散骨の種類は何がある?散骨にかかる費用や手続き、留意すべきルールについて

高齢者・介護 2024.08.23
散骨の種類は何がある?散骨にかかる費用や手続き、留意すべきルールについて

故人が亡くなると、葬儀・火葬を行ったあとにお墓を手配し、遺骨をお墓に納骨して供養する形が一般的です。しかし、近年はご遺骨を山や海、空といった自然に還す「散骨」を希望する方が増えています。本記事では、散骨の種類や費用、手続き、留意すべきルールについて解説します。

目次

散骨とは

散骨とは、火葬後の遺骨をお墓に納骨せず、山や海、空などの自然に還す埋葬方法です。自然葬の一つであり、粉状にした遺骨をまいて自然に還します。故人の意向で行われるケースが多いため、故人の意志を尊重した埋葬方法といえます。

近年注目されている供養方法の一つ

お墓や埋葬方法についての考え方は近年多様化してきており、散骨はお墓の継承や維持管理、場所にとらわれないため、新しい供養の形として注目されています。自分が好きな山や海、故郷や思い出の地での散骨を望む方が増えています。

散骨は遺骨が手元に残らないため、お墓を必要としないのが特徴です。散骨が注目されている背景には、核家族化や少子高齢化の進行もあります。近年の日本では跡継ぎがいなくなり、先祖代々受け継いできたお墓の維持が難しい家庭が増えています。その結果、お墓を持たない自然葬が注目されるようになっているのです。
また、家族に迷惑をかけたくない、先祖代々のお墓に入りたくない、経済的な負担を軽くしたいといった理由から散骨を望む場合もあります。

散骨するのは違法ではない?ルールやマナーは?

「山や海に遺骨をまく」と聞くと、法律上の問題がないのか心配になる方もいるでしょう。こちらでは、散骨についての法律や散骨場所・方法に関するルール・マナーを解説します。

散骨に関する明確な法律はない

2024年(令和6年)8月現在、散骨に関する明確な規定は法律で設けられておらず、散骨すること自体は違法ではありません。しかし、一目で遺骨だと分かる状態で散骨するのは「刑法第190条(死体損壊等罪)」に触れる恐れがあります。そのため、散骨する際は形状が分からないように細かく粉骨する必要があります。
粉骨作業は自分で行うことも可能ですが、専用の道具が必要であり、体力的にも大変です。また、故人の骨を遺族が砕くのは心理的にも負担がかかります。粉骨の際は葬儀社や粉骨業者に依頼しましょう。

散骨場所や散骨方法に気を付ける

散骨自体は違法ではありませんが、地域やエリアによっては自治体の条例などで散骨が禁止されている場合もあります。また、散骨が禁止されていないからといってどこにでも散骨して良いというわけではなく、その場の環境に十分配慮し、節度を持って行うことが大切です。

厚生労働省は、2021年に散骨事業者向けの「散骨に関するガイドライン」を発表しました。ガイドラインによると、散骨を行う場所は下記の通り定められています。

  • 陸上の場合 :あらかじめ特定した区域(河川及び湖沼を除く。)
  • 海洋の場合 :海岸から一定の距離以上離れた海域(地理条件、利用状況等の実情を踏まえ適切な距離を設定する。)

出典:「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」(厚生労働省)

散骨の種類と方法

散骨の種類と方法

こちらでは、主な散骨の種類と方法をご紹介します。

海洋散骨

海洋散骨(海洋葬)とは、粉末状にした遺骨を散骨専用の船に乗せ、沖合の散骨ポイントまで移動したうえで海にまく方法です。海洋散骨は原則許可がいりませんが、生活圏や海水浴場、漁場などに散骨するとさまざまなトラブルを招いてしまうため、散骨場所には注意が必要です。
専門業者に海洋散骨を依頼する場合は、船を家族だけで貸し切る個別散骨、2組以上の家族が同じ船に乗って散骨を行う合同散骨、業者が海洋散骨の代行を請け負う代理散骨があります。

山林散骨

山林散骨は山林などの陸地に遺骨をまく方法です。山林に囲まれた自然豊かな土地で育った方や、生前登山が趣味だった方などから人気があります。
海洋散骨とは異なり、山林散骨の場合は土地の所有者がいるため、散骨を行う際には許可を得る必要があります。
自身の所有する山や専門業者、お寺所有の山であれば散骨が可能ですが、水源付近を避けるなどの配慮が必要です、また、遺骨に土をかけると「墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」に反するため、土を掘り起こして遺骨を地中に埋めるのではなく、地表にまく必要があります。
山林散骨を業者に依頼する場合は、代理散骨が一般的です。

宇宙散骨

故人のなかには、地上ではなく宇宙に散骨をしてもらい、宇宙から見守りたいと考える方もいます。そのような故人の考えを実現できる埋葬方法として、風船やロケットを使用して宇宙で散骨を行う宇宙散骨があります。風船を使用する場合は風船に遺骨を乗せて、成層圏で散骨を行います。ロケットの場合は大気圏を超えた場所で散骨をします。

空中散骨

空中散骨とは、小型飛行機やヘリコプターなどで海洋沖に向かい、空中から散骨する方法です。近年では風船やドローンを使用した空中散骨も登場しており、業者によって散骨方法が異なります。注意点として、飛行禁止エリアでは飛行機やドローンなどを飛ばせないため、散骨場所が限られることが挙げられます。
なお、故人の遺骨を包む際は環境汚染を考慮して、水溶性の袋を用いることが一般的です。

散骨の種類別にかかる費用

下記は、散骨の種類別にかかる費用の目安です。

散骨方法 備考 費用相場
海洋散骨 個別(貸切乗船)散骨 20万円~35万円
合同乗船散骨 10万円~20万円
代行委託散骨 5万円~10万円
山林散骨 遺族指定 10万円~15万円
業者指定 3万円~5万円
宇宙散骨 30万円~60万円
空中散骨 100万円~

上記はあくまで一例であり、散骨の方法やプランなどによって料金は変動します。
海洋散骨の料金は、船の種類や乗船人数などによって変動します。一家族のみで船を貸し切る個別散骨は費用がかかりやすく、複数の家族で船をチャーターする合同散骨は比較的安価な傾向にあります。
山林散骨は遺族が希望する山林、業者が指定する山林にまく場合で費用が異なります。

散骨する場合の流れ

故人の意志を尊重して散骨を選択した場合、一般的には下記の流れで進行します。

希望する散骨方法を行っている業者へ問い合わせる

散骨による埋葬が決定したあとは、希望する散骨方法を行っている業者に費用やスケジュールなどについて問い合わせます。一言で散骨といっても、先述の通り海洋散骨や山林散骨、宇宙散骨、空中散骨などがあります。遺族が慌てずに対応できるように、生前から家族間で話し合っておくことがおすすめです。業者によっては、終活の一環として事前相談や生前申し込みにも対応しています。

打ち合わせ・申し込みをする

実際に業者と打ち合わせを行い、納得できた場合は申し込みをしましょう。
申し込みの際には依頼者の身分証明書や埋葬許可証、親族の同意書などさまざまな書類が必要です。埋葬の有無によっても必要な書類が変わってきます。申し込むことを決めた際は、すぐに必要書類を確認し、不備が発生した場合を考慮して早めの対応を心がけましょう。

遺骨の受け渡し・粉骨

申し込みが完了したら、業者に遺骨を受け渡し、粉骨を行います。遺族が遺骨を粉末状にしたうえで持ち込むこともできますが、形が残っていた場合は違法となる可能性があることや、心理的な負担を考慮すると業者に任せるのが安心です。業者によっては立ち合いや郵送で遺骨の粉砕に対応してくれるため、事前に確認すると良いでしょう。

散骨

遺骨の粉砕が終わったあとは、いよいよ故人が希望する場所で散骨を行います。散骨当日は指定の時間・場所に集合して、散骨場所へ向かいます。代行散骨を依頼している場合は、遺骨をまくタイミングで連絡をもらえたり、後日写真を届けてもらえるケースもあります。

献花・黙祷

最後に、献花・黙祷を行って散骨は完了です。献花では、環境負荷を考慮して花弁だけをまくケースや、水溶性の紙で作ったエコフラワーで代用するケースも見られます。

散骨する前に確認すべき留意点

散骨する前に確認すべき留意点

散骨には、故人の意志を尊重できる、お墓の維持管理やコストの心配がないといったメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

  • 遺骨が残らない
  • お墓参りができない
  • 親族の理解を得られない場合がある

散骨では、遺骨をすべてまく必要はないため、一部を残すことで「手元供養」という方法をとることもできます。手元供養であれば遺骨を身近に置いておくことができ、故人の存在をいつでも感じられます。散骨をした場合、基本的にお墓参りはできませんが、手元供養を選択することで散骨場所へ行かなくても自宅で供養が可能です。
また、散骨は比較的新しい埋葬方法のため、親族のなかには納得できない方がいる可能性もあります。後のトラブルを避けるためにも、生前のうちから相談しておき、理解を得ることが重要です。

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まとめ

散骨は故人の意志を尊重しやすく、お墓も必要ないことから費用負担を抑えやすい埋葬方法です。しかし、家族や親族に理解されない可能性があるため、散骨を希望する場合は事前に家族間で話し合っておきましょう。本人はもちろん、遺族も含めて後悔のない形でお見送りできる方法を選択することが大切です。

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