要介護1とは?一人暮らしは可能?受けられるサービスや支給限度額を解説
「要支援/要介護認定」において「要介護1」と診断された場合は、日常生活において部分的に介護が必要な状態です。認知症の症状が目立つ場合や、歩行に不安があるケースがあり、今後一人暮らしは続けられるのか、どのような介護サービスを受けられるのかと不安になることも多いでしょう。本記事では、「要介護1」で受けられるサービス内容、支給限度額について、詳しくご紹介します。
目次
要介護1とは
介護を必要とする高齢者が、適切なサービスを受けられるよう社会全体でサポートする仕組みが、介護保険制度です。介護保険サービスを受けるためには、要支援/要介護認定を受ける必要があります。要支援1~2、要介護1~5の7段階があり、要介護1は「要介護」のなかで一番軽度な段階です。
要介護1とは、日常生活を送るための運動能力や認知機能の低下が部分的に見られる状態です。認知症の発症をきっかけに認定される方が多く、同じことを何度も言うといった認知症初期の症状が見られる特徴があります。
具体的には次のような状態が要介護1の目安です。
厚生労働省は、要介護1の「介護に必要とされる時間」を「要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態」と定めています。
令和4年度の厚生労働省「介護保険事業状況報告」によると、要介護1の方は全国に約145万人となっています。
出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」
要支援2との違い
要支援2と要介護1は、いずれも「要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態」が基準になっていますが、認定される症状に差があります。
要支援2は、立ち上がりや歩行、一部の日常動作に見守りやサポートが必要なものの、認知機能には問題がなく、基本的に自立した日常生活ができるため、要介護1と比較すると介護度がやや低い状態です。
要介護2との違い
要介護1は部分的なサポートがあれば日常生活が送れるのに対して、要介護2は日常生活において、幅広いサポートが必要な状態です。食事や入浴、トイレなど全般的に手助けを必要とします。
認定の基準は「要介護認定基準時間(介護に必要とされる1日あたりの時間)が50分以上70分未満またはこれに相当すると認められる状態」とされています。
要介護1で受けられるサービス
要介護1では、介護サービスを利用することが可能です。ここでは厚生労働省が定めている要介護1で受けられる介護サービスについて詳しく解説します。
自宅で受けられるサービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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訪問介護 | 自宅でホームヘルパーから食事・入浴・排せつなどの介護、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援を受ける |
訪問入浴介護 | 自宅での入浴が困難な方が、看護職員・介護職員の持参した専用の浴槽で入浴介護を受ける |
訪問看護 | 自宅で看護師から健康状態の観察や医療ケアなどの看護サービスを受ける |
訪問リハビリテーション | 自宅で理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの訪問を受け、身体機能の維持・向上に向けたリハビリを行う |
夜間対応型訪問介護 | 夜間帯(18時~8時)にホームヘルパーの自宅訪問を受け介護サービスを受ける |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 定期的な巡回訪問または随時通報により自宅訪問を受け、食事や入浴などの介護、調理・洗濯といった日常生活の家事支援や看護サービスを受ける |
利用者が、なるべく自宅で自立した日常生活を送れるよう、ホームヘルパー(訪問介護員)、看護師、介護職員らが利用者の自宅を訪問して行うサービスです。
自宅で生活するための身体介護(食事・排せつ・入浴など)や、生活援助(掃除・洗濯・買い物・調理など)はもちろん、自宅で医療ケアやリハビリを受けることも可能となっています。
日帰りで施設に通うサービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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通所介護(デイサービス) | 利用者が施設に日帰りで通い、健康状態のチェックや食事・入浴・機能訓練、レクリエーションなどの提供を受ける |
通所リハビリテーション(デイケア) | 利用者が施設や病院に通い、心身機能の維持回復のためのリハビリを受ける |
地域密着型通所介護 | 利用定員19人未満のデイサービス施設にて、日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練などを受ける |
療養通所介護 | 疾患を持つ利用者が食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練を受ける |
認知症対応型通所介護 | 認知症の利用者が通所介護の施設にて、食事などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける |
利用者の状態に応じて、通所介護施設(デイサービスセンターなど)、通所リハビリテーション施設(老人保健施設、病院、診療所など)に通い、日常生活の支援や、生活機能向上のための訓練などを受けるサービスです。デイサービスは機能維持・向上だけでなく、利用者同士の会話やレクリレーションなどを通じて孤立感の解消も期待できます。
デイサービスの利用回数は、利用者の状況によっても異なりますが、週2~4回程度が一般的です。
訪問・通い・宿泊サービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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小規模多機能型居宅介護 | 通所を中心に訪問・宿泊を組み合わせて介護や機能訓練を受ける |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | 「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスを受ける |
短期入所生活介護(ショートステイ) | 施設へ短期間宿泊をして介護や機能訓練を受ける |
短期入所療養介護 | 医療機関や介護施設等へ短期間宿泊をして身体介護、医療ケア、機能訓練などを受ける |
訪問・通い・宿泊サービスは、利用者の介護度によって日常的な生活支援から、看護・医療のサービスまでを提供しており、利用者の心身機能の維持回復を図ると共に、介護する家族の負担軽減も目的としています。なお、短期入所生活介護、短期入所療養介護の連続利用日数は30日が上限となっているため、利用の際には注意が必要です。
施設等で生活するサービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 要介護3以上の高齢者向け施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける ※特例入所要件に当てはまる場合のみ要介護1の方も入所できる |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指している方のための施設。リハビリテーションや必要な医療、介護などを受ける |
特定施設入居者生活介護 | 指定を受けた有料老人ホーム、軽費老人ホーム等で生活支援や機能訓練を受ける |
介護医療院 | 長期療養が必要な方のための施設。療養上の管理、看護や介護、機能訓練、その他必要な医療と日常生活に必要なサービスを受ける |
利用者が安心して生活しながらケアを受けるために、施設等に居住するサービスです。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設(老健)は、利用者が可能な限り在宅に復帰することを目指し、そのための日常生活上の支援、機能訓練などを行っています。なお介護老人福祉施設は、要介護1・要介護2の方はやむを得ない理由がない限り入居できないため、注意が必要です。
地域密着型サービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の利用者がグループホームに入所し、家庭的な環境のなか、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける |
介護老人保健施設(老健) | 入所定員30人未満の介護老人福祉施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける ※要介護1・要介護2の方はやむを得ない理由がある場合のみ |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受ける |
地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で利用者やスタッフと交流しながらより良い生活をするための支援を目的としており、地域ならではの柔軟なサービス設計が特色です。「地域密着型介護老人福祉施設」は、要介護1・要介護2の方はやむを得ない理由がある場合以外利用できません。
福祉用具の利用サービス
要介護1で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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福祉用具のレンタル | 利用者の状態や希望、生活環境等に合った福祉用具(手すり、スロープなど)を借りられる |
特定福祉用具の購入 | レンタルになじまない福祉用具(入浴・排せつに使用するものなど)を1割~3割負担で購入できる |
福祉用具の利用サービスは、利用者ができるだけ自立した日常生活を送るためのサービスです。対象となる福祉用具は、歩行器、車いす、手すり、スロープ、さらには介護用ベッドや移動用のリフトなど多岐にわたりますが、要介護1の場合は車いすや介護用ベッドなど一部のレンタルに対して医師やケアマネジャー、市区町村の判断が必要になります。
要介護1の支給限度額
介護保険サービスを利用する場合、要介護度によって介護保険から給付される支給限度額が決められています。
要介護1の場合、1カ月の支給限度額は【16万7,650円】です。1カ月間のサービス費用が限度額以内の場合、利用者負担は1割(所得によっては2~3割負担)ですが、地域やサービス内容によって金額が変動するため事前に確認しておきましょう。
デイサービスを利用する場合の費用の目安
デイサービスを利用する場合は、利用時間と利用者の要介護度によって料金が設定されています。要介護1の方の1日の利用費用目安は以下の通りです。限度額を超えた分は、全額が自己負担になります。
- 3時間以上4時間未満:370円
- 4時間以上5時間未満:388円
- 5時間以上6時間未満:570円
- 6時間以上7時間未満:584円
- 7時間以上8時間未満:658円
- 8時間以上9時間未満:669円
※1割負担の場合
出典:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(厚生労働省)
要介護1の介護保険サービス利用方法とケアプラン例
要介護1の判定を受けた方は、介護保険の「介護給付」を受けることができます。 介護保険サービスを利用するためには、まず自治体の窓口で要支援/要介護認定の申請を行います。担当者による、要支援/要介護認定のための聞き取り調査の結果とコンピューターによる判定、主治医の意見書などから総合的に判断して「介護度」が決定します。この認定は原則12カ月ごとに更新されるため、その都度更新申請が必要です。なお、身体の状態が変化したときは、変更申請を行うことが可能です。
認定結果が通知されたら、ケアマネジャーに依頼して、介護サービスの計画書を作成します。これが「ケアプラン」です。ケアプランは個人の状況に応じた介護保険サービスを組み合わせたもので、この計画に応じて介護サービスを利用することになります。
ケアプランは、本人や家族の希望、心身の状態を考慮して作成されるものです。介護サービスはケアプランにもとづいた提供となるため、最適なプランになるよう担当者とよく相談の上作成しましょう。
参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(厚生労働省)
要介護1の方のケアプラン例
次に、要介護1の方のケアプラン例を見ていきましょう。
【要介護1の判定を受けたAさんのプロフィール】
性別:女性
年齢:80歳
既往症:認知症と診断されている
身体状況:食事や排せつは、家族の見守りやサポートを受けながら自分で行っている。歩行に時間がかかり、通院を含む外出をあまり好まない。認知症による不安症状がある。
在宅介護の場合
在宅で家族が介護を行っている場合のプランです。通院が困難であるため、訪問看護と居宅療養管理指導を利用して健康維持を図ります。また、家族に同じことを何度も尋ねるなど不安症状が見られるため、家族の負担軽減を考慮し、デイサービス、ショートステイを定期的に利用します。
サービス内容 | 月の利用回数 | 詳細 | 利用者負担(1割負担) |
---|---|---|---|
訪問入浴介護 | 4回 | 全身入浴 | 5,064円 |
訪問看護 | 4回 | 訪問看護ステーションからの訪問で30分未満の場合 | 1,884円 |
地域密着型通所介護 | 8回 | デイサービス施設での機能訓練 | 6,024円 |
短期入所生活介護 | 2回 | 日常生活費(食費、滞在費など)が別途必要 | 1,206円 |
福祉用具貸与 | 1カ月 | 手すりをレンタル | 806円 |
自己負担額の合計 | 14,984円 |
施設介護の場合
指定を受けた有料老人ホームまたは軽費老人ホームに入居し、恒常的に日常生活の支援、機能訓練を受けるプランです。
サービス内容 | 月の利用回数 | 詳細 | 利用者負担(1割負担) |
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特定施設入居者生活介護 | 1カ月(30回) | 入居費用・日常生活費(おむつ代など)は別途負担 | 16,140円 |
自己負担額の合計 | 16,140円 |
要介護1の認定を受けても一人暮らしは可能?
要介護1の認定を受けていても、一人暮らしをすることは可能です。厚生労働省が実施した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護者がいる単独世帯(一人暮らし世帯)のうち、18.9%は要介護1の方でした。個人の状態にもよりますが、食事や基本的な日常動作ができれば、自宅で一人暮らしをすることが可能といえるでしょう。
ただし、すべての日常生活が不安なく行える状態ではないため、定期的な見守りや介護サービスは必須だといえます。介助が必要な範囲を確認し、安心して生活するための適切なサービスを利用することが必要です。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
要介護1の方が受けられるALSOKの介護サービス
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要介護1は状態によっては自分自身でできることもありますが、周囲の見守りやサポートが求められる場面が増えます。状況に合わせて、介護サービスの利用も検討しましょう。
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介護に関して不安なことやご要望等あれば、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
要介護1は、身体能力や認知能力の低下によって「支援」から「介護」のフェーズへと移行した段階です。日常的に必要な介護の範囲を正しく理解し、利用者ご本人の安全で快適な生活を守るために、介護保険サービスを適切に組み合わせて活用していきましょう。