津波発生時の最適な避難方法とは。車での避難は危険?
海底を震源とした大地震が起こった際には、津波をともなうケースも少なくありません。日本の沿岸は津波の被害を受けやすい地域で、過去にたびたび津波による災害が発生しています。特に2011年の東日本大震災は、津波の恐ろしさを改めて認識することとなりました。津波が発生した際、どのように避難する方法が最適なのでしょうか。この記事では、万一津波に関する警報が出た場合の避難方法、車での避難の是非についてご紹介します。
津波発生時の避難方法
津波が発生した際に身の安全を守る方法はただ1つ、「避難=波に遭わないよう逃げること」しかありません。ここでは、津波発生に関する警報が出た場合や、海沿いで地震に遭った際の、基本的な避難の方法をご紹介します。
海からできるだけ遠くへ離れる
海の近くで地震の揺れを感じたらすぐに海浜から離れ、できるだけ海の遠くまで移動しましょう。
高いところへ避難する
津波には高さがあるため、多少海から離れても低い場所では被害にあう可能性があります。海から離れるとともに、急いで近くの高台などへ避難し波に遭うことを避けましょう。
基本は徒歩での避難を
避難時の移動手段は、基本的に「徒歩」と頭に入れておきましょう。「身一つで津波から逃げて助かった」という経験者の談話もよく聞くとおり、各自歩くか走るなどして身軽な状態で海から遠ざかることが重要です。
津波警報の種類
種類 | 発表基準 | 発表される津波の高さ | 想定される被害と 取るべき行動 |
|
---|---|---|---|---|
数値での発表 (津波の高さ予想の区分) |
巨大地震の場合の発表 | |||
大津波警報 | 予想される津波の高さが高いところで3mを超える場合。 | 10m超 (10m<予想高さ) |
巨大 | 木造家屋が全壊・流失し、人は津波による流れに巻き込まれます。 沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。 |
10m (5m<予想高さ≦10m) |
||||
5m (3m<予想高さ≦5m) |
||||
津波警報 | 予想される津波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合。 | 3m (1m<予想高さ≦3m) |
高い |
標高の低いところでは津波が襲い、浸水被害が発生します。人は津波による流れに巻き込まれます。 沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。 |
津波注意報 | 予想される津波の高さが高いところで0.2m以上、1m以下の場合であって、津波による災害のおそれがある場合。 | 1m (0.2m≦予想高さ≦1m) |
(表記しない) |
海の中では人は速い流れに巻き込まれ、また、養殖いかだが流失し小型船舶が転覆します。 海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れてください。 |
出典元:気象庁
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/joho/tsunamiinfo.html
1.大津波警報
特別警報にあたり、発令地域では特に厳重な警戒が必要になります。予想される津波の高さが、高いところで3m以上となる場合に発令され、予測される津波の高さが5m以上~10mの場合、10mで発表されます。木造家屋の全壊や流失が予測されるため、沿岸や川沿いの人は高台や避難が可能な建造物など、ただちに安全な場所への避難が必要です。
2.津波警報
予想される津波の高さは高いところで1m以上~3m以下の場合に発令され、予測される津波の高さは3mで発表されます。
海抜の低い場所では津波が襲い、浸水被害が発生します。津波に人が巻き込まれる恐れもあるため、沿岸や川沿いにいる人は高台や避難可能な建造物など、安全な場所へただちに避難しましょう。
3.津波注意報
予想される津波の高さが高いところで0.2m以上~1m以下の場合で、災害発生の可能性がある場合に発令されます。予測される津波の高さは1mと発表され、海にいる人が巻き込まれたり、養殖筏や小型船舶が転覆したりする恐れがあります。海にいる人はただちに海から上がり、海岸からできるだけ離れましょう。
警報・注意報以外の津波予報
災害の恐れがない場合であっても、海面の変動などが予測される場合は、海上にいる人のために波の高さに関する予報を発表します。また、地震にともなう津波の恐れがない場合は、津波の心配がないことを地震情報に含めて発表します。
津波に関する警報や注意報が発令された場合は、何らかの人的・物的被害が発生する可能性があります。発令された地域の人は、すぐに海から離れた場所や高いところへ逃げるための行動をとるようにしてください。
車で津波から避難してもよい?
運転中に大地震に遭った場合はやむを得ませんが、それ以外の場合は避難の際には車を使わないようにすることが大原則です。車なら歩くよりも早く避難できるのではと考えがちですが、車は道路以外を通れないなどのデメリットもあります。しかし、状況によってはどうしても車による避難が必要な場合もあるでしょう。その際に、注意しておきたい点などをご紹介します。
車による避難は「やむを得ない場合」のみ
以下のような状況の場合に関してのみ、車による避難の検討をしましょう。
- 指定避難場所まで徒歩避難ではかなり距離がある場合
- 災害時要援護者(高齢者・障害者・乳幼児・傷病者・外国人)とともに避難する必要がある場合
車で避難する際に気をつけること
以下は、2011年(平成23年)の東日本大震災で車を使って津波から避難した方(岩手県・宮城県・福島県)に面接調査を行った結果をもとにしたグラフです。
参考:内閣府 防災情報 平成23年東日本大震災における避難行動等に関する面接調査(住民)
http://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/hinan/5/pdf/3.pdf
上記によると、車での避難は道路の渋滞や道路の損壊、屋外の瓦礫、被災した屋内の家財などがおもな障害となったという回答が多数ありました。
これをもとに、車で津波から避難しなければならない場合は、おもに以下のような点に注意する必要があると考えられます。
- 道路の損壊に気をつけて走行する
- 信号機が停止している場合は交差点などの通行に注意する
- 道路上の障害物などに注意する
- 途中で渋滞や障害物の影響を受けて進めなくなった場合は、車を置いて徒歩で避難する
車で安全に避難ができないと感じた際は、車から降りて歩いて避難する判断が必要です。
もしも運転中に津波が発生した場合は?
車の運転中に地震に遭い、津波の警報・注意報が出た場合は、どのような点に気をつけて運転や避難を行えばよいのでしょうか。ここでは、運転中に津波が予測された際の行動についてご紹介します。
余震に備え低速走行をする
地震が発生し、警戒宣言が発令されている際には、大きな余震がすぐに起こる可能性があります。それに備え、車をできるだけ低速で走行させましょう。
ラジオで情報を集める
車にはカーラジオがあるため、すぐにラジオをつけて地震に関する続報や津波の注意報・警報、地域の交通情報を確かめましょう。
車から降りて徒歩避難する
状況によっては車を使うことが難しくなり、車を置いて徒歩での避難を検討する必要が出てきます。その際には、できるだけ道路の外(路外)に駐車するようにしましょう。
やむを得ず道路上に駐車して徒歩避難する際には、必ず道路の左側に車を寄せてエンジンを止めましょう。緊急車両の通行時に車を移動させる場合があるため、車のキーは付けたままにし、窓はすべて閉めます。ドアロックもしないようにしてください。
また、同じように他にも避難する人がたくさんいます。避難者の通行の妨げとなる場所には車を停めないようにしましょう。
日頃から津波などの災害対策をしておく
津波の被害に遭わないための唯一の方法は、波から逃げることです。各々がわが身を守ることを最優先にし、ご自身の命が助かることを想定した行動をとらなくてはなりません。
大地震による津波の可能性がある地域にお住まいの方にとっては、平時の備えも大切です。指定避難場所への最短経路を歩いてみたり、最寄りの高台に速く移動できる経路を探したりするなど、日頃から自主訓練を行っておくとよいでしょう。
また、津波から逃げるには瞬時の行動が肝になります。防災用品を入れたリュックも、すぐ背負って避難するため分かりやすい場所へ置くなど「すばやい行動のための備え」を万全にしておいてください。
まとめ
津波の危険があるときは、歩いて(走って)海から離れ、標高の高い場所へ向かうことが避難の基本です。しかし、状況次第では車による避難が必要な場合もあるため、その際の注意点もあらかじめ押さえておきましょう。
平時から、いつか起こるかもしれない地震や津波に備え、さまざまな状況を想定して万一の際にとるべき行動を決め、ご自身とご家族の安全確保につなげましょう。