独居老人が抱える問題とは?一人暮らしの高齢者への支援や見守りサービスについて
近年日本では少子高齢化が進み続けるとともに、独居老人の増加が懸念されています。独居老人が抱える問題を解決するには、何が必要なのでしょうか。
この記事では、独居老人とはどのような方を指すかをご説明したうえで、独居老人が抱える問題や懸念点、一人暮らしの高齢者に対する支援の内容や、見守りサービスなどについてご紹介します。家族が独居老人になるかもしれないと心配がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
独居老人とは
独居老人とは、一人暮らしをしている65歳以上の高齢者を指します。独居の理由については、「未婚である」「配偶者に先立たれ身寄りがない」「家族はいるが本人が一人暮らしを希望している」などさまざまです。
一人暮らしの高齢者は年々増加している
令和5年10月時点で、日本の総人口は1億2,435万2,000人で、そのうち65歳以上の割合(高齢化率)は29.1%と、人口の約3割が高齢者という状況です。
参考:総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」
以下は、昭和55年(1980年)~令和32年(2050年)の5年ごとにおける、独居老人の割合を示すものです。
65歳以上の人口のなかでも一人暮らしの高齢者(独居老人)は増加傾向にあり、令和2年(2020年)に男性15.0%、女性22.1%だった割合が、令和32年(2050年)には男性26.1%、女性29.3%まで増えると予測されています。
独居老人がここまで増加すると予測されている背景としては、少子高齢化に加えて未婚率の増加も挙げられます。生涯未婚率は、昭和55年(1980年)時点では男性が2.60%、女性が4.45%でしたが、令和2年(2020年)時点では男性28.25%、女性17.81%となっています。
ここ40年でここまで未婚率が増えていることからも、今後独身の高齢者の割合はさらに増加すると想定されます。
独居老人の抱える問題・懸念点
独居老人のなかには、「家族に迷惑をかけたくない」「自由気ままに老後を過ごしたい」と考えて、自分から一人暮らしを選択する方も多くいます。しかし今は健康でも、年齢とともに介護や病気などの心配が出てくることになるでしょう。
ここでは、独居老人が抱える問題や懸念点について見ていきましょう。
社会との孤立や不安感
仕事も退職し一人暮らしが長くなると、話し相手がいなくなり、地域や社会とのつながりも弱くなってしまいます。次第に一人でいる時間が長く寂しいと感じたり、生きがいを感じられなくなったりする方もいます。
このような孤立感や不安感から心が弱ってくると「フレイル」の兆候が出やすくなるのも懸念点の一つです。フレイルとは、「加齢に伴い心身が虚弱している状態」を指し、介護が必要なほどではないが健康とはいえない、という境界にある状態といえます。
フレイルについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
災害時の避難
災害時の対応は独居老人が抱える問題点のなかでも、命に直接かかわる重要なものです。
実際、災害が発生した際、どのように対応すれば良いのか不安に思う高齢者は多くいます。一人暮らしで隣人・近所との付き合いもない場合、周囲に助けを求めることもできないかもしれません。また、足腰が弱い方であれば、自力で避難できずに逃げ遅れてしまうおそれもあります。
病気やケガへの対応が遅れる
家族が一緒に住んでいれば、病気やケガ、突然の体調不良などの異変に気付く人がいます。しかし、一人暮らしだと体調に変化があっても対応が遅れてしまう懸念があります。病院に行くほどではない、少しのケガくらいは放置すれば治る、と本人が判断してしまい、体調やケガの状態がより悪化するリスクも考えられるでしょう。
また、高齢になると暑さを感じにくくなるため、熱中症にもなりやすいといえます。急に熱中症で倒れた場合、一人だと救急車を呼ぶこともできず、命の危険につながるかもしれません。
認知症の発見が遅れる
明らかな病気やケガでなくても、高齢になると心配なのが認知症です。認知症は自覚のないまま進行することが特徴で、家族や周囲とのコミュニケーションがないと誰も異変に気付けず、いつの間にか重度な状態まで進行しているおそれもあります。
認知症が進行すると、認知機能の低下によって食生活や健康管理に影響が出たり、注意力の低下によって火災事故などにつながるリスクが高まります。
詐欺被害に遭いやすい
令和5年に発生した特殊詐欺の総認知件数(法人被害を除く)において、高齢(65歳以上)被害者の割合は78.4%です。オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗にいたっては9割以上を占めます。一人暮らしの場合は身近に相談できる人がいないため、特に被害に遭いやすいといえるでしょう。
出典:令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)
孤独死の危険がある
誰にも看取られることなく一人で亡くなってしまう、孤独死の心配もあります。一人暮らしのため何か事故や突然の体調不良などがあっても、誰も直ちに異変に気付くことができず発見が遅れるおそれがあります。実際、令和6年1月~3月に自宅で亡くなった一人暮らしの方のうち、8割近くが65歳以上の高齢者であることが分かっています。
一人暮らしの高齢者への支援【行政】
行政では、一人暮らしの高齢者向けの支援体制を整えています。ここでは、地域包括支援センター、介護サービス、自治体による見守り活動・安否確認の3つについて簡単に説明します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、自治体が運営する、高齢者のための総合的な相談窓口です。介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じています。ケアマネージャーや社会福祉士、保健師などが連携を取り、介護サービスや医療サービスなど多面的な支援を展開します。
例えば、要支援/要介護認定の申請方法を説明して介護サービスとのスムーズな連携につなげたり、判断力が低下した方を守るために後見人制度を活用するようサポートしたりなどが挙げられます。
介護サービス
要支援/要介護認定をされている方は、行政の介護サービスを受けることができます。具体的には訪問介護、訪問入浴、食事介助、家事援助など、自宅で受けられる介護予防・生活支援サービスなどを利用可能です。
なお、日常生活上の基本動作を自分で行え、介護や支援を受けずに生活できる「自立(65歳以上)」に該当する方に関しても、自治体などによっては介護予防・生活支援サービスを受けることができます。
要支援/要介護認定に関して詳しい内容は、以下の記事も参考にしてください。
自治体による見守り活動・安否確認
訪問による見守り活動、配食サービスなど自治体によってさまざまな安否確認サービスが行われています。高齢化に伴い、一人暮らしの高齢者の増加が予測されているため、見守り活動はより重要性が増している状況です。
地域包括支援センターの運営も見守り活動の一部だといえますが、自治体によってはデジタルツールの活用をしているところもあります。
例えば、ある自治体では高齢者に自宅の電話からボタンを一日一回押してもらい、自治体独自のみまもりシステムを通して別居家族に連絡がいくようにしています。
一人暮らしの高齢者への支援【家族ができること】
一人暮らしの高齢者のために、家族ができることもあります。
積極的にコミュニケーションをとる
親が離れた場所で一人暮らしをしている場合、電話やビデオ通話などでコミュニケーションをとることで、一人暮らしの孤独感がある程度解消されるでしょう。休日に会いに行ったり一緒に出かけたりなど、直接会う時間を増やすことも大切です。
地域のコミュニティへの参加や自治体サービスの利用をすすめる
人とのつながりがない様子であれば、地域のコミュニティや高齢者サロンなどを調べて、参加するよう促してみてください。社会的に孤立しない状態をつくることで、フレイルの予防にもつながります。また、必要であれば介護予防サービスの利用をサポートしてあげるのも良いでしょう。
見守りサービスを活用する
自治体の見守りだけではなく、家族に通知が来る見守りサービスを活用することで、離れていても親の様子を知ることができます。急に体調を崩したときなど緊急時の対応ができる見守りサービスもあるので、ぜひ活用してみてください。
一人暮らしの高齢者を見守るALSOKの「みまもりサポート」を活用しよう
一人暮らしをしている親の急な体調の悪化や発作が不安、という方は多いでしょう。高齢の場合、突然の体調不良時に一人では対処できないこともあります。
ALSOKの見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート」があれば、体調が悪いときに緊急ボタンを押すだけでガードマンが現場に急行し、関係機関への通報などの対応を行います。相談ボタンを押すと、看護師資格を持つスタッフに24時間いつでも健康相談ができます。看護師や介護支援専門員なども常駐しており、医療施設や介護施設に関するご相談も承ることができます。
また熱中症リスクの通知システムも備わっており、音声による注意喚起が行われるほか、ご家族へのメール通知も可能です。そのほか、安否情報の通知やみまもりタグによる徘徊通知・位置情報検索など、離れていても安心して見守ることができるサービスやオプションが充実しています。
一人暮らしの親や祖父母が心配という方は、ALSOKの見守りサービスを活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
高齢化が進むなか、一人暮らしをしている65歳以上の高齢者である「独居老人」は増え続けています。未婚率の増加なども要因となって、今後も独居老人の数は増えていくでしょう。
一人暮らしの高齢の親を持つ方にとっては、さまざまな不安があるかもしれません。行政のサポートと家族のサポート、そして専門業者による見守りサービスなどを活用してできるだけ安心できる環境をつくりましょう。
なお、令和6年3月に、住宅セーフティネット法の一部改正が閣議決定され、高齢者等が賃貸住宅を借りやすくなることが決定しています。詳しくは以下をご覧ください。