関東大震災から100年…地震・津波に備えた減災対策
2023年は1923年(大正12年)に発生した関東大震災から100年の節目に当たります。関東大震災は近代日本の首都圏を襲い甚大な影響をもたらした巨大地震。1995年に起きた阪神・淡路大震災、2011年に起きた東日本大震災と同様に地震規模や社会経済的にインパクトが大きい震災です。
近年日本では、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震といった大規模震災のリスクに直面しています。関東大震災やそれ以降の震災での教訓を活かして、今後起こると予測される自然災害に備えた減災対策を行いましょう。
目次
関東大震災から100年を迎えた今できること
1923年(大正12年) 9月1日に発生した関東大震災は、相模湾北西部を震源地としてマグニチュード7.9(推定)を記録し、南関東から東海地域におよぶ広範囲に影響を及ぼしました。また、北海道道南から中国四国地方にかけての広い範囲で震度5から1を観測し、列島全体を震撼させた地震といえます。全半潰(全半壊)・消失・流出・埋没の被災を受けた住家は総計370,000棟(全壊・全焼住家は約290,000棟)にのぼり、死者・行方不明者は105,000人におよぶなど、甚大な影響をもたらしました。
阪神・淡路大震災、東日本大震災など近年の大震災と同様に被災者の数や社会経済への影響は非常に大きいものだったことがわかります。
関東大震災の教訓は日本の防災対策の礎になっていて、国や地方自治体はさまざまな災害対策を講じています。私たち一人ひとりも、過去の震災を教訓として日頃から意識したいのが「減災」への取り組みです。
減災とは
災害による被害をできるだけ小さくするための備え・取り組みを「減災」といいます。自然災害は、発生日時や規模の完全な予測が不可能です。また、誰もが予想していなかった規模の災害が発生した場合、防災対策が完全に機能せず大きな被害に遭ってしまう状況に陥る可能性もあります。だからこそ、一人ひとりの被害を最小限におさえるための減災対策が必要なのです。
日頃から地震、津波、大雨、風水害などの自然災害が起きることを想定して備えておくことが大切です。
関東大震災から100年の節目をきっかけに、あらためて自分自身の災害への意識を見直してみませんか。
日頃からできる地震への備え
大規模な地震はいつ起きるかわからないため、地震への備えをしておくことは非常に重要です。突然地震が発生した際に自分がどう行動すれば良いのか、安全かつ速やかに避難するための対策を知っておくことは必須です。また、自分が住んでいるエリアがどの程度被災する可能性があるのか、住居の耐震性は問題ないかなども含めて知っておきましょう。
ハザードマップを使って地面の揺れやすさを確認
ハザードマップとは、地面の揺れやすさや避難場所などをわかりやすくまとめた地図です。
お住いの市区町村のハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」は、各市区町村のホームページか、国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」から簡単にアクセスできます。地面の揺れやすさや家屋の倒壊想定区域、災害が起こった際の避難経路・避難場所などを確認しておきましょう。市区町村ごとにエリアの特性や想定される被害に沿った情報が提供されています。
住居の耐震性を知ろう
昭和56(1981)年に新耐震基準が施行され、住宅を建てる際の地震に対する建物の強さを定める基準が変わりました。昭和53(1978)年に宮城県沖地震が発生し、家屋の倒壊が甚大だったために、より厳しい耐震基準に引き上げが行われたのです。
そのため、昭和56(1981)年以降に建てられているかどうかは、自宅の地震に対する強さを知る1つの目安となります。
しかし、昭和56(1981)年以降に建てられた建物でも、まったく壊れないということではありません。経年劣化によって老朽化が進んでいる場合は建物の耐震性も低くなっている可能性があるため、年月とともに住宅の耐震性に問題が無いか点検・整備を行うことが大切です。
お部屋の「安全空間」を確認しよう
平成7(1995年)年に発生した阪神・淡路大震災、平成30(2016)年の熊本地震などで、多くの方が倒れた家具の下敷きになり、大けがをし、また尊い命が失われました。タンスの上からの落下物によってけがをしたり、転倒した家具につまずいてけがをしたりといった被害も発生しています。大地震では家具は必ず倒れると考え、日頃から家具の固定や配置の見直しを行い、安全空間を作ることが重要です。
タンスや食器棚、本棚などの大型家具は、壁側にポール式器具やL字金具などを用いて固定します。食器棚のガラスにはガラス飛散防止シートを貼って、ガラス割れによる被害を防止しましょう。冷蔵庫は後方上部にベルトの取り付け口があるため、そこに転倒防止用ベルトを通して金具などで固定します。
電子レンジやテレビなどの家電は取扱説明書の方法に沿って転倒対策を行います。レンジ台やテレビ台を使用している場合は、台を壁や床に固定する必要があります。
背の高い家具の上には、なにも置かないようにしましょう。
また、寝室や子ども部屋など、家族やお子さんが長時間過ごす部屋には、できるだけ大きな家具の設置は避け、背の低い家具を置くようにしましょう。家具を設置する場合は、万が一倒れてきたときにぶつからないように寝具を配置したり、出入口をふさがないように配置を工夫したりしましょう。
地震時の場所に合わせた身の守り方
地震が発生するときは必ずしも自宅にいるとは限りません。建物の中、移動中、屋外など場所によって身の守り方が異なります。
自宅
- 頭を保護し、丈夫な机の下などに隠れる
- あわてて外に飛び出さない
- 無理に火消しをしない
会社
- 机の下に隠れる
- 二次災害の危険がある棚や窓の近くからできるだけ離れる
- OA機器などの落下に注意する
学校
- 教室では机の下に隠れる
- 廊下・運動場・体育館などでは中央に集まってしゃがむ
- 外に飛び出さない
- 通学路が危険な場合があるため勝手に帰宅しない
- 教職員の指示に従う
人の大勢いる施設
- 係員の指示に従う
- カバンなどで頭を保護する
- ガラス製品や瀬戸物など、割れ物の陳列棚から離れる
- あわてて出口に走らない
エレベーター
- 最寄りの階に停止させ、すぐに降りる
- 閉じ込められた場合は、「非常用呼び出しボタン」等で通報する
- 焦らず落ち着いて行動する
自動車運転中
- あわててスピードを落とさない
- ハザードランプを点灯し、周りの車に注意を促す
- 急ブレーキはかけず、ゆるやかに速度を落とす
鉄道・バス乗車中
- つり革・手すりにしっかりつかまる
- 停車後は、乗務員の指示に従う
屋外
- ブロック塀など、倒れてきそうなものから離れる
- 看板やガラス窓から離れる
- 頑丈なビルのそばにいる場合は、ビルの中に入る
山やがけ付近
- 落石やがけ崩れが発生しそうな斜面から離れる
日頃からできる津波への備え
津波とは、地震発生時に海底の地盤が動いて海水を押し上げることで大きな波が発生する現象のことです。水深の深いところでは非常に速く、浅瀬になるとスピードは遅くなりますが、後ろから速い波が押し寄せてくるため高さが高くなります。スピードが遅くなるとはいえ時速36㎞もあるため、津波が到達してからでは逃げられません。津波警報や注意報が発表された時点で、すぐに危険なエリア(海岸や河川の近く)から離れる必要があります。
津波ハザードマップを確認
津波ハザードマップは、津波の浸水範囲の予測や、避難場所・避難経路などを地図上で確認できるものです。津波が起こった場合に避難場所や避難ビルにどのように逃げれば良いのかを確認しておきましょう。
地震のハザードマップと同じく、各市町村のホームページか、国土地理院のサイトからアクセスできます。スマートフォンやPCから確認するだけでなく、印刷したものを持っておくと安心です。
国土地理院のハザードマップポータルサイトはこちら
https://disaportal.gsi.go.jp/
津波避難場所のマークを覚えよう
津波が到達する危険のあるエリアや、避難場所、津波発生時に避難できるビルを表示するマークが決められています。海岸近くにいる時には、近くにこのようなマークがあるか確認しておきましょう。
そしてよく知らない土地に来ていて、地震を感じたり津波警報を聞いたりしたら、津波避難場所や津波避難ビルのマークを目印に避難しましょう。
ただし、マークがあるから安全というわけではありません。災害の状況によっては、より安全な場所に避難する必要があります。
2011年に起きた東日本大震災では、津波により甚大な被害がでました。その中で、釜石市の鵜住居小学校と釜石東中学校にいた児童・生徒約570人は全員無事に避難することができました。これは「釜石の奇跡」とよばれていますが、偶然起こった出来事ではなく、釜石の子どもたちが日頃から防災訓練で意識を高め、提唱されていた「津波避難の三原則」を忠実に実行した結果であったといわれています。
【津波避難の三原則】
第一「想定にとらわれるな」
第二「最善をつくせ」
第三「率先避難者たれ」
出典:内閣府 防災情報のページ 特集 津波防災の推進について
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h27/80/special_01.html
自然災害の発生時は、私たちの想定以上のことが起きてもおかしくありません。ここまで来れば大丈夫とは思わず、そのときできる最善を尽くして避難することが大切です。
津波警報・注意報が出た時の対応
津波警報や注意報は、地震発生後、約3分で発表されます。警報や注意報が出ていなくても、海や河川の近くで強い揺れや長い時間ゆっくりとした揺れを感じた時は、高台を目指して避難しましょう。津波は猛スピードで地上に到達するため、ためらわず早期の避難を心掛けることが大切です。
日本海溝・千島海溝沿いでは、一度大地震が発生した後に続いて大きな地震(後発地震)が発生することがあります。地震の発生が高まっている場合は、後発地震に注意を促す「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されます。また、南海トラフ沿いでも地震発生の可能性が高まっている場合に、「南海トラフ地震臨時情報」が発表されます。
情報が発表された際には、日頃からの地震への備えを再確認した上で、地震が発生したらすぐに避難できるように準備をしておきましょう。
自宅でできる減災対策
災害被害を軽減するためには「自助・共助・公助」の連携が必要です。自助は自分自身や家族の身を守ること、共助は同じ地域やコミュニティにいる人たちが協力して助け合うこと、公助は国や地方公共団体の取り組みです。3つの連携が円滑なほど、災害の被害は軽減できます。
私たちにできるのは「自助」と「共助」の取り組み。そして、「共助」はまず自分が無事でなければ助け合うことはできません。一人ひとりが日頃から「減災」を意識して、災害に備えておくことが重要です。
ライフラインの停止や避難の備え
大災害が発生した際は、水や電気・ガス、通信などの私たちの日常を支えるライフラインが停止することがあります。復旧までの期間に生活できるよう、水や非常食、懐中電灯、簡易トイレ、バッテリーなどの備蓄品を準備しておきましょう。
また、自宅に滞在するのが危険な場合は外への避難が必要です。避難の際にすぐに持ち出せるよう、リュックや非常持ち出し袋などに必要な物を最低限まとめておくことをおすすめします。
災害時の備蓄について
災害用の備蓄品は特別なものを用意するのではなく、できるだけ平時に無意識に更新されるものでまかないましょう。
ティッシュやトイレットペーパー、ラップ、ごみ袋、ポリタンクなどは、値段も安く普段から購入しやすい備蓄品です。飲料水は最低3日分が備蓄の目安となります。1日に必要な飲料水の量は1人当たり3リットルといわれているため、3日分となると1人あたり9リットルの備蓄が必要になります。
また、水だけでなく食べ物も必要です。食品は水よりも賞味期限が短いことが多いため、「備える→消費する→買い足す」というローリングストック法の実践がおすすめです。
非常持ち出し品については、すぐに必要なものを最低限準備します。水や食品、懐中電灯、携帯充電器など、何が必要かを考えて用意しておきましょう。
赤ちゃんがいる場合はおむつやミルク、持病のある方や高齢者がいる場合は常備薬、入れ歯、補聴器など、なくては困るものがすぐに持ち出せるようになっているかの確認が重要です。
災害時の安否確認のポイント
災害時には、家族が一緒にいるとは限りません。緊急時に家族の安否を確認できるよう、集合場所や安否確認の方法を決めておきましょう。
安否確認には、171災害用伝言ダイヤルを利用する方法があります。171をダイヤルし、音声案内に従ってメッセージの録音、再生を行います。また、メッセージを文字で登録できる災害用伝言版(web171)、各通信事業者が提供している災害用伝言版サービスなども知っておくと良いでしょう。
避難については、自宅や学校の近く、職場付近、通勤・通学の途中にある避難場所を家族で確認しておきましょう。子どもがいる場合は、保育所や幼稚園、学校での緊急時の子どもの引き取りについて確認しておくと良いでしょう。
※記事内のイラストはすべて内閣府のリーフレットから引用しております。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/gensai/pdf/minna_web2010_all.pdf
災害時の備蓄品はALSOKにおまかせ
災害時の備蓄品は普段の生活でまかなえるものが基本ですが、緊急時の持ち出しがしやすい災害用のアイテムを取り入れるのもおすすめです。
ALSOKでは、地震や災害、火災等のもしもの時の備蓄品をご用意しております。コンパクトにまとめられたブランケットや簡易トイレ、お湯や水だけで食べられる非常食など、災害時に役立つ備蓄品を揃えています。
おわりに
令和5(2023)年は、関東大震災から100年の節目となる年です。関東大震災での教訓を活かし将来予測される自然災害にむけて、日頃から備え・対策をしていくことが必要です。あらためて「減災」に対しての意識を持ち、緊急時に命を守る行動を取れるようにしましょう。
ALSOKは、平時から緊急時までの皆様の安全安心な生活を支援します。