生前整理とは?始める時期や今すぐできる進め方

高齢者・介護 2024.03.18
生前整理

生前整理とは、人生の終わりに向けて、自身の身の回りを整理することをいいます。自分の体調に不安を覚えたときや定年退職したとき、子どもが進学・就職・結婚したときなど、不測の事態に備えて生前整理を考えるようになった方もいらっしゃるかもしれません。
生前整理は遺族の負担を軽くするだけでなく、自分のこれまでの人生を見つめ直すきっかけにもなります。
本コラムでは、生前整理を行うメリットと生前整理を始める時期や進め方について説明いたします。

目次

生前整理とは

生前整理とは、自分が亡くなった後のことを考えて、自身の身の回りのものや財産を整理・処分しておくことです。残された遺族の負担を軽くすることを目的として行われることが多いと考えられます。
生前整理には、保有する財産の整理、エンディングノート・財産目録・遺言書の作成などが含まれます。なお、エンディングノートは法的に強制力があるわけではないものの、それによって、終末期の延命措置や葬儀のこと、お墓のことなどについてご自身の希望を家族や親族に伝えることができます。遺言書を作成すれば、「自分の財産を、誰に、どれだけ残すのか」について意思表示をすることができます。遺言書は法的に大きな効力があり、遺産は基本的に遺言書通りに分けられることになります。
なお、法律には遺留分(特定の相続人が最低限取得することのできる遺産の取り分のこと)の定めがあり、遺言書での意思表示を行う場合でも、この遺留分の権利を奪うことはできません。

遺品整理や断捨離との違い

生前整理が「生前に、かつ自身で」身の回りを整理することを指す一方、遺品整理とは故人の配偶者や子どもなど遺族が、遺品の整理・廃棄を行うことを指します。
また、断捨離とは、現在の自分の心理的な負担などを軽くするため、自分の生活スタイルにおいて不要なものを手放すことです。一方、生前整理は、自分が亡くなった後のことを考えて行われるものであり、一般的には遺族の負担を軽くするために行われます。

生前整理を行うメリット

荷物整理

ここでは、生前整理を行うメリットについて説明いたします。

遺族の負担を軽くできる

生前整理を行っていない場合、遺族は故人の通帳残高・有価証券・不動産などの財産をすべて調査して遺品整理を行う必要があり、時間と手間がかかります。このような遺族の負担を軽くできることは大きなメリットです。

大切な財産を引き継げる

遺族が遺品整理を行った場合、故人がどの財産をどれだけ大切にしていたのか、どれを残すべきなのかなどの判断に困ることがあるかもしれません。その点、生前整理を行うことで、自分が大切にしている財産が何であるのか、確実にご家族に伝えることができるようになります。
なお、生前贈与には贈与税がかかりますが、1人あたり年間110万円の基礎控除があります。つまり、1人110万円以下の額であれば、贈与税はかからないため、何年かに分けて財産を家族に贈与することで税金対策にもなります。

自分の希望を伝えることができる

お墓や葬儀、相続など、亡くなったあとの対応をあらかじめ家族に伝えておくことで、不測の事態が起こっても希望通りの葬儀や相続が実現しやすくなります。

相続トラブルを事前に防ぐことができる

相続時には、相続する遺産が見つからない、遺産をどう分けるかで相続人が揉めるなどのトラブルが起こりがちです。生前整理で残すべき財産を明確にしておく、生前贈与が可能であれば生前贈与をしておくなどにより、相続トラブルの防止につながります。

自分自身がスッキリする

生前整理により家族への負担を減らし、相続トラブルの予防も行うことで、自分自身の気持ちがスッキリすることもメリットです。また、家族や親族、友人などに普段は言えない感謝を伝える機会にもなります。

生前整理を行うデメリット

生前整理を行うデメリットとしては、以下が挙げられます。

時間・労力がかかる

所有する持ちものや財産をすべて見直すには、相応の時間が必要です。何を残し、何を処分するのか、今後の財産の管理方法はどうするかなど、作業1つ1つにも労力がかかります。

費用がかかる場合がある

生前整理をしていると、粗大ゴミや大きな電化製品などを廃棄することもあるでしょう。これらを廃棄する際には、処分費用がかかることがあります。また、生前整理業者を利用する場合、家の広さなどに応じた作業費用が発生します。
なお、不動産を売却して整理する場合、不動産業者への仲介手数料や各種税金(譲渡所得税や住民税)が発生することに留意しておきましょう。

生前整理の対象

生前整理の対象となるのは、身の回りの「品物」と「財産」です。特に財産の仕分けは、残される家族が困らないよう丁寧に行っておくと良いでしょう。品物と財産、それぞれに当てはまる例は以下のとおりです。

品物

  • 家財道具
  • 思い出の品(写真・日記・手紙・自身で制作した絵画や工芸品等)
  • 書籍
  • 趣味のコレクション
  • パソコン・スマートフォン
  • 日用品 など

財産

  • 金融資産(現金・預貯金・株式等)
  • 不動産(土地・建物)
  • 貴金属
  • 美術品 など

生前整理の進め方

では、実際にどのようにして生前整理を進めていくのかをご説明します。

品物整理

思い出の品、家財道具、デジタル機器の情報整理など、着手しやすいものから整理していきましょう。不用品は売却するのも選択肢の一つです。品物は基本的に以下3グループに分類し、それぞれ整理方法を分けて考えるのがおすすめです。

  1. どうしても残しておきたいもの→誰にどう残すかを考える(形見分け、趣味仲間に譲るなど)
  2. 見られたくないもの・残したくないもの→早々に処分する
  3. それ以外→できる範囲で整理・処分する

家族に処分を任せたいものはその旨をエンディングノートに書くなどして、事前に伝えておくと安心です。

財産整理

財産整理

すぐにできるものとしては、銀行口座・カードの確認があります。どの口座にいくら預金があるのか確認し、不要な口座やクレジットカードは解約しましょう。
貴金属類など物理的なものは、保管場所や保証書などを整理しておきます。
また不動産の整理は、売却などにある程度の時間や費用もかかるので、早めに行うことをおすすめします。
そのほか、近年は以下のようなデジタル遺産の整理も重要視されています。

【デジタル遺産例】

  • ネットバンキングやネット証券口座の情報(ID・パスワードなど)
  • 暗号資産(仮想通貨)
  • 電子マネー
  • 有料会員サービスの定期課金(サブスクリプション) など

ネットバンキングやネット証券口座などは、パスワードがわからなくても死後所定の手続きを踏めば解約は可能です。ただ、パスワードなど諸々の情報を把握しているほうがスムーズですし、ネットバンキングの使用状況をまとめておかないと、残された遺族は対応に困る場合があります。
エンディングノートや財産目録に、財産の保管場所やデジタル遺産関連の情報(ID・パスワード)などをまとめておく場合には、その情報が不正に利用されたりしないように、適切に管理されることをおすすめします。

遺言書の作成

特定の財産を決まった人に相続させたいという場合は、法的効力のある遺言書を作成するという方法があります。遺言書は法的書面であるため、法律で定められた遺言の作り方にのっとって作成しましょう。

生前整理を始める時期

生前整理を始める時期に、明確な基準はありません。早い方では30代から考え始める方もいらっしゃいます。ライフステージに合わせた生前整理の具体例を、年代別に簡単にご紹介します。

30代の場合

不測の事態(事故や病気など)に備えて、配偶者や子どものために情報整理する

【例】

  • パソコンやスマートフォンのパスワード、データの整理
  • 不要なサブスクリプションサービスの解約
  • ネットバンキング、証券口座の情報整理 など

40代の場合

親の介護や子どもの大学進学、一人暮らしなどきっかけに金銭面の整理を優先する

【例】

  • 生命保険の見直し
  • 運用資産の整理(株式、投資信託等)
  • 預金口座の一覧作成 など

50代~60代の場合

子の独立や定年退職をきっかけに自宅のものを整理する

【例】

  • 子どもが幼い頃の用品整理(ランドセル、スポーツ用品など)
  • 夫婦2人だけに必要なものの精査
  • 不動産関係の書類整理 など

70代~80代の場合

人生の終わりを意識し、身の回りのものや金銭面を整理する

【例】

  • 遺言書の作成
  • 葬儀方法の選定
  • 相続人や相続内容の決定 など

生前整理と合わせて「みまもりサポート」もご検討ください

ご高齢の親がいらっしゃる場合は、親が生前整理を行うことを意識される方もいらっしゃることでしょう。そのようなご高齢の家族にはできるだけ安心して暮らしてほしいものです。
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まとめ

生前整理を行い、身の回りを一度整理することで、本当に大切にしたいものが見えてくることもあります。生前整理は決してネガティブなものではなく、人生を前向きに進むためのきっかけにもなります。今をより良く生きていくための前向きな作業、と考え生前整理に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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