実家じまいとは?かかる費用や進め方、よくあるトラブル事例をご紹介
親が他界した、介護施設に入所したなどの理由で実家が空き家になった、将来のことを考えて実家を手放そうと思っているなどの理由から、実家じまいを検討される方もいるでしょう。しかし、どのような流れで実家じまいを進めるのか、手続き等に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。空き家になった場合はもちろんのこと、高齢になった親御さんが快適に生活するための手段としても実家じまいは重要です。本コラムでは実家じまいにかかる費用や進め方、よくあるトラブル事例とその対策についてご紹介します。
目次
実家じまいとは
「実家じまい」とは、子どもや孫が実家を整理し、処分することです。似た言葉に「家じまい」がありますが、こちらは存命中の家主が自身で持ち家を整理することを指します。つまり「誰が、どのタイミングで住居を処分するか」で考えると区別しやすいでしょう。
実家じまいが増えている理由
実家じまいが増えている理由の1つとして、日本の高齢化率[注1]の上昇に加え、相続による登記が義務化されたことが挙げられます。
高齢化が進み相続の機会が増える中で、所有者不明の土地が増加傾向にあるという問題が深刻化しました。この状況を改善するため不動産登記法が改正され、2024年4月1日より相続登記の申請が義務化されたのです。[注2]
同法律の概要は次の通りです。
- 不動産の相続および所有権の取得を知ってから3年以内に相続登記を行うことを義務化
- 2024年4月1日以前に相続し、未登記の不動産も対象となる
- 正当な理由なく登記を行わなかった場合、10万円以下の罰金を支払う可能性がある
[注1]厚生労働省「我が国の高齢者を取り巻く状況」
[注2]法務省「相続登記の申請義務化について」
従来、相続登記の手続きは任意でした。しかし、上記の通り登記が未実施の場合に罰則を受ける可能性が出てきたため、早めに実家じまいを済ませようと考える方が増えているのです。その他、税金や維持費の負担などを考慮し、家族や子どものために実家じまいを検討する方もいます。
実家じまいのタイミング
実家じまいが実施されるタイミングは人それぞれですが、主に以下の3つが多いです。
- 親の施設入所や長期入院により実家で暮らす人がいなくなった
- 親が亡くなり相続が発生した
- 実家の管理・経済的負担が大きく、維持できなくなった
空き家になった家は維持管理が難しく、固定資産税や老朽化による修繕費など、費用面での負担も大きくなります。そのため、上記のタイミングで実家離れを決意することが多いといえるでしょう。
実家じまいにかかる費用の目安
次に、実家じまいの際にかかる費用の目安をご紹介します。
不用品回収にかかる費用
法務省行政評価局の調査によると、実家に残されている不用品回収を専門業者に依頼する場合、見積もり費用の目安は「約10~40万円」となります。[注3]
しかし、この価格はあくまで目安であり、実際には次の要素により料金が変動する点に注意しましょう。
- 不用品の量
- 部屋の広さ
- 立地条件
また、専門業者に依頼する場合は必ず複数の業者から見積りをとり、料金の内訳を確認することも重要です。実際の作業が始まると、特殊な作業や追加作業が発生する可能性もあるため、契約内容をしっかりと確認しておきましょう。
[注3]法務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」
売却時にかかる費用
不動産会社を仲介して実家を売却する場合は、以下の費用が発生します。
項目 | 費用 |
---|---|
仲介手数料 | (売却額 × 3% + 6万円) + 消費税 ※土地の売価が1,000万円の場合:約39万6,000円 |
印紙代 | 1~3万円 |
抵当権抹消費用 | 不動産1つにつき1,000円 司法書士に依頼する場合:約1万5,000~2万円 |
譲渡所得税 (※譲渡益が出た場合のみ) |
土地の所有期間により変動 5年以下:約39% 5年超:約20% |
売却時には、一定の条件を満たすことで税金控除が適用される場合があります。
家の解体にかかる費用
実家が老朽化している場合は解体を検討することもあるでしょう。家の解体にかかる費用相場は次の通りですが、実際には立地条件や建物の構造などで変動します。
建物の構造 | 費用目安(30坪の場合) |
---|---|
木造 | 約120~150万円 |
鉄骨 | 約180~210万円 |
鉄筋コンクリート | 約180~240万円 |
家の解体費用は高額ではあるものの、古屋付き土地よりも更地にするほうが市場での需要が高いため、買い手が見つかりやすい傾向にあります。そのため、時間をかけずに土地を売却したい場合にも解体は有効な手段といえるでしょう。
転居や住み替えに伴う費用
家族が実家で暮らしている場合、売却や解体にあたっては新しい住居への転居や住み替えが必要です。利用する引っ越し業者や、転居先までの距離によって費用が異なるため、複数業者に見積りをとるようにしましょう。
実家売却時にかかる税金の注意点
実家を売却する際には、税金に関するさまざまな注意点があります。ここでは、実家売却時にかかる税金の注意点を3つご紹介します。
購入時の契約書がないと譲渡所得税が高額になる
譲渡所得税は、購入時よりも高く不動産を売却した場合、その利益に対して課税される税金であり、次の計算式で割り出します。
譲渡所得税 = (不動産の売却価格 - 取得費 - 譲渡費用)×税率
(取得費:購入時にかかった費用、譲渡費用:売却時にかかった費用)
注意点として、購入時の契約書や領収書といった証明書類を紛失してしまうと、税法上では売却価格の5%しか取得費として認められません。つまり、売却価格の95%が課税対象となり、譲渡所得税が高額になってしまいます。
例:3,000万円で購入した家を10年所有、5,000万円で売却した場合(税率は20%)
証明書類の有無 | 取得費への制限 | 譲渡所得額 | 税額 |
---|---|---|---|
有 | 無 | 2,000万円 | 2,000万円 × 20% =400万円 |
無 | 取得費の5% =250万円 |
4,750万円 | 4,750万円 × 20% =950万円 |
※税率の補足
- 不動産の所有期間が5年以内の税率:39%
- 不動産の所有期間が5年超の税率:20%
上記のように、証明書類の有無で税額に差が発生するため、購入時の契約書や領収書などは無くさないように保管しておきましょう。
※上記は簡易的な計算結果であり、実際には譲渡費用や税制上の特別控除などが反映される場合があります。
空き家の場合は3,000万円控除の特例が設けられている
相続などで取得した空き家を売却する際、次の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円が控除される特例があります。
- 相続開始直前まで被相続人(親や祖父母)が住んでいた家屋の場合
- 被相続人が老人ホームなどに入所後、賃貸として利用されていない場合
この特例を受けるには、下記3つの条件を満たさなければいけません。
- 2027年12月31日までに譲渡が完了していること
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始から3年以内に売却すること
なお、売却価格が1億円を超える場合は特例の適用外となる点には注意しましょう。
相続税が高額になる場合がある
不動産を相続する場合、その不動産の価値(評価額)は、国税庁が定める「相続税路線価」という基準で計算されます。
参考:国税庁 財産評価基準書
評価額は、実際に不動産を売却したときの価格(市場価値)の8割程度に設定されていることが特徴です。しかし、不動産の価値を相続税路線価で計算する前に売却、現金化してしまうと、売却時の価格が相続税の対象となります。
例:相続路線価が800万円、売却価格が1,000万円の場合
→相続税は現金化された1,000万円を基に計算される
また、相続税には相続する財産の総額から差し引ける金額(基礎控除)があり、次の計算式で算出されます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 相続する人の数)
※相続する財産の総額が基礎控除額以下なら、相続税はかからない
基礎控除額を超える値段で不動産を売却して現金化すると、予想以上に高額な相続税がかかることがあります。そのため、不動産を相続するか売却するか、そしていつ売却するかは、相続税への影響を考えて慎重に判断しましょう。
実家じまいの進め方・流れ
実家じまいの最適な進め方は個々の状況によって異なりますが、以下に基本的な進め方や、やるべき作業を紹介します。
家族・親族で実家じまいの方向性を話し合う
実家じまいの第一歩は、家族や親族間で話し合うことです。親が健在の場合は、親の意思を尊重しながら実家じまいの方針を固めていきましょう。親がいない場合は、相続人同士で方向性を話し合う必要があります。
法的には相続人に決定権がありますが、親族間のトラブルを避けるためにも、じゅうぶんな話し合いと、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。
親の転居先を決める
親が健在の間に実家じまいを行う場合は、親の新しい生活拠点を決める必要があります。その際は、主に以下の選択肢から検討することになります。
- 同居する
- 賃貸住宅への引っ越し
- サービス付き高齢者向け住宅などへの入所
重要なのは、実家じまい後も親が安心して暮らせる環境を整えることです。親の希望や家族構成、経済状況のほか、健康状態なども考慮し、長期的な視点で決定しましょう。
実家の片付け・不用品を処分する
実家の片付けは、思い出の品と向き合う作業です。長年の思い出が詰まった品々を整理するのは心苦しく時間もかかってしまいますが、親の意思を尊重しつつ、必要なものと不要なものを仕分けしていきましょう。
不用品の処分についても、トラブル防止のため家族や親族と相談の上決める必要があります。
必要に応じて専門業者への依頼も検討し、効率的に作業を進めることが重要です。
売却方法を決める
実家の売却方法を決める際には、家を解体して土地を売却するか、建物付きのまま売却するかを選ぶことになります。
解体すると更地になるため、買い手が見つかりやすい一方、数百万円規模のコストがかかります。建物付き売却は手続きこそ簡単ですが、買い手が見つかるまで時間がかかる可能性もあるので、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、慎重に判断しましょう。
各業者へ相談する
実家じまいには、さまざまな専門業者の協力が不可欠です。不動産会社、不用品回収業者、解体業者などに相談し、専門的なアドバイスを求めましょう。
一社に絞らず複数の業者に相談することで、より良い条件や方法を見つけられるでしょう。各業者の提案を比較・検討し、自分たちの予算や希望に合う業者に協力を仰ぐことが大切です。各業者の提案を比較・検討し、自分たちの予算や希望に合う業者に協力を仰ぐことが大切です。
実家を処分する
解体または建物付き売却、いずれかの選択に基づき、専門業者に依頼して作業を進めます。
必要書類の準備や法的手続きには、税理士や不動産の専門家などのサポートを受けながら、処分の手続きを進めていきましょう。
実家じまいで発生するトラブル事例と対策
実家じまいの過程では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。ここでは、主なトラブル事例と対策をご紹介します。
売却が困難なケース
実家の売却が困難になる要因には、次の3つがあります。
- 築年数が古い
- 老朽化して修繕が必要
- 交通の便など立地条件が悪い
なかなか買い手がつかない場合は売却価格を下げざるを得ず、譲渡所得税の負担が大きくなる可能性があります。そのため、次のような対策をとる必要も出てくるでしょう。
- リフォームを実施する
- 更地にして売却する
- 賃貸物件として再活用する
特に賃貸活用は、継続的な家賃収入を得られるメリットがあります。なかなか実家が売却できない場合に検討してみてください。
権利証が見つからないケース
登記識別情報通知(※1)や権利証といった、登記や売却に必要な書類は紛失しないように注意しましょう。
(※1)不動産の登記手続きにおいて、登記が完了したことを知らせるために発行される通知。登記名義人が不動産の所有者であることを証明するために使用される。
紛失しても所有権の移転登記は可能ですが、売却時には必須となるため、司法書士に再作成を依頼する必要があります。その場合5~10万円程度の費用が発生してしまうため、重要書類は適切に管理し、無くさない場所に保管しておきましょう。
買い手がつかず、相続税が払えないケース
遺産の大部分が不動産の場合、実家の売却による代金なしでは相続税の支払いが困難になるケースがあります。
相続税の申告・納税期限は「相続開始から10カ月以内」という期限が定められています。そのため、相続税の支払いに実家の売却代金を用いる場合は、期限に間に合うように決断しましょう。
また、期限内に納税できない場合、延納といった制度も用意されていますが、期限までに税務署に申請および許可を得なければいけません。いずれにしても不動産を相続する際は、早めに手続きを進めていきましょう。
空き家管理には「HOME ALSOK るすたくサービス」がおすすめ
空き家は不法侵入、不法投棄などのトラブルが起こりやすいため、適切な管理が必要です。しかし、実家が遠くなかなか片付けに行けず、管理しきれていないという場合もあるでしょう。まだ実家じまいはしたくないと考えている方や、実家の売却に時間がかかることが想定される場合は、空き家管理サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
ALSOKの「HOME ALSOKるすたくサービス」は、空き家の管理に時間を割けない方に代わって、実家の見回りやポストに投函された郵便物の回収などを実施いたします。空き家の放置は建物の劣化が進む、犯罪に利用されるなどの懸念があります。るすたくサービスによって定期的な外周の見回りやポストの投函物整理を行うことで、住宅設備の破損や不法投棄のチェック、不法侵入の防止が可能です。また、オプションで換気・通水のサービスがあり、建物の劣化防止につながります。空き家の管理にお困りの方は、ぜひALSOKにご相談ください。
高齢なご家族の見守りにはALSOKの「みまもりサポート」を活用しよう
親が一人暮らしをしている、またはする予定の場合は急な体調悪化や発作が不安、という方は多いでしょう。高齢であるほど、突然の体調不良時に対処できないこともあります。
ALSOKの見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート」は、もしものとき緊急ボタンを押すだけでガードマンが現場に駆けつけます。
また、相談ボタンを押すと看護師や介護支援専門員に24時間いつでも健康相談が可能です。操作も簡単で、高齢の方でも使いやすくなっています。
離れて暮らすご家族の体調を不安に感じている方は、ALSOKの見守りサービスを活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
実家じまいは大切な思い出との別れを伴う、心理的にも経済的にも負担の大きな作業です。しかし、家族でじゅうぶんに話し合い、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることで、スムーズに対応できます。
早めの準備を心がけ、焦らず着実に実家じまいを進めていきましょう。