要介護3とはどんな状態?施設介護の費用やケアプラン例を解説
家族が「要介護3」の認定を受けた場合、在宅介護は続けられるのか、施設に入居するにはどのくらい費用がかかるのかなど、悩むことも多いのではないでしょうか。
本記事では、要介護3と認定された場合の心身の状況や、受けられる介護サービス、費用、ケアプランの例などをご紹介します。
目次
要介護3とは?
介護保険制度では、介護を必要とする高齢者が適切なサービスを利用できるよう「要支援/要介護認定」を受ける必要があります。要支援1~2、要介護1~5の7段階があり、要介護3とは日常生活で全面的な介助が必要な状態を指します。
厚生労働省では、要介護3の「介護に必要とされる時間」を「要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態」と定義しています。
具体的には次の状態が要介護3の目安となります。
- 自力での立ち上がりや歩行が難しい
- 日常生活全般に介護が必要
- 認知機能の低下が見られる
- 在宅介護が難しくなってくる
認知機能の低下によって、徘徊や奇声を発する、異食などの問題行動が現れる場合もあります。厚生労働省の「令和4年度 介護保険事業状況報告」によると、要介護3の方は約92万人にのぼります。
出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」
要介護3と要介護2の違い
要介護2では、日常生活に部分的な介助が必要ですが、ある程度自分でできることもあります。一方、要介護3では、日常生活のほとんどで介助が必要となり、自力での動作が困難になります。また、要介護3では認知機能の低下がより顕著で、24時間の見守りや介護が必要となることも多いです。
要介護2について、詳しくはこちらをご覧ください。
要介護3と要介護4の違い
要介護3では日常生活全般に介護が必要ですが、介助されながら自分でできることもあります。要介護4では、日常生活のほぼ全てに全面的な介護が必要で、自力でできることがほとんどありません。認知機能の低下もより顕著で、介護時間も長くなります。また、在宅介護が難しくなり、施設入所を検討することが多くなります。
要介護4について、詳しくはこちらをご覧ください。
要介護3で受けられるサービス
自宅で受けられるサービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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訪問介護 | 自宅でホームヘルパーから食事・入浴・排せつなどの介護、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援を受ける |
訪問入浴介護 | 自宅での入浴が困難な方が、看護職員・介護職員の持参した専用の浴槽で入浴介護を受ける |
訪問看護 | 自宅で看護師から健康状態の観察や医療ケアなどの看護サービスを受ける |
訪問リハビリテーション | 自宅で理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの訪問を受け、身体機能の維持・向上に向けたリハビリを行う |
夜間対応型訪問介護 | 夜間帯(18時~8時)にホームヘルパーの自宅訪問を受け介護サービスを受ける |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 定期的な巡回訪問または随時通報により自宅訪問を受け、食事や入浴などの介護、調理・洗濯といった日常生活の家事支援や看護サービスを受ける |
ヘルパーによる食事・排せつ時の介護や生活援助、看護師による訪問リハビリテーションなどを受けます。夜間帯にヘルパーが訪問してくれる夜間対応型訪問看護もあり、定期的に排せつの介助や安否確認を実施する「定期巡回」と、急に体調が悪くなったときなどに対応してもらう「随時対応」の2種類があります。
日帰りで施設に通うサービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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通所介護(デイサービス) | 利用者が施設に日帰りで通い、健康状態のチェックや食事・入浴・機能訓練、レクリエーションなどの提供を受ける |
通所リハビリテーション(デイケア) | 利用者が施設や病院に通い、心身機能の維持回復のためのリハビリを受ける |
地域密着型通所介護 | 利用定員19人未満のデイサービス施設にて、日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練などを受ける |
療養通所介護 | 疾患を持つ利用者が食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練を受ける |
認知症対応型通所介護 | 認知症の利用者が通所介護の施設にて、食事などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける |
利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の負担感を減らすなどの目的として、通所介護(デイサービス)を受けられます。また、施設に通ってリハビリを行う通所リハビリテーション(デイケア)を受けることもできます。
訪問・通い・宿泊サービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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小規模多機能型居宅介護 | 通所を中心に訪問・宿泊を組み合わせて介護や機能訓練を受ける |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | 「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスを受ける |
短期入所生活介護(ショートステイ) | 施設へ短期間宿泊をして介護や機能訓練を受ける |
短期入所療養介護 | 医療機関や介護施設等へ短期間宿泊をして身体介護、医療ケア、機能訓練などを受ける |
ショートステイは、特別養護老人ホームなどの施設で短期間(30日以内)の入所を受け入れ、入浴や食事などの介護をするサービスです。利用者の孤立感の解消や心身機能の維持だけでなく、在宅介護における家族の負担を減らすことができます。
訪問と通い、宿泊を組み合わせる小規模多機能型居宅介護(複合型デイサービス)もあります。
施設などで生活するサービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 要介護3以上の高齢者向け施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指している方のための施設。リハビリや必要な医療、介護などを受ける |
特定施設入居者生活介護 | 指定を受けた有料老人ホーム、軽費老人ホーム等で生活支援や機能訓練を受ける |
介護医療院 | 長期療養が必要な方のための施設。療養上の管理、看護や介護、機能訓練、その他必要な医療と日常生活に必要なサービスを受ける |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、利用者が施設に入居し、入浴や食事などの支援を受けたり、リハビリを行ったりする施設です。65歳以上か、40~64歳までの方は特定疾病と認められていれば入居可能ですが、待機者が多いのが現状です。要介護3の場合は、在宅復帰を目的とし、リハビリを行う介護老人保健施設(老健)の選択肢も視野に入れると良いでしょう。
地域密着型サービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の利用者がグループホームに入所し、家庭的な環境のなか、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 入所定員30人未満の介護老人福祉施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受ける |
要介護の方が住み慣れた地域を離れず、自分らしい生活ができるように提供されているのが、地域密着型サービスです。
認知症の方を対象としたグループホーム、小人数規模の地域密着型特別養護老人ホームや有料老人ホーム、軽費老人ホームなどを利用できます。
福祉用具の利用サービス
要介護3で受けられる介護 サービス |
サービス内容 |
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福祉用具のレンタル | 利用者の状態や希望、生活環境等に合った福祉用具(手すり、スロープなど)を借りられる |
特定福祉用具の購入 | レンタルになじまない福祉用具(入浴・排せつに使用するものなど)を1割~3割負担で購入できる |
利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送れるように、福祉用具貸与のサービスが受けられます。対象は特殊寝台、床ずれ防止用具、手すり、スロープ、車いす、歩行器、補助杖など13品目です。入浴や排せつに用いる腰掛便座、入浴補助いす、簡易浴槽などの福祉用具は1割負担で販売されています。
要介護3の支給限度額
介護保険には、サービスを利用できる限度額である「支給限度額」が、要介護度によってそれぞれ設定されています。
要介護3の場合、1カ月の支給限度額は【27万480円】です。利用者は1割が自己負担となり、限度額いっぱいまでサービスを利用した場合は27,048円を支払うことになります。一定以上所得がある利用者の場合は2割、または3割負担になります。
なお、この金額は地域やサービス内容によって変動するため、事前に確認しましょう。
上限額を越えて介護保険サービスを利用すると、超えた分は全額自己負担となるので注意が必要です。また、支給限度額は施設サービスには適用されません。施設入居の費用については以下の記事も参考にしてください。
要介護3でもらえるお金はある?給付金制度について
介護保険の利用以外にも、給付金や控除制度はあるのでしょうか。ここでは、要介護3でもらえる給付金制度や控除について解説します。
特定入所者介護サービス費
低所得者が老人ホームなどの介護保険施設を利用する際の食費や居住費に負担限度額を設け、負担限度額を超えた金額について給付が受けられる制度です。所得に応じて自己負担額が設定され、基準費用額との差額が支給されます。給付段階は3段階に分けられ、例えば特養の従来型個室は、基準費日額1,171円ですが、一番負担が少ない第1段階であれば日額380円が限度額です。
高額介護サービス費
1カ月の介護サービス利用料が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。所得区分に応じて自己負担上限額が設定されており、一般的な所得(市町村民税課税~課税所得380万円未満)の方の負担限度額は月額4万4,400円です。これを超えた分が高額介護サービス費として支給されます。
出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 <高額介護サービス費>
高額医療・高額介護合算制度
医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、年間の限度額を超えた場合に払い戻される制度です。毎年8月から翌年7月までの1年間の自己負担額が対象となります。所得区分に応じて限度額が設定されており、超過分が支給されます。例えば、75歳以上で年収約370~770万円の方は、67万円が限度額となります。
出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 <高額医療・高額介護合算制度>
医療費控除
要介護者の医療費や介護サービス利用料の一部を確定申告で控除できる制度です。医療費控除の対象となる費用から保険給付分を差し引いた自己負担額が10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超える場合に適用されます。介護保険サービスの利用料や福祉用具購入費なども対象となります。
出典:国税庁No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
障害者控除
要介護認定を受けている65歳以上の方は、障害者手帳がなくても確定申告で障害者控除を受けられる場合があります。要介護1~5の認定を受けている、または6カ月以上寝たきりの状態の方など、市区町村によって基準が異なるため、確認してみましょう。障害者控除を受けるには、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」が必要です。
参考:国税庁 No.1160 障害者控除
大田区 要介護認定者等の障害者控除(所得税・住民税)
草加市 要介護認定者(1から5)の人は、確定申告の時に税控除が受けられます
福祉用具、住宅改修費用
介護保険で福祉用具のレンタルや購入、住宅改修の費用の一部が給付されます。福祉用具は原則レンタルですが、トイレなどの特定福祉用具は購入が基本です。住宅改修は手すりの取り付けや段差解消などが対象で、かかった費用の9割(所得に応じて8割、7割)が支給されます。住宅改修費用は、生涯20万円が支給限度基準額になっています。
おむつ代助成など、自治体独自の給付金制度
多くの自治体で、要介護者向けの独自の給付金制度を設けています。例えば、おむつ代の助成、タクシー券の支給などがあります。制度の内容や対象者の条件は自治体によって異なるため、居住地の市区町村の介護保険窓口に確認することをおすすめします。
参考:さいたま市 重度要介護高齢者紙おむつ等支給事業
船橋市 福祉タクシー乗車券(要介護者等)を交付します
要介護3の介護保険サービス利用方法とケアプラン例
ここでは、介護保険サービスの利用方法と要介護3の方のケアプラン例を紹介します。
まずは、お住まいの市区町村の窓口で、要介護認定の申請をします。その後、市区町村の担当者が自宅に訪問し、聞き取り調査が行われます。その聞き取り調査と、主治医の意見書をもとに、最初にコンピューターによる判定が行われます(一次判定)。その後、判定結果と主治医の意見書をもとに、介護認定審査会が要介護度を決定します(二次判定)。
認定結果が通知されたあとに、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、「ケアプラン」という介護サービスの計画書を作成します。このケアプランに応じて、介護保険サービスの利用が可能になります。
ケアプランはご本人の希望や心身の状態、ご家族の状況や要望に応じて作成されます。作成の際は、ケアマネジャーと十分に話し合うことが大切です。
参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(厚生労働省)
要介護3の方のケアプラン例
次に、要介護3の方のケアプラン例を見ていきましょう。
【要介護3の判定を受けたAさんのプロフィール】
性別:女性
年齢:85歳
既往症:なし
身体状況:食事や排せつなど一部介助が必要
在宅介護の場合
週4回訪問介護を利用し、日常生活の介護、食事作りや買い物などの生活援助を受けます。また週2回のデイサービス利用で家族の負担を軽減し、他利用者とのコミュニケーションを取る機会を設けています。
サービス内容 | 月の利用回数 | 詳細 | 利用者負担 (1割負担) |
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訪問看護 | 4回 | 訪問看護ステーションからの支援で、1回に付き30分未満 | 1,884円 |
訪問介護 | 16回 | 身体介護:20分以上30分未満 生活援助:20分以上45分未満 |
6,768円 |
訪問入浴 | 8回 | 全身入浴 | 10,128円 |
通所介護(デイサービス) | 8回 | 通常規模の事業所の場合(7時間以上8時間未満) | 7,200円 |
自己負担額の合計 | 25,980円 |
施設介護の場合
特別養護老人ホームの個室入居プランです。介護保険料負担のほか、食費や居住費が必要になります。
サービス内容 | 月の利用回数 | 詳細 | 利用者負担 (1割負担) |
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介護老人福祉施設 | 1カ月(30回) | 従来型個室 | 21,960円 |
自己負担額の合計 | 21,960円 |
要介護3の認定を受けても一人暮らし・在宅介護は可能?
要介護3は日常生活で常に介助が必要ですが、介護サービスの利用によって一人暮らしや在宅介護が可能な場合もあります。
例えば、地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護(複合型デイサービス)を活用すれば、週の半分を自宅で過ごし、半分をデイサービスで過ごすなどができます。在宅中は訪問介護を受ければ、一人暮らしも可能な場合もあるでしょう。訪問介護では着替えや排せつなどの身の回りの介助や、料理などの家事支援を受けられます。
しかし、要介護3の場合は介護が必要なシーンが多く、介護サービスを受けていない時間帯や家族がいない時間帯に体調の悪化や転倒などが起きる可能性もあり、安心とはいえません。家族が遠方に住んでいる場合や要介護者が一人になる時間帯があるご家庭の場合は、見守りサービスの導入がおすすめです。
要介護3の方が受けられるALSOKの介護サービス
高齢のご家族の見守りにおすすめなのが「HOME ALSOKみまもりサポート」です。
体調が悪くなったときや緊急事態時には緊急ボタンを押すことで、ガードマンがすぐに駆けつけます。ペンダント型緊急ボタンもご用意(オプションサービス)していますので、枕元に置いておき、寝ている時などに体調が悪くなったらその場でボタンを押すことができます。その他にも、火災感知を行うオプションサービスがあり、火災や煙を感知した場合もガードマンが駆けつけます。
熱中症や災害時の危険があるときは、音声で警告。またヘルスセンターへつながる相談ボタンもあり、看護師資格を持つスタッフに健康や体調に関するお悩みを気軽に相談できます。
また、センサーを設置して安否確認ができるオプションサービスもございます。
要介護3は、周囲のサポートが求められる場面が増えます。場合によっては、寝たきりや認知症等で常時介護が必要となるケースもあるでしょう。家庭内での介護だけでは難しいと感じたら、迷わず介護サービスを活用しましょう。
ALSOKグループでは、利用者の状態に合った介護サービスを展開しています。デイサービスや訪問介護に加え、設備の整った有料老人ホームやグループホームのご紹介も可能です。施設の感染対策はもちろん、ALSOKならではの防犯対策や防災訓練にも積極的に取り組んでいるため、安心してご利用いただけます。
介護に関して不安なことやご要望等あれば、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
要介護3は自宅での介護が可能な方も多いですが、長期にわたる介護は家族の負担となる場合があります。ご本人やご家族の意向をふまえて、介護サービスの利用を検討しましょう。訪問介護やデイサービスなどの通いで受けられるサービスと、ショートステイなどを組み合わせるのもおすすめです。ぜひご本人の状態に合った介護サービスを見つけてください。