とします。トラップの場合はクレー1枚に対し2発まで弾を撃てますが、スキートではクレー1枚に対し1発しか弾を撃つことができません。
このように、射撃は種目や射撃姿勢・距離によって細かなルールの違いがあります。詳しくは、以下の表をご覧ください。
ライフル | ピストル | クレー | |
---|---|---|---|
射距離 | 50m/10m | 25m/10m | |
姿勢 | 50m 3姿勢:膝射、伏射、立射 50m伏射 10mエアライフル:立射 |
立射のみ | 立射 |
発射弾数 | 50m 3姿勢:膝射40発、伏射40発、立射40発 10mエアライフル:60発 |
60発 | トラップ:50発(クレー25枚×2発まで) スキート:25発(クレー25枚×1発まで) |
得点 | 50m 3姿勢:1200(10点×120発) 10mエアライフル:654点(10.9点×60発) |
600点(10点×60発) | 25枚 |
制限時間 | 50m 3姿勢:3姿勢通し2時間45分(インターバル含めず) 10mエアライフル:75分 |
男子25m:8秒射:5発×2、6秒射:5発×2、4秒射:5発×2 男子10m:75分 女子25m:精密射撃・速射射撃各30発 女子10m:75分 |
緊張感たっぷり!射撃を楽しむポイント
射撃は高い集中力を競技中ずっと継続させなければ、好成績をあげることができません。その緊張感は、もちろん試合を観戦する側にも伝わります。
選手から伝わる緊張感に加え、弾が正確に標的へ命中したときの爽快な気分を選手と共に感じられる点も射撃の魅力です。
また、参加する選手が多い競技でもあるため、試合経過によって暫定順位がめまぐるしく変化していくことがあります。それを追う面白さは、競技のルールがある程度頭に入っていることでより実感できるでしょう。
ALSOKのスポーツ活動
ALSOKではスポーツ活動の一環として、射撃部を設けています。射撃競技は一般的なスポーツのように身体能力や身体技能よりも、高い集中力を継続的に維持することなどメンタルのコントロールが重要となる競技です。
選手は日々集中力を高めてトレーニングを行い、世界を目指しています。国際大会への出場の際には、ぜひご声援をお願いします。
まとめ
射撃は、標的を狙って弾を撃つという一見単純にも思える競技ですが、1試合での発射弾数や得点、制限時間などが種目別に細かく規定されており、意外に複雑なルールがあります。
さまざまなスポーツのなかでも、特に射撃は種目別で異なる特徴のある競技といえるでしょう。得点や順位に関する決まりごとが分かっているだけで観戦が楽しくなるはずです。
今年の夏は、射撃をテレビでゆっくり観戦できる数少ない機会です。おおまかなルールを押さえておき、一般的なスポーツとは一味違う緊張感を堪能してみてはいかがでしょうか。